2011/6/10 (Fri) at 6:27 pm

映画| パラフィリア|Little Deaths

UKのホラー監督3人によるオムニバス形式のホラー映画。くらくてこわーいお話ばかり。監督ショーン・ホーガンアンドリュー・パーキンソンサイモン・ラムリー。2011年。

 パラフィリア / Little Deaths DVDDVD画像

この映画は2011年3月にオースチンで開催されたSXSW 2011において上映され、とても話題を呼びました。

今月UK版が出るのかと思ってたら、延期されたみたいだ。くそっ。したら、ブログを通じて友達になったイギリス人が「ミロミロミロ」つって、スクリーナーDVDを送ってくれたよ。うわあ。ありがとう。DVDが出たら買います!

1枚のDVDに、30分程度のお話が3本入っています。ぜんぶおもしろいよ。ひとつづつ紹介します。

House and Home

監督:ショーン・ホーガン

信心と慈愛を実践する、金持ち若夫婦(シヴォーン・ハリソン + ルーク・デ・レイシー)が登場。彼らはホームレスを家に招くのが趣味である。風呂に入れてやり、ワインを飲ませ、めしを食わせてあげるという施しを定期的にやってるらしい。

わたしら、恵まれない方々のお役に立ちたいんですの。不幸なひとたちを見るとほうっておけないですわ。きっとあの方々にも深い事情がおありになるんだとおもいますわ。

こんな調子の善人ヅラをしているんだが、じつは拷問好きのキチガイ夫婦なんですよ。ホームレスをとっつかまえて、オモチャにするんですな。

今日もお目当ての若いネーチャン(ホリー・ルーカス)をだまくらかして、引っぱり込んで、さてさてやりますか、と思ったら、予想外の展開になってびっくりギョギョギョ。ゴアゴアあるよ。

Mutant Tool

監督:アンドリュー・パーキンソン

元売女で元ジャンキーの不幸女(ジョディ・ジェイムソン)は、元ヒモでいまはヤクの売人をやってる男(ダニエル・ブロックルバンク)といっしょに暮らしつつ、このくそったれ人生をなんとか正しく修正したいものだとがんばっているのだが、物事は思うように進まず、またヤクに手を出してしまいそうで、悲嘆に暮れる。

彼女は恋人の紹介で、セラピスト(ブレンダン・グレゴリー)を訪ね、薬を処方してもらう。「これはちょっと強い薬で副作用があるんだが心配せんでもええよ。がんばってね」というその医者は、じつは女のカレシとヤバい関係で、非合法な手段で新薬を開発しているキチガイ医者である。そんなこと夢にも知らない彼女はもらった薬をガボガボ飲む。肉体に異変が起きて、ヒデーことになる。

薬の元を抽出する場面がすごい。世にも珍しいサイキック男(触れた相手の過去がわかる)を汚い場所に拘束し、非人道的な手法で体液(精液かな)を絞り取るの。それを元に薬をつくるんだそうで。きもちわりー。

Bitch

監督:サイモン・ラムリー

夢も希望もありませんという顔つきの不幸女(ケイト・ブレイスウエイト)が登場。彼女はぐうたらダメ男(トム・ソーヤー)と暮らしている。男との関係は冷め切っているよう。出るのはため息ばかり。あー。

と思ったら、いきなりサディスト女に変身するではないか。チンコバンドをビシッと締めたら、有無をいわさず、恋人男をアナル調教し始める。うりゃうりゃ。これがいいのかもっとやってほしいのかおまえは犬だ犬だ犬だわたしの犬になれ。うへー。こういうひとだったんですか。

このふたりは、ケンカをするかSMプレイに耽る以外はやることがない、といった趣で、うだうだと倒錯快楽の日々を暮らすのであるが、次第に、女の方がより強い刺激を求めるようになり、マゾ男をさらにいぢめる手法を思いついちゃって、それがさらなる刺激を呼び、さらに激しく濃厚に、もうきもちがいいのか辛いのかわかりませんよかんべんしてくださいよちょっとそれはやりすぎじゃないですか。マゾ男は泣き顔になる。

これまで忠実ワンコを演じてきたダメ男は、ここにきてぴーんとハジケちゃったようであり、女に対して秘密を持つようになる。彼は彼女に知られないように倉庫を借り、計画を実行に移す。変態カップルのせつないラブストーリィ。

トレイラー動画

Little Death (2010) trailer

感想

おもしろい!すごい!

