2013/9/26 (Thu) at 8:19 am

映画|ヒドゥン・イン・ザ・ウッズ|Hidden in the Woods

近親相姦レイプ!奇形!カニバリズム!残虐!ゴア!女を食い物にする超暴力エクスプロイテーション絶望ホラー映画は人の道にあらず。シボネイ・ロカロリナ・エスコバルダニエル・アンティヴィロ。監督パトリシオ・ヴァリアダーレス。2012年。

ヒドゥン・イン・ザ・ウッズ / Hidden in the Woods DVDDVD画像

1987年。チリ。どっかの山の家。

怒り男が「ビッチめ!死ね死ね!」つって妻をブッ殺す。始まったとたんに血塗れドカドカです。

夫婦には幼い娘がふたりいた。妹はまだ赤ちゃんである。男は妻を殺し終えると、娘たちのところにやってきて「ママは天国にいった」と告げた。

11年後。

娘たちは少女の年頃になった。妻を殺した男(ダニエル・アンティヴィロ)は地元ヤクザの子分で、ヤクの備蓄を任されている。家の中にはヤクが隠してあり、ときどき親分(フランソワ・ソート)が子分を連れて取りにくる。

この親分はこの辺りじゃ悪魔のように恐れられる男であるが、姉妹をエロ視線でジロジロ眺め「母親に似てええ女になったのう。いつかおれが味見してやる」とかいう。

父はチラと嫌な顔をする。子供を学校に行かせず、妻を殺すような男でも、他人が自分の子供に触れるのは嫌らしい。子供は自分の所有物だと思っているのだろう。

姉妹は常に寄り添い、びくびくしながら暮らしている。ふたりはいつも死んだママの話をする。妹はまだ赤ちゃんだったからママのことを覚えていないが、姉はいつも「ママはきれいだった」とうれしそうにいう。

ある晩、子供たちが眠るベッドに父がやってきて、姉をレイプした。妹は恐怖に硬直。姉が父に犯される場面を目撃した。姉は妊娠。やがて出産。奇形の赤ん坊が産まれた。

そのまた11年後。

奇形赤ちゃんは成長した。彼(José Hernandez)は汚い小屋に閉じ込められ、家畜以下の扱いで、生肉のエサをもらって生きている。彼にとっては、ときどき顔を見せる姉たちだけが、この世のすべてである。

父親はこんどは妹をレイプした。もう涙も涸れました。

ある日、ポリスが家にやってきた。姉妹(シボネイ・ロカロリナ・エスコバル)が虐待されていると聞いて助けにきたんだが、父は制服を見るなり、ガガーと怒って、チェーンソーで大虐殺。ポリスにしてみれば、まさかこんなキチガイがいるとは思わなかったのだろう。簡単に返り討ちにされてしまった。

姉妹は血塗れ惨劇にびっくり。奇形弟を連れて逃げだした。彼らは森に隠れ、父が追ってこないと知ると安心したが、頼る相手はおらず、途方にくれる。しばらく話し合った末、姉が「あの山小屋にいってみよう」と行き先を決めた。

昔、彼女は父に連れていかれたことがあったからその小屋を思い出したんだが、父が知る場所にいくなんて危険ではないかと思うんだが、他にどうしようもなかったのである。その小屋がヤクの隠し場所だったなんて、姉妹は知らなかった。

このトリオは姉妹と弟のように見えるが、実際そうなんだが、姉にとって弟は自分の息子でもある。また、妹にとっては、弟であると同時に甥でもある。

奇形弟は怪物顔の知恵遅れであり、「アガガー」とわめいて、へんな歩き方をするが、『クライモリ (2003)』の奇形みたいに暴力的ではない。それどころか、ものすごくこわがりである。長年に渡り監禁されてきた彼にとって、この世のすべてが初めてづくしだからなにを見てもこわがる。姉妹はそんな弟をかわいそうに思って、優しく接している。奇形弟にとってふたりの姉は母のような存在なのだろう。

3人は山道を歩いて、ヒッチハイクをして、目的地にたどり着いた。そこは山の中の質素な小屋で、かつて暮らしていた場所と同じような雰囲気だが、父がいないというだけで、彼らにとっては天国。3人は人生初の安心と幸福を味わう。といってもカネはないし、腹は減る。なんとかしなくては。

