2012/9/19 (Wed) at 12:49 pm

映画|ムカデ人間2|The Human Centipede II (Full Sequence)

前作『ムカデ人間 (2009)』の衝撃を超える衝撃第2弾ホラー映画。狂チャレンジャーが挑んだ長蛇連結ムカデ人間。ローレンス・R・ハーヴィーアシュリン・イェニー。監督トム・シックス。2011年。

ムカデ人間2 / The Human Centipede II (Full Sequence) DVDDVD画像

ここはロンドン。

マーティン(ローレンス・R・ハーヴィー)はチビで、デブで、ギョロ目の、キモ男である。駐車場の夜間警備員。ぜんそく持ち。ママ(Vivien Bridson)と同居。完璧に孤独。いつも汗をかいている。

家と職場を往復するだけの単調人生を送るこの男は、他人とのコミュニケーションを一切拒絶する。『口』という器官は、彼にとってめしを食う以外の使い途はない。

マーティンは狭い夜警室で、毎晩『ムカデ人間 (2009)』のDVDを観る。何度も何度も観る。その度に新たな感動を覚える。彼はハイター博士に心酔し、崇拝している。ときにはムカデ人間をオカズにオナニーをする。

ムカデ人間をこよなく愛するマーティンの宝物、それは自作の『ムカデ人間アルバム』である。中を開くと、気に入ったシーンの写真やら、細かいメモやら、俳優のポートレートやらがぎっしり貼りつけてある。DVDを鑑賞したあとは、必ずアルバムを開いて、ニタニタするのが日課。

こんな男が「ぼくもムカデ人間をつくってみよう!」と考えつくのは必然であった。彼にとってムカデ人間とはつくりもののホラー映画ではなく、確かに実在する世界なのである。

マーティンは12人の男女を倉庫に拉致監禁。ハイター博士の偉業をはるかに超える、長蛇連結ムカデ記録に挑む。まさに前人未到の、狂チャレンジャーであるといえよう。

前作『ムカデ人間 (2009)』で最後尾カワイコちゃんを演じたアシュリン・イェニーが本人役で登場。前作における恐れ知らずの演技が高く評価され、セレブ女優の仲間入りをした彼女であるが、幸せも束の間、キチガイ男のキチガイ夢を叶えるオモチャにされてしまうのだ。

犠牲男の叫び声↓

You can't do this! It's a film! The Human Centipede is a fucking film! He's going to stich us up ass to mouth! Heeeeeeelp!

ヤメロ!あれは映画なんだよ!ムカデ人間は映画なんだってば!ちょ、ヤツはおれたちのケツと口を縫い合わせるつもりなんだ!助けてくれええエェええ!

トレイラー動画

The Human Centipede II (Full Sequence) (2011) trailer

ALERT!!!!!!!!!!!!

本ページのずーぅっと下の方の『ネタバレ結末』のところまではネタバレしないつもりだったんだが、でも、いろいろ書いちゃって、感想の中で『ネタバレ度中』くらいになっちまったので、映画を未見の方 + 頭カラッポで観たい方はここから下は読まないほうがいいです。

ALERTココまで

感想

ながらくブログを休止しておりましたのでだいぶ遅れましたが、私も観ましたよ。

ブラボー!傑作!

  • マーティン役ローレンス・R・ハーヴィーの変態演技はオスカー級。
  • 前作が劇中劇として使われ、前作の俳優が本人役で登場するという手法が斬新。
  • 数々のびっくり場面にショック死しそう。

マーティンさんはまずみためがすごい。ダニー・デヴィートに50kgの脂肪と変態エキスを注入し、目つきを悪くしたってかんじですかね。ブヨブヨの醜い肉体は、美食を極めたローマ貴族みたいなんだが、そんなゴージャスさとは無縁の人物です。徹底的に孤独。台詞ゼロ。でも、しゃべれないわけではなく、しゃべらないのです。その点がうまく演出されていた。

彼は、前作『ムカデ人間 (2009)』の俳優たちをロンドンにおびき寄せるため「タランティーノ映画のオーディションがある」つって俳優エージェンシーをだますんだが、相手から電話があるといつも電話に出ないの。ボイスメッセージを聞く。私らもそれを聞く。

すると、その内容からして、あー、カメラの回っていないところでマーティンはエージェントに電話をしているんだな、となんとなくわかる。そこで、この男は必要最小限のときしか声を出さないんだな、べつにしゃべれないわけじゃないんだな、ってわかる。サラッとうまいなあと。

