映画|House with 100 Eyes
『ゾンビ・ストリッパーズ (2008)』『Alyce Kills (2011)』のジェイ・リー監督の新作は、スナッフフィルムをつくる自称芸術家インディーズ夫婦が出てくるモキュメンタリのホラー映画。ジム・ルーフ、シャノン・マローン。監督ジェイ・リー、ジム・ルーフ。2011年。
冒頭に但し書きが出る。こんなの↓
「2000年。ドキュメンタリ映画作家のジェイ・リーの元に差出人不明の小包が送られてきた。その中には、58本のビデオテープ及びDVDが入っており、衝撃的な映像が含まれていたが、当局は『これはつくりものである』と断定した。しかし、我々はこれは本物であると信じている。いまからあなたがご覧になる映像はそれらを編集したものだ。真のスナッフフィルムです。ジャジャーン!」
というわけで、この映画はモキュメンタリです。
ここはLA。
エド(ジム・ルーフ)とスーザン(シャノン・マローン)はインディーズ映画をつくる仲良し夫婦。まずはふたりが出てきて自己紹介する。「わたしらの作品はすごいんですよ。アーティストなんだから。ほんとまぢで。わっはっはー」とかいう。
夫婦の仲良しぶりはほほえましく、30年前のうつみ宮土理と愛川欽也のようである。自分らの夢についてうれしそうにしゃべる様子は、ごく普通のインディーズ夫婦ってかんじ。殺人コンビなんだが。
彼らは街に出て、標的を探す。彼らが探しているのは、3人組(男1女2)。3P映像を撮りたいから。LAは大都会なので、家出娘とかへんなひとたちが大勢いるので、その中から見てくれのいいやつらを選んで、声をかける。
「おーい。君たち。僕たちの映画に出てくれませんか。ポルノなんですけど、ギャラはいいですよ。まずは話を聞いてください。話を聞いてくれるだけで、ひとり50ドルづつ払いましょう」
てなことをいう。まずはハリウッド周辺を流して、夢見る田舎者を探したが、初日は失敗に終わる。3Pてのがひっかかるんですね。努力家である彼らはメゲずにダウンタウンに移動。どうにか犠牲者トリオをだまくらかして、家に連れてくる。
典型的な家出娘風のネーチャンふたり(Larissa Lynch + Liz Burghdorf)と、これまた家出少年風のアンちゃん(Andrew Hopper)である。男はどうでもいいが、気になるのはネーチャンたちの外観。ひとりはカワイコちゃんだが、もうひとりは地味デブなので、「ちょっとなー」とかいうが、まぁこの際しょうがないですね。
やがて夫婦の真の意図を知ったトリオは青くなって逃げ回る。でも家の中は逃亡防止の措置が講じられているから、容易には逃げ出せません。かわいそうなデブ娘は拷問イスに縛りつけられ、痛いことをされる。きゃー。やめてー。誰にもいいませんから逃がしてー。
「おまえらはいつも同じことをいうからつまらん。誰にもいわないだの、妻がいるだの、家族がいるだの、そういう台詞は聞き飽きた。あのなー。くだらんおしゃべりはせんでもいいから、イイ悲鳴をあげろ!このド阿呆!」
こんな調子でひとりづつ、ブッ殺されていくのかと思ったら、クライマックスになったら、犠牲者娘がドえらい反撃に出る。ははははははは。
Jamie: Don't tell me! Tell the camera!
トレイラー動画
House with 100 Eyes (2011) trailer
感想
I made mistake with the title when I tweeted. HOUSE WITH 100 EYES is correct. Sorry.
まずはお詫びだが、twitterの以下のポストでタイトルを間違えてしまった。正しくは『HOUSE WITH 100 EYES』です。すません。
『ゾンビストリッパーズ』『Alyce Kills』のJay Lee監督のHOUSE OF 100 EYESはよかった。スナッフを撮るキチガイカップルが出てくるモキュメンタリ映画です。ゴア描写もいいが、先が読めない展開がおもしろい。 pic.twitter.com/kvDW5gE5lF
— Hiro Fujii (@horrorshox) July 8, 2015
HOUSE OF 100 EYES was truly impressive! Another gem of Jay Lee. Just remind you he's the one who created ZOMBIE STRIPPERS and ALYCE KILLS.
— Hiro Fujii (@horrorshox) July 8, 2015
キチガイスナッフ監督のお言葉 -> "Don't say anything. Just scream."「なんにもいわなくていいから悲鳴をあげてくれ」いい台詞だなー。
— Hiro Fujii (@horrorshox) July 7, 2015
Watching #TheHouseWith100Eyes. It's about a couple who shoot a snuff film. @i_am_summerj & @frestyl popped up in my mind. They do films too.
— Hiro Fujii (@horrorshox) July 7, 2015
この映画は2012年くらいに完成し、いろんなホラー映画祭で評判になっていたが、DVDが出るのにえらく時間がかかった。私もずいぶん待ちくたびれていたが、先月やっとArtsploitation FilmsからDVDが出た。
「こんなに遅れるってことは相当にヤバいのかね。むちゃくちゃなことをやってるのかね」と想像していたが、見てみたら、期待していた内容とはずいぶん違っていた。
確かにヒデーゴアゴアはあるけれども(特殊メイクはよくできている)、この映画の見どころは、倫理に反する残虐表現というよりはむしろ、キャラクター表現のおもしろさにある。一心不乱にスナッフをつくりたがる夫婦の挙動を見物していると、おかしくてたまらない。残虐なホラー映画であるにもかかわらず、緊張の絶頂においてなお、クスリと笑える妙がある。
エドとスーザンはうれしそうに出てきて、無邪気にイチャイチャする。ところが、映画の後半になると、夫エドのおもしろキャラが炸裂してくるのだ。すぐにかんしゃくを起こして、キーキー怒る。妻スーザンはそんな夫の扱いを心得ており、「落ち着いてダーリンわたしがわるいの許して頂戴」とかいう。その度にエドの怒気は静まるが、こんどは別のことが起きて、妻が怒る番になり、彼女は涙目で夫の貞操を疑いだす。この場面はなんべん見ても笑える↓
Susan: Ed. You can't just... we're married!
