!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
本ページは『映画|サンドマン|S&Man (Sandman)』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓
ネタバレあらすじ
J・T・ペティの少年時代を回想するナレーションから始まる。
1990年当時、彼はワシントンDC郊外の家に住んでいたんだが、その近所で覗き盗撮の容疑で変態男が逮捕されるという事件があった。警察は彼の家から191本のVHSテープを押収した。が、犯人は罪に問われなかった。盗撮された住民たちは証拠物である映像が明るみに出ることを好ましく思わなかったので、コミュニティはそのように結論したのである。よって犯人男は釈放された。
そしていまは2005年。
J・T・ペティはHDNetから予算をもらえてドキュメンタリ映画をつくることになった。彼は少年時代の事件を思い出し、盗撮男にインタビューをしようと思ったんだが、途中で彼が出演することを拒んだのでこの企画はパーになった。
ホラー映画評論家の大学教授Carol J. Cloverが登場。彼女は『Peeping Tom (1960)』『The Texas Chain Saw Massacre (1974)』『Halloween (1978)』『Henry: Portrait of a Serial Killer (1986)』といったカルト映画を例に出し、現代のホラー映画全般について意見を述べる。
このシーンはそう大したことはしゃべっていないが、これがあるゆえに「本式のドキュメンタリ映画なんですよ」という印象を与える効果があるから、この導入はよいのではないか。
J・T・ペティはドキュメンタリのネタを求めてChiller Conventionにいく。そこで、フレッド・ヴォーゲル、ビル・ゼバブ、エリック・ロストという3人の監督に出会ったのは上に書いた通り。彼は取材を始める。
エリックは『S&Man』ていうストーキングテーマのインディーズホラーをつくっていて、この映画のなかで唯一の架空キャラである。J・T・ペティは何度も彼に会ってインタビューをする。『S&Man』の映像も出てくる。
エリックはストーキングをやりつつ、トイレに侵入し、髪の毛やら使用済みナプキンを盗んだりする。それらの戦利品をソフビ人形に仕込んでヴードゥー儀式みたいなのをやる。それが女を社会から抹殺する儀式ってことらしい。そして最後に女をブッ殺す。そういうのがぜんぶで14エピソードある。
てことなんだが、J・T・ペティは彼としゃべるのがだんだんいやになってくる。嘘くさいというか、うさんくさいヤツだから。が、逆に、エリックの方はノリノリになってきて「新作を見てください!」つって、DVDを持ってくる。ここらへん、この男のキャラはかなりうざい。朝めしをいっしょに食って「ぼくは、払わなくていいですよね」とかいう。
J・T・ペティは「いちど君が撮影しているところを見せてくれないか?」と頼んでみる。エリックは「それはだめ」と拒否するんだが、ここで監督は強引なことをやる。いったんバイバイと別れておいて、その後、彼を尾行してその姿を隠し撮りするというのをやってみた(場所はNYの町中)。
エリックはすぐに気づいて走ってくる。顔をまっかにして「やめてくださいよ!そういうのぜったいだめ!だめだめ!」と怒った。
次のインタビューのシーンになると、きげんはなおってるみたい。彼は盗撮されたことでかなり腹を立てたんだが、インタビューされることは好きなのである。そこで監督はツッコミを入れてみる。
「きみはウソをついてるだろ?真実をしゃべってくれないとドキュメンタリはつくれないんだ!」と煽ってみた。したら、エリックはまたまたブチキレて「もういい!出てってくれ!ぼくに触るな!」と叫んで、監督とクルーを追い出した。エリックとの関係は切れてしまう。あー。
てのが、エリックのシーンだけの簡単なまとめなんだが、映画の中では他のみなさんのシーンもたくさんあって、入れ替わりに進行する。「エリックてのは大嘘つきか、あるいは、ガチにスナッフフィルムを撮影するキチガイなのか」という疑問を投げつつ、他のみなさんがエリックの挙動を肉付けするような台詞をしゃべる。
たとえば、フレッド・ヴォーゲルが、
Fred Vogel: Yeah, I do. I do enjoy playing the character. Bacause it's definitely my release. You know, I can get screaming, yelling, punching, being vicious as I can. I feel better after I'm done, you're a monster, you're actually alpha male, pretty much incontrol everything, very intense feeling.
「ぼかあ、キラーを演じることで、自分自身を解放している。女の悲鳴を聞き、怒鳴りつけ、ぶんなぐり、これでもかっちゅうほどの悪行をするのはほんとにきもちええ。モンスターになったきぶん。アルファなオスとしての征服欲が満たされる瞬間なのだ。もうたまらん!」
とうれしそうにしゃべったり、デビー・Dが「そういうのは人間の本質としてあるんじゃないかなとおもいますわ」といったり、インテリのホラー評論家が『August Underground』の映像を見て「こ、これは、わたしには見れません!限界ですわ!ひどいですわ!」と顔をしかめたり、サイコロジストが性的倒錯者の心理を解説したり、ビル・ゼバブが出てきて「変態ども!おれの映画でオナニーしてろ、ガハハ!」とカメラ目線でしゃべったりする。
上にも書いたけれど、嘘と真実の混ざり具合が巧妙につくられており、だからエリックという架空キャラが現実味を帯びてかんじられる。後半になると、インタビューの話題はスナッフフィルム一色になってくる。
そしてラスト。
J・T・ペティはもうエリックに連絡をしなかった。「もうアイツとはおしまい。もういいや。ほっとしたきぶんだ」と思ってたんだが、何ヶ月も経ったのち『S&Man』の最終エピソードを収めたDVDが送られてくる。
J・T・ペティによるナレーション↓
J.T. Petty: The audience that is watching a snuff movie doesn't question its reality. But when you watch a horror movie, you want it to be real. Because you know it's a fake.
「スナッフを見るひとは映像のリアルさに疑問を差し挟まないだろう。しかし、ホラー映画を観るひとはリアルであることを常に求める。なぜなら、彼らはそれがニセだと知っているから」
『S&Man』のepisode14のラストシーンの映像が出る。エリックが女を拉致監禁。泣きわめく女の首をナイフで切ってブッ殺す。
おしまい。
※ていうモキュメンタリ映画なんだけど、かなりハショり気味なんで、興味を持たれた方はぜひDVDをご覧ください。おもしろいよ。
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