姉は売女になった。町におりて、そこらへんのアンちゃんに声をかけ、便所や公園でフェラチオをしてお金をもらう。時代劇に出てくる夜鷹みたいな最下層売女だが、恐怖と虐待の人生を生きてきた彼女にとって、汚いチンコを口に入れるのは、献血をするくらいにしか思わないみたいである。ヒョイヒョイと手際よく片付け、精液をペッと吐き出し、きちっとお金をもらう。そして食べ物を小屋に持ち帰る。

妹と奇形弟は喜ぶ。みんな幸せ。3人は父がいない幸福を甘受する。

さて、ところで、その後、あの父親はどうしたのだろうか。

彼はポリスをブッ殺した後、子供はほったらかして、スタコラ逃げた。ヤクザの親分に電話して助けを求めた。親分にしてみればこんな男はムシケラ同然であり、野垂れ死にしようが知ったこっちゃないが、コイツはヤクのありかを知っている。だからほっとくわけにいかない。

親分に「助けてやる」といわれて男は安心したが、何をトチ狂ったか、バスターミナルで職質されたらとつぜん大暴れ。ポリスをブッ殺し、逮捕されてサクッと刑務所入り。

この事態に親分は困った。男が警察を相手にベラベラしゃべったら身の破滅である。親分は刑務所に刺客を送った。ところが、男はこれをズズガガーと返り討ちにした。映画の全編を通じ、この男の凶暴性/短絡性/生存本能というのは大したものである。殺しても死なない男。

男は不敵な笑みを浮かべ、親分を相手に取引を持ちかけた。「おれを刑務所から出せ。そしたらヤクの場所を教えてやる」てなことをいう。親分はキーッと悔しがる。子分たちにハッパをかけて「ヤクを見つけろ!」と命じる。

尻を叩かれた低能チンピラどもがウジャーと出てきて、そこらじゅうをひっかき回す。やがて彼らは姉妹たちが暮らす小屋を嗅ぎつけた。姉妹と奇形弟はまたまた大ピンチ。チンピラに襲われる。そして最後には、あの恐怖の父親が、再び姉妹の目の前に現れるのである。ひー。

father: We are a happy family! I'm your father!

「おれらは幸せ家族!おれはおまえのパパだぞ!」

すばらしいわるもん台詞でありますね。本当にひどい男です。まったく空いた口がふさがりません。

最後の最後まで地獄の烈火がボーボー燃える南米エクスプロイテーション映画は「父娘レイプ!奇形!暴力!SEX!」とあらゆる悪辣不快悪趣味壮絶不穏な要素がギューギューで、血と精液とウンコを固めてつくったみたいな絶望ホラーだが、さらに、加えて、カニバリズムの場面もある。これがまたすごいんですよ。いったい誰が誰を食うのか。それは映画をご覧になって確かめてください。

チリの新作エクスプロイテーション映画は人の道にあらず。

トレイラー動画

Hidden in the Woods (2012) trailer

感想

ひどいひどい!

この映画に出てくる男たちは、奇形弟を除いて、性欲モリモリの野蛮なゲス男ばかりである。こいつらの頭の中には腐った精液が溜まっていて、くしゃみをすれば鼻から精子が出てくるのではないか。女の子に優しくする男なんてひとりも出てこないのです。奇形弟を除いて。

ゆえに、姉妹は、父から逃げ出した後においても、行動の自由が少し広がったというだけで、基本的には何も変わらない。どこにいってもいぢめられる。

セルビアン・フィルム (2010)』の家族は絶望して一家心中に追い込まれたが、こっちの姉妹はどんなにヒデー目に遭っても生きようとする。彼女たちは『狂う』という選択肢もないみたい。いや、だからといって「こっちのほうがえらい」なんていう気はないけれどもさ。どちらもすごい映画です。

私、思うに、彼女たちが狂わないのは奇形弟がいたからじゃないかな。どんだけヒデー目に遭っても、目の前に自分を頼ってくる奇形弟がいると、狂うわけにもいかない。そんな心理が働くのかなって想像しました。

DVDを買うとオマケのブックレットがついてて、解説とインタビューが載っているんだが、その中のパトリシオ・ヴァリアダーレス監督の次の言葉は、この映画のありようを端的に現している↓

Patricio Valladares: The girls were born in the middle hell, for them to die is better than being alive.

「少女たちは地獄に生まれた。彼女たちにとっては生きるよりも死ぬ方がよい」

監督さんはこんな『狂気』を語るにおいて「三池崇史の映画のエンディングはいつもすごい!」って話している。

私は(お笑いホラーは別として)ホラー映画たるもの、常にこうあってほしいと思うんだが↓

「かわいそうなひとたちが、ヒデー手法で、ヒデー目に遭わされ、理不尽にブッ殺される。誰も助けにこない。この世にヒーローはいない」

Hidden in the Woods (2012)』は、この要件を隅から隅まで満たしているホラー映画です。

自信を以ておすすめします。みんなも観よう!

