映画|ベルリン・オブ・ザ・デッド|Rammbock
白目を剥いたおばあさんがガオーと出てきてウギャー。小さなアパートを舞台にした低予算のゾンビ映画。ドイツの新作ホラー。ミシェル・フイス、テオ・トレプス。監督マーヴィン・クレン。2010年。
ここはドイツのベルリン。
どっかのアパートに「すっかり人生に疲れました」という顔つきの男(ミシェル・フイス)がやってくる。彼は遠距離恋愛をやっていた恋人から一方的に別れを宣言されたんだが、あきらめきれないもんで、はるばるウィーンからやってきたのであった。
「部屋の合鍵を返しにきただけ」とかいってるが、それにかこつけて強引に話をして、あわよくば相手の気を変えさせたい!ぼくを捨てないで!と未練タラタラなのがミエミエである。
彼は思い詰めた表情で階段を上がっていくのであるが、アパートの廊下でやにわゾンビに襲われておったまげる。たまたまそこにいた少年(テオ・トレプス)といっしょにひーこら走って、恋人の部屋に逃げ込んだ。ふう。
「なんだあのキチガイは!?警察呼ばなくちゃ!」とかいいつつ、あたりを見たら、部屋に彼女の姿はない。外出中だろうか。
男と少年は部屋に閉じ込められる。廊下にはゾンビが動く気配がしてドアを開けられない。窓から外を眺めたら、狂ったゾンビたちがガガーと走り回り、女性が襲われるのが見えた。
このアパートは、小さな中庭を囲む、コの字型のつくりになっているので、住人同士は窓から顔を合わせて話ができるのだが、何人かのひとたちもびっくりして下のようすを見ていた。襲われた女性はだれかの家族らしい。
やがてラジオで真相が明かされる。ドイツじゅうにゾンビウィルスが広まってえらいことになってるそうで、もはや無政府状態であるからして、警察なんかアテにならないので、住人たちは必死でジタバタしてどーのこーのといういつもの展開になります。
ラジオ放送の内容によれば、このゾンビウィルスは、体内のアドレナリンに反応して人間を狂人化させるそうな。だから、もし感染してしまったら、睡眠薬(あるいは鎮静剤かな。詳しい薬の名前の明かされなかった)を服用し、気持ちを落ち着かせていれば、ギリギリ危険は回避されるらしい。といっても、興奮しただけでガガーとなっちゃうわけだから、効果てきめんとはいえないんだが。
部屋にたてこもる男と少年はピンチ脱出できるんでしょうか。また、男が愛する恋人女はどこにいったのでしょうか。
トレイラー動画
トレイラーだけ見ると『REC/レック (2007)』ぽいかんじがしますけど、あれとはまた少しちがってておもしろいですよ。
日本では12月3日にレンタル開始
私が見たのはUK版で『Siege of the Dead』というローカル題になっています。原題は『Rammbock』。
んで、この映画は『ベルリン・オブ・ザ・デッド』という邦題で日本版DVDレンタル開始予定↓
てことなんだけど、アマゾンやallcinemaにはまだ載っていなかった。なんで?よくわからない。そのうちセル版も出るのかな。
上にリンクしたTSUTAYAのページによれば、レンタル予約を受け付けてるそうなので、興味のあるひとは登録してみたらいかが?
感想
言い訳。私、ドイツ語はサッパリなので英語字幕で観たんですが、これの翻訳がかなりいいかげんぽいなと思えたので、もしかして、細かいところが違ってるかもです。だいたい合ってると思うんですけど。。
さて、感想ですが、この映画はamazon.co.ukのユーザーレビューの他、各レビューサイトで評判がいいので、どんなもんかえと観てみました。低予算の地味地味映画なので、グログロ派手なゾンビ大戦を期待するとハズすでしょうが、なかなかおもしろかったです。先日レビューをアプした『コリン LOVE OF THE DEAD (2008)』と並んで、インディーズ魂を感じさせる力作。
小さなアパートの敷地内だけで進行するこじんまりとした内容で、設定もよくやるヤツなんだけど、いくつかの独自性があります。
この映画では、人間たちはほとんどゾンビと闘いません。えええええええええ!?いやほんと、まぢで。逃げ回るのがメインです。ドッジボール感覚。銃は出てこないし、なにかでブン殴るシーンがちょっとあっただけ。だいたいからして、メンツの中にタフガイキャラがひとりもいないのです。兵士もポリスもいない。変わってるでしょう???
