2013/11/22 (Fri) at 5:30 pm

映画|肉|We Are What We Are

カニバル家族を描いたメキシコのホラー映画『猟奇的な家族 (2010)』のUSリメイク。ビル・セイジアンビル・チルダーズジュリア・ガーナーマイケル・パークスニック・ダミチ。監督ジム・ミックル。2013年。

肉 / We Are What We Are DVDDVD画像

どっかの田舎町。

貧乏5人家族が登場。父(ビル・セイジ)、母(キャシー・ウェズリー)に加え、3人の子供たちは、年長の姉(アンビル・チルダーズ)、少女の妹(ジュリア・ガーナー)、坊やの弟(ジャック・ゴア)というメンツ。

雨の中、具合の悪い母親が無理をして買い物に出たら、途中でドテッとスッ転んで、水溜まりに転倒。溺死をした。残された父と子供たちは深く哀しんだ。お葬式が行われた。

彼らはごく一般的な信心深い家族のようだが、じつは、カニバル一家である。人知れず、誰かを拉致/監禁/殺害し、シチューにして食ってしまうというのを長年やっているんだが、誰にもバレていない。過去20年間で、同じ町だけで3人の行方不明者、50マイル圏内に広げると30人以上の人が消えているんだが、警察は事の重大性にまったく気づいていない。

カニバル家族はこっそり犯行を繰り返していたが、最近の大雨で地面が崩れて、地下に埋めた人骨がゾロゾロ出てきちゃう。町の医者(マイケル・パークス)が小さな骨を拾って、ふと疑いを抱く。この老医師は娘をさらわれた遺族であり、カニバル家族をよく知る人物でもある。彼は「これって人骨?」と疑問を抱き、そしてやがて、家族の正体に気づくのである。

町の保安官にニック・ダミチ。カニバル家族の長女に惚れている保安官代理のアンちゃんにワイアット・ラッセル。カニバル家族の隣人の親切オバちゃんにケリー・マクギリスラリー・フェセンデンもチョロッと登場します。

この映画は、よくあるカニバル映画、『下品で残虐非道なグロゴア満載のカニバル映画!』ではないんですよ。とっても地味なドラマなんですよ。でもすごくいいの。不肖、私、『傑作』と呼ばせて頂きます。ヨカッター。

We Are What We Are!

私たちは私たちなんだ!

まさにこの題名を具現するエンディングは、すばらしいハッピーエンディングです。

トレイラー動画

We Are What We Are (2013) trailer

邦題『肉』

We Are What We Are』は邦題『』にて2014年5月10日より劇場公開予定だそうです↓

肉ですよ、肉!ニク!ナマニクさんがなんかやってるの?ということはないと思いますが。

感想

私はオリジナルの『猟奇的な家族 (2010)』をあまり好きじゃなかったんだが、これはたいへんよかった。リメイクといっても、おおざっぱな設定を残してお話は別モノなんだが、これを観たらば「そうか!このお話はこういうことをいいたかったのか!」と納得させられ、オリジナルで不十分だった点を教えてもらったように思う。こんな例はたいへん珍しいですね。オリジナルよりリメイクのほうがいいなんて。

注目されるのはカニバル家族の動機である。オリジナルではそれがまったく明かされず、わけわからん話だったが、じつはリメイクにおいても、家族がカニバルを行う動機は薄ぼんやりとしか明かされない。

彼らはなぜ人肉を食うのだろう。

貧乏だから人肉を食うのか。ノーである。彼らは貧乏ではあるが土地持ちであり、トレイラーパークを経営している。その収入は少ないが、誰かが外に働きに出れば家族のめし代くらいはつくれそうなもんなのに、なぜか人肉食いに固執する。

他人を不幸にするために人肉を食うのか。これもノー。彼らは隣人を愛する人々で、やむにやまれぬ事情から、「こうするしかないんだ」と諦念の境地で人肉食いをやっている。

人肉が好きだから人肉を食うのか。これはあるかも。彼らが人肉シチューを食うときには、しみじみと「うめぇなあ」顔になる。あれはまったく遠藤憲一の「カレーってうめぇなあ」に匹敵するウマウマ顔なので、彼らはガチで人肉が好きなんだなあと思ったが、しかし、あれは単に腹ペコだったからではないかという気もするので、これもまた決定的な理由とはいえない。

