2013/10/5 (Sat) at 5:08 am

映画|悪霊のはらわた|Wither

スウェーデンの『死霊のはらわた』オマージュ全開ホラー映画。血尿ジョバー!めんたまグロリン!破壊的神髄ゴア!パトリック・アルムクィストリサ・ヘンニヨハネス・ブロスト。監督ソニー・ラグナトミー・ヴィークルンド。2012年。

悪霊のはらわた / Wither DVDDVD画像

ここはスウェーデン。

幸せカップル(パトリック・アルムクィストリサ・ヘンニ) + 男女数名の仲良し仲間が、週末バカンスで森の山小屋にやってきた。カワイコちゃんばかりで、さすがはスウェーデン。

彼らがなぜこの場所を選んだかというと、カップル男のパパが「小屋を使っていいよ」といってくれたからなんだが、そのパパがどういう経緯でその小屋を知ったのかは定かでない。

映画を見終えてからこの点に気づくと、あのパパはなんだったのかと気味悪く思えるだろう。

さて、山道をドライブして、小屋に着いたら、わりといいかんじであった。外見はオンボロだが、内装はまずまず。電気は点くし、家具もそろっている。なかなかいいじゃないの。

みなさんは楽しく乾杯。ところが、ここでひとりの娘(イェシカ・ブルムクヴィスト)が急に具合が悪くなる。トイレにいったら目がまっかで血尿ジョバー。血反吐をドバー。きゃっ。ナ、ナ、ナンスカコレ!?

じつは、連中が小屋に着いたとき、彼女だけはこっそり裏の窓から家に入った。中で待ち伏せをしてみんなを驚かせてやろうとしたら、地下室を見つけて、へんなものに遭遇した。

邪悪な古代の精霊か。はたまた何十億年も眠り続けてきた宇宙人か。その正体は謎だが、暗闇の中になにががいて、ギロリ視線を浴びた。相手に触れたわけでなく、目を見ただけだが、これが地獄の片道切符だった。そのせいでへんになっちまった。めんたまが奇怪にぐるーり。きもちわりー。

彼女はトイレでバタンと気絶。その後、しばらくしたら起きあがり、急にガオーと狂って、友達を襲い始めるではないか。上唇を食いちぎり、スルメイカを齧るみたいに、肉片をうまそうにぺろりと食ってしまったよ。たいへんだ。わーわー。

ゾンビのようだがゾンビでない。悪魔憑きのようだが悪魔憑きでない。この病はおそろしい感染力で伝染する。カミカミされたら伝染する。ひっかかれたら伝染する。血を浴びたら伝染する。犠牲者はどんどん増える。

ひとりづつ狂って小屋の中は血塗れ死体だらけドロドログチャグチャに。ゴア描写はピカイチ。撮影うまい。ライティングもうまい。すごいすごい。

すったもんだの大アクションの末、最後は地下から『邪悪のご本尊』がジャジャーンと出てくる。この敵がおそろしいのは『目が合ったらオダブツNO WAY!』という点なのです。こいつが現れたら、まともに顔を見ちゃいけない。みためはグジュグジュ地底怪人ってかんじだが、オッパイがあるんで女らしい。いったいなんなの?!

スウェーデン版『死霊のはらわた』は、近年まれに見る良作オマージュ映画であり、弾ける怒濤インディーズホラー気合いの一発オロナミンCです。これはいいよ。

トレイラー動画

Wither (2012) trailer

邦題『悪霊のはらわた』

情報を教わったので追記します。この映画は邦題『悪霊のはらわた』にて2014年1月8日にDVDが発売予定だそうです。

感想

Evil Dead』『Night Of The Living Dead』『The Texas Chain Saw Massacre』『Bad Taste』といった名作は、しょっちゅうオマージュされる。ホラー愛に凝り固まったインディーズ監督が一生懸命やるが、たいていはコケる。小ネタに走って自己満足に浸るか、あらぬ方向にいって「あのなー」と罵倒される。そんなのが多いです。

という中にあって『悪霊のはらわた (2012)』はビョーンと飛び抜けて登場した。こちらの主人公男もアッシュと同じ青いシャツを着て、全身に血を浴びて闘うが、性格もやることもアッシュとはまるで違う。『Evil Dead』に最敬礼をしつつ「これがいまのおれらのホラー映画だ!」と迫る挑戦トガリ感は、昔のサム・ライミみたいだ。このインディーズ魂こそが『Evil Dead』オマージュにふさわしい。

みなさんのレビューを読ませてもらったところ、好意的な感想が多いが、中には文句をいっているひともいる。この批判的レビューはおもしろかった↓

「『Evil Dead』の良オマージュだと聞いて見にいったのに、ぜんぜん笑えないじゃないか!」といって失望したそうな。彼にとっては「『Evil Dead』はお笑いスプラッター以外はありえない!シリアス路線なんか許せない!」ということだが、これも、まァ、ひとつの愛ではありますね。

