2010/3/27 (Sat) at 1:55 pm

映画|クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]|Dread

『人間の恐怖』を追究するサディスト男の猟奇実験を描いたホラー映画は、クライヴ・バーカーの短編『腐肉の晩餐』が原作。ショーン・エヴァンスジャクソン・ラスボーンハンネ・スティーン。監督アンソニー・ディブラシ。原作/製作クライヴ・バーカー。2009年。

クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖] / Dread DVDDVD画像

大学生トリオがドキュメンタリ映画をつくりだす。それは『人間の恐怖(dread)』をディープに掘り下げてみようっていう内容で、彼らは学内に「君の恐怖体験を語ってくれ」というチラシを貼り、体験者を募る。やがて集まった人たちは、各自のプレイベートな恐怖話をカメラに向かってしゃべる。3人はこのビデオを編集し、1本の映画作品にしたい。

この企画は元々クエイド(ショーン・エヴァンス)という男の発案だったが、やってるうちに彼の異常性がガガーと出てきたもんで、他のふたり(ジャクソン・ラスボーンハンネ・スティーン)はドン引きとなり、チーム解散となる。が、クエイド本人は消化不良。まだまだやるきまんまん。彼にとってはここからが映画づくりの本番であるとして、キチガイまっしぐらになる。後半はサディスト・クエイド・オンステージ!

クライヴ・バーカーの短編小説『腐肉の晩餐』が原作だが、新たな独自シーン/独自キャラクターが追加されており、その結末も原作とは異なっている。

トレイラー動画

Dread trailer

日本版DVDも出るそうな

2011年2月に日本版DVDリリース予定だそうです↓

感想 - 原作とのちがいとか

「恐怖にまさる愉しみはない」
『腐肉の晩餐』の最初の一文。

血の本 II ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐 クライヴ・バーカー著 集英社文庫
血の本 II ジャクリーン・エス with 腐肉の晩餐
クライヴ・バーカー著(大久保寛訳 集英社文庫)

『腐肉の晩餐』はとても短いお話なので、映画化するとなるといろんな追加要素が出てきますね。どんな風になるのかなと期待したんですけど、このadaptionはよかったと思いましたよ。

「3人で映画をつくる」というのは原作にはなかった独自プロットですが、なかなかおもしろいです。恐怖を追究したいクエイドが、恐怖する者たちを集めるのですね。クエイドは恐怖の星からやってきた恐怖のプロであり、恐怖の求道者です。キング・オブ・恐怖!

彼はキチガイのサディストですが、性的倒錯者ではないという点が特徴的です。彼の目的は快感を得ることではなく、学究的な対象として『人間の恐怖』を目撃したいということで、それもまぁひとつの快感なのかもしれませんが、ホラー映画によくある変態サディストとはまた趣が違うと思います。彼はいろんな猟奇行為をやるんだけれども、その顔つきは「イッヒッヒ、うりゃうりゃ!」というよりもむしろ、大発見をした科学者のようです。目をまるくしてこわがるひとたちを観察するの。そこらへん、小説版クエイドを引き継いでいたような役づくりでした。

おもしろいのはスティーヴの扱いです。スティーヴは映画の中ではふたりのキャラに分断されました。映画ではジョシュアっていうアンちゃんが出てきますけど、彼は小さい頃に聴覚を失った経験があり、いまも「いつかまた聞こえなくなったらどうしよう!」という根源的な恐怖を持っている男なんだけど、これは小説ではスティーヴの身の上話でした。『小説版スティーヴ』というキャラクターから、ひとつの属性だけを抜き取って別キャラにしたというかんじ。

映画の後半クライマックスでは、スティーヴ、クエイド、ジョシュアの3人が格闘しますけど、原作を知った上であのシーンを見ると、まるでスティーヴという人格がふたつの肉体を持ち、あっちとこっちで動いているような不思議感覚がありました。

格闘の前の病院のシーン。スティーヴがオノをぢーと見ている。そのようすをジョシュアがこっそり盗み見ている。というのがありましたが、あのへん、原作へのオマージュが感じられました。

さらに、映画では、アビーという女子が登場します。彼女は顔に大きな痣がある。アビーは小説にはなかった新キャラですが、私、思うに、彼女もまた『小説版スティーヴ』の一部だったような気がする。『腐肉の晩餐』から引用↓

音のない世界の中で人間を見つめたあの少年時代の四ヶ月のために、スティーヴは、人間の顔をよぎるちょっとした視線、冷笑、微笑などに敏感になったのかもしれない。

これはスティーヴが子供の頃に聴覚を失ってこわかった気持ちを回想している言葉ですが、映画のアビーの告白話「5歳の頃から私はずっと他人の視線を気にしてきた....」という悲しい台詞とカブっているような気がしてですね、だからアビーもまたスティーヴの一部なのではないかと思ったりしました。アビーのバスタブのアレはじつにイテテでしたね。

さて、ベジタリアンのシェリルですが、映画では彼女が肉嫌いになった理由が明かされました。また、小説ではシェリルはクエイドとくっつくんだけど、映画ではスティーヴとナニするという風に変わりましたが、その点も特に違和感があるということはなかったです。

そしてもちろん最大の目玉となるアレもばっちりでした。この部分はみなさんもうご存知だと思うんで、ネタバレを書いちゃいます。

snipped..

