ニートメタル(NEET METAL) - スウェーデンのハードロッカー漫画
スウェーデンのヘビメタ漫画です。映画じゃなくて漫画。ダニエル・アールグレン(Daniel Ahlgren)作。翻訳/日本版制作 ハル吉。
オウブはハードロッカー。デブハゲ無職の34歳。ママと同居。
ヘビメタのためなら死んでもいい。ヘビメタ一筋の浪漫人生。誰よりも気高い誇りを胸に秘め、夢を追って生きてきたのであるが、気がつけば、中年ニートのおれがいた。腹が出ちまって、スタッドベルトが届かない。ひー。
本作品『ニートメタル(NEET METAL)』は、そんなオウブの負け犬人生を綴った哀愁漫画である。けっこうおもしろいよ。
オウブを取り巻く主要な登場人物のみなさんを紹介します。
パトリシアとエマ・マリア ... オウブをバカにするヘビメタ小娘コンビ。「ハゲ!デブ!ニート!ウケケ!」と容赦のない罵声を浴びせて、オウブを絶望の淵に追い込みます。
ビッテ ... オウブがバイト先のバーガー屋で知り合った親切ネーチャン。不幸なオウブに同情し、ガールフレンドを紹介してくれます。
オウブのママ ... こんなごくつぶし息子を持てあますママは、優しくて、上品で、料理好き。お茶とケーキをお供に、テレビでのど自慢番組を見るのが日課です。日頃は威勢よく悪態をつくオウブですが、優しいママにだけは頭が上がりません。
トミー ... オウブの高校時代のバンド仲間。昔はモテモテだったらしいよ。でも年を食ったらヘビメタ魂はどっかにいっちゃって、オウブを悲しませます。
ウォルター ... オウブの高校時代のバンド仲間のドラマー。デエエィオウ!
カート ... オウブの高校時代のいぢめられっこ。彼はシンセポップ好きだったので、ヘビメタ連中から目の敵にされる。ホモ野郎だのなんだのヒデーいわれようでボコスカいぢめらるんだが、カートは決して自分の流儀を変えないのであります。
サタン ... ヘビメタといえば悪魔であります。山羊の角にケモノ下半身の外観はかなりおっかないが、よく見ると小綺麗なスーツを着て、しゃべる言葉は礼儀マナーをわきまえた中年紳士である。この悪魔が〇〇に惚れちまって、物語の最後には、中川信夫的な地獄風景に超展開します。
他にも、レコード屋のオヤジとか、いろいろ出てきますが、代表的なのはこれくらい。ヘビメタ漫画というだけあって、ヘビメタ小ネタ満載です。
2015年7月 緊急お知らせ 第2刷の増刷が決定
速報!ハル吉さん翻訳スウェーデン漫画『ニートメタル』は好評につき2刷増刷。新版では作者Dアールグレンが当ブログのために描いたオリジナル絵が大きく掲載される。タコシェさん他で近日発売開始予定。http://t.co/MHgqLzV3yZ pic.twitter.com/IFWREHWNBf
— Hiro Fujii (@horrorshox) July 23, 2015
ガイマン賞3位!ディスクユニオンで発売開始!
後日追記。
ガイマン賞に『NEET METAL』が3位入賞しているではないか!すごいすごいすごいすごい!1位から10位までみると小学館とか青土社とか色々と入っているが、ハル吉さんだけはインディーズの自費出版なんですよ!おめでとう!http://t.co/kvXYQzujxs
— tinker (@horrorshox) November 25, 2013
そして、さらに、ディスクユニオンでも売られるようになった!すごいすごい!
【北浦和店HR/HM新入荷】 ダニエル・アールグレン/ハル吉 / ニートメタル http://t.co/Xjr0TRRmKA 読者が選ぶ翻訳海外マンガ・ランキング『ガイマン賞2013』にて3位!スウェーデン人のオウブ(34・無職)の哀愁漂うメタルライフ…。お値段は勿論666円♪
— disk union北浦和店 (@diskunion_DKI) December 25, 2013
ハル吉さん翻訳のスウェーデンの漫画『ニートメタル』が遂にディスクユニオンで売られるようになった!すごい!ハル吉とゴッシー (Harukichi and Gosshie): 『ニートメタル』サントラ32ディスクユニオン配給開始 http://t.co/A7hINuFvVx
— tinker (@horrorshox) December 27, 2013
Ove på japansk postorder!
