2010/7/19 (Mon) at 10:37 pm

映画|ポルノグラフィ: ア・スリラー|Pornography: A Thriller

90年代に姿を消したゲイのポルノスター。ゲイポルノアンダーグランドに暗躍するスナッフフィルム犯罪組織を、夢か幻かデヴィッド・リンチモドキの手法で描く陰鬱スリラー映画。ジャレッド・グレイマシュー・モンゴメリーピート・シェラー。監督デヴィッド・キトリッジ。2009年。

ポルノグラフィ: ア・スリラー / Pornography: A Thriller DVDDVD画像

1995年。

ゲイのポルノスター、マーク・アントン(ジャレッド・グレイ)は『隣の家の男の子』キャラの超売れっ子モデルで、彼は写真の学校に通いながらポルノ仕事をやっていたんだが、ある日、よくばりエージェントに呼び出され「デカい仕事があるぞ」と誘われる。

それはどっかの大金持ちファンからの依頼で、インタビューに答えるだけでいいそうな。からみナシ。カメラの前でしゃべるだけで、その客は4万ドルを払うという(エージェントの取り分もコミの金額)。エージェントはよくばりなので、この時点ですでにカネを受け取っていた。

という話を聞いたマークは警戒しつつ、その仕事をやるんだが、彼はこれを機にポルノ仕事をやめようと考え、エージェントを殺し(あるいは眠らせただけかも。どちらなのかよくわからなかった)、4万ドルをまるまるブンどって客のところにいった。

さて、呼び出された部屋に入ると、客は顔を見せず、カメラとマイクと通じて指示を出してくる。「契約書にサインして下に置きなさい」といわれてそのようにしたら、いろいろプライベートなことを質問してくるので、「あんたは、結局、コレが見たいんだろう?」といってハダカになろうとしたら、覆面男がガガーと入ってきて、襲われた。マーク・アントンはこの日を境に姿を消した。前置き以上。

14年後。NY、ブルックリン。

高級アパートにゲイのカップルが引っ越してくる。カップルの一方、マイケル(マシュー・モンゴメリー)はライターで、ゲイポルノに関する歴史本を書いている。彼はその資料集めのためにゲイのみなさんにインタビューをするなど忙しくしているんだが、そうこうやってるうちに、このアパートの壁の中からビデオテープを発見する。

再生してみたら、それは14年前に失踪したポルノスター、マーク・アントンが殺されるシーンを映したスナッフビデオであった。おったまげた彼は知り合いのビデオ屋のオッサンにその分析を依頼するのであるが、オッサンは忽然と姿を消し、マイケルもまたなにものかに襲われる。

このビデオ屋のオッサンはポルノ業界をよく知る人物なのだが「スナッフビデオの噂はよくあるんだけど、噂ばかりなんだよねー」などといってました。

マイケルの元にマーク・アントンが撮影した写真が送られてきたり、また、アパートの壁には隠し撮り用のビデオカメラを取り付けた痕跡があったり、また、そもそもの話、このアパートの家主ってのがゲイのカップルに部屋を貸すのが趣味らしいという不動産屋の話があったりとか、そこはかとなく、なんかあるんだな的な演出がたくさんある。マイケルは姿の見えない敵に包囲され、次第に追い込まれていく。彼の妄想なのだろうか。

ところかわって、ここはLA。現在。

ゲイのポルノスター、マット・スティーヴンス(ピート・シェラー)はある日、夢のお告げを得て、マーク・アントンていう名前のゲイが事件に巻き込まれるという内容の脚本を書く。彼は自分が見た夢を元にそのお話を書いたのであり、マーク・アントンてのがかつて実在したポルノ俳優だったなんていうことは知らないのであるが、脚本を一気に書き上げた彼は「これは売れる!」と直感し、自らプロデューサーを説得し、自分で監督をやることになった。

監督主演マット・スティーヴンスの新作は売れること間違いなし!と信じて彼はがんばるのであるが、これまた、NYのマイケルと同じように、だれかに見張られているような妄想(あるいは現実?)を抱くようになり、彼の回りのひとたちは「もうこの映画をヤメロ」というのだが、マットは拘泥しつつ、やがてズタボロになっていく。自滅。

この新作に登場するゲイ俳優、マットの相手役というのは、かつて14年前にマーク・アントンの相手役をやった俳優(ディラン・ヴォクス)であるとか、NYのお話の中で出てきた俳優さんが別の役どころでLAの方にも出てくるというような点があったりして、いかにもなんかあるんだな的な雰囲気である。

デヴィッド・リンチ的夢幻手法でゲイポルノのアンダーグラウンドを描いたスリラー映画。最初から最後まで鬱々です。

トレイラー動画

Pornography: A Thriller trailer

感想 - よかったところ

この映画を観たら、だれもが「リンチくさい!」と思うでしょうが(『ロスト・ハイウェイ』とか『マルホランド・ドライブ』とか)、パクリを見たというようないやなかんじはしないので、まぁ、いいんじゃないでしょうか。リンチ先生に影響されてこういうのをつくってみたかったんだという気合いがかんじられます。

ゲイのポルノスターの鬱々とした映像から始まり、その後も鬱々と進行し、キーワードがちりばめられたかのような意味深会話とシンボリックな映像が交互に出てきます。

脚本がよかったです。ちょっぴり説教臭い(preachy + cornyというかんじ)のではないかと思われるところが私的にいやでしたけど、それは大きな傷でなく、たとえば最初の方で出てきた、マークと学生の会話「パズルが好きなんだね?」で始まるヤツとか、映画の主題を端的に現しているのかなと思いました。このシーンから察するに、この映画のキーワードは『no ambiguity』と『inevitable』であるらしい。

