2009/4/26 (Sun) at 4:08 pm

映画|マーターズ|Martyrs

狂女血塗れトラウマガクガク不条理拷問過多殺傷スプラッター。フランスホラー。モルジャーナ・アラウィミレーヌ・ジャンパノイ他。監督パスカル・ロジェ。2008年。

マーターズ / Martyrs DVDDVD画像

絶望のオープニング。ハードコアに監禁拷問されて深く傷ついたトラウマ少女のようすが描かれる。人格全壊。みたいな。なんでフランスのホラーってこんなにまぢなのヨ!んでもって、いきなり15年後にビョーンとジャンプする。シーンが変わって幸せそうな家族のみなさんがでてくる。トラウマ少女はどこにいったんだろう。したらば、いきなりジャジャーンと急展開!fucking awesomeですヨ!!!!! 一発目のアレはかなりのクリーンヒットでしたねー。ホラーっていいなぁ。たのしいなぁ。

Martyrs trailer

※感想

この映画はスリリングな展開がおもしろいトコなので、物語紹介は少なめにして感想を書きます。ネタバレはそのあとに下に書きます。かなり期待させる導入からあーなってこーなってという流れがじつにunexpectedで、ゴリゴリと突き進んでいく物語がすごかったです。見始めてすぐに「これはアタリだ」と確信しましたが、後半になってきたらば、心配が出てきました。もしかしてコレって脱力オチ系の不条理ホラーですかという心配が高まってくると、別の意味でスリリングです。つまんないラストだったらイヤだなーという心配が出てくると、私、落ち着いて見てられない性分なんです。でも、合間にしょっちゅう出てくる拷問シーンの演出はかなり凝ってて、細かいところまで考えてあるなーと納得させられる部分もあったりして「ま、オチがつまんなくてもいいや」という気分になり「モトはとったぞ!」と腹を決めました。さーてラストにきたらば、むむーーーーーーーーぅ。どういえばいいの?Keep doubting ...... ?! すか。んんーーーーー。

正直いいまして、私の理解力が足りないのか、わかったようなわかんないような気がします。でもソレはおいといて「もんくあっか!」という押し切り感があるというか、迫力があるっていうか。おもしろかったですよ。パチパチパチ。

ラストのあの台詞、"Keep doubting" はじつに考えさせられました。いろんな意味にとれますよね。それ以外にも悩ましい言い回しがウジャウジャ出てきました。わるもんのあの方はアナに説明するところでしきりに "transfigureなのヨ!" と強調していましたが、あれは解釈がむずかしい。私、フランス語はぜんぜんわからないので、英語の字幕で見てるわけですが。じっさいのところ、どんなニュアンスなのでしょう。この映画が日本語化される(された?)かどうか知りませんが、字幕作家の方には楽しいチャレンジになるだろうなと思いました(まさにMartyrs的仕事)。

そもそも映画のタイトルであるMartyrsていう言葉ですが、辞書には『殉教者』と載っているけれど、ソレだとぴんとこないです。宗教的な意味合いのMartyrsではないみたい。『絶望しつつ受難苦役拷問血塗れ体験を受け入れた超絶者』みたいな意味かな。そして最後には "witness" ていう言葉が出てきた。imdb.comのbbsでは、「アナはなにを見たんだろうか」「アナはマダムに嘘をついたんじゃないか」という楽しい議論でスレッドがどんどん伸びてて興味深く読みました。不肖、私、思うに、嘘説はないのではないか。あれが嘘なら "witness" の概念と矛盾するような気がするんですが .... わかんないですが .... アレコレと語り合うのは楽しいですね。

もし夢野久作がこの世に生きてたら、喜んで映画評を書きたがるホラーではないかなんて思いました。

SPOILER ALERT!!!!!
以下ネタバレ!

