PV4,316

!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

本ページは『映画|ヒドゥン・イン・ザ・ウッズ|Hidden in the Woods』のネタバレ全開です。この映画の普通の(ネタバレのない)レビューはこちらにあります↓

ネタバレ結末

姉妹と奇形弟が暮らす山小屋に侵入者が現れる。森をハイキングするおきらくコンビが奇形弟を見つけ、山小屋にやってきた。彼らは妹をレイプ。姉は出かけていて留守だった。

繰り返すが、この映画に出てくる男たちは、奇形弟を除き、女と見れば強姦したがるゲス男ばかりである。じつにまったく陰惨な出来事ばかりで驚くが、さらにびっくりすることが起きるんですよ。

妹はギャーギャーわめいて抵抗していたが、やにわ、ギロリと目を剥くや、男のノドにガブリ。ギョェエエエエエ!彼女は男をケモノのように襲って、殺して、食ってしまう。奇形弟もやってきて、ふたりはクリスマスをお祝いするように、人間を食う食う食う食う食う食う。うへー。

そこに姉が帰ってきて「それをやるなといったでしょ!」つって怒る。妹は「だっておねえちゃん!」とかいう。その会話からして、彼女たちは以前に人肉を食ったことがあるらしい。父親がやらせたらしい。姉妹は人肉嗜好を封印していたが、こうなるとタガが外れた状態で、人肉を食いまくる。

以後、食料の心配がなくなったので、姉は売女をやめた。彼らが旺盛な食欲を満たす場面は、それはそれはおぞましい光景であるが、しかしながら、観客はこう思うのではないか。いったい誰が彼女たちを責められようか。食って、生きる。彼女たちはそれを体現しているだけではないのか。

姉妹と奇形弟は幸せになった。いつも3人いっしょ。お腹が減ったらめしはいくらでも手に入る。彼女たちをいぢめる者は誰もいない。これ以上の幸せはないよね。

と、そこに、こんどはヤクザの子分たちがやってくる。彼らは父親が隠したヤクを求めてやってきた。「しらないしらない」といっても許してもらえず、ボコボコに拷問される。姉妹はガオーと反撃。男たちを凄惨にブッ殺した。それだけでは飽き足らず、ヤクザの親分をお仕置きすることにした。

「このさいきちっとケリをつけてやるわ」

思えば、この姉妹は幼少の頃から父親の影に怯え、ひたすらに頭を低くして生きてきた。父から逃げ出した後も、出会うのはゲスなやつらばかりで、いいことなんかなにもなかった。誰にも親切にされたことがなく、姉妹と弟だけで逃げてきた。そんな彼女たちが、人生初にして、『攻撃』の意思を明瞭に宣言したのである。これはすごいことです。

トリオは親分の自宅を急襲。彼をとっつかまえて「わたしらに手をだすな。もうほっとけ」と対決しているところに、狂った父が乱入。このゴキブリ男は刑務所を逃げ出し、姉妹を嗅ぎつけてやってきた。わるもんながらこの生命力/執念/根性は見上げたもんである。クライマックスは姉妹と奇形弟とヤクザと狂った父が入り乱れ、凄惨な殺し合いに発展します。

ここで驚愕の事実が明かされる。妹の実の父親はこの親分だったのである。その昔、親分は子分の(つまり父の)妻にムラムラしてレイプした(あるいは同意の浮気だったのかも)。そしてふたりめの娘が産まれた。それが妹だった。

映画の冒頭で父親が妻を「ビッチめ!死ね死ね!」つってブッ殺したが、あれはそういう意味だったんですね。その後、成長した娘たちを見た親分がいった台詞「母親に似てええ女になったのう」に、父親が顔を歪めたのは、そんな昔の遺恨があったからなんですね。

この事実を知った姉妹はがびーんと硬直する。さらに容赦なく追い打ちをかける父親の台詞↓

father: We are a happy family! I'm your father!

「おれらは幸せ家族!おれがおまえのパパだぞ!ガハハハ!」

妻を殺し、父親らしいことなどはなにもせず、娘をレイプした男がこんな台詞を吐き、そして、そのせいで産まれた奇形弟をドカドカとケトばすのである。

この瞬間、このドタンバ修羅場において、姉妹の心にどんな思いが去来したのだろう。父親がレイプ者であろうがヤクザの親分だろうが、それがいったいなんの意味があるというのか。そこには当事者にしか理解し得ない複雑心理があったのだろうと推測されるが、名状しがたい怒りが増幅されたことだけは間違いないのである。ドッカーン!ダダダーと敵をみなごろし!うりゃうりゃ!奇形弟はガオー!

銃声。悲鳴。チシブキ。ウギャー!

静かになった。

部屋の中で全員が血塗れでブッ倒れている。姉妹と奇形弟は瀕死で、這って逃げようとしているので、彼らはまだ生きているんだとわかる。

やがて救急隊員がやってきて、トリオは救出してもらえた。親分は死んだみたい。父は死にかけながら生きている。彼は救急車に乗せられる。さすがの生命力。

姉妹と奇形弟も死にかけだったはずなんだが、意外にぴんぴんしている。彼らはポリスの車に乗せてもらえる。

そこからちょっと変なかんじになる。3人は車で海にいく。楽しげに海に飛び込んで、血泥をきれいに洗い流して、3人はおひさまの下でキャッキャッと遊ぶ。あぁ、しあわせ。

と思ったら、部屋の中の場面にクルリと戻る。姉妹と奇形弟はまだそこにいて、死にかけグェエエとあえでいる。誰も助けにこない。

おしまい。

再び感想

最後は夢心地の演出であいまいに終わるが、私、思うに、きっと救急隊員以降の出来事は、姉妹が見た夢なのだろう。事実は、あのまま全員が死んで、ウジがわいて、悪臭を放つまで、誰にも発見されないのだろう。それがこの映画の主題に合致しているんじゃないかな。

監督さんのお言葉を再び引用↓

Patricio Valladares: The girls were born in the middle hell, for them to die is better than being alive.

「少女たちは地獄に生まれた。彼女たちにとっては生きるよりも死ぬ方がよい」

つまり死ぬことがハッピーエンディングなのである。ということなんだよね。すごいよね。こわいよね。いいよね。

この映画の記事に戻る↓