映画|デッド・アウトサイド|The Dead Outside

スコットランドの寒色草原。ゾンビウィルスが蔓延する死の世界を孤独男がさまよっていたらば、農場で暮らす孤独女と出会い、そこんちに住ませてもらう。といっても、エロい雰囲気はまったくない。「わたしら、とことん疲れ果てました」という絶望ムードのふたりはそんな気にならないという調子なんだが、それにしても女の怒りっぽさは少し常規を逸しているのではないか。女はエイプリルというのだが、ニコニコしたらけっこうかわいいんじゃないかと思うんだが、彼女はとにかく無愛想で、容易に他人を信じない性格である。「ここに住みたきゃ住んでもいいが、余計なせんさくをすんな！世間話なんかしたくねーよ！」という調子。こんな世界でなにをいまさら隠すというのだろう。という点が男は気になる。男はダニエルといって、こちらは普通の親切アンちゃんである。ダニエルはやがて彼女の秘密を知る。そこにもうひとり生存者が合流する。後半にアッと驚くtwistがある。

淡々と流れる硬質タッチ映像で終末世界を描く異色のゾンビ映画。インディーズ低予算。変わってておもしろいけど、好みによって評価がわかれるところだろう。『28日後... / 28 Days Later...』の世界を別アプローチで表現してみましたよ。みたいな映画。

動画

感想

シリアス陰気サスペンス風味のホラー映画。ゴアゴアを期待するとハズしますが、これはこれでいいかなと。

ゾンビ映画といえばギタギタに下品なものと相場が決まってますが、これはかなり異質でした。スコットランドの草原は寒々しく、まるで時間が止まっているよう。普通のインディーズ映画よりもずっと洗練されててプロっぽいかんじがする。様式美があり、陰影のバランス感が文藝的でさえある。上品な奥さんがリビングでこの映画を観ていても違和感がないような。そんなゾンビ映画なんて珍しいでしょう？？

監督のケリー・アン・ムラニー（Kerry Anne Mullaney）は、これが映画監督デビューですが音楽プロモビデオの経験もあるそうです↓

• kmullaney.co.uk - 本人の公式ページ

インタビューもあった↓

• BEHIND THE COUCH - Interview With The Dead Outside director Kerry Anne Mullaney

上のページを見ただけではキャリアの詳細はわかりませんけど、才能がありそうだなあと期待させる感があります。シネマトグラフィがよいことに加え、キャスティングもいいです。怒りっぽい少女エイプリルを演じたSandra Louise Douglasは無名の新人ですが、期待ゼロでオーディションをやったら、ホイと見つけためっけもんだそうです（上のインタビューより）。無名新人のわりにはいいかんじのハジケッぷりでした。10代の頃のモニカ・セレシュ（テニス選手）みたいだと思いました。モニカ・セレシュってパッと見かわいかったけど、審判に怒るときには悪魔のような形相だったじゃないですか。あんなかんじ。

また、インタビューによれば監督さんは「ゴアゴアはあまり好きじゃない」そうなんだけど↓

Kerry Anne Mullaney: I am a fan of 'intelligent horror' rather than gore - but I do enjoy a good creature feature like The Host.

まぁそういわずにですね、このひと独自の『寒色&硬質&シリアス感性映像』をベースに、グジャッとグロ映像が混ざったら、それはそれはすばらしいかんじになるんじゃないかと思うんで、ゴアも少しはやってくださいよと勝手なことを思ってしまいました。

さて、世のゾンビフリークがこの映画を好きになるかという点ですが、まぁ、好みがわかれるところでしょうか。悪趣味血飛沫ドバーのB級ゾンビ映画を連続3本観て「まだねむくならねーよ！」というときにこれを観たら、落差ショックで快感を得られるかもです。そういう見方をすればけっこう楽しめるんじゃないですか。

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