映画|バイオスパン/暗黒の実験|Lifespan
不老不死の秘法にとり憑かれたアメリカ人科学者がアムステルダムで奔走する幻想的な古典SF。謎のスイス人富豪役にクラウス・キンスキー。監督アレクサンダー・ホイットロー。1976年。
『寿命(Lifespan)』。人間の細胞が老化する現象は謎に満ちている。アンチエイジング研究は数あるサイエンスの題目の中で、最もミステリアスかつ魅惑的かつ背徳的な研究テーマといえよう。アメリカ人科学者ベン・ランドはこの研究に多大な関心を抱くヤングスターで、いつか人間は不死になれると信じている。彼はカンファレンスに出席するためにアムステルダムにきた。うれしそうである。ベンはポール・リンデン博士に会うのをすごく楽しみにきたのだが、リンデン博士は「うちに泊まりにおいで」といった次の日に首吊り自殺をした。
ベンはリンデンが死んだわけを知りたいと強く思う。それがわかれば彼の研究を手に入れられるから。アムステルダムの大学関係者はベンの希望を聞き入れ、助手までつけてくれた。この助手のオランダ人メガネ青年は愛嬌のあるキャラである。ベンはまず博士の研究ノートを見たんだが、大した情報は得られなかった。リンデンが研究用に飼育していたマウスが200匹以上いたが、すべてのマウスは平均寿命の倍の年月を健康に生きてるとわかった。こりゃスゲーと感動して、マウスのエサを調べたんだけどなにも変わった点がなかった。リンデンはどうやってマウスの寿命を延ばしたのだろうか。これほど研究が順調だったのになぜ彼は死んじゃったのか。ベンはますます謎解きに夢中になる。どこかに秘密の研究ノートが隠されてるに違いない!
ベンが走り回っているようすをこっそり尾行する男がいる。彼はナニモノ?クラウス・キンスキー演じるこの謎のスイス人富豪の正体は後半になって明かされるのだが、ぢーと粘着視線でカーテンの陰から見守る姿はストーカーチックでおっかないものがある。
ベンの好奇心がピークに達してくるにつれ、とり憑かれたようになってくる。死んだリンデンの部屋に寝泊まりし、寝ても覚めても研究のことばかり。リンデンは独身だったが、若い女の愛人がいた。ミステリアスな美女である。アナという。ベンとアナは仲良くなる。ベンはリンデンの部屋に住んで、リンデンの女とエッチして、リンデンそのものになっちゃったみたいである。そうすればリンデンの意識に近づけると考えたのかもしれない。アナとリンデンがSM趣味だったとわかるとアナをロープで縛ってみたりした。このシーンの縛り方はなかなか本格的である。タニザキみたいな。亀甲縛りとかっていうヤツ?
※感想
テリー・ライリーのミニマル音楽にアムステルダムという舞台装置が夢幻的である。そこでベンがウロウロしてると "English Man In New York" の逆バージョンみたいな雰囲気がある。ヨーロッパの古都で走り回るアメリカ青年の姿が実験室のマウスとイメージがダブるみたいな。途中で出てきたアンネ・フランク・ミュージアムのシーンはおもしろかった。ナチスのキチガイ科学者の展示品の横でベンが窓の外を必死顔で見てるんですよね。いちおうSFということになってるが、ハデな特殊撮影などはぜんぜんない。死者の墓を掘り起こすシーンだけホラーであった。
いくつかのシーンはおもしろいが、しょっちゅう挿入されるナレーションは冗長でしばしば陳腐であり、ラストはガクッと脱力しちゃう。てわけで一般ウケするもんではないけれど、30年のときを経てゲテモノ映画の秘宝館(てか救済所?) Mondo Macabro よりDVDが出た。コメンタリつきである。さすが。
最初アメリカで公開されたときには『クラウス・キンスキーが出てくるSF映画』として大々的に宣伝されちゃったもんでエラい不評だったそうである。見ればわかるがクラウス・キンスキーはチョイ脇役扱いだし(といっても存在感は大したもんだが)、SFといってもハデな特殊効果があるわけでもなし。観客はダマされたと思っただろうな。いまはこの映画を好きなひとだけがひっそりと見て、だれも文句をいわないからサンディ・ホワイトロー監督も安心だ。
この映画のラストシーンはなんだバーローである。脱力。ムッとしてからよく考えてみるとこれもアリかなっていう気もしてくる。リンデン博士が死んだ理由をアレコレ想像するといろんな解釈ができそうなので、このレビューはネタバレなしにしときます。
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Lifespan | |
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『バイオスパン/暗黒の実験』 | |
1975年 | |
アメリカ/イギリス/オランダ/ベルギー | |
1975年9月5日 (フランス) (Deauville American Film Festival) 1976年10月1日 (オランダ) | |
imdb.com :: Lifespan |
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