闘わずにどうするかっていうと、ある手法でゾンビの弱点を突いて、ヤツラをびっくらこかせて、ひーこら逃げるのです。舞の海のネコだましみたいなもんですか。意外にこれがスリリングなんですよ。ほんとにほんとに。
主演のフラレ男のお話が中心なんだが、彼はじつにパッとしないビジュアルなのです。アクション映画の主役とは思えない!これですから↓
後ろ姿はこれ↓
いやー、見るからに幸運から見放された顔をしています。もうね、幸が薄い、というより、幸がない、といったほうが正しいかもしれない。こういうのよくあるじゃないですか↓
田舎で幸せイッパイにやってたカップルがいて、ふたりは大ハッピーだったが、進学か就職の都合で、女は都会にいく決心をする。男は泣いて止めるんだが、女は「あたしを信じて待っていてほしい」とかいうんだが、新生活を始めたイモ娘はすぐに都会で知り合った男とデキちゃう。田舎の男は電話一本で捨てられる。みたいな。
いまどきこんなメロドラマは映画のネタにもならないベタ話ですが、それをまぢにやってるんですね。だから、ある意味、新鮮です。不幸男はどんどん不幸になって、最後には哀れな結末に落ちます。あー、でも彼にとっては、あれは喜びだったのかもしれないなあという気もする。
一方、たまたまそこにいたというだけで男とコンビになった少年は、幼さと男らしさが同居しているような、思春期特有の瑞々しいかんじがあって、これが人生にくたびれたフラレ男といっしょにいると、えもいわれぬコントラストを醸しています。「おじさん、口が臭いよ」とかいわれるし。
少年はピンチになっても黙々と行動します。まだ少年なので力では大人に勝てないけど、冷静さでピンチを切り抜ける。だから、パニクる大人たちよりも大人びて見える。
こういう男の子はモテそうだなと思ったら、やっぱりアパート住人のカワイコちゃんに「さむいでしょ?」つってマフラーをもらえたりする。マフラーなんてこれまたベタな演出ですが。昭和の青春ドラマみたい。クサいけどまぁいいですよ。
マフラーもらって、首に巻いて、恥ずかしげに「ありがと」っていうのが、これまたモテ男っぽい。あっちでうだうだやってるフラレ男がますますくたびれて見える。人生は非情ですなあ。
でもこの少年も年を食ったら、いつかはどんよりした顔になっちゃうのかもしれないなあ。てか、このフラレ男も昔はこの少年みたいな顔してたのかもしれないなあ。と思いつつ、鑑賞しました。
このふたりの対比というものがこの映画のキモなんじゃないですか。私はそのように解釈をしました。そのような視点でこの映画の結末を見ると「ドラマだなあ」とかんじられます。
ふたりが力を合わせて部屋の壁をブッ壊すシーン。男が「アホみたいに思えるだろうが、おれ、こういうのやってみたかったんだよね」つって、それを聞いた少年がニヤリと笑って記念写真を撮ってあげるという演出がありましたけど、あれ、とてもよかったですね。
フラレ男はこの少年を見て「おれも昔はこんな顔だったかなあ」と思ってたのかもしれない。また、少年のほうは「けったいなオッサンだな!」とコバカにしつつ、気の毒がっている風でもある。ふたりの微妙な距離感というものがサラリと表現されていました。
なかなかおもしろい。ちょっと変わってて、キャラ設定がユニークなゾンビ映画でした。アクションも(低予算ながら)なかなかのもんですし、みんなにおすすめしたい!
テオ・トレプスは『白いリボン』にも出ていたよ
余談ですが、少年を演じたテオ・トレプスは、ミヒャエル・ハネケの新作『白いリボン』にも出ていました。チョイ役ですが。彼は演技派だと思う。こちらはじつに重々しい映画で、ハネケ的なえげつないシーンが印象的だったですが、とにかく長ったらしいのでつまらないと思うひとも多いだろうけど、私は好きですよ。
こちらもレビューを書きたいと思ってるんですが、いつかハネケの映画のレビューをまとめて書きたいなあと思ってて、まとめてアプしたいなと考えつつ、延び延びになっちゃってます。以前DVDをぜんぶ買ったんですけど、観てないヤツがけっこうある。
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Rammbock: Berlin Undead | |
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『ベルリン・オブ・ザ・デッド』 | |
2010年 | |
ドイツ/オーストリア | |
2010年1月19日 (ドイツ) (Max Ophüls Festival) 2010年4月14日 (ドイツ) (Achtung Berlin) 2010年9月 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest) 2010年9月7日 (フランス) (L'Étrange Festival) 2010年9月9日 (ドイツ) 2010年9月10日 (オーストリア) 2010年9月15日 (フランス) (Strasbourg European Fantastic Film Festival) 2010年10月25日 (イギリス) (DVD) 2010年11月6日 (スペイン) (Festival de Cine de Terror de Molins de Rei) 2011年4月8日 (フランス) (Rencontres du moyen métrage de Brive) 2011年5月4日 (アメリカ) | |
imdb.com :: Rammbock: Berlin Undead |
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- Arno Kölker :: アルノ・コーカー [imdb] (Handwerker)
- Steffen Münster :: ステファン・ミュンスター [imdb] (Klaus)
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- Wolfgang Stegemann :: ウォルフガング・ステーゲマン [imdb] (Polizist)
- Theo Trebs :: テオ・トレプス [imdb] (Harper)
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ベルリン・オブ・ザ・デッド / 83点 / RAMMBOCK - ゆるーく映画好きなんす!
ぱちもんオブザデッドと侮る無かれ!泣き系ゾンビ映画の傑作かも!? 『 ベルリン・オブ・ザ・デッド / 83点 / RAMMBOCK 』 2010年 ドイツ 59分 監督: マーヴィン・クレン 脚本: ベンジャミン・ヘスラー 出演: ミシェル・フイス 、テオ・ターブス 、アン
2010/12/6, 5:33 PM