悪霊のはらわた (2012)』はおおまじめに恐怖を演出しているので、ライミのようなお笑いスプラッターは出てこない。そこにあるのは、恐怖のゴアゴア血反吐肉体破壊!なんですよ。と、口でいうのは簡単だが、この映画の巧さは、単にゴアメイクがよくできているのみならず、撮影とライティングに創意工夫が凝らされているのだろうと思った。

狭い階段や廊下での格闘、天井が突き抜けて落下する場面など、緊迫感がある。カメラがガチャガチャ動くのはよくある風だが、上下左右の画角で、常に恐怖を煽りつつ、同時に、位置関係を容易に把握できるようにつくってある。

こういうのって、ハリウッドの大予算映画なら、綿密に計画を立ててから撮るんだろうけど、時間だけは腐るほどあるDIY路線のインディーズ監督は、趣味でやってる人間の強みで、うだうだと何度も撮り直し「半年で終わるはずが、3年かかった」なんて話もよく聞く。DVDのオマケには数ヶ月に渡る撮影日記が入っている。それを見る限りは手際よくやってるように見えるが、実際にどうだったのかはわからないが、いずれにしても、こんな風に成功している例は少ない。

ソニー・ラグナトミー・ヴィークルンドというコンビ監督の映画を見たのは『Madness (2010)』以来で、あれはつまらないインディーズホラーだった。ものすごい躍進UP。『Blood Runs Cold』てのもあって、こちらは2011年のfrightfestで話題になったそうなので、こんど見てみようと思う。

ナマニクさんもすごく褒めているよ。おもしろいから読ませてもらうといいよ↓

みんなも観よう!

この怪物さんの正体は?

視線ビームで人間を狂わせるこの怪物はいったいなんなのか。不明のまま映画は終わる。「日本の宗教観にある『穢れ』に似たものだろうか」と私は勝手に想像したが、中には、説明のなさに不満を覚える向きもあるようだ。

上のあらすじでは割愛したが、映画の途中でライフルを持つオッサン(ヨハネス・ブロスト)が乱入する。彼は奥さんと娘をなくした気の毒男なんだが、その台詞が以下である↓

"My grandfather told me a story when I was a little kid. About a legend that was about creatures that lived beneath the ground. I was told that if you trespassed on their lands, things could go very bad. If you saw one of these creature, you should turn and run as fast as you could. They were so powerful if you gazed into their eyes, they would take your soul."

「子供の頃、地下に住む怪物の伝説をおじいちゃんに教わった。そいつの領域に侵入するとひどい目に遭う。もしそいつを見たら、全力ダッシュで逃げろ。彼らにジロリと睨まれたら魂を抜かれる」

映画の中で、怪物の正体に関してヒントになるのはこの部分だけだった。本当にスウェーデンにこんなおとぎ話があるのだろうか。と思い、スウェーデン人の友達に質問をしたら「そうそう。こういう伝説があるよ」と教わった↓

「Vittraは森の地下に住む不可視の妖精。牛を飼っている(牛も不可視)。普段は人間に悪さをしないが、彼らの邪魔をしたり、彼らを敬う儀式を怠ると、ヒデー目に遭わされる」

Vittra』というのはこの映画の原題なので、そのものズバリなんだが、上にリンクしたWikipediaを読むと、この映画のモンスターとはだいぶ違う。

これを教えてくれたスウェーデン人は「勝手にVittraの設定を変えやがって」と、やや不満ゲな様子だったが、それがスウェーデン人の一般的な反応なのか彼の個人的な好みなのかはわからない。

他にも疑問点があった。

最後に怪物さんがぐわーんと出てくるシーンでは、いかにも意味深演出で、なにかの本が映る。その部分は字幕ナシ。あれはなんだろと思ったら「1943年に出版された犯罪小説のペイパーバック。映画との関連は特にないのではないか」ということであった。

なーんだ!ちょっと拍子抜けである。もしかしたら、その犯罪小説の中にネクロノミコン絡みの話が出てくるのかとさらに質問したくなったが、スウェーデン人はめんどくさそうにしているのでもうやめた。

じつはもうひとつ訊きたいことがあった。

この映画の舞台となる小屋は表のドアがみっつあるのである。どれを開けても中は同じらしいが、ものすごくへんな設定である。これについても質問しようと思っていたが、あんまり意味ないのかなー、という気もして、やめにした。やたら質問責めにすると、スウェーデン人は怪物に変身するかもしれないし。

US版DVDはブックレットつき

映画|ウィザー|Wither ブックレットカバー 画像

Artsploitation FilmsのDVDはいつもブックレットがついてくる。8ページ。カラー。内容は、thrill me!のRyan Clarkの解説と監督コンビ、ソニー・ラグナトミー・ヴィークルンドのインタビュー。解説文から引用↓

If Sam Raimi and Dario Argento had produced a horror flick directed by a meth-fueled Ingmar Bergman, the result would probably look a lot like WITHER. Now, let's not kid ourselves here: WITHER doesn't come close to the artistic heights of Bergman, nor the nightmarish illogicality of Argento, nor the slapstick humor of Raimi. Directors Sonny Laguna and Tommy Wiklund make no grand attempt at profound arthouse cinema. It's just another cabin in the woods movie - nothing more, nothing less.