タマーに声を出すんだよね。ペットのムカデに餌をやるとき「いぃうぅう」なんて愉悦のため息をもらすの。ニタ顔で。全身から変態オーラがむんむん。きもちわるいよう。

前作のディーター・ラーザーといい、彼といい、トム・シックス監督の人材発掘手腕はすばらしいですな。

この映画は全編モノクロですが(一部着色あり)、たくさんの方が指摘している通り、私も『イレイザーヘッド』だ!って思いました。最初の方のアパートのシーンで赤ん坊の泣き声がするところ、他にもオマージュ風な演出がいくつかあった。

私事で恐縮ですが、昔話を少々。私、学生時代、アパートにひきこもってた時期があるのです。理由は定かではありません。そのとき、何日も部屋にこもってヘッドホンして『イレイザーヘッド』を観続けていたの。昼も夜も。この映画のマーティンみたいに。昔だからVHSビデオです。

マーティンという変態男はハイター博士に心酔して『ムカデ人間 (2009)』を繰り返し観ている。その映像は『イレイザーヘッド』を思い出させる。そして、この私は、かつて『イレイザーヘッド』のヘンリーさんを繰り返し観ていた。

なんかこれ、こわいじゃないですか。まるで私自身もsequenceのひとつであるような錯覚を覚えるというかですね、えもいわれぬ奇妙な心地。そんな個人的な体験もあいまって、余計にきもちわるかったなあ。

パート3はどうなるんでしょう

私はいまパート2に追いついたところなので、パート3に関するteaser情報などは詳しく知りません。以前、ディーター・ラーザーが出るだの、出ないだの、もめてるってのはどっかで読みましたが、その後どうなったんでしょうか。そこらへんよく知らないのですが、ハイター博士とマーティンが出会ったらどうなるのかなって想像してみました。

もし博士がマーティンを見たらきっと怒りますよね。このドシロート!長けりゃいいってもんじゃないんだよ!つってさ。博士から見たら、とんでもなくヘタクソの大馬鹿野郎で、こんなやつが自分の後継者だなんて絶対認めないでしょう。弟子にもしてもらえないんじゃないすか。

でもマーティンさんほどムカデ人間を愛しているひとは他にいないし、彼にとってハイター博士は理想の父親像なのかなと思うんで、いつしかふたりの間にたぐいまれな師弟愛が生まれるのかもしれない。変態感動ムカデ巨編ですな。

パート3について監督のtwitter

パート1で唯一の生存者、真ん中パートのリンジーちゃんがその後どうなったのか。また、パート2のマーティンがその後どうなったのか。これらはパート3ですべて明かされます。

だそうであります。上のtweetの日付が2012年5月30日で、なんかいろいろ難航しているようですが、トム・シックス監督はえらいので、きっと次もドッカーンとやってくれるでしょうhopefully。

『ムカデ人間3』に関して追記

余談ですが

宮崎勤以降、キチガイじみたホラー映画を観ているようなヤツは犯罪者予備軍であるというような論調が一部にありますが、そういう方々に私はいいたい。あのですね。よろしいか?

The Human Centipede II is a fucking film! Martin is a fictional character! Did you know that?

『ムカデ人間2』は映画なんですよ!マーティンさんは架空のキャラなの。って知ってました?

ホラー映画を危険視する方々には、ホラー映画のメイキングを是非見てほしいものです。そこに出てくるのは、つくりものの血塗れチンコやら人間の腕やらをつかんで得意げに笑っている無邪気な連中です。犯罪者のムードなんか微塵もないよ。

こんな雰囲気です映画|ムカデ人間2|The Human Centipede II (Full Sequence) メイキング 画像1

もっともですね、ホラーファンという道を選んだ私やあなたという人間は、どこか、心の奥底で、悪趣味なものを見てイヒヒと笑っていて、そこが楽しみの本質というわけではないが、重要な部分ではないかと推察します。

ゆえに、私たちの娯楽に花を添えてくれるのが、ガミガミ屋のオバちゃんたちである、という見方もできるのではないか。もしあの人たちが「あーら、たのしそうざます。いい趣味ざます」なんていいだしたら、私らの楽しみは半減するのではないか。だから、まぁ、適当に騒いでくれた方がこっちも楽しいのかなって気もします。