普通、オムニバスだとひとつくらいはハズすものだけど、これはみっつともよかったよ。

3つのお話はそれぞれ方向性が違うんだが、どいつもこいつもどんづまりの不幸人生をやってるという点が共通しています。

1番目の『House and Home』はショッカー手法がおもしろい。わるもん奥さんの演技がよかった。彼女は最初のあたりはやたら機嫌が悪くて、文句をいってばかりなんだが、夫がホームレス女を連れてくると急にきげんがよくなるの。その豹変ぶりがとてもよかった。

2番目の『Mutant Tool』はスゲーきもちわるい。超能力を持つ男を拘束してどうにかして体液を搾り取り、それを元にヤクをつくるという着想にびっくりした。ナチスの研究がどうとかいっていたが、詳しい説明はなされなかった。どうやったらそんなヤクがつくれるんだとか、細かい描写もつけ足して、90分の映画にしてもいいんじゃないかなあ。

アンドリュー・パーキンソン監督の映画を見たのは『Dead Creatures (2001)』以来でした。『Dead Creatures (2001)』はものすごく変わってて、きもちわるくて、とても万人向けとはいえない映画だったが、やはりこちらもあれと似たようなまったり感 + きもちわるさがありました。

3番目の『Bitch』はすごく変わってて、変態さんの匂いがぷんぷんする。私的にはコレが一等賞なんだが、みっつの中でいちばん評価がわかれるヤツかもしれないという気もする。

SMに明け暮れる恋人同士は完全に冷め切っていて、その関係は破綻しているように見える。エッチするだけのただれた関係なんだが、ものすごくタマーに、ナニゲに、ボッと感情に火が点く瞬間があるの。これって愛なの、みたいな。そんな情感を描く映像がとても巧いよ。

ながらく女の尻に敷かれていたマゾのダメ男が、ある出来事を境に、脳内変化を催して、彼女をヒデー目に遭わせる手法を思いつく。その手法というのがおそろしくエグくて、彼がやったことは復讐と憎しみの行為にしか見えないんだが、でも、彼はあれによって彼女を手に入れたんじゃないかな。変態さんの世界では、あれこそがラブリーなハッピーエンドってことになるんじゃないかなあ。

サイモン・ラムリー監督は、この前、絶賛レビューを書いた『Red White & Blue (2010)』の監督さんでもある。『Red White & Blue (2010)』では、映画の冒頭の情景的な映像がとても印象的だったですが、こちらではあれと似たかんじのヤツがエンディングに配されています。

映画の後半10分。悲しみのマゾ男が『秘密』を持ち始めたあたりから台詞がなくなり、流れる映像と叙情的な音楽だけで進行するの。それがぐわーんと盛り上がって、うおぉおおおおおとくるんですよ。たまらんなあ。いいなあ。

このオムニバスに出てくる俳優さんはいずれも存在感があり、いい空気を醸していたように思うんだが、IMDbでササーと見たらば、ほとんどのみなさんはテレビドラマのチョイ役ゲスト出演くらいのキャリアしかないから驚く。UKの俳優さんは層が厚いですね。

以下、『Bitch』に関して、ちょっぴりネタバレです。

3人の監督さんのインタビューがあったよ↓

サイモン・ラムリー監督がこの映画についてしゃべってるところ↓

It came from when I was at university many years ago and I was in bed with my girlfriend at the time, and a spider dropped on her and she completely freaked out. She was naked and she was like (mimics screaming), and I thought hey, this is an interesting idea for something. At that time I was writing, I was thinking more about becoming a novelist than a filmmaker, so I was writing a few short stories and I tried writing that as a short story. It was about a younger goth couple and the guy was in an abusive relationship with the girl, who kind of pushed him around and it was a he wouldn't take it anymore type of thing. So that was an idea I had quite a while ago. Probably over 20 years, actually, and I guess it just stayed with me. When this opportunity arose I remembered it and thought, “Man, let's chuck in some dogs instead of some spiders,” and there you have a story.

彼が学生だった頃、付き合ってた女とベッドにいたらば、クモが落ちてきて、彼女はウギャー!とこわがった。当時、ラムリーさんは映画監督よりも小説家を志していて、ゴスカップルの短編を書いていたんだが、その中にクモの話を入れたらおもしろいなーと思った。それから20年も経って、いまになってソレを思い出して、あー、あれをクモの代わりにワンコでやってみようと思いついたってわけ。なんだそうです。

Bitch』に出てくるサディスト女は、男をワンコ扱いして辱めるのが大好きなくせに、自分は犬恐怖症なんですね。そこを突っつかれてヒデー目に遭わされちゃうんですよ。そこがエグいのなんの。

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原題: Little Deaths
別題: Little Deaths
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Treis mikroi thanatoi
Paraphilia
Pequenas Mortes
邦題(カタカナ): 『パラフィリア』
制作年: 2011年
制作国: イギリス
公開日: 2011年2月25日 (イギリス) (Film4 FrightFest)
2011年3月11日 (アメリカ) (South by Southwest Film Festival)
2011年9月14日 (フランス) (Strasbourg European Fantastic Film Festival)
2011年10月5日 (イタリア) (DVD)
2011年11月6日 (イギリス) (Leeds International Film Festival)
2012年1月16日 (日本) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Little Deaths
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