映画|復讐の絆 Revenge: A Love Story
原題『復仇者之死』。香港の純愛リベンジ超ヴァイオレンス。蒼井そら、ジュノ・マック。監督ウォン・ジンポー。2010年。
妊婦をブッ殺し、胎児を取り出し、川に捨てるという残虐非道なシリアルキラーが出現する。ニュースはこのネタで連日大騒ぎ。
警察は大規模な捜査を行い、若い男(ジュノ・マック)を逮捕する。男は厳しい取り調べを受ける。
耳に針を突き刺すわ、画鋲をブスブス刺すわ、めんたまに銃口を突きつけて脅すわ、人権無視の暴力的な取り調べが進行する。それでも犯人男は「フフフ」と不敵な笑みを浮かべ「おまえらにヒデー目に遭わされるのは、これが初めてじゃないぜ」なんてぬかす。刑事たちは「なぬぅう」つって、さらにうりゃうりゃと責め立てる。
ところ変わって、ここはどっかの部屋。若い妊婦さん(蒼井そら)が心配ゲな顔でテレビニュースを見ている。ニュースの内容は妊婦を襲うシリアルキラーの容疑者がつかまったよという内容。彼女は憂鬱そうに画面を眺めたのち、隣の部屋に移動し、びっくりすることをやる。ウギョオオオェエエエエェ。
フラッシュバック。警察に逮捕された若いアンちゃんと妊婦女の純愛物語が明かされる。あー、彼らはこういう関係だったんですか。そして、こんなヒデー目に遭ったんですか。と知らされた私らはギョッとする。
トレイラー動画
852 Films製作第二弾
『復讐の絆 Revenge: A Love Story (2010)』はジョシー・ホーが設立した香港の製作会社、852 Filmsによる『ドリーム・ホーム (2010)』に続く第2弾の映画です。
『ドリーム・ホーム (2010)』はすばらしいゴアスラッシャー映画だったですが、こちらはスリラーというのか、ホラーというのか微妙な雰囲気。スリラーにしてはゴアゴアがある。ホラーにしては物語性がある。スリラーとホラーの中間点のような映画。バイオレンス描写は『ドリーム・ホーム (2010)』ほどではないけれど、なかなかのもんであった。
感想
この映画は展開がおもしろいトコなんで、ネタバレ少なめに感想を述べます。
蒼井そらちゃんがスゲーよかった。彼女はこの映画では、オツムの足りない不思議ちゃん美少女を演じています。元AV女優がお安いVシネマに出てきてアホなお色気演技をするってやつとは明らかにちがう。女優!ってかんじがした。
つっても、私、中国語がさっぱりなので、彼女の言語能力はわかりません。映像で見ている限り、いい演技だったとおもう。メイキングを見ると「いやー、中国語たいへんっす」とかいってるんだけど、どうなんだろうか。
蒼井そらが演じるのは精神病院に放り込まれる不思議ネーチャンで、台詞が少ないのです。ポケー顔でだんまりしている場面が多い。彼女のために配慮された役柄なのかもしれない。でも、それが不自然ということはない。違和感などはまったくない。
惜しいのは、彼女が死亡するシーンがサラッと終わってしまったという点です。あんなにいい存在感を示したのだから、もっと印象的な散り際を用意してほしかったですなあ。生首になって飛んでくとか。
んで、映画の感想ですが、これはなかなかのもんだった。すごい(でも残念な点もあったので最後まで読んでください)。
犯人男が逮捕されるまでは、いったいどんなキチガイなんだ!妊婦さんをブッ殺すなんてけしからんですなあ!と思うんだが、フラッシュバックで彼の過去が明かされると、気の毒で、かわいそうで、こりゃまたたいへんな目にお遭いになったんですなあ、と思えてきて、留置場に差し入れしたくなってくるよ。
回想シーンと現在の入れ替わる編集がうまい。わかりやすく、ドラマティックに見せていた。私はふだん「キラーにも事情があるんですよ」的な話が好きじゃないんだが、この映画の場合はドラマの描き方が巧くて、感情移入することができた。
この映画はシネマトグラフィがきれいで、陰影の映像表現がとてもよかった。レイプシーンは陰惨かつかわいそうであった。レイプシーンに関していうなら『アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ (2010)』よりもこっちのほうがずっと泣ける。
と、まァ、最上級の褒め言葉を述べといて、ここから先は文句なんだが、後半20分のtwistは「あれれ」であった。ああいうのってつまんないなあ。私にはわからない。好みによって評価がわかれるところだろうなあ。
じつに惜しい。あそこまで完璧だったのに。最後にきて(後半20分)、ガッターンと印象が落ちてしまった。とはいえ、見て損するもんではないと思うんで、みんなも見るといいよ。いったいどんな結末かっていうのは、ご自身の目で確かめてください。あなたはあれを気に入るかもしれないし。
あの結末を気に入るというひとがうらやましいですよ。もしそうであるなら、完璧な映画だったとおもうんで。
あれはこういう意味なんですよ、わかってねーな、おまえは!というひとはぜひその意味を教えてください。
最後になりましたが、キラー役を演じたジュノ・マックさんというひとは私はぜんぜん知らないのですが、香港のポップシンガーだそうで、さらにこの映画では "original story" にもクレジットされているので、文章も書くんですか。多才なひとなんですなあ。『ドリーム・ホーム (2010)』にもチラと出てきた。この映画の彼のキラー演技はよかったです。
DVDのオマケ
香港版DVDは英語字幕つき。メイキングがついていたよ。
ウォン・ジンポー監督
以下ネタバレを書きますけど、読まずに映画を観た方がいいですよ。
ネタバレです
!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
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『復讐の絆 Revenge: A Love Story』 | |
2010年 | |
香港 | |
2010年10月22日 (香港) (Hong Kong Asian Film Festival) 2010年12月2日 (香港) 2011年5月6日 (イギリス) (Terracotta Far East Film Festival) 2011年7月1日 (ロシア) (Moscow Film Festival) 2011年9月8日 (フランス) (L'Étrange Festival) 2011年10月6日 (韓国) 2011年11月25日 (イギリス) (Norwich) 2012年4月13日 (スペイン) | |
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