ここで登場したニコニコ笑顔の学生さんは、後半になると天使の姿で再び登場します。

そのシーンのquotes↓

Student guy: You like crosswords, huh? I never could get into them myself. There's too many words. Why'd you like puzzles?
Mark Anton: There's no ambiguity. When you solve it, you solve it. Everything connects.
Student guy: You like that? That everything connects?
Mark Anton: I have a boyfriend.
Student guy: Serious?
Mark Anton: Pretty serious.
Student guy: Does he know you were in porn? I saw one of your movies.. The one with the video camera.
Mark Anton: How'd you like it?
Student guy: I don't know how to answer that question.
Mark Anton: Did I get you hard?
Student guy: Yes.
Mark Anton: Then, I did my job.
Student guy: So what's it like?
Mark Anton: It's kind of like fuckin' in front of a camera.
Student guy: The reason I like photography is that pictures capture moments the moment you take them. We're never really in the past. We're never in the future. The only thing we're ever actually in is the present. Right now. Me and you sitting here... is right now. And a moment from now, when I get up and I'm gone this will never be again. Pictures capture imaginary moments. They don't exist, except they did. So, suppose you're in the future and you're looking back on this moment, is there anything you'd want to change? Because there really is just... right now. Inevitable. 27 down. Smile for the camera!

マークがわるもんにとっつかまる直前の台詞もなかなかよいです↓

Man's Voice: We want you to be real with us.
Mark Anton: You just want me to talk about myself? Be real with you? My mother used to beat me with a belt. My father starved me and threw me out when I was 12, and my uncle used to molest me. I was teased and humiliated in school. And I had a learning disorder so I was always behind. I didn't have any friends. I was 50 pounds overweight. I got sold into a sex ring at the age of 13, and I was addicted to heroin. Is that kind of reality you want to hear? You want to hear a sob story, a cliche. Poor little Mark, little boy lost, claws his way up through porn and drugs and manages to come out the other side. Well, that ain't me. You want to hear dirt? You want to hear pain? You want to talk to the real me? Forty grand doesn't buy you that. You can have my time, you can have my image and my voice, but you cannot have my pain... Now, isn't this what you wanted to see?
Man's Voice: You're going to be a star, Mark. The biggest star ever. Isn't that what you wanted?

あと、加えて、もっとさりげないところで、私はハッとしましたよ。このラインとか↓

Photography Professor: I'm bored, Mark. It's boring. Anyone can shoot a room and put words at the bottom. What you need to do is to shoot a room in a way I've never seen before. You need to stretch your abilities here. Nice mounting work though.

これは、写真学校の先生がマークの作品をコキおろすところの台詞ですが、最後の『Nice mounting work though.』てのが、いかにもアートスクールのインテリ講師がいいそうな台詞だなあと思いました。mountingてのは、映画を観ればわかりますが、写真を飾るための台紙です。つまり「あんたは写真家より額縁屋になったほうがいいな」みたいな皮肉です。

教師のイヤミてのはトラウマになりますよね。それをきっかけに逆噴射的開眼するひともいますが。。私、思うに、こんなひとことが生徒をおそろしく傷つけるという点を、教師てのはわかってないのですね。

次のラインもよかったです↓

William: You know what I think? I think you're at a point with this book, where you'll do absolutely anything to avoid writing. How much have you done this week?

NYのライターのマイケルがスナッフビデオらしきものを見つけて、恋人にその話をするんだが、相手は信じてくれなくて、このような返答をしたのです。わかりやすく訳すと「あなたは本を書くとき、ときに、全力で『書かない理由』をデッチあげるでしょ。今週はどれだけ書いた?」という意味合いですが、なんか、これ、物書きの心理を見事にえぐっているなあと。リアリティをかんじます。

感想 - わるかったところ

映画は「夢だか現実だかわからない」という調子で進行し、その背後には、アメリカのゲイポルノ業界には、人気男優を拉致してブッ殺すスナッフ組織が暗躍しているのであるか、それはじつに大掛かりな組織犯罪ではないか、という疑問を投げるんだけど、結局、最後になってもわからないのですね。スナッフフィルムが本物かどうかさえわからないまま終わる。ちぇ。

この着眼点はなかなかおもしろいと思うんで、もっとわかりやすい視点でだれか別の監督さんがつくったら、おそろしくゲスなホラーになるんじゃないですか。ゲイのスナッフですよ!ひぃい。だれが観たいんだ?

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原題: Pornography
別題: Pornography: Ein Thriller
Pornography: A Thriller
制作年: 2009年
制作国: アメリカ
公開日: 2009年 (アメリカ) (Newfest New York LGBT Film Festival premiere)
2009年6月21日 (アメリカ) (Frameline: The San Francisco LGBT Film Festival)
2009年7月10日 (アメリカ) (Philadelphia Q Fest)
2009年7月18日 (アメリカ) (Los Angeles Outfest Gay and Lesbian Film Festival)
2009年7月18日 (アメリカ) (Outfest Film Festival)
2009年9月22日 (カナダ) (Atlantic Film Festival)
2009年9月25日 (アメリカ) (Palm Springs Gay and Lesbian Film Festival)
2010年4月16日 (アメリカ) (limited)
2010年4月17日 (アメリカ) (FilmOut San Diego)
2010年6月29日 (ドイツ) (Filmreihe homochrom premiere)
2010年7月8日 (ドイツ)
2010年7月30日 (イギリス) (DVD)
2010年8月31日 (フランス) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Pornography
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脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
Makeup
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