2014/3/5 (Wed) at 1:48 pm

映画|メモリー・オブ・ザ・デッド|Memory of the Dead

死んだ男が儀式で蘇る!独創的な凝縮ゴア描写!イタリアンホラー風の狂想色映像!おもしろいエンディング!アルゼンチンのホラー映画は超おすすめ!監督ヴァレンティン・ジャビア・ディメント。原題『La memoria del muerto』。2011年。Artsploitation Films

メモリー・オブ・ザ・デッド / Memory of the Dead DVDDVD画像

ここはアルゼンチン。

ホルヘ(ガブリエル・ゴイティ)という中年男が急死した。残された妻アリシア(Lola Berthet)はわんわん泣いて嘆き悲しんだ。そして、彼が死んでから49日目の日に、友達を家に招いて、亡き夫を偲ぶ会を催した。

呼ばれてやってきたのは6名の男女である。彼らはいずれも故人のよき友達だった者たち。と思ったら、ひとりだけ違っていた。

イヴァナ(Flora Gró)という女だけは部外者なんだが、彼女は彼女なりにホルヘという男がいかに愛されていたかを知り、感銘を受けたようである。

故人を偲ぶにおいて、まずは妻アリシアさんが挨拶の口上を述べ、さらに続いて、故人が残した手紙が朗読された。友達ひとりひとりに宛てた丁寧な文章は人々の胸を打った。

ホルヘという男は、どういうわけだか、夢のお告げで、自分が急死することを予測していたらしい。健康そのものだったのに関わらず、「自分が死んだらこーしてあーして」と妻に指図を言い残しておいたのである。

手紙が朗読された後、故人の肖像画が公開された。それは友人の芸術家の男(Matías Marmorato)が描いたものである。この芸術家は繊細な雰囲気の金髪アンちゃんで、ホルヘの親友リストの中ではいちばん新しい人物なんだそうな。

人々は彼の絵を見ながら故人の思い出を語る。ホルヘはみんなに愛されていたのだなという点がよくわかるが、決して清廉な人物ではなかったようである。生前にはしばしば悪い遊びをやらかしたが、それもまたかけがえのない魅力だった。愛すべきハチャメチャ男だったみたいですね。

思い出と涙の夜はしんしんと更けてゆく。やがて各自は寝室に引き取る。涙にむせぶ者あり、わっせわっせとsexする者あり、黙々と絵を描く者あり、人々は思い思いのやり方でホルヘという男を哀悼しているようである。

そして真夜中零時。ボーンボーンと時計が鳴ったら?!

ゴロゴロドッカーン!

屋外でものすごい物音がして、一同はびっくり仰天。ナニゴトですか。と頭にカーラーつけたオバちゃんも飛びあがったが(というのはないが)、みなさんは居間に集まり、窓の外を見てますます仰天した。

屋敷の周辺には霧が立ちこめ、この世のものとは思われない怪奇な空気が充満している。そして、暗闇に目を凝らしてみれば、蘇った死者たちが蠢いているではないか。

Dellamorte Dellamore (1994)』(いわゆる『デモンズ'95』)のような光景を目の当たりにして、めんたま飛出顔になる人々であったが、故人の妻アリシアと故人の友人代表ヒューゴ(ルイス・シエンブロウスキー)だけはニタリ笑いを浮かべて満足げ。「あー。みなさん。外に出ないでください。家の中にいれば安全ですからね」とかいう。

ところが、部外者のイヴァナさんだけはルールを破り、彼女は死んだ娘の姿を窓の外に見、飛び出していってしまう。するとどうであろう。彼女は愛する娘に駆け寄った刹那、血塗れになり、ぶわーんと消滅してしまったではないか。

これいったいどういうことだ。説明を求められたアリシアとヒューゴは秘密を打ち明けた。こんなの↓

「今宵、死んだホルヘはこの世に蘇る。これは彼の意思によるものである。生前、彼は妻に儀式の方法を教え、自分が死んだらその通りにやってくれと言い残したのである。妻アリシアと友人ヒューゴはその意思を継いで、本日の企画を実行した。彼が生き返ったらみんなもうれしいでしょう?」

こんな話を聞かされた一同は思い思いの感想を述べる。「じつにけしからん」という者もいるし、「彼が生き返るんならうれしいワ」という者もいて、わーわーとケンカになったりするんだが、そんなことはどうでもよくなってしまうような事態に発展するのである。

驚愕の事実を知らされた者たちは、まんじりとしない夜を過ごしつつ、ほんとにホルヘは生き返るのかなあ、と思いを巡らすのであったが、やがて彼らの目前に死者が現れ、ヒーヒーいわされる。

忘却の彼方に忘れ去られた痛苦の記憶の数々。虐待パパに再会して悶え苦しむ女。死んだ妻の悲鳴を聞いて苛まれる男。死んだ妹に目玉をえぐり取られるアンちゃん。彼らが嗅いだ血の匂いは本物。逃げ場はない。凝った手法のゴアゴア満載です。

彼らは一夜の恐怖遊園地を体験する。それだけでもお腹いっぱいの楽しさなんだが、この映画の見せ場はこれだけではないのですよ。上に書いたアリシアの打ち明け話は嘘ではないが、じつは、秘密がもうひとつあったのである。彼女とヒューゴはそれをみんなに隠している。それはなにかっていうと?!

