2010/11/22 (Mon) at 8:32 pm

映画|サンドマン|S&Man (Sandman)

悪趣味全開スナッフ風の、インディーズホラー映画のクリエイターたちを取材したドキュメンタリ映画。に見せかけたモキュメンタリ映画。Erik Marcisakフレッド・ヴォーゲル、ビル・ゼバブ。監督J・T・ペティ。2006年。

サンドマン / S&Man (Sandman) DVDDVD画像

ホラー映画監督のJ・T・ペティは、HDNetから予算をもらって、実在する盗撮犯罪者を取材してドキュメンタリ映画をつくろうとしたんだが、当の盗撮犯罪者に出演拒否されたもんで、「他のネタはないかなー」つって、アンダーグラウンドなホラー関係者たちが集まるChiller Conventionにいく。彼はそこで3人のホラー映画監督に出会い、インタビュー取材を始める。

J.T. Petty: I make my living making scary movies, but this is going to be about scary movies.

その3人てのは、いずれも、低予算ホラーインディーズのつわものであり、世間の鼻つまみ者であり、世の識者からは「どうしたらこんな不健康な映画をつくれるのか!あんたら、死んでちょうだいザマス!」と総スカン状態の、真性の、好事家向けの、イロモノ残虐悪趣味ゴア映画ばかりつくっているみなさんである。

フレッド・ヴォーゲル(Fred Vogel)は『August Underground』で知られるToeTag Picturesのプロデューサー/監督/俳優。同シリーズはホームビデオ風の映像の、残虐ゴア満載の、チシブキあり、チンコあり、マンコあり、ゲロあり、ウンコありの感性豊かなキチガイ表現力に富んでおり「物語性なんかへったくれもないですよ」の作風がウリである。

余談だが、ここのDVDを通販で注文すると、頼みもしないのにサインつきのDVDが送ってもらえることが多い。『限りなくスナッフフィルムみたいな映画』だが、彼らの作品の中には、まぢにリストカットする女も出てきたりして、写実性へのこだわりはなかなかのもんである。

ビル・ゼバブ(Bill Zebub)は下品かつ残虐なレイプものばかり撮ってる監督さん。ことごとくゴミ映画をリリースするという点で、他の追随を許さないインディーズホラー監督である。見ればわかるが、とにかくヒデー。私はぜんぶは見てないが『The Worst Horror Movie Ever Made』がおそらく唯一の傑作なんじゃないかなと思う。こちらのレビューには「トロマが『ホテル・ニューハンプシャー』を映画化してできあがった失敗作みたいな映画」と書かれてある。うまいこというなー。

※すません。ちょと追記。「とにかくヒデー」と書いたが「残虐さがヒデー」という意味でなく「映画の出来がヒデー」という意味なんですよ。ほんとにゴミ映画なの。へんに期待しちゃう人がいるかもしれんので、いちおう書いときます。追記以上。

さて、最後の3人目はエリック・ロスト(Eric Rost)という新人さん。彼は、ひとりでコンベンション会場をうろつき回り、自身がつくったというホラー映画『S&Man』のDVDを売っていたところで、J・T・ペティと知り合った。『S&Man』と書いて『Sandman』と読むんだそうである。

『S&Man』は14のエピソードからなる連作で、ストーキングテーマのホラー映画だそうな。毎回違った女が出てきて、キラー視点のカメラが女をストーキングする。最後はキラーが女をブッ殺す。そんだけ。という内容をうれしげに説明するエリックてのは、デブのキモオタ男である。

「スナッフ?ソレぽいシーンもありますヨ。ほんとに殺しちゃってますから。えへへ」

とニタニタ笑いをする男に、J・T・ペティは多大な関心を示す。ドキュメンタリの意図を話し、出演依頼をした。エリックは取材なんか受けたことがなさそうな貧乏監督であるからして、ふたつ返事でオッケー。彼は注目されてうれしそうである。

という3人のインディーズ監督と、B級絶叫女優デビー・Dのインタビュー映像、ホラー映画評論家の大学教授Carol J. Cloverによるホラー批評、サイコロジストによる性的倒錯者の心理に関するお話なども交えつつ、『アンダーグラウンドなホラー映画制作者たちの深層』に迫るドキュメンタリ。

