映画|ドリー・デッドリー|Dolly Deadly
人形大好き坊やの脳内から噴出する映像を見よ!ジャスティン・ムーア、キンバリー・ウェスト=キャロル。監督ハイディ・ムーア。2016年。アメリカ。
汚いトレイラーハウス。
そこはかなとなく『ピンク・フラミンゴ』な風景だが、最初にいっちゃうと、ゆるーくオマージュしています。
トレイラーハウスに住んでいるのは人形好きのママとかわいい赤ちゃん。ママはタバコをぷかぷか吸って、赤ん坊にドリトス食わせて、頭をブリーチし始めたら、やにわ、頭から大流血!
ママ死亡。
残った赤ちゃんはベンジーちゃんというのだが、彼はおばあちゃんに引き取られ、そこで第二の人生を送るのである。
ベンジー少年期。
おばあちゃん(というほど年食ってない)の家での生活はヒデーもんである。ママの血統を正しく受け継いだベンジー少年は、寝ても覚めてもお人形が大好き。こんな子供は「オカマ子供!」と後ろ指を指されるのが必然。どこにいってもいぢめられる。
家に帰れば、おばあちゃんから「お前のカーちゃんも変人だった」と小言を言われ、おばあちゃんの恋人男から「男ならエロ本を見ろ!」と汚い本を押し付けられる。田岡組長(山口組)の少年期も辛かったそうだが、ベンジー少年が舐めた辛酸も並大抵ではない。
少年は辛い日々を送るうち、逃避が日常的になる。どんなに辛くても、目をつぶれば優しいママが出てきて、おいしいものをたくさん食わせてくれる。優しく抱きしめてくれる。それで十分ではないか。目を開けている間は、お人形だけを見ていればいい。殴られようが、からかわれようが、要は、スルーすればいいのだ。想像の世界は無限に自由。幸せー。
ベンジーは狂う。狂う狂う狂う狂う狂う。最後に彼はドエライことをやらかす。
というお話は、人形ホラーにマイケル・マイヤーズ風味を振りかけたホラー映画です。グロくて、カラフルで、かわいい映像が持ち味です。独自の色彩感覚がぐわーんと迫ってきて、狂少年の脳内世界があなたの目前にめくるめく。インディーズ魂炸裂です。カラフル人形風景を見て、懐かしい少年の記憶に浸ろう。
トレイラー動画
素晴らしいトレイラー
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感想
これはアタリである。上のトレイラーを見てグッときたら、迷わずチェックしてください。
『Dolly Deadly (2016)』は今年8月にリリースされて以来、(私の周りだけなのかもしれないが)メキメキと人気急上昇で、悪い感想をいっぺんも聞いたことがなく、誰も彼もが「おもしろい!」っていう。私も見てみた。
主演のベンジーちゃんを演じたのは、ハイディ・ムーア(Heidi Moore)監督の息子で、ジャスティン・ムーア(Justin Moore)というのだが、彼の演技/存在感は素晴らしい。ロブ・ゾンビの『ハロウィン (2007)』に出ていたダエグ・フェアーク(Daeg Faerch)並のインパクトだった。これが俳優デビューなんてすごいね。よほどママがうまく導いたのだろう。
映画を見終えてから、みなさんのレビューを読んだ。どれを読んでも賛辞が並んでいるが、ひとつ疑問に思うことがある。『シュールレアリズム』だの、『想像の世界』だのといった、現実と乖離している世界を描いているような紹介文が多いのだ。これは私には不思議だ。なぜなら、この映画の風景は極めて現実的であるように思えたからだ。子供の頃って、こんな風に世界を見ていたような気がする。だからぜんぜんシュールじゃないヨ!と思うのは私だけなのかな。
倉林さんにも見せて感想を訊いたら、彼もすごく気に入ったみたいだが、いくつかのシーンが「ちょっとなあ」ということであった。でも、その彼もベンジー少年の素晴らしさについては、完全同意であった。私はこの映画を全面的に好きである。よほど個人的な好みに合致しているのだろう。こういうのは珍しい。
見ている間にいろんな想像が湧いた。チャールズ・バンドはきっとこんな子供時代を過ごしたのではないか。彼の場合は、人生の一時期に、映画作家になるきっかけを得、人形好きが嵩じて『パペットマスターや『ドールズ』を作り、殺人者にならずに済んだのかな。ベンジー少年の場合、誰も手を差し伸べてくれなかったものだから、こうなっちゃったのかね。人生は紙一重である。なんて思った。
監督のハイディさんはチャット好きである。上に書いたような感想を直接いったら(fbのチャットで)、喜んで聞いてくれた。以下は彼女が私に述べた言葉である↓
Heidi Moore: I like to hear how people interpret and view the movie. I like your thoughts on it.
「私は人々が映画をどんな風に解釈するのかを聞くのが好きです。あなたの考えはいいです」
Heidi Moore: Kids do see things very different. That's something I wanted to portray.
「子供たちが見ている世界は、大人の見ているものとはすごく異なります。私はそれを表現したかったです」
Heidi Moore: I wanted to leave things open for interpretation. So I'm always happy to hear what people make of it. Honestly it's the most understood by artists and writers.
「私は観客が解釈するままに任せます。彼らの話を聞くのは楽しい。世のアーティストやライターたちもみんなその点では同じでしょう」
ハイディさんはすごく美人だ。『ピンク・フラミンゴ』のミンク・ストールにちょっと似てる。こんなきれーなママが、自分の子供をキャスティングし、こんな映画をつくったのかーという点を知るだけでもおもしろい。この映画を観ると、この台詞が思い出されて、元気が湧いてきます↓
The Filthiest Person Alive!
「生きてる!」ってかんじがするから好きだ。
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