2016/3/10 (Thu) at 11:41 am

『Tales Of H.P. Lovecraft』ローレンス・R・ハーヴェイがラブクラフト小説を朗読するアナログレコードがいい!

Duke St Workshop meets Laurence R. Harvey meets Lovecraft!

このジャケ絵はすばらしい!
the artwork by Sean Phillips
Tales Of H.P. Lovecraft

ちょっと変わったアナログレコードが発売されましたよ。イギリスのThe Duke St Workshopというバンドのアルバムですが、これにローレンス・ハーヴェイが朗読ナレーターとして参加しているのです。バックグラウンドにずーっと音楽が鳴ってて、それにかぶせて、ローレンスさんがラブクラフトのお話を朗読するというもんです。

(Laurence's creepy voice) I was on my way to Tillinghast....

収録作品は『From Beyond』『The Hound』の2作品。この作品においては、音源に合わせて小説作品は少々書き換えられている。これもadaptationの一種であろう。だいたいラブクラフトの原文というのは、冗長な比喩がぐだぐだと続く文体で、そこを我慢して読むのが興趣であるが、こういうコラボ企画をやるとなると、「ちょっと合わない!書き換えよう!」という判断をしたのかもしれないと思った。

音楽はエレクトロニック系のヤツで、いわゆるambientとかexperimentalというような、そこはかなとく80sのヤツで、そこに薄気味悪いブリティッシュアクセントのローレンスボイスが乗っかるとものすごく合うから驚いた。

ゴシックエレクトロ。みたいな。ラブクラフトの雰囲気にぴったりです。ビヨヨーーンと音楽が鳴って、ローレンスさんがあの声で「ましーんましーんましーん!」ってエコー連呼するんですよ。えーなー。

ローレンス・ハーヴェイという人は、『コメディックな変態ホラー俳優』としての地位を築いているが、このナレーション仕事においては、お笑い要素はゼロ。ものすごい気合いで、薄気味悪いローレンスを演じている。すばらしい。彼の新しい面を見た気がする。以下のプロモビデオを見ると雰囲気がわかるよ。

the hound

the hound from Cash Productions on Vimeo.

本作『Tales Of H.P. Lovecraft』は、今年の1月に初回プレス300部のアナログレコードが出たんだが、現在売り切れ。もうすぐ追加が出るそうです。

私は最初にリリースされたときに、ローレンスさんから音源をもらい、「レビューしなさいよ」といわれていたんだが、この記事を書くのに数ヶ月もかかってしまった。

レコードのレビューなんて書いたことがないからね。迷ってしまったんだよね。音楽雑誌によくあるような、意味不明のカタカナ羅列 + へんな形容詞チャンポンの、あのへんな文体で書かなくちゃいけないのかね。という強迫観念に取り憑かれてしまった。あんなの書けないし。どうしようかね。

とうだうだしていたら、数ヶ月が過ぎてしまい、そのあいだ、ときどき寝る前に音源を聞いたりしつつ、今日、ちょっと書いてみたら、ババーと書けた。こういう風に、思った通りに書けばよかったのだ。ビヨヨーンとか書けばいいのだ。はははは。ローレンスさん、ありがとう。

ところで、一般的な話、英語その他の西洋の文学においては、この手の『朗読』というのが、ひとつの表現手法として定着している。日本語にもオーディオブックがあるけど、西洋の文化では、そういうものがずっと昔から根付いている。コンサートにいくような感覚で、有名な詩人の朗読会というようなイベントに人々はいく。ちょっと日本とは楽しみ方がちがう。

日本語っていうのは『表意文字』じゃないですか(漢字)。日本語は文字のひとつひとつに意味があるから、『読んで愛でる』言語である。だから文学は読むものである。でもアルファベットの場合は音を愛でる。だからこういう表現手法が自然に存在するのだろう。

このコラボ企画においても、いつだったか、今年の始めに、アルバムのリリースを記念するイベントがイギリスで行われ、どっかのライブハウスでこのバンドが演奏しつつ生ローレンス朗読!ってのをやっていた。誠に贅沢なイベントである。いいですなあ。

Tales Of H.P. Lovecraft』は彼の朗読にすばらしい音楽がコラボして、たいへんけっこうな作品になっているが、加えて、けっこうなのがこのジャケである。アーティストはSean Phillips。デジタルダウンロード販売もしているそうだが、ここはひとつレコードを所有したいとファンは思うだろう。

次のプレスが出たら、THE DEAD PITで売りますかね。神戸さん。どうですかね。もちろんローレンスさんのサイン入りで(まだ頼んでないからわからないが)。なにしろこのジャケットがいいから、コアなファンや収集家には喜ばれるのではないかな。みなさん、どうですか。出たら買いますか。

未確認なんだが、レコードを買うとその中にブックレットが入っていて、ローレンスさんが朗読している脚本テキストが載っているとどこかで以前聞いた気がするんだが、いま確認できないので、わかったらまたお知らせします。そういうのがもしついていたら、特に英語学習者にはすごくいいじゃないですか。聞き取り不完全な部分をカバーできるから。

日本のアマゾンにもありました。発売日が5月になっているが、これはリプレス版のリリース予定日なんですねたぶん。

Laurence! Sorry it took so long to review it. I love it. I cannot tell exactly why/how I love it in English by my writing skills, it's hard to translate, so this review is written in Japanese, but believe me. What I wrote above is very positive words. I enjoy it. Your voice is scary and creepy. It made me surprised that your voice perfectly fits into the music and the story of Lovecraft. To me, you have been "a beloved comedic hentai actor" never seen before. That's why I love you. But in this project, your voice acting is different from what I had felt about you. I surely thought I witnessed another shine of you as an artist. It's brilliant. Thank you!

後から追記。

この記事をアプした後、ハル吉さんがメールをくれて、こういうビデオもあるよと教えてくれました。このバンドとローレンスさんは、過去にいろいろとコラボをしてきた間柄なのですね。このビデオもすごくいいですね。

The Duke St Workshop - Cabin 28 (Starring Laurence Harvey)

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