DVDのオマケのブックレット

US版DVDを買うとオマケのブックレットがついてくる。8ページ。カラー。内容は映画評論家のTravis Crawfordによる解説と、DVDの版元Artsploitation Filmsによる監督インタビュー。これを読むと映画の背景がよくわかる。いくつかトピックスを抜粋します。

『事実に基づく話』と冒頭に出る。私はチリの国内事情についてよく知らないし、ホラー映画にはよくある宣伝文句だから気に留めなかったが、監督さんのインタビューによれば「うちの近所でこんな事件があって、それを元に映画をつくった。映画の7割は本当に起きたこと」だそうです。おそろしいですね。

Hidden in the Woods (2012)』は2012年のFantasia International Film Festivalでワールドプレミア。話題騒然。同フェスティバルでこの映画を観たマイケル・ビーンはその場で監督と交渉。リメイク権を取得した。彼主演でリメイク製作中。監督は同じくパトリシオ・ヴァリアダーレス

リメイクについて監督さんのお言葉↓

「映画の撮影スタイルは踏襲されるが、たくさんの違いがある。リメイクにおいてはカニバルはナシ。でもその代わりに暴力描写は格段にUP」

ということだが、このインタビューはリメイク製作中になされたものなので、その後、変更点があるかもしれない。

リメイクについては、すでにネット上では否定的な反応が散見されるが、どうなんですかね。私自身も懐疑的に思うが、まぁ、それでもリリースされたらきっと観るでしょう。

Hidden in the Woods (2012)』は2012年のFrightfestで賞賛され、また同時に、散々に酷評された↓

  • utterly amoral
  • throughly repugnant
  • really, really offensive
  • so ostentatious in its display of depravity, it feels inhuman
  • 道徳観念の著しい欠如
  • 全編を通じて不快
  • 非常に非常にけしからん
  • これみよがしの邪悪描写は人間のやることではない

いいですなあ。

Travis Crawfordは解説の中で「『Hidden in the Woods (2012)』は、真の21世紀のエクスプロイテーション映画である」と大絶賛しているが、その中で、近年のタランティーノ様式のグラインドハウスの流行についてチラと皮肉を書いている。

これはたいへん共感できる話なので、引用しようと思ったが、でもやっぱりやめた。ちゃんと読めばその意味は理解しうるものだが、悪口だと感じるひともいるだろうから。気になる方はDVDを買って読んでください。

DVDを買おう!

このDVDは24.11ドル(本日時点)とチト高いが、映画はすばらしいし、上に紹介したブックレットがついているから買うといいですよ。ジャケはかっこいいリバーシブル。

パトリシオ・ヴァリアダーレス監督
彼はハイキング男の役でチラとカメオ出演もしています
パトリシオ・ヴァリアダーレス / Patricio Valladares 画像

オマケはメイキングとインタビュー↓

  • Making If Hidden in the Woods
  • Interview with Patricio Valladares
  • Clap Clip
  • Original Trailer
  • Artsploitation Trailers
    • Vanishing Waves
    • Horror Stories
    • Toad Road
    • Writher

英語字幕つき↓

監督さんに話しかけたらへんじくれました↓

Gracias, Patricio!

ネタバレです

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原題: En las afueras de la ciudad
別題: Afueras de la Ciudad
Hidden in the Woods
制作年: 2012年
制作国: チリ
公開日: 2012年8月6日 (カナダ) (Fantasia International Film Festival)
2012年8月24日 (イギリス) (Film4 FrightFest)
2012年10月26日 (イギリス) (Celluloid Screams Film Festival)
2012年11月5日 (イタリア) (Asti Film Festival)
2012年11月12日 (イタリア) (Tohorror Film Fest)
2012年11月17日 (チリ) (Festival de Cine de Viña del Mar)
2013年3月10日 (アメリカ) (San Diego Latino Film Festival)
2013年3月23日 (アメリカ) (HorrorHound Weekend)
2013年7月13日 (ドイツ) (Weekend of Fear Festival)
2013年9月20日 (アメリカ) (DVD)
2013年11月9日 (ドイツ) (Weekend of Horrors)
imdb.com: imdb.com :: En las afueras de la ciudad
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
プロダクション・デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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