US版 DVD / Blu-Rayのオマケ

こんだけ↓

  • Audio Commentary (Tom Six and Laurence R. Harvey)
  • Interview With Tom Six (12:35)
  • Set Tour Of Warehouse (09:17)
  • Foley Sound Effects (03:07)
  • Making The Poster (02:19)
  • Deleted Scene (00:25)
  • Promo (02:10)
  • Trailer (02:10)
  • Teaser (00:53)

Interviewの内容を下に要約したので、興味のある方はそちらをどぞ。Set Tour Of Warehouse、Foley Sound Effects、Making The Posterはメイキング。

演技の打ち合わせ中映画|ムカデ人間2|The Human Centipede II (Full Sequence) メイキング 画像2

Set Tour Of Warehouseの中でつくりもののお尻が出てきますが、赤ちゃんのおしゃぶりみたいなやつがくっついています↓

映画|ムカデ人間2|The Human Centipede II (Full Sequence) メイキング 画像3

俳優さんたちは連結が外れないようこれを口に加えるのですね。もちろんこれは撮影上のウラ話で、マーティンさんがこしらえたわけではありません。

また、監督がコメンタリの中で「この映画は台詞が少ないから余計に音が重要だ。Eilam Hoffmanはいい仕事をした」っていってましたが、この音関係のメイキングがFoley Sound Effectsです。あんなふうにやるんですね。

ポケーと観てると聞き流してしまうんだが、そういわれてみれば、確かにいろんな音が微妙に配置されています。コメンタリの中でローレンス・R・ハーヴィーが「編集前の映像を見たときには、これはスプラッターコメディだ、と思ったけど、きちんと編集されて、モノクロになり、サウンドもついたら、まるで雰囲気が違うからびっくりした」つって、監督が「ぼかあ、最初からそのつもりでつくってるわけです」といってました。映画監督ってすごいんだなあ。

Deleted Sceneはマーティンがロットワイラーを相手に「わんわん」というユーモラスな場面でした。ご承知の通り、ロットワイラーてのはこの映画の重要なイコンでありますが、前作のDeleted Sceneにあった、ハイター博士の喜びダンスに比べるとインパクトは薄かったです。

この映画はUKやオーストラリアでbanされたり紆余曲折を経たのち、各国でメディアリリースされましたが、editionによって中身に違いがあるそうです。次のシーンがあったりなかったりするそうな↓

私はレビューを書くにあたり、違いをまとめてみようと思ったのですが、ややこし過ぎて追い切れません。あきらめました。amazon instant videoはこうだとか、Netflixはこうだとか、もうね、ややこしいの!

結論。とにかくUS unrated版を買っておけば間違いない。run time 91 minを確認して買いましょう。映画本編は英語字幕付き。オマケは字幕なしです。この映画のモノクロ映像は非常に細密なので、Blu-Rayがおすすめです↓

トム・シックス監督のインタビュー

DVDのオマケの監督さんのインタビューを要約します。

発売時点(2012年2月14日)なので古い部分もあります。次回作パート3に関する情報は、もっと新しい話がウェブにいろいろ出ています。

トム・シックス 画像

前作は大成功だったから、続編パート2には大きなプレッシャーがあった。選択はふたつあると考えた。通常の意味での続編、すなわち、前作ラストの生存者であるリンジーのその後を描く、また、あるいは、まったく異なるお話にするか。

独自性を重視する私は後者を選んだ。どっかの変態男が『ムカデ人間 (2009)』を観て、本当にそれをやろうとするなんておもしろいでしょ。

ハイター博士を演じたディーター・ラーザーはクールなキャラだったが、あれを上回る個性的な人物なんてそうは見つかるもんじゃないわけで、今度は正反対のキャラ設定、頭のおかしい変態男にした。

無口でチビでデブでママと同居する変態男が、12人のムカデ人間に挑戦する。彼はハイター博士と違って医者じゃないのです。外科医の心得なんかありはしないので、むちゃくちゃなことをやる。ステープル(大型のホチキスみたいなの)で人間をつなげちゃう。ゆえに、こんどの映画は『100% medically inaccurate(医学的に絶対ムリ)』であります(ニヤッ)。

※前作のキャッチフレーズは『100% medically accurate(医学的に正確)』でありました。

キャスティングについて。

お尻と口をくっつけるという超設定ゆえ、前作のキャスティングは難航したが、こんどはらくだった。映画が有名になったお陰で、みんな喜んできてくれた。いわなくてもよつんばいになってくれるんだから。