てことなんだが、じつはこのなかに、ひとりだけニセモノがまじってるんですよ。虚と実が入り組んだつくりのモキュメンタリ映画。

トレイラー動画

S&Man (Sandman) (2006) trailer

感想

「ウソがうまいひとは、真実をべらべらしゃべって、ウソをそのなかに混ぜることに長けている」とよくいいますが、まさにそういうかんじのモキュメンタリ映画。すごくじょうずにつくってある。びっくりした。

フェイクといっても、ニセモノ以外はすべて実在する人物であり、彼らは聞かれたことに対して本気でしゃべってるのです。真実のすぐ隣にウソが潜んでいるという、不思議なつくりなんですね。アイデア心にあふれた新種のモキュメンタリ手法といえるんじゃないかな。

さて、ニセモノはだれかというと、3人目のエリックさんです。という点は、映画のタイトルにもあることだし、見てりゃわかるし、ネタバレしちゃっていいかなと思う。てか、これは「えー、こいつはニセだったのか!」というオチで驚く映画ではなく、エリックだけがニセモノだという点を知りつつ観るのがおもしろいのです。

最初のへんはこんなかんじ↓

「女の子をストーキングする映画?」「そうですよ。ストーキングはスクリーンテストみたいなもんです」「ソレって相手のオッケーをもらうわけ?」「いや、もらいません」「ちょ、やばくないすか?」「ま、そこらへんはてきとうに(ニタニタ)」「ほんとにストーキングするんだ?」「ですね。でも、時期が来たら撮影の許可をもらいます。そのあと、殺すシーンを撮影します」「ふうん(キチガイを見る目)」

こんなきもちわりーヤツなんだけど、その先はもっときもちわるいです。「エリックはガチにスナッフをつくっているのかな。ほんとにヤバいひとなのかな」という疑問を提出しつつ映画は進むんだけど、彼だけを特別扱いしているわけでなく、みなさんが代わる代わる出てくる手法はオーソドックスなドキュメンタリのつくりです。エリックが主役でなく『インディーズホラーの深部を赤裸々に知る』というのがテーマですから。嘘と本物が混ざり合って進行するのがうまいところ。

キャスティングがとてもいい。エリックという架空キャラを浮上させるための装置として他のみなさんがいるんだけど、彼らは真実の言葉でしゃべってるから、その部分だけ観れば本式のドキュメンタリ映画になっています。特にフレッド・ヴォーゲルのナマっぷりがよかった。彼のファンは大いに楽しめるでしょう。

エリックとエリック以外のみなさんは『虚と実』の対比なんだが、後半になると、嘘と真実、すなわち、『ホラー映画とスナッフフィルム』という構造テーマにつながって連想されるのです。そしてラストに落ちます。

なかなかおもしろい。

映画の中で出てくる映画

この映画の中では以下のホラー映画の映像が引用されています↓

  • Execution of a Spy (1900)
  • Execution of Czolgosz with Panorama of Auburn Prison (1901)
  • Electrocuting an Elephant (1903)
  • Peeping Tom (1960)
  • The Texas Chain Saw Massacre (1974)
  • Halloween (1978)
  • Henry: Portrait of a Serial Killer (1986)
  • August Underground (2001)
  • Soft for Digging (2001)
  • August Underground's Mordum (2003)
  • Jesus Christ: Serial Rapist (2004)
  • Kill the Scream Queen (2004)
  • The Worst Horror Movie Ever Made (2005)

またエリックの部屋のシーンでは、壁に三池監督の『オーディション』のポスターが貼ってあったよ。

DVDのExtra

オマケもいろいろあるよ↓

  • Audio Commentary with Director JT Petty and Erik Marcisak
  • Audio Commentary with Director JT Petty and Eric Rost
  • The Complete "S&Man" Episode 11
  • Deleted and Extended Scenes
  • Underground Film Clips
  • "S&Man" Film Trailers - Additional Eric Rost Films

この映画は悪趣味インディーズホラー好きな方にはかなりオススメです。でも英語字幕ないんで、聞き取りオッケーな方のみ↓

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原題: S&Man
別題: Sandman
制作年: 2006年
制作国: アメリカ
公開日: 2006年3月10日 (アメリカ) (South by Southwest Film Festival)
2006年9月13日 (カナダ) (Toronto International Film Festival)
2009年11月29日 (アメリカ) (New York City, New York)
2010年10月12日 (アメリカ) (DVD & Blu-ray発売)
imdb.com: imdb.com :: S&Man
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