映画|廃家|The Haunted House Project
韓国版「ブレアウィッチ・プロジェクト」。廃墟でオバケが出てきてびっくりするモキュメンタリのホラー映画。シン・ギョンソン、チョン・インゴル、ユン・イナ、キム・ウンギョン。監督イ・チョラ。2010年。
その昔。韓国のどっかの田舎の話。
当時繁盛していた食品工場で、経営者とその家族5人が惨殺された。犯人捕まらず。その後、近所で噂話が広まった。
「死んだ社長さんは従業員の女と浮気して、それが奥さんにバレたもんで、大ケンカになったらしい。奥さんは女をブッ殺して、工場の敷地内にある汚い水たまりに死体を捨てたらしい。したら女のオバケが出てきて、家族に復讐したんだよ。おー、こわいこわい」
という噂が広まったもんで、村のえらいさんは呪術師を雇って悪魔払いをしてもらった。そしたら、呪術師はアワを吹いてブッ倒れ、水たまりに落ちた。警察は重機で死体を引き上げようとしたんだが、事故が起き、重機のオペレーターは死亡。以来、だれもその場所に寄りつかなくなった。
建物は廃墟になった。数年間はなにも起きなかったが、最近、またまた「オバケを目撃した!」という人たちが現れ、村のみなさんは恐怖に怯えている。
といういわくの廃墟に、6人の男女からなるドキュメンタリ映画の撮影チームがやってきたんだが、全員が行方不明になってしまったそうな。
6人のうち3名は、超常オカルト現象研究を旨とするオバケ研究会のみなさん。残りは映画のプロデューサー女/カメラマン男/音声担当女というメンツで、撮影クルーはオバケ研究会のフィールド調査に同行し、その一部始終を撮影するはずだったのだが、いったい何が起きたのでしょうか。
「このたび現場から、彼らが撮影したビデオテープが回収されました。さてさて、恐怖の映像をごらん頂きましょう。ジャジャーン!」
てな調子で始まるモキュメンタリのホラー映画。
トレイラー動画
感想
先月、韓国版DVDがリリースされました。英語字幕つき↓
『ZOMBIE手帖』さんで「韓国版ブレアウィッチ!」とトレイラーが紹介されていましたが、モロそんなかんじだったです。
これ以上わかりやすいキャッチを思いつかないですなあ。私もこのエントリで使わせてもらいました。すません。ゆるして。
映画が始まると、まずは近隣住民のオバちゃんなどが出てきて噂話をべらべらしゃべります。みなさん精一杯のオシャレをしているように見えるのがほほえましい。演歌歌手のディナーショーの切符を並んで買ってるオバちゃんみたい。
廃墟の過去がサマリされたあとは、オバケ研究会のみなさんが登場。彼らはプロデューサー女と打ち合わせをしつつ、廃墟に向かいます。
プロデューサー女はやたら仕切りたがり屋さんらしくて、あれこれ口をだしてきます。ちょっとイラつかせキャラですね。「自然に振る舞え」「カメラにライトを向けるな」とごちゃごちゃいって、みんなが聞こえないところでは、カメラマン相手に「なんかびっくりネタを仕込む?」とひそひそ話をしている、インチキテレビのやらせディレクターみたいな人物です。これに対する研究会はじつに無邪気で、とにかくオバケのことしか考えてないみたい。んで、夜になってオバケが出てくると、もう各自の都合はどうでもよくなっちゃって、ギャーギャー逃げ回ります。
例によって、暗い画面がグジャグジャして、悲鳴が聞こえるだけで、なんにも見えないヤツだったです。やっぱりなあ。コレ系を好むひとはコレがいいんだろうなあと、やや冷めた視線で観てしまいましたが、ひとつよかったのは、廃墟の雰囲気がいかにもオバケ屋敷的だったという点です。いいロケーションだったですね。
映画の舞台となる廃墟は、その昔は繁盛した食品工場で、とても敷地が広いのです。工場の建物に加え、経営者家族の住居ビル/社員寮/倉庫といった建物がたくさんあるんだが、いまはそのすべてがガレキの山になっています。とても怪しい雰囲気。
子供の頃に、よくこういう場所で探検ごっこをやったなあと思い出しました。昔は日本にもこういう廃墟がよくありましたよ。たのしかったなー。空き家に勝手に侵入し、ガレキの山を押しのけていくと、まっくろ顔の歯抜けの浮浪者がガオーと出てきて、ギャーと逃げるの。スリル満点だったなあ。当時は、大人も子供も、彼らを「乞食!」と呼んでました。
廃墟で遊んだことのある私からいわしてもらうと、ああいう場所を普通の運動靴で走り回るというのはとても危険ですね。クギの刺さった板キレを踏んづけると足を大ケガします。コンバースみたいな靴だとモロにズブっとくるよ。クギが錆びているとすごく痛くて、治るのに時間がかかる。私、何度も流血した(バカ)。「もうあそこにはいってはいけないよ」といわれるんだが、またいっちゃうんだなあ。
いまはそういう怪しい場所は目につかなくなりました(てか、町によってはまだあるのかもしれないけど)。税金払えなくなる→差し押さえ→競売→ビルが建つ。という調子で、どんどん区画整理されて、こぎれいになってしまうから。韓国にはまだこういう場所が残っているのかなあ。
昔、私の家の近所に小さな雑木林があって、中に入ると、意味不明の祠やらお地蔵さんがあって、さらにその奥に沼とボロ小屋があるという、おそろしげな場所があったんですよ。近隣の子供たちは「あそこにはターザンが住んでいる」と本気で信じていました(少なくとも私は信じていた)。大人になってから、実家の近所をうろついて、そこにいってみたら、駐車場になっていました。えー、こんなに小さい場所だったのかーと驚きました。当時の子供たちにとっては、無限の広さを持つ深い森であるように信じられていましたから。ほんとに。子供の頭って、距離とか面積というもんが想像力で引き延ばされるのかなあ。
というような郷愁の想いに浸ることができましたので、まぁ、よかったです。
韓国映画に詳しい方のレビューがありました。これから観てみようかなというひとには参考になると思われ↓
上のリンク先の方は「前半つまんなくて、後半よかった」と書いておられますが、私は逆でした。前半の廃墟の雰囲気がけっこうよかったんですね。後半になったら「まっくらばかりでわけわからん!」と思いました。ひとによって感想は様々なんだなあ。確実なのは「はっきり見えないのはイヤ!」というひとは大嫌いだろうなあ。
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