2014/6/2 (Mon) at 9:04 pm

映画|ミスター・ジョーンズ|Mr. Jones

デヴィッド・リンチ・ミーツ・ラブクラフト!な夢世界を具現するホラー映画。ファウンドフッテージ。山で出会った謎の怪人芸術家ミスター・ジョーンズ。ジョン・フォスターサラ・ジョーンズ。監督カール・ミューラー。2013年。

ミスター・ジョーンズ / Mr. Jones DVDDVD画像

ここはどっかの山。

若いカップル(サラ・ジョーンズジョン・フォスター)がやってきて、ふたりきりの山小屋生活を始める。仕事やら友達やら一切合切を捨てて、自然の中で暮らそう。誰もが一度は思いつくそんな夢を彼らは実現した。

男は自然を題材にしたドキュメンタリ映画をつくりたい。女はフォトグラファーが本職だが、男のために自分のキャリアを捨て、この生活に飛び込んだ。

うきうきコンビは、最初のうちは「山の生活ってイイですねー。心が洗われるなー」とかいっていたんだが、50日を過ぎたあたりで様子がおかしくなる。

男が急に鬱の虫にとり憑かれ、「ぼくは映画を撮れない」といいだすものだから、女は「いったいどうしたのか」と彼の真意を問いただすけれども、まったく要領を得ない。映画を見ている私らにもその理由はさっぱりわからないが、ふたりが口論する中で次のようなやりとりがあったので↓

男「ここにきてから薬を飲むのをやめた」

女「えーっ!あなた、ちゃんとやるってわたしに約束したじゃない!」

男「ごめんよ。また明日話そう。もう寝る」

どうやらこの男にはなにか心の病気があったらしいが、詳しくは定かでない。ところが、そんな口論を吹き飛ばす一大事が、ふたりの身辺に持ち上がる。

それまでまったく気づかなかったが、彼らが住む山小屋の目と鼻の先に、じつは別の小屋があった。そこにはフード姿の怪人物が棲みついており、辺りを無言でうろつき回り、その姿はホームレスか、死神か、ナイアルラトホテップの化身のようである。でもフルートは持っていない。怪人物が棲む小屋の地下には、おどろおどろしいアトリエが存在し、奇妙な創作物の数々が秘匿されている。

動物の骨や枯れ木を複雑に組み合わせてつくられた作品群は、一言でいえば『カカシ』であるが、もっとこう、なにか、原始宗教的な背景を感じさせる突飛な創作物である。これを見た女は目を丸くし、それまでの口論なんか忘れて「ミスター・ジョーンズだ!大発見だ!」と大興奮するのである。

女はおめめきらきらになり、「いっしょにドキュメンタリをつくろう。あなたとわたしの視点を組み合わせたら、きっとすごいものができる。さぁ、はやく、NYにいって、ミスター・ジョーンズ関連の取材をするのよ。わたしはここに残るから。スゲー!」とかいう。男は「ヨッシャ、任せとけ」つって、カメラを持ってでかけていき、ミスター・ジョーンズ関連の研究者/体験者/美術館関係者/等にインタビュー取材を開始。

ミスター・ジョーンズ(Mr. Jones)とはナニモノであるか。

ミスター・ジョーンズは70年代からその存在が噂され続けた謎の芸術家に与えられた呼称である。彼はランダムに相手を選んで、自分がつくったカカシ作品を誰かに送る。受け取った方は巨大な贈り物にめんくらい、各人様々な反応を示すが、たいていはいいことが起きない。悪い夢を見るようになったりする。

ブツを受け取る人物リストを眺めても、規則性は見出せない。様々な職業/場所/年齢の人たちがカカシの贈り物をもらう。ミスター・ジョーンズは、その作品の突飛さ/芸術性ゆえ、多くの研究者が学術的に謎を解明しようと試みたが、すべて徒労に終わっている。どこの誰がやってるのか。ぜんぜんわからない。その目的もわからない。『彼』と書いたがその性別は定かでない。もしかしたら秘密結社のようなものかもしれない。現在、ミスター・ジョーンズの作品は9点が確認されている。

彼の行為は『夢』に関連するらしい。秩序だった現世の世界と混沌が支配する夢の世界を分け隔てる、その境界線にミスター・ジョーンズは存在し、みんなになにかを知らせたがっているらしい。彼がやっていることは呪いの品を人々に送りつける疫病神のようだが、もしかしたら、『救済』『守護』のような意図があるのかもしれない。もっとも、ミスター・ジョーンズが定義する『救済』や『守護』が人々を幸福にするとは限らないわけだが。

今回、カップルが山で出会った怪人物がこのミスター・ジョーンズ本人であるとすれば、世紀の大発見である。

上に書いたミスター・ジョーンズの横顔がサマリされる過程は、なかなか巧みである。スルリと引き込まれる感がある。一般的な話、ファウンドフッテージ映画というのは、アクションスタートするまではダルダルのホームビデオ映像がうだうだと続くものだが、この映画に関してはそんな不満が起きない。最初から最後まで緊張感が持続する。

Mr. Jones (2013)』は万人向けとはいえないが、奇妙なものを愛する好事家にはきっと愛される小品だろう。

Scott: There's something in the woods. It does something to your head. I can feel things inside.