サム・ライミ + ダリオ・アルジェントが製作し、ヤクをしこたまキメたイングマール・ベルイマンが監督をやったらこんな映画ができた。『悪霊のはらわた (2012)』はそんなホラー映画である。なんていう冗談はさておき、この映画には、ベルイマンのような芸術性はない。アルジェントの不条理悪夢もない。ライミのお笑いもない。本作の監督、ソニー・ラグナトミー・ヴィークルンドは、それほどたいそうな連中ではない。これは、いわゆる『森の小屋』系ホラー映画である。それ以上でもそれ以下でもない」

なんて人をケムに巻くような書き出しの解説文はけっこうおもしろいんだが、じつは、上に書いた「怪物の正体がぜんぜんわからないではないか」という疑問に対する回答が、解説の中に示されている↓

Laguna and Wiklund have crafted a film that harkens back to the days when the most terrifying thing you could think of was the unknown.

この世で最もおそろしいのは『未知のもの』であると人々が信じていた頃の気持ちを呼び戻すホラー映画を、ラグナとヴィークルンドはつくったのである。

これまたケムに巻くような言い回しでヤラレちゃった気がするが、まぁ、そうですね、この映画のファンタジーを『こわい』と思えるかどうかが、評価の分かれ目になるのだろう。

長くなるのでここらへんでやめにしとくが、このブックレットには、他にも興味深いことが書かれてある。また、その冒頭には、監督コンビからファンに向けたメッセージがある。それを読むとあなたは「買ってよかったなあ」と深く満足をするだろう。だから買うといいですよ。

DVDのオマケ

オマケは以下↓

  • Behind The Scenes
  • Deleted Scene
  • Trailer

Deleted Sceneは、エンディングのその後のお話。2人の警官がやってきて、最後に生き残った〇〇さんは助けてもらえる(てか犯人扱いされる)んだが、警官が地下に降りて、またまたアレに襲われちゃう!という話はけっこうおもしろかったが、これはカットされた。一部未完成で絵コンテが入る。おまわりさんはがんばったのに!

このDVDは英語字幕つき。

Artsploitation Filmsというレーベル

ところで、このDVDはArtsploitation Filmsという版元から出ているんだが、先に絶賛レビューを書いた『Hidden in the Woods (2012)』と同じである。この会社はとつぜん出てきて(前からあったっけ?)、素晴らしいホラー映画を次々にリリースしはじめた。サイトにこう書かれてある↓

Not strictly a genre label, ARTSPLOITATION FILMS looks for intriguing, unsettling, unpredictable and provocative films from around the world. Artsploitation's focus knows no boundaries and we hope you'll enjoy our unconventional cinematic tastes.

ARTSPLOITATION FILMSは、あなたの好奇心を煽り、不安を煽り、予測不能かつ物議をかもす映画を常に発信するジャンル・レーベル。我々は国境に捕われない。当レーベルの常軌を逸したシネマ・コレクションをみんなは楽しんでほしい。


artsploitationfilms.com

私は『Hidden in the Woods (2012)』『悪霊のはらわた (2012)』に加え、『Vanishing Waves』を買った。これはリトアニア/フランス/ベルギー合作の、硬派な雰囲気のSF映画。おもしろそうなんだが、観るのに体力を要する大作らしく、まだほおってある。観ようと思っているんですが。ちなみにこれはWOWWOWで10月19日にやるそうです。日本では初公開↓

Artsploitation FilmsのDVDにはいつもブックレットがついてて、ジャケがリバーシブルで凝ってて、ファンが喜ぶ仕様になっている。『Vanishing Waves』に至ってはDVD2枚組という豪華さ。

ここは注目のhottestレーベルです。私が買ったヤツ以外で『Toad Road』てのもおもしろそうです。

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原題: Wither
別題: Cabin of the Dead
Cabin of the Death
Vittra
邦題(カタカナ): 『悪霊のはらわた』
制作年: 2012年
制作国: スウェーデン
公開日: 2012年9月26日 (スウェーデン) (Lund Fantastisk Film Festival)
2012年11月7日 (スウェーデン) (Arctic Light Film Festival)
2013年5月2日 (ドイツ) (DVD)
2013年5月4日 (アメリカ) (Stanley Film Festival)
2013年5月31日 (ドイツ) (DVD)
2013年6月7日 (スペイン) (Nocturna, Madrid International Fantastic Film Festival)
2013年8月9日 (スウェーデン)
2013年8月20日 (アメリカ) (DVD)
2014年1月8日 (日本) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Wither
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup

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