すません。やっぱりあとから変更しました。本を読んでないひともいるわなと思ったんで、この部分は後半のネタバレのパートに移動しました。なかなか壮絶な場面ですヨ。変更以上。前のヤツを読んじゃったひと、ごめんなさい。

この部分は原作に忠実な迫力映像で、なかなかのもんでした。ちなみにスティーヴが「シェリルはいまどこだ?」と質問すると、クエイドは「彼女は部屋から出て、水を飲んで、ポテトを食って、家に帰ったよ」と嘘をつくんだけど、原作では嘘ではなくほんとでした。映画版クエイドのほうが小説版クエイドよりも残虐で邪悪です。

台詞の中に原作からの引用(あるいはちょっと変えたような言い回し)がたくさんあったんで、知ってるとニヤリです。てわけで、この映画化はなかなかよかったなと私は思うんですが、みなさんはどうでしたか。

原作どーこー抜きにどうかといえば、前半少し冗長かなと思えるシーンがあったけど、バスタブ痛痛痛痛痛痛ゴシゴシじゅわー/腐肉監禁/オノでずごごーん/絶望のラスト。という調子でホラーな要素がたくさんあって、原作を知らないひとも楽しめるんじゃないですかね。あ、最後にひとつ。クエイドはよかったと書いたけど、人によってはあれをミスキャストと考えるひともいるかも。もう少し邪邪邪邪邪悪路線の演出の方がよかったかのかなあ。という気もします。でも全体的にはオッケー満足でした。

Dread or Fear?

ところで "dread" と "fear" の違いってなんでしょう?私、よくわかんなくて適当に生きてきたのですが、てか、常に "fear" しか使わない人生だったですが、以前「英語でわかんないことがあったら、Yahoo Answersで質問するといいですよ」と書いたので、自分でもやってみましたよ。質問を投稿したらすぐに答えがきた!やっぱすごい↓

この回答によれば「その恐怖の対象が予測しうるかどうか」だそうな。『予測しうる』というのは、その恐怖の対象が限定的/具体的という意味かな。「予測しうるなら "dread"、漠然とした恐怖なら "fear"」ということですが、そういわれてみればなるほどという気がする。映画の中でヒデー目に遭わされる人たちは、明確な恐怖の対象というのを持っていましたから。すっきりした!

いちおう但し書きですが、上の質問は「Clive Barkerの小説の話で〜」という限定的な話題においての回答なので、一般的な言葉遣いの話になったら、またなにか別の留意すべき点があるのかもしれないです。また、こういう似た言葉というのは明確な違いがあるわけではなく、かなりダブっていると思います。なので明確に違いを線引きできるものではないと思うので、そこらへんもわかっといてください。

DVDのメイキングを見ると、クライヴ・バーカーが「人間の恐怖に関するお話です」と説明するとき "fear" という言葉を使っています。作家も混同してるくらいだから、やっぱり似たようなもんなのかな。

quotes

Quaid: I want your soul to open up for me.

Quaid: Gentle Jesus, meek and mild, Look upon this little child, pity my simplicity, suffer me to come to thee, that would make it all better.

画像

画像をもっと見る (13枚)

ネタバレです

!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

ネタバレ注意!SPOILER ALERT!

ネタバレを読む

twitterのご案内

当ブログをお読みくださり、ありがとうございます。twitterやってます。ホラー映画好きな方はフォローしてくださいませ。サイトの更新や新作ホラーの情報を随時流しています↓

Facebookのご案内

『After Dark Horror Fest』関連のエントリ

ホラー映画 :: 洋画』の最近のエントリ

ホラーなブログの方はどうぞ
原題: Dread
別題: Desmioi tou fovou
Kammo
Korku
Terreur
邦題(カタカナ): 『クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]』
制作年: 2009年
制作国: イギリス/アメリカ
公開日: 2009年7月14日 (カナダ) (Fantasia Film Festival)
2009年8月 (ドイツ) (Fantasy Filmfest)
2009年8月30日 (イギリス) (Film4 FrightFest)
2009年9月12日 (フランス) (L'Étrange Festival)
2009年10月9日 (韓国) (Pusan International Film Festival)
2009年12月3日 (韓国)
2010年1月29日 (アメリカ) (After Dark Horrorfest)
2010年3月23日 (アメリカ) (DVD)
2010年5月7日 (ドイツ) (DVD)
2011年1月28日 (フランス) (Gérardmer Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: Dread
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

ホラーSHOX [呪](『ほらーしょっくすのろい』と読む)は新作ホラー映画のレビュー中心のブログです。たまに古いのやコメディ等もとりあげます。HORROR SHOX is a Japan-based web site, which is all about horror flicks.

 

すべての投稿 (1533)

CALL GIRL COMIC by DAIJU KURABAYSHIEL GIGANTE COMIC COMIC by DAIJU KURABAYSHI
HORROR SHOX - Horror Reviews, News