唯一の手がかりは宗教的な理由ということらしいが、それがどんな宗教なのか具体的にわからない。家族のカニバル歴史は1870年代のご先祖様のお話に遡るそうだが、それはそれでわかったが、だからといって、現在もカニバルを続ける動機としては薄いように思われる。

この映画は普通のカニバル映画のようなゴアゴアがあるわけでなく、淡々としたドラマが進行するにおいて、観客は忍耐を強いられる。理由はわかんないし、スローだし。そこを我慢して観た。

人肉食いの理由がわからない点に加え、驚かされるのは父親の無能さである。ここんちのパパは、オスライオン並に働かない。冒頭でママが死んだのは、元はといえば、具合が悪いのに無理して買い物に出たからなんだが、この男は自分が買い物にいけばよかったなんてぜんぜん思わない。そのくせ妻の死に嘆き悲しみ、子供たちに頼っている始末である。

彼は信心深く、めしのときには神妙な顔でお祈りをする。父親としての仕事は「アーメン」とお祈りをするだけだと思っているようである。だからとてもよいパパとはいえない。父親の信心深さというのは、信仰が篤いというよりも、神様にお祈りをしてさえいれば自分たちの罪がチャラになると信じてやっているだけではないか。勝手な野郎だ。

こんな父親を持つ子供たちはどうかというと、3人の子供たちは各自の想いがある。長女の娘は恋の悩みがあるし、次女は「いつか逃げ出したい」と思っているようだ。万感悲喜交々の家族ドラマがあるわけだが、つまらないってことはないが、やはり地味である。

この映画はブッチャー・ブラザーズ(ミッシェル・アルティエリ + フィル・フローレス)の『パニック・ゲーム (2006)』に似ている。あれはヴァンパイア血族に生まれた兄弟の苦悩を描いた異色ドラマだった。私はとても好きである。

でもさ、ヴァンパイアさんは血を飲まないと死んじゃうから切実だったけれども、こちらのカニバル家族は人肉を食わないと死ぬというわけでもないのだから、同情する気が起きない。

はっきりいって、最後のへんまではあまりおもしろくない。題名通り「私らは私らなんだ」という風に理解するしかないんだな。そこに文句をいうなってことなんだな。と我慢しながら観続けていったところ、最後の最後でドッカーン!おー!

あれはすばらしいエンディングだった。モヤモヤきぶんがパッカーンと解き放たれ「そうか!おまえらはおまえらなんだな!なるほどな!わかったヨ!」と納得できた。人間たるもの、清濁を飲み込んで「おれはおれであるしかないのだ」と突き進むことが、ときには必要である。そんな人生というものを、まことにもってストロングな映像で表現しているではないか。前半の陰鬱ドラマはこれのために配置されていたんだなと後から思った。すごいぞ。

と、ベタ褒め感想になったが、これを観て、あなたが同じように思うかどうかは知らない。「わけわからん!」といっている人も多いから。気になる方は、試しにご覧になってみてください。んで、感想を教えてください。

ジム・ミックル監督はいいよ

ジム・ミックル監督の長編デビュー作品『Mulberry Street (2006)』は、予算カツカツながら、インディーズ魂が燃えるゾンビ映画だった。『ネズミゾンビ (2006)』なんてへんな邦題をつけられてしまったが、内容はすごくおもしろい。中年貧乏ボクサーが鉄拳パンチだけを武器にゾンビと闘うのである。

次の『ステイク・ランド 戦いの旅路 (2010)』もすごくよくて、とにかくこの人の映画は、相手がゾンビだろうがヴァンパイアだろうが安易に銃などを使わず、ゲンコツだのヤリだの原始的な武器で敵を蹴散らす打撃重視の暴力描写、そして熱い男のドラマがウリである。

今回の最新作『肉 (2013)』は過去の2作品に比べると作風が異なり、アクションは控えめで、ドラマ描写に力点を置いているが、やはり通底するものは同じであるように思える。ドラマが熱い!

