映画|アート・オブ・デビル 3|Art of the Devil 3
『愛欲と呪術と輪廻。エロあり』をテーマに据えた、残虐スプラッターバラエティショー第3作は前作の過去を暴く物語。爬虫類/カミソリ/ナマズの刑/バーナー炙り/熱湯/ピン刺し/サービス満点ホラー。熱湯拷問ニターリの魔女義母が再登場!別名Long khong 2。タイ映画。 2008年。
Art Of The Devilのパート3はパート2のprequelである。prequelていうのは『ソレ以前』を描いた内容という意味です。sequelは『シリーズ続編』、prequelは .... 日本語でなんていうんでしょうか。
Spoiler Alert!!!!!
以下パート2のネタバレを含む。
まずは前作パート2のおさらいを書きます。
幼なじみのキャピキャピ男女数人が集まって生まれ故郷の友達の家に遊びにいった。その友達はターくんという無口青年である。ターくんは不器用無口キャラだけど、久しぶりに友達に会えてうれしそうでもある。ターくん以外の皆さんは卒業後、都会に出た。彼だけがこの陰気な田舎に残ってて、なんかいわくありげで、彼だけが不幸っていうか、同級生たちが楽しげにやってるのをうらやましそうに見ているというかんじ。
ターくんにはきれいな義母ママがいる。優しくて、きれいで、都会的なかんじの美女がなんでこんな田舎にきて、後妻になり、貧しいボートハウスに住んでいるのかと不思議である。また、ターくんのお父さんは自殺したんだとかいう話もでてきて、ターくんの周囲には死が漂っているなという雰囲気がする。
ターくんの同級生たちはターくんの義母ママが好きである。陰気なド田舎には珍しい美女で、優しくて、勉強を教えてくれたりするのでみんなは彼女を好きになったという回想シーンが流れたりした。でもターくんだけは会話に加わらず、遠くから悲しい目で眺めているのであった。ていうかんじで、いかにも『なんかあるんだな』的シーンが続きつつ、この仲良しグループには陰惨な呪いの過去があった(レイプ教師を呪い殺した)というのが明かされつつ、しまいには優しかった義母ママが狂女と化し、ターくんの友達たちを様々な手法で殺して回り、ひゃーと逃げ回るばかりであり、そこは沼と川に囲まれたド田舎でだれも助けにくる者はなく、それでもやっとこさ、美少女ひとりとターくんだけがサバイブしたと思ったら、じつはターくんは実在してないオバケだったというオチが最後で明かされ、生き残った美少女自身、少女時代に呪術を使ったことがあるのだと明かされ、両親の目前で墜落死亡。ロッキンなラストであった。
以下は呪術師のおじさんのお言葉↓
Think carefully about this. Once done, this magic stays with you until you die.
パート2のおさらいは以上。つまり、ツリ目拷問女がみんなをダマして呼び寄せたっちゅうことですかね。運命的にそうなっちゃったってことかな。そこらへんは明確には明かされなかったですが、「これが輪廻っちゅうもんヨ」という映画の主題に合致してるからまぁいいかと思いました。
んで、今回新作のパート3は、狂女ママがいかにしてターくんのママになったか、ターくんのほんとうのママはどうなっちゃったのか、というような『そのまた過去の』お話である。バーナー炙り&熱湯拷問ツリ目マダムも再登場!こんどはぢいちゃんに安全ピン刺して、サソリを飲ませてました。今回のターゲットは、ターくんとその親戚のみなさんたちで、母方のおじいちゃん、ひいおばあちゃん、叔母(といっても若くてきれいなひと。叔母というのはつまりターくんのほんとうの母の妹っちゅうことです)、それに叔母の婚約者というメンツ。イタコみたいなオババがよかったです。しわくちゃの顔で、ひからびちゃってるんだけど、目つきがギローリ。日本でいうと、昔の横溝正史の映画に出てきそうな。タイにはああいう老人俳優がゴロゴロいるんでしょうか。貴重な人材だなぁ。文化だなぁ。
あと、呪術にとり憑かれた呪術師も登場した。彼はいろんな呪術を修得したんだけど、彼自身が強慾であるせいで、呪術そのものに体が負けてしまうというか、肉体が拒否反応を起こしちゃってるっていうのかな、そういうもんらしくて、体がウジムシにおかされています。彼が助かる方法は『三つ目の悪魔を捜すこと』だそうで、その相手がツリ目の熱湯ママがその相手だったということで、この呪術師も参戦してくる。
Spoiler Alert!!!!!