続きは映画でご覧下さい。

この映画はたいへんおすすめです。イタリアンホラーを思わせる狂想色ライティング映像!独創的な凝縮ゴア!そしておもしろいエンディング!ブラボー!

トレイラー動画

Memory of the Dead (2011) trailer

感想

この映画をひとことでいうとこうである↓

マリオ・バーヴァ + 楽しいゴアゴア + テレノベラ!

Artsploitation Filmsの新作ということで期待していたが、これほどのもんだったとは。見るからにイタリアンホラー風の映像はいろんな映画の影響を受けているのだろうが、私的には、『ブラック・サバス (1963)』が強く思い出された。

基本はオマージュ映画だが、残酷描写は今風にばっちりだから、ゴアラバーも納得です。登場人物各自の物語があり、妊婦/虐待パパ/不幸な妹といろいろあって、オムニバス映画を観ているようなお得感。めんたまえぐったり、舌を引っこ抜いたりと定番もあるが、随所に見せるこだわりゆえ、ありきたりなものはやらない気合いが強く感じられた。

映画の冒頭で、悲しいメロディのわらべうたみたいなのが流れる。こんなの↓

There was once a seagull who fell in love with the sea. She'd moistened her legs in the white and salty foam. She'd fill the sea with presents: Flowers, garland, shells... which she'd dropped from the air in the middle of the waves. But in the morning the deepest sadness overwhelmed her as she found all of her presents lying all over the sand. She flew right into the sea filled with pain and rage. And so she drowned between the waves and her own tears.

昔々、あるところに海に恋したカモメがいました。カモメは愛する海に贈り物をしようと、お花や貝殻を集めて空から波に落としたんだけど、翌朝、見にいったら、ぜんぶ砂の上に散らばっていた。それを見たカモメさんは悲しみと怒りを感じて、うわーんと飛んでいって、波と涙に溺れて死んでしまいました。

この映画は、海に恋したカモメさんのように、愛の涙に溺れて死んでいく、アリシアという女の物語です。このあたりからわかるように、ラテンアメリカらしく、コテコテのテレノベラが全面的に攻めてくる。甘々のベチョベチョ恋愛話はラテンのJIS規格取得済みってかんじ。こんなのを日本人がやったらクサくて見ていられないが、ホルヘだのアリシアだのといった名前の人たちがやってるとなんだか許せてしまうよね。

この映画は題名が『〜・オブ・ザ・デッド』だが、ロメロ系のゾンビ映画とはぜんぜん違う。そこは期待しないで。

みんなも観よう!

49日?

日本人なら誰でも知ってるように、49日てのは法要をやりますよね。死者があの世にいく期限日といわれている。また、ヒューゴが儀式をやる場面では、ゴニョゴニョとおまじないみたいなことをしゃべるんだが、それがお経みたいに聞こえた。もしかして、この監督さんは日本のことを知ってるのかなと思ったけど、そこは訊いてみないとわからない。

私は『Memory of the Dead (2011)』を見てからいくつかのレビューを読ませてもらったんだが、「まぁまぁですね」「そこそこですね」「悪くはありませんよ」といった調子の、私からすれば、おまえらなー、といいたくなる感想が多くて驚いたが、ガイジンさんには『49日』という概念がわからないのかもな、という風にも思った。

ヴァレンティン・ジャビア・ディメント監督

レビューを書いてて気づいたんだが、この映画のヴァレンティン・ジャビア・ディメントという監督さんは、アルゼンチンの無予算大馬鹿インディーズ・プロダクション、Gorevisionの『Goretech: Welcome to the Planet Motherfucker (2012)』に出演しているではないか。おー。Gorevisionさんに訊いてみよう。上のお経の話も聞けるかもしれないから、なにかわかったらお知らせします。Gorevisionはこちらの最新トレイラーが話題です↓

US版DVDが発売中

US版DVDはArtsploitation Filmsのヤツには珍しく、オマケがなんにもない。ブックレットもない。この映画の不満はその点だけ。英語字幕つき↓

以下にネタバレを書きますが、この映画は最後のtwistがとてもおもしろいから、未見の方は読まない方がいいですよ。

ネタバレです

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原題: La memoria del muerto
別題: La memoria del muerto
A Memória do Morto
Memory of the Dead
制作年: 2011年
制作国: アルゼンチン
公開日: 2011年10月29日 (アルゼンチン) (Buenos Aires Rojo Sangre Film Festival)
2012年4月15日 (アルゼンチン) (BAFICI - Buenos Aires Film Festival)
2012年7月23日 (カナダ) (Fantasia International Film Festival)
2012年9月20日 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest)
2012年10月11日 (スペイン) (Sitges Film Festival)
2013年3月28日 (アルゼンチン)
imdb.com: imdb.com :: La memoria del muerto
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脚本/原案
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プロデュース
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編集
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