ハードコアに始まるオープニング。拷問を受けて自力脱出してきたトラウマ少女、ルーシーのようすが記録映画風に描かれる。インタビューに答える医師。ルーシーは養護施設(かな)にいて、自傷行為を繰り返す。夜中にウギャーと目が覚めたりする。彼女の親友のアナっていう同じ年頃の女の子が大心配してめんどうを見ている。

15年後。

どっかの幸せそうな4人家族が出てくる。パパママ息子娘が楽しそうにあさめしを食っていたところに不意の来客。ドアを開けたらショットガンを持つルーシーが突入してきて4人を惨殺する。ここんちのパパママが彼女を監禁拷問した張本人なのだという復讐の台詞を述べるが、私たちにはそれが本当なのかどうかわからないんだが、彼女はとにかく問答無用。ガガガーと全員をブッ殺す。テンポよし!

返り血を浴びて血塗れになったルーシーはなにものかに襲われる。敵はバケモノみたいなハダカの女である。血塗れ。これが自傷行為の秘密らしい。彼女の脳内風景なのか、あるいは本当にキラーがいるのか、私たちには判然としない。パニクッたルーシーは親友アナに電話する。アナは大急ぎでやってきて死体の山を見ておののく。

ルーシーは「わたしは子供たちもひっくるめてぜんぶ殺したっていうのに、まだアイツがきやがるんだ〜」とわめく。狂女である。殺人を行うことによってバケモノキラーから逃れられるという脳内理論を持ってるみたい。アナはルーシーのために死体をなんとかせねばと考え、庭に埋めてしまえとジタバタする。あれだけ派手に暴れ回ったのだから、いまさら死体を隠してどうなるもんではなかろうと思うんだけど、そういう世俗的な感想を述べてはいけないというムードがある。

ルーシーはアナに死体処理を任せ、殺した娘の部屋で居眠りする。一方、アナはせっせと死体の処分をしていたが、殺した家族の中のママだけがじつは虫の息で生きていたと知る。アナはルーシーを心配しつつも「ここんちの家族はわたしをヒドい目に遭わせたのだ」という主張をあまり信じていないようであり、ルーシーが狂っていると思ったようであり、生き残ったママを逃がしてあげることにする。でもルーシーに見つかる。あ、それと前後して、謎のハダカバケモノ女が再びウゲーと現れてルーシーを襲ったりする。とにかくきもちわるいシーンがジャカスカ出てくるのだ。

ルーシーが少女時代に拷問された記憶が蘇る。彼女はケモノのように鎖に繋がれて汚い部屋に監禁されていたが、ある日、スキを突いて脱出をした。ひぃいいいいとおののいて逃げていったが、そのとき自分と同じように監禁されていた女の人を見た。ひどいありさまだったんだけど、ルーシーは自分が逃げるのが精一杯でそのひとを見捨てた。それが復讐のオバケ(or 妄想?)となってルーシーを苦しめているらしいのだ。

現在に戻る。ルーシーはアナがこっそりママを逃がそうとしてると知るや、怒り狂乱する。呪詛の台詞をわめいてるうちにまたあのハダカ血塗れキラーが現れる。ウゲーとバケモノ声を発してルーシーを追いかけ回し、カミソリでメッタ切りするんだが、アナにはルーシーひとりしか見えない。やっぱりこれは妄想の産物だったのだなと私たちにもわかるが「もしかしてアナさえも妄想なのでは」と勘ぐるひとも多いのではないか。でもそういうことはなかった。

狂乱ルーシーはアナの見てる前で自殺する。カミソリで自分の首をザックリ。主人公かと思われたルーシーは早々と死亡する。ひとり残されたアナはワナワナであり、肉親のママに甘えたくなって電話してみたらばこれがまたどういう過去があるんだか知らないが、ヒステリー声でわめくママである。ルーシーがイッちゃってるキャラなのでアナはまともな人格に見えるが、彼女もまたワケアリの養護施設にいたわけだからきっといろいろとトラウマ人生なのだろう。

「ママに甘えたかったよ〜」と弱気声を出していた彼女だったが、部屋のクローゼットに隠し扉を発見する。謎の地下室があった。そこに入ってみたらば、狂った人体実験を行ったようなグロ写真がワンサカあって、やはりここは監禁の現場だったと知る。ルーシーは正しかったのだ。殺された4人家族の両親はやはり監禁者だったのだ。