保安官を演じたニック・ダミチジム・ミックル監督の映画にいつも主役で出てきて、男らしいアクションをやっていたが、今回は脇に下がってパンチやキックなどはやらない。

また、彼の映画にいつも顔を出すラリー・フェセンデンもチョロッと出る。これまで何度も書いているが、フェセンデンさんが支援する監督は掘り出しものが多い。たまにハズレもあるが、彼が絡む企画はへんな映画ばかりでそそられる。彼はインディーズ監督からすごく支持されているし、自身の作品もおもしろいからいつも注目をしています。

Blu-Ray/DVDは来年1月発売予定

私はこの映画をiTunesUSで観ましたが、Blu-Ray/DVDは2014年1月7日にリリース予定だそうです。

Memorable Quotes

Iris: What if we were different? If we weren't like we are?
Frank: What? Come here, honey. What are we like? It was God chose us to be this way. If we don't do as he asks, we get sick from the poison. If we don't do as he asks, we get sick from the poison. One by one we'd die. You can't hide a doubtful mind from him, honey. He knows all, sees all. You're stronger than you know, girl.
Iris: I know, Daddy. One more day.
Frank: I love you so much. I love you so much.
Iris: I love you too.

Iris: It is with love that I do this. God's will be done. Alyce Parker. Lamb's Day, 1782.

Frank: We have kept our tradtion in its purity, and seek our reward in the hereafter. Amen. We were lost, like the lambs. But have found the light that will lead us home. Let us eat.

Frank: All is forgiven, in the eyes of the Lord.

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原題: We Are What We Are
別題: Ritual sangriento
Somos o Que Somos
Nous sommes ce que nous sommes
Somos lo que somos
Iskonski nagon
Vagyunk, akik vagyunk
Somos lo que hay
Jestesmy tym, co jemy
To smo šta smo
Мы такие, какие есть
Kan Kokusu
邦題(カタカナ): 『肉』
制作年: 2013年
制作国: アメリカ/フランス
公開日: 2013年1月18日 (アメリカ) (Sundance Film Festival)
2013年5月21日 (フランス) (Cannes Film Festival)
2013年6月6日 (オーストラリア) (Sydney Film Festival)
2013年9月6日 (フランス) (Deauville American Film Festival)
2013年9月8日 (フランス) (L'Étrange Festival)
2013年9月20日 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest)
2013年9月27日 (アメリカ) (Los Angeles, California)
2013年9月27日 (アメリカ) (New York City, New York)
2013年10月17日 (カナダ) (Toronto After Dark Film Festival)
2013年10月25日 (イギリス)
2013年11月17日 (スペイン) (Gijón International Film Festival)
2014年1月24日 (ドイツ) (DVD)
2014年5月10日 (日本)
2014年8月4日 (イタリア) (DVD)
2014年11月23日 (イタリア) (Torino Film Festival)
2015年1月20日 (スペイン) (Madrid)
2015年1月23日 (スペイン) (internet)
2015年2月18日 (スペイン) (DVD)
2015年2月21日 (スペイン) (Barcelona premiere)
imdb.com: imdb.com :: We Are What We Are
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞
  • 肉/幸せの味をおしえて - A Cinematic Museum (of Arnold Killshot)

    『肉(原題:We Are What We Are)』 2013年 アメリカ 監督・脚本:ジム・ミックル 出演:アンバー・チルダース、ジュリア・ガーナー、ビル・セイジ、ジャック・ゴア、マイケル・パークス、ケリー・マクギリス、ニック・ダミチ(兼脚本) 他 ※レビュー全編にタイトルで仄めかされている程度のネタバレあり。物語の重 ...

    2014/5/13, 12:54 AM

ホラーSHOX [呪](『ほらーしょっくすのろい』と読む)は新作ホラー映画のレビュー中心のブログです。たまに古いのやコメディ等もとりあげます。HORROR SHOX is a Japan-based web site, which is all about horror flicks.

 

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