You feel it!

トレイラー動画

Mr. Jones (2013) trailer

感想

デヴィッド・リンチ・ミーツ・ラブクラフト!

質問。こんな夢を見たことはありますか。

「夢の中で目が覚める。さっきまで寝ていた。という認識があるから、あなたはいまの状況が夢であるとは夢にも思わない。そこで、なにか悪いことが起きる。あなたはこわがりつつ、こわがる自分を上から眺めているような気持ちもある(幽体離脱みたいな)。あなたはこわがる自分を救いたいと願うが、ままならない!」

こんな悪夢に怯えた経験のある方には(私はある)、この映画は真性の恐怖の意味を持つだろう。

インディーズのホラー映画製作者の中には「リンチになりたい病」の人が多くて、謎めいた不思議映像がえんえんと続くヤツがよくあるが、ほとんどの場合、映像がショボかったり、あるいは、自己満足PV系に走っていたりして、ノレないことが多い。でもこれは違う。

ファウンドフッテージ映画特有のダルダル感がない!と上に書いたが、もう少し詳しくいうと、撮影が巧いことに加え、音楽がとてもいい。やりたいことがきちっと構築されている(ように見える)。だからシュッと引き込まれてしまいましたよ。カール・ミューラー監督は『ディヴァイド (2011)』の脚本家だが、そういわれると合点がいく。やはりコレ系のヤツは映像ありきで攻めてくる人よりも、脚本から攻めてくる作り手の方が合っている気がする。

映画の途中で、明らかに誰が撮ってるのかわからない映像が出てくるもんで(ベッドのシーンとか)、「端から端までファウンドフッテージてわけじゃないんだな。けっこういい加減だな」なんて思ったが、じつは後半になると、その映像の視点が誰だったのか明かされるという点も巧みだった。

後半30分になると、夢だか現実だかわからない悪夢世界に突入していくので、そこを気に入らなく思う人がいるかもしれない。実際にこういう感想も多いんだが↓

上のリンク先の回答「もっと単純なホラーにしときゃよかったんだ。ミスタージョーンズは人間の骨を使って創作する芸術家のシリアルキラーだった。とかさ」は、ある意味、正解である。そう。こういう路線を期待するとハズす。

後半30分でミスター・ジョーンズがぐわーんと出てきて、カップルはヒーヒー顔になるんだが、しかしながら、ジョーンズさんはオノやナイフで人間を襲うわけじゃないんですよ。『襲う』というワードが適切であるかどうかもわからない。その点が『Mr. Jones (2013)』の妙である。この怪人物は邪悪なのか、あるいは、救済者なのか、判然としない。もしかしたらわるもんじゃないのかも、って気もする。そのあいまいさゆえに、逃げるのが遅れる。ハラハラどきどきしたなあ。

いろんな解釈をして楽しめばいいんじゃないのかな。私はこう思った。あれは『己を客体化する』という行為を突き詰めた先にあるもの、精神世界の崖っぷちに立つ者だけが見ることを許される霊妙な風景を、狂的に映像化する試みだったのではないか。この映画に出てくる男は映像作家としては二流だったが、彼の創作態度は純粋だったのだろう。それが報われなかったというだけ。そんな残酷さが感じられて、よかった。

インスマウス風のラストだったら?!

よかったと思うが、こんなラストだったら?!という気持ちはある。

私はコレを見てH・P・ラヴクラフトの『インスマウスの影』を思い出した。私はあの小説の後半パートが特に好きである。命からがらでインスマウスから逃げ出した主人公のその後の話。有名な話だからネタバレしちゃっていいと思うが、もし未読の方がいたら以下は読まない方がいいかも。

主人公は自分の家系を細かく調べて、歴史を遡って色々やっているうちに、彼自身がインスマウスの血を引く者だったと気づいてぞっとする。だんだん彼の顔はインスマウス顔になってくる。でもしまいにはその運命を受け入れてニヤリとする。こえー。

あの展開はいいよねー。あのプロットをこの映画に置き換えてみたらおもしろそうじゃん。

主人公のカップルは命からがら脱出する。女は途中で死んでもいいや。んで、その後、男は何年もかけて、ミスター・ジョーンズのことを調べる。そしたら、彼自身のひいひいひいおじいちゃんがじつは〇〇だった!なんていう事実が出てきて愕然とするとかさ、それがドキュメンタリ映画風に綴られていく。みたいな。そんなのがあったら見てみたいなーと思いました。なんていうのは簡単だ!つくるのはたいへんだ!