以下パート3のネタバレを含む。
謎の呪術師がどっかの村で老人を脅し「三つ目の悪魔をよこせ」と怒って惨殺する。
というプロローグののち、ターくんが母方の親戚にひきとられるところから始まる。優しい叔母さんが迎えて「10年ぶりだ。あなたのお父さんが再婚して以来だね」という台詞があった。映画の中では時系列が頻繁に入れ替わっていくのだが、あらすじをまとめるとこんなかんじ↓
ターくんの子供時代。ターくんのママはふっくらとした優しいおかあさんだったが、病弱だった。ターくんのパパ(前田吟風)は優しく気遣って薬を飲ませたりした。一緒に住んでる親戚家族のみなさんも優しかった。ママは病気だったけど家族に囲まれて幸せだった。そこにツリ目女がきた。ツリ目女は、当時看護婦志望の学生だったターくんの叔母さんの家庭教師としてこの家に入り込んだ。やがてターくんのパパとデキちゃったので、ややこしくなった。
ターくんのおばあちゃんが息子に「あの女を第二の妻にしてもよいぞ」なんていうので、タイでは昔は重婚が普通だったのかな。よく知りませんが、そういう会話もあったりした。やがてターくんのママは死んだ。病気で死んだのではなくて、ターくんのパパに毒殺されたらしい。たぶんツリ目女がそそのかしたんだな。重婚を勧めたオババはターくんのパパに「ここに行け」と住所を記した紙切れを渡していた。なにかワル知恵を仕込んだみたい。だからこれはターくんの父方の祖母と思われる。実の娘を殺させるわけないからそうかなと思った。
死んだママの実父(ターくんの祖父)は娘の死に深く悲しみ、怪しい呪術師にカネを払って生き返らせようとした。死人を蘇生させるには身代わりの肉体が要るという。そして実の息子であるターくんがお祈りをしなくちゃいけないといわれた。悲しみの父にとって、ツリ目女は天敵である。彼女を身代わりにしようと拉致してきたが、もうひとつの条件である「ターくんがお祈りする」ほうがうまくいかなかった。彼はまだ子供だったので、わーわー泣くばかりでそんなことできなかったのだ。蘇生は失敗した。
ママの死後、ターくんのパパはすぐにツリ目女と再婚した。お葬式の写真にも出てこなかったので、その後、パパはママの親戚筋から去ったものと思われ、幼かったターくんもそっちについていった。「10年ぶりだね」という先の叔母の台詞はこの時点から10年という意味と思われる。
というのが過去話である。現在は、ターくんは大人になり、ツリ目女は精神病院に拘禁入院中。彼女は呪術をやりすぎて狂っちゃったんだろうか。ターくんの伯母さんはいまはナースとなってこの病院に勤務している。彼女は自分の元家庭教師が狂っちゃたのを毎日見てるわけである。ターくんママの父はいまも娘を蘇らせることに執心しており、娘の遺体を塩(かな?)に埋めて、薫製みたいにして、保存しといた。そして大人になったターくんに「いっちょうやるぞ」と娘を蘇生させることにした。祖父はこれが目的でターくんを引きとったみたいである。他の家族たちも異存ナシで団結してるところがシュールである。タイじゃこれが普通なんだろうか。
精神病院からツリ目女をさらってきて、呪術師を呼んで、儀式開始である。身代わりのツリ目女を拘束し、足を開かせる。いまはナースとなった叔母が彼女の性器になにやら突っ込んで、女はギャーギャー泣きわめいて、そこから血だるまの赤ん坊をひきずりだした(だれの赤ん坊?)。そしてターくんは、呪術師の教えにならってお祈りをした。そしたらママは蘇った。ツリ目の肉体を借りて、である。見ためはツリ目女なんだけど、それはターくんのほんとうのママなんである。ツリ目女の実体は、呪術師の手によって小さな鏡に封印された。あとは鏡と赤ちゃんの死体を埋め、ターくんママのヌケガラ死体を火葬すれば万事オッケーと教わった。