diskunion: ダニエル・アールグレン/ハル吉 / ニートメタル http://t.co/g3HOZqVhEA
— Pidde Andersson (@PiddeAndersson) December 27, 2013
追記以上。
感想
私は、ヘビメタも漫画も特に好きってわけでもないので、ヒョンな偶然が起きなければ、この作品を手にすることは一生なかったでしょう。ブログを通じて知り合ったスウェーデンの映画プロデューサー兼脚本家のPidde Anderssonというへんなオッサンがいて、数年来、よもやま話のメール文通をしていたところ、ある日、「おれの友達の本が日本で翻訳されているよ!」と教えてくれたので、ぐぐって、ハル吉さん翻訳の『ニートメタル(NEET METAL)』を知り↓
なんじゃこれー、つって、よく読んだら、このひとはこの漫画に惚れ込んで、自ら翻訳をし、自費出版をしていると知ったのであります。なんかすごいよね。『突発性』を感じる。
んで、注文して、読んでみたところ、これがけっこうおもしろかった。日本の漫画はレベルが高いので、いろんな作品を読み込んでいるひとから見れば、技術的によろしくない点があるのかなって思うが、まぁ、そこらへんはいいじゃないですか。オウブもその他のキャラもおもしろいよ。
この漫画の中に出てくるカートという男、オウブの高校時代の友達なんだが、シンセポップ好きであるゆえ、オウブ率いるヘビメタ軍団にいぢめられちゃう男なんだが、私はこのカートさんに近い風だった。その昔、80年代ニューウェイブにドップリだったから。4AD、Mute Records、ZTT、等々です。
当時、東京に住んでいたので、お茶の水のシスコ、ディスクユニオン、六本木のウィナーズといったレコード屋に通い詰め、毎月、家賃よりも高い金額を落としてましたよ。あの頃、どうしてあんなに豪勢なことがやれたのか、いま考えてもさっぱりわかりません。レコード買いまくって、夜遊びしまくって、うだうだと暮らしていたなあ。
あの頃、パンクとヘビメタがバチバチやってたのをよく覚えています。お互いに別の宇宙に住んでいるから滅多に顔を合わせることはないんだが、ヒョイと間違えて相手の領域に迷い込んでしまうと、四方から冷血視線がビンビン飛んでくるの。一触即発というかですね、ちょっとね、耐えられないかんじだったなあ、あれは。
ある日、オウブはシンセポップ好きだったカートにばったり出会うのですね。するとお互いぜんぜん変わってないから呆れちゃう。「おまえはまだそんな格好をしてやがるのか」つって、昔ながらのバチバチ視線を交わすんだが、でも、オウブはふと思うのです。えんえんと同じことをやり続けているおれたちは、もしかしたら、共通点があるのかもしれない。こんな郷愁を覚える。これ、わかるなあ。男の友情ってかんじ。
この漫画には、おそろしく細かいヘビメタ小ネタが仕込んであるんだが、翻訳のハル吉さんはすばらしい仕事をしていて、全部のページに脚注があり、「これはこういう意味のギャグですよ」と解説が入っているのです。すごーい。これのお陰で私も楽しく読めました。
ヘビメタ好きにはもちろんオススメですが、そうではなくても、レコード針を知る世代の方にはおもしろいと思いますよ。でも、物心ついた頃からiTunesを使いこなしている若い世代の方がこれを読んだらどう感じるのか、予測がつきません。やっぱりバカにされちゃうかな。
666円(送料込み)で絶賛発売中!
作者ダニエル・アールグレン(Daniel Ahlgren)のインタビューつき。値段は666円(送料込み)。もういちどリンクします。以下から買えます。少しだけ内容を見れるようになっているよ↓
スウェーデン漫画事情イロイロ
私はスウェーデンの漫画を読むなんて初めてだったので「かの地のコミック事情などを教えてください」とハル吉さんに訊いたところ、詳しく教えてくれました。以下のリンク先に情報があります。ぜんぶハル吉さんが過去に書かれたものです。いくつかアングラ系の雑誌があるらしい↓
オプティマルプレスていう出版社では、私のメル友のPiddeもなんかやってたらしい。
また、ジャンルはぜんぜん違うが、日本の漫画にモロ影響を受けているこんなひともいる↓
また、伊藤潤二の『うずまき』はスウェーデン語版が出てたりする↓
また、ハル吉さんがメールで「ホラーっぽい漫画家で注目してるのはラース・クランツ(Lars Krantz)」と教えてくれたんだが、偶然ながら、これもPiddeの友達で、私は以前そのひとの作品を何枚か見せてもらったことがあってですね、確かにハル吉さんがイチ押しする通り、スゲーかっこいいの。でも諸事情によりその作品はお見せできない。残念。
でも、上にリンクしたスウェーデン漫画雑誌「UTOPI」の中で、ラースさんの作品が見れます。私が持ってるヤツもこれに似た作風です。
いったいぜんたいハル吉さんはどういう経緯でこういうものを出す気になったんですかね。いったいなんなの、このひとは!と思ったら、以下のページに自費出版に至るまでの紆余曲折が書かれてある。なかなかすごい↓
English Review
I enjoyed NEET METAL so much. Ove is a likable character and other people are also funny. All characters are well constructed and the stroy is interesting. You know what, Kurt guy is very similar to me. He is Ove's friend from high school who has been into synth pop music. I myself was just like him back in 80s. I had been so keen on Depeche Mode, Kraftwerk, New Order, Neubauten, blah, blah blah. I do remember there were a lot of fights and arguments between metal and punks. If I had met Harukichi who is the translator of the Japanese Edition book, he is very metal, at that time, he must have bullied me just like Ove and Tommy did to Kurt. lol. "The Last in Line" was a lovely episode. I can feel what the author really wanted to describe. Time goes on, people grew up, some people change, some don't, and this kind of emotion comes to the surface eventually. Now I'm late forties and I feel same way when I look back my old days. And the ending was good. I'm a horror fan. Satan and hell is my thing. Satan's love stroy is a nice twist.
Thanks for reading!
ダニエル・アールグレンが絵を描いてくれた!
このエントリを書いた後、作者のダニエルさんと仲良くなり、こんな絵を描いてもらっちゃいました!すごい!うれしい!
この絵について詳しくはこちら↓
ダニエルさんの顔を見たいひとはこちら↓
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