アナは地下室の奥で監禁された女性を発見する。ハダカで血塗れ。頭と股間に金属の拘束器具をつけられて死にかけていた。頭の方は頭蓋骨に直接ピン打ちされているというハードコア演出にホラーファンもおののく。アナは彼女を助けてあげる。体を洗ってやり、頭の器具を取ってやった。が、監禁された女性は既に狂っており、ひたすら興奮して自傷行為に走る。ナイフで自分を切ったり、ザンバラ頭を壁に打ちつけたりする。アナは「ヤメテー」と制止し、それでも狂女は狂女であり、ゲロゲロのグチャグチャでかんべんしてくださいヨと思ったところで、謎の男女数名が突入してきた。彼らは狂女を射殺した。

突入してきた連中は手馴れたムードで死体を処分し、アナを尋問する。なにが起こったのかを聞きだすと無慈悲に頭を掴んでズリズリ。わるもんである。アナは地下に監禁され、やがてマドモアゼルと呼ばれる冷血女がやってきて、邪悪なカルト団の存在が明らかになる。この中年女が拉致監禁を行う一味のボスである。

マドモアゼルは冷血顔で監禁理由を説明する。長々としゃべっているが、簡単に言うと、人間に苦痛を与え続けてトラウマを植えつけるって話で、それをやるとたいていは狂っちゃうが、中には、Martyrsっちゅうマレな人間がいて、彼らは超越した存在になれるそうである。こんなことしゃべってました↓

Mademoiselle: It's so easy to create a victim, young lady, so easy. You lock someone in a dark room. They begin to suffer. You feed that suffering, methodically, systematically, and coldly. And make it last. Your subject goes through a number of states. After a while, their trauma, that small, easily opended crack makes them see things that don't exist. What did your poor Lucie see? Nothing? Not even a monster or two? Things that wanted to hurt her?

Anna: A dead girl.

Mademoiselle: There you are... A dead girl. The girl you found, Sarah Dutreuil, kept seeing cockroaches running all over her. She'd have cut her arm off rather than bear that. People no longer envisage suffering, young lady. That's how the world is. There're nothing but victims left. Martyrs are very rare. A martyr is something else. Martyrs are extraordinary beings. They suvive pain, they survive total deprivation. They bear all the sins of the earth, they give themselves up, they transcend themselves. Do you understand that word? They're transfigured.

このキチガイカルトがどうしてMartyrsを欲するのか、このシーンでは明確には明かされない。あとになってわかるんだけど、先にいってしまうと「死後の世界(かな。other worldていう言い方もしていた)を知りたいから」である。なんでそうなるのかよくわかんないが、とにかくこの冷血オバサンはMartyrsになれる女をものすごく欲しがってて、その境地に達した者だけが見ることができる風景をどんなものなのかを聞き出したい。そのためにしょっちゅう拉致監禁をしてるっていうことらしいです。

そんなにMartyrsに憧れてるんなら、自分がやれば(つまりオバサン自ら痛い目に遭えば)いいじゃんね。という疑問が生じるが、本来、資本家というのは常に搾取するものなのだということなんですかね。

冷血オバサンは「わたしらの研究によれば、あんたみたいな若い女がいちばんソレになりやすいのよオホホ」てなことをいって去っていった。そのときの台詞↓

Don't try to tell me that the notion of martyrdom is an invention of the religious. We tried everything, even children. It turns out that women... are more responsive to transfiguration. Young women. That's how it is, young lady.

てわけで、アナは人体実験の材料として拉致監禁拷問される。ケモノのように鎖でつながれ、24時間椅子に拘束される。髪の毛をざくざく切られてベリーショートにさせられちゃうのはフランスホラーのお約束みたいだ。椅子に穴が開いてて座ったままで排泄させられる。流動食みたいなめしを強制的に口に入れられる。ときおり男がやってきて彼女を痛めつける。感覚がマヒしていく。マドモアゼルがいうところの『stage』が消化されていく。