マーティン役に関して。

10人のUKの俳優をオーディションしたが、ローレンス・R・ハーヴィーは、その存在感、恐れ知らずの演技において突出していた。彼のようなアクターが過去に子供向けの仕事をしていて、ホラー映画に初出演というのは不思議に思える。ディーター・ラーザーのときも同じことを思ったが。

アシュリン・イェニーもすばらしかった。前作で彼女の役は死んじゃったのだがら、まさかこんな風に再登場するなんて誰も予期しなかっただろう。

モノクロという手法について。

私はかつて「次回作パート2に比べたら、前作はMy Little Pony(子供向けのアニメ)みたいに思えるだろう」と観客に約束した。その言葉通り「すべて見せてやるぞ(つまりゴアゴア全開)」と挑んだが、と同時に、私はホラー作家として、なにかしら観客の想像をかきたてるような余地を残したかった。よりドラマティックに、より恐怖を呼ぶには、その『隠す』さじかげんが肝要であると考えている。そこでモノクロという手法を選んだ。

私は『イレイザーヘッド』や『シンシティ』が好きなんだが、彼らがやったのと同じような効果を出したいと思った。ウンコだけ茶色に着色したのはお遊びです。

衝撃レイプシーンについて。

前作『ムカデ人間 (2009)』公開後、多くの人々から「なぜハイター博士は人間ムカデにエロいことをやらないの?あんなカワイコちゃんなのに」という質問を頂戴した。私は「博士は純粋な科学者で、エロい気持ちなんか微塵もないのです」と答え続けた。でも、パート2ではそういうのをやらなくてはと思った。よいホラー監督は「観客がほしがっているものを見せる。さらにそれを超える、予期せぬものを見せる」ものだから。ホラーのゴア描写はユーモアが大事。

次回作パート3について。

プロデューサーであり、妹であるイロナ・シックスと脚本を取り組み中(インタビュー時点の話。現在はもっと進んでいます)。パート3でムカデ人間シリーズはおしまい。1-2-3と続けて観たら、4時間を超える壮大なムカデ人間絵巻になるわけです。「パート2に比べりゃ、パート1はMy Little Ponyだよ」といいましたが、こんどはコレ↓

「パート3に比べりゃ、パート2はディズニー映画だよ」

であります。より物議をかもす(controversial)、より独自路線を突き進む、それが私のゴールです。撮影地はアメリカになる予定。

最後に人生についてひとこと。

いうまでもなく映画をつくるのが一番幸せです。それしか知らないし、できない。そうだな、それ以外の時間はコイツみたいに生きていきたい(愛犬パグをだっこしてカメラに見せる)。めしを食って、寝て、遊んで、sexをする。そんだけ。

インタビューはこんなかんじでした。

Memorable Quotes

Martin's dad voice in dream: Stop them tears. You're just making Daddy's willy harder.

※上の台詞は、かつてマーティンを虐待したパパの声が夢の中で聞こえるっていうところだが、この声を演じているのは、ローレンス・R・ハーヴィー(コメンタリより)。

Dr. Sebring: Let's see. The centipede can be considered a phallic symbol. Centipedes are very aggressive creatures. Their bite can be very painful. Maybe he's connecting the pain that a centipede inflicts with the pain inflicted on him through use of psychological and sexual abuse by his father.

Valerie: Babe, there's a midget wankin' in there!
Karrie: You're drunk love!

guy: You can't do this! It's a film! The Human Centipede is a fucking film! He's going to stich us up ass to mouth! Heeeeeeelp!

Dr. Sebring: How much to fuck you in the arse, darlin'?
Candy: For you, darlin'? Fifty.

Misses Lomax: What is this? 100% medically accurate? Mouth to anus? One digestive system? Is this a perverted film you've been talking about?

ここから先はネタバレ100%です。オッケーな方のみ、ズリズリーとスクロールして下さい。

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別題: The Human Centipede II (Full Sequence)
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邦題(カタカナ): 『ムカデ人間2』
制作年: 2011年
制作国: アメリカ
公開日: 2011年9月22日 (アメリカ) (Fantastic Fest)
2011年10月7日 (アメリカ) (limited)
2011年11月 (オーストラリア)
2011年11月4日 (イギリス) (limited)
2012年7月14日 (日本)
2012年8月4日 (ドイツ) (Cinestrange Filmfestival)
2013年8月9日 (スペイン) (Madrid premiere)
imdb.com: imdb.com :: The Human Centipede II (Full Sequence)
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
プロダクション・デザイン
アートディレクション
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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