「エド。そんなのいけないわ。わたしたち、結婚しているのよ」
キチガイ殺人者でもそんなことを気にするのか。ははははは。
最後は血塗れグチャグチャの夫婦喧嘩に突入。そうくるか。
私は子供の頃に敏江玲児が大好きだったが、どこで聞いたか忘れてしまったが、正司敏江は毎度毎度ズダーンとブッ叩かれて舞台の床をダイブするというのを繰り返していたらば、マンコの毛がツルツルになったそうである。という話はギャグのようだが、当時の強烈な芸を思い返すに、つくり話ではないような気もする。
『House with 100 Eyes (2011)』の夫婦演技は往年の敏江玲児を彷彿とさせるものであった。さらにおもしろいのが反撃ネーチャンの巻き返しである。あれは痛快だった。この台詞はイイネー↓
Jamie: Don't tell me! Tell the camera!
エドを演じたジム・ルーフさん(この映画の脚本家であり、ジェイ・リーと並んで共同監督でもある)に訊いたら、彼らはこの映画を演劇のように考えて、周到にリハーサルを繰り返して撮影したそうな↓
@horrorshox You're too kind! My wife (Shannon/Susan) and I treated it like a play, rehearsing everything beforehand. It was a blast!
— Jim Roof (@JimRoof) July 8, 2015
たしかに、そのような手づくり感というか、あれこれ考えて演出を練ったのだろうというのが、映像から伝わってくる。
私はジェイ・リー監督の『Alyce Kills (2011)』が好きで、中でも、タマラ・フェルドマンのヌレヌレマンコ音頭を歌う場面がとても好きだ。この監督はいつもチョイ外してくるんだよね。普通のホラー監督がやらないことをやる。お笑いとシリアスの中間地点を絶妙に攻めてくる。わざと急所を外して、わざと死を遅らせて、「苦しめ苦しめもっと苦しめ!」と拷問する猟奇者のような嫌らしさがあり、そこに独特のユーモアが匂い立つ。好きな人にしかわからないと思うけど。
と、賞賛レビューになったが、一点のみ不満がある。この映画の中には、キャタピラ娘が出てくるが(四肢切断された女)、この女は大昔に拉致されて、手足をチョン切られ、いまはキチガイ夫婦のペットのように飼われているということだが、江戸川乱歩風味のよいキャラであるにも関わらず、お飾り程度の扱いで、あまり物語に絡んでこない。あれをもっと積極的に活用し、彼女が思いもよらない方法でピンチ脱出の糸口を開く、なんていうのがあったらよかったのにと思った。
最近話題の〇〇でも思ったが(ネタバレになるので題は伏せとく)、この映画に限らず、総じて、西洋人は『四肢切断人間』の描写が淡白であるように感じられる。単に切断された肉体を出していれば、そこに猟奇的な雰囲気が出ると考えているように思われ、単にお飾りとして出しているように見え、だが、日本人は江戸川乱歩を始めとしこの手のものに馴れているので、ただそれを見せるだけはグッとこないんだよね。その種の人たちのひねくれた感情とかさ、痛々しさとかさ、絶望感とかさ、そんなありようを見せてくれと思う。
US版DVDが発売中
DVDのオマケはこれだけ↓
- Director Commentary
- Ed's Studio Red Gag Reel
- Ed's Studio Red Sizzle Reel
- Trailer
- Artsploitation Trailers
- Hidden In The Woods
- Horror Stories
- Memory Of The Dead
- Wither
『Ed's Studio Red Gag Reel』と『Ed's Studio Red Sizzle Reel』は共にギャグリールや削除シーン等が入っていて、けっこうおもしろい。エドとスーザンの結婚式ビデオもある。両方合わせて10分くらい。
映画本編は英語字幕つき↓
Release Date: 2015-06-16
Studio: Artsploitation Films
Run Time: 80 minutes
Language: English
Region: Region 1
Rated: Unrated
Number of discs: 1
Best Sellers Rank: 10,449
English Review
It took a couple of years until House with 100 Eyes gets DVD release. I have been waiting for this since I read the review written by someone who saw it at the film festival. Now thanks to Artsploitation Films, it is finally out.
After watching it, I just thought, "it is so Jay Lee! Love it!" There're a lot of dark and malicious humor in the dialogues entirely, which is why I love his films. Needless to say the film belongs to the terrifying horror category. A crazy couple who enjoy shooting snuff films kidnap innocent people. They torture them and kill them. Definitely horrible, shocking and disturbing. Gory effect is superb and it looks so real. But weird thing is... I cannot explain to myself but... it is laughable! Ha!
The characters are well developed. There were a lot of memorable quotes. My most favorite is Ed played by Jim Roof who's also the writer and the co-director of this film. His acting was so funny. In the very beginning, he looked like a likable character to me (even though he's a sick fuck killer) but later on, I started to wonder how this guy is short-tempered and stupid. Often childish. Susan is also funny. They make great duo of a killer couple. The twisted ending was intense and totally unexpected.
I really enjoyed the film but there's one thing I assume there might be a little flaw. That is about the girl in the cage. I feel it could be better if she could be more and more involved with the story. To my eyes, she looked like just a decor to convey the atmosphere (kind of controversial feeling). I wanted to know more detail how she survived. How she feels inside deeply.
Thank you for reading!
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2011年 | |
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