ところが、万事オッケーのはずだったのに、そうはならなくて、赤ちゃんの死体を埋めずにそこらへんにほっぽっといたことに加え、呪術師が乱入してきたせいでアクシデント発生した。彼はべつの理由から、つまり、自分が助かるために、またもっと強い呪術力を得たいために『3つ目の悪魔』を必死で探していて、それが自分がカネをもらって蘇らせた女の中にいるとわかったもんだから、わーわーと入ってきて、乱闘になり、封印鏡が割れてしまった。てわけで、ママになったはずのママはいつかママではなく、ツリ目女の魔力が(てか三つ目悪魔がかな?)支配する凶悪オカルトシリアルキラーと化した。蘇生後、しばらくは優しいママだったんですよね。この初期の段階において、凄惨な儀式を行った家族のみなさんがなにごともなかったように「あぁおかあさん、買い物ですか」なんてサザエさんの家族のような会話をしているというのもまたシュールであった。こういう狂気がナニゲにホラーだなと思った。
もういっぺんいうが、この物語は『そのまた過去の話』である。だから、パート2で幼なじみたちとひさしぶりに会った(てかほんとはオバケだったわけですが)頃より前の話。友達たちが都会に出ていった頃、ターくんはこんなことやってたということですね。
その後はおきまりの展開で、復讐のオニと化したツリ目女の襲撃開始である。まずはターくんのパパを拉致拘束し、ペンチでツメを剥がしてやったら、狂死した。このシーンではツリ目女は「おまえはわたしを捨てた〜」みたいな恨み言をいうんで、ツリ目女じゃなくてターくんのママになってたみたいである。そこらへんが謎なんだが、だいたいパパの登場が唐突で違和感があるなと思ったんだけどまぁ細かいことは気にしない。パート2の台詞と整合性を合わせるための演出だろうか。ハラにウジムシをわかせた呪術師と親戚一同死亡。うぎゃーひぃーずがーん。
ラスト。ツリ目女はボートハウスにひとりで棲んでいるが、そこには全身ヤケドの姿となったターくんのオバケがウロウロしている。親切なお坊さんがきて「ええかげんに断ち切らないとカルマは永遠に続くよ」みたいな説教をする↓
If you want to stop having trouble, stop what you're doing. Otherwise, karma will come and go in a never ending cycle. The wheel of karma is run by our own sins. One sin is connected to another.
ツリ目女は無表情にそれを聞いたあと、泣く。そして少女時代のフラッシュバック。いぢめられっこだった彼女が「みんなから愛されたい」という願いを込めて呪術師を訪ねたという場面でおしまい。そしてその後はパート2の冒頭につながるのであった。なるほど〜。
というのがだいたいの流れだったけど、じっさいには映画の中では、時系列が頻繁に入れ替わる。また人間関係が複雑なので、何度か混乱をしてしまった。人々は粘着ドロドロと因縁の過去に縛られており、人間の業(ごう)って深いものなんだなぁとうならせつつ、呪術と輪廻(カルマ)をネタに責めてくるというか。だいたいこの映画がパート2のprequelであると明かされるのもだいぶ先になってからだったし。
てわけで、しょっちゅう混乱させられたけど、がんばって見続けたら、なかなかおもしろかったです。時間的な矛盾がそこかしこにあったような気もしますが、タイじゃこれが普通なんだもんくあっかという押し切り感があったように思われました。
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2008年 | |
タイ | |
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