カール・ミューラー監督のインタビュー

以下のインタビューはいいですよ↓

このレビューもいいから読ませてもらうといいですよ↓

監督さんはミネソタのド田舎で育ったそうで、当時、彼の周辺にはいかにも子供の好奇心を刺激するような、隠遁者風情の連中が大勢いたそうな。そのような子供時代の記憶に加え、「何から影響を受けたのかまるで想像がつかない、そして、どんなアートのグループからも隔絶しているような作風の芸術家。たとえばHenry Dargerのような。いわゆるアウトサイダー・アーティスト」に強く惹かれる思いが常にあり、そんな趣向がミックスされてできあがったが『Mr. Jones (2013)』だそうである。

この映画を観たら誰もがH・P・ラヴクラフトの影響を強く感じるだろう。よくあるタコ怪物のH・P・ラヴクラフトではなく、真のH・P・ラヴクラフト世界である。上にリンクしたレビューでもそのように書かれてある。が、そこらへんについては、インタビューではあまり触れられていない。観終わった後には色んな質問が頭に浮かぶ映画だが、先月Anchor BayからリリースされたDVDにはオマケがぜんぜんない。コメンタリもない。不満はそれだけ。

デヴィッド・リンチについて語る監督

ちょっと後から追記。

上にリンクしたインタビューの記事の中で「リンチはえらい!」って話しているところを訳してみましたよ。原文はコレ↓

Karl Mueller: I like directors who try to push the boundaries of sound design and cinematography a fair amount to give a subjective view about what’s going on with the characters. David Lynch is the king of that in my mind, at least. He’s not completely horror, but there’s definitely a lot of elements to that in his sound carpets that he lays underneath his movies. They tell you so much without actually telling you anything. It puts you in this strange emotional state of mind that we don’t really have access to otherwise. It’s something that you can’t really explain in language, it almost works like music. He’s a huge influence, and then people that push stuff like that.

登場人物の心のありようを深く描くにおいて、音響デザインとシネマトグラフィの限界を押し広げようと懸命に挑戦する映画監督が私は好きだ。デヴィッド・リンチはその王様である。彼の作品はホラーの枠を超えている。映画の底に幾重にも敷き詰められたサウンドの絨毯には様々な要素が並んでいる。それは言葉よりも雄弁に物語る。他では得られないような奇妙な感情体験を観客に起こさせる。言葉では説明できないもの。音楽のようなもの。彼の影響は本当に計り知れない。

がんばって訳してみたが、どうも私の能力ではこれくらいが限界なんだが、原文の方がスルッと頭に入るかんじがする。そこをうまく訳せないなあ。英文をご賞味することをおすすめします。訳はちょっとあれだが、これはいい回答だよね。本当にそうだそうだ。

Memorable Quotes

narration: Do you ever wish your life had an eject button? Do you ever fantasize about sellling everything and moving to the woods? Do you ever dream about waking up to birds instead of your alrm clock? Have you ever wanted to blow all your money on extremely nice camera equipment to make a nature documentary so beautiful, people who saw it would never want to watch another movie again? Do you wish you could walk around your yard naked? Do you ever wish you could freeze time? Do you ever wish you could kiss your wife the way you did on the night you first met? Have you ever started to suspect you made a huge mistake? Have you ever realized you were in over your head? Have you ever realized you can't really go back? Have you ever moved to the woods for a whole year to work on your relationship, only a month in you missed your TV more than you thought? Plus, you stopped taking your meds and you have no idea what this movie is about in the first place. Let's face it, trading in your studio apartment for a bunch of trees doesn't really change anything. What of Penny put her photography career on hold for you so you are too ashamed to admit that the documentary you moved here to make, wasn't that well thought out anyway? But what if your real problems are much, much wrose than that? What if your relationship troubles are the least of your worries? What if something else was out there? Something that hadn't been disturbed for a long, long time. What if you came to the woods to find solitude, only you found out you weren't really alone?

Penny: So I just feel like I need to record this before I forget. Cuz I feel like I just woke up from a dream, you know, how in a dream you can tell if someone is trying to hurt you or help you? Like, you know, you can, you don't just see into them, you see like, right through them, you know? It's like I could feel his intentions. You know? And I don't feel scared.

Lane: You need to stop. Don't talk to anyone else who's had contact with him. Don't try to track down his works. Don't look for him. And if you think you have found Mr. Jones, don't speak to him, don't listen to him. Don't go near him. And if he comes near you... run.

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原題: Mr. Jones
別題: Mr. Jones
制作年: 2013年
制作国: アメリカ
公開日: 2013年4月19日 (アメリカ) (Tribeca Film Festival)
2014年5月2日 (アメリカ)
imdb.com: imdb.com :: Mr. Jones
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
アートディレクション
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup

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