闘う気力をなくして死んでるんだか生きてるんだかわからないくらいになったところで「これが最後です」といわれて別の部屋に連行される。拷問器具に全身をくくられて、ナニをされるんだと思ったら、全身カワハギ状態にされた。全身ズルムケイテテのありさまは『ヘルレイザー』みたいだと思ったら、このパスカル・ロジェ監督は公開が待たれる『ヘルレイザー』のリメイク版の監督でもあるのですね。

後から追記。その後、パスカル・ロジェは『ヘルレイザー』から降板しました。

アナはついにMartyrsになる。報告を聞いた冷血マダムは大急ぎでやってくる。イッちゃってる顔つきのアナに質問する。「あれを見た?」と聞かれたアナはなにかを囁く。マダムだけがその言葉を聞いた。私たちはその言葉を教えてもらえない。

カルトのみなさんが続々と集まってくる。金持ちそうな老人ばかり。彼らは興奮を抑えきれぬという顔つきで、おごそかなムードでやってくる。ついにやったか。みたいな。

マダムの側近がみなさんに経過を報告する。「アナは本物でございました。17年間の研究がついに、ついに実ったのでございますよおお」てな調子でスピーチをすると、ジジババたちは「おおおおお」と興奮する。側近男は「マドモアゼルが彼女の言葉を直に聞いた。じきにみなさんの前でその内容を知らせてくれるでしょう」と述べる。ジジババたちはうれしそうに待つ。

待ちきれない側近男がマドモアゼルの部屋のドアをノックする。ふたりはドア越しに話をする。「みなさんがお待ちでございますよ」「もうすぐいくわ」。側近男はジラされちゃったようであり、"So there is something?" と聞く。「みんなが期待する答えをお持ちなんですよね?」と確認する言葉だと思われる。マドモアゼルは「もちろんだいじょうぶ」と安心させるように言う。

男は何度か念を押してからやっと安心し、ドアの前から去ろうとする。マドモアゼルが呼びかける。「あなたは死後の世界を想像できる?」と聞かれた男は当惑する。そして「さぁ。。わかりません」と答える。マダムはドア越しに会話をしつつ、銃を手にしている。彼女は "Keep doubting." という台詞をいい残し、拳銃自殺する。

おしまい〜。

最後に字幕が出る。

Martyr: noun, from the Greek "marturos".

Witness

Martyrの語源はギリシャ語 "marturos"である。それはすなわち『目撃者』。

※最後のKeep doubting.ですが、とても深い意味合いが感じられます。「あんたらはせいぜいジタバタしておれ」というような呪詛の意味合いかなと感じられましたが、ぼんやりとしかわかりません。このネタバレからして、私の主観で書いてるので、どこかハズしているかしょがあるかもです。みなさんの解釈を聞きたいです。

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原題: Martyrs
別題: Martyrs
Iskence odasi
Mártírok
Mártires
Marttyyrit
Martyres
Martyrs: Skazani na strach
Mucednici
邦題(カタカナ): 『マーターズ』
制作年: 2008年
制作国: フランス/カナダ
公開日: 2008年5月 (フランス) (Cannes Film Festival)
2008年8月19日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest)
2008年8月24日 (イギリス) (Frightfest)
2008年9月3日 (フランス)
2008年9月10日 (カナダ) (Toronto International Film Festival)
2008年9月25日 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest)
2008年9月26日 (フランス) (Weekend De La Peur Festival)
2008年10月 (イタリア) (Rome Film Festival)
2008年10月18日 (アメリカ) (Screamfest Horror Film Festival)
2008年11月20日 (ロシア)
2009年1月23日 (カナダ) (French speaking region)
2009年3月4日 (フランス) (DVD)
2009年3月13日 (日本) (Festival du Film Français au Japon)
2009年3月24日 (カナダ) (DVD)
2009年3月27日 (イギリス)
2009年4月28日 (アメリカ) (DVD)
2009年6月12日 (イタリア)
2009年7月 (韓国) (PiFan International Film Festival)
2009年8月6日 (韓国)
2009年8月29日 (日本)
2010年11月6日 (スペイン) (Festival de Cine de Terror de Molins de Rei)
imdb.com: imdb.com :: Martyrs
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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