映画|人類滅亡計画書|Doomsday Book
近未来を描いたSFアンソロジー映画。人間の未来の姿を描いた3つの物語。リュ・スンボム、キム・ガンウ、チン・ジヒ、ペ・ドゥナ。監督イム・ピルソン、キム・ジウン。2012年。
みっつのお話が入っています。ひとつづつ紹介します。
A Brave New World
監督:イム・ピルソン
家族旅行にいけなかった科学者男(リュ・スンボム)が、ふてくされ顔で家の掃除をやる。汚いゴミを分別せずに捨てたら、ゴミ処理工場 → 家畜の飼料 → 屠殺場 → 町の焼き肉屋経由で、人間の口に再び戻ってくる。肉の中には、正体不明のウィルスが熟成されていた。
男はカワイコちゃん(コ・ジュニ)と焼き肉デート。ふたりは狂ウィルスに感染。他にも大勢の人々が感染。被害は拡大。韓国じゅうが大パニック。わーわー。
このウィルスに冒されると、発熱/吐き気/眩暈といった症状が現れ、やがて狂ってひとを襲う。死人ではないのでゾンビとは違うが、似たかんじ。牛を屠殺する衝撃場面あり。
Heavenly Creature
監督:キム・ジウン
高性能ロボットが存在する近未来。ロボットの開発/生産を一手に行う巨大企業UR社の修理担当の技術者男(キム・ガンウ)は、ある日、お寺に呼ばれる。
お寺でロボはなにをやってるのか。床掃除か案内係か。と思ったら、なんとお坊さんたちに混じって修行していた。このロボ(声はパク・ヘイル)は人間のお坊さんを差し置いて涅槃の境地に達し、仏陀になったという。ロボなんですけど。
UR社は「これは不良品。リコール対象である」と判定を下すが、お坊さんたちは納得しない。彼らはロボの人格を認め、仏陀として尊敬しているのである。ロボの処遇を巡り、お坊さんとUR社の社長はいい争う。人間同士の諍いを見守る仏陀ロボは、これをどうおさめるのであろうか。
Happy Birthday
監督:イム・ピルソン
ビリヤード好きな父を持つ少女(チン・ジヒ)が誤って父の8番ボールに傷をつけてしまう。悩んだ末、破格の安値でビリヤード玉を売る怪しいネットショップを発見。こっそり注文した。少女は元のボールを窓から放り捨てた。
2年後。
地球に巨大隕石が急接近。全地球的なピンチに陥る。人々はシェルターをつくるやら、食料を買い込むやら、てんてこまい。少女も家族といっしょにシェルターに入るが、ニュースを見て驚いた。隕石の写真がテレビに出てきたらば、それはなんと巨大な8番ボールである。ギョギョギョ。
ボール隕石には『qkr0109』という謎の文字列が刻まれており、テレビに出てくる大人たちはしかめつらでその意味を解読しようとしているが、少女にはその意味がすぐにわかった。彼女が注文したときのidだったから。
つまり、あれはエイリアンのウェブサイトだったのです。自分がやったことが原因で地球が壊滅の危機に瀕するなんて、想像を超えるおそろしさである。彼女は家族にすべてを打ち明け、両親を説得し、注文をキャンセルしようとがんばる。
パパママはエアロバイクでわっせわっせと発電担当。メカに詳しい伯父さん(ソン・セビョク)が彼女をアシストしてくれます。彼女は注文をキャンセルできるのか。地球を救えるのか。大人になった少女を演じるのはペ・ドゥナ。
トレイラー動画
Doomsday Book (2012) trailer
邦題『人類滅亡報告書』
この映画の邦題は『人類滅亡報告書』といって、2012年10月に『第25回東京国際映画祭』で上映されたそうです↓
その後、日本では劇場公開やメディアリリースはされていないみたい。私は、今月発売されたUS版を見ました。
感想
みっつめの『Happy Birthday』(隕石のヤツ)がダントツによかった。人情家族の描き方とかテンポのよさ加減が、伊丹十三みたいだなって思いました(褒め言葉として)。
次によかったのは『A Brave New World』(ゾンビ風のヤツ)。細菌パニックものとしてなかなかのもんだと思う。グロメイクもいいんだが、この映画の主題である、ゴミ処理リサイクルとか、食用家畜の現場などが出てきて、そっちの方がグロテスクだった。
上に書いた通り、牛を屠殺する場面がある。ギョッとする。ほんとにやってるように見える。あれがつくりものならすごい技法だなと感心するが、もしほんとにやってるとしての話↓
映画のために動物を殺すのはけしからんですが、屠殺の現場で現実にあのようにやっているのなら、あの場面は意味があったのだろう。でも、観客を驚かすために残酷な脚色をしているのならじつによくないと思う。どっちなのだろう。
日本人のみなさんの感想を興味深く読ませてもらったが、この点について触れているひとがひとりもいなかった(探し方が悪いのかもしれないけど)。みなさんはなんとも思わなかったのだろうか。不思議。
『Heavenly Creature』(仏陀ロボのヤツ)はパケに使われているくらいだから、このアンソロジーの中で目玉的存在なのだろうが、あまりおもしろくなかった。しかし、これは私が仏教てものにあまり関心を寄せてないせいだと思う。『仏教/テクノロジー/政治』。こんなキーワードについて日頃から洞察をしているひとには興味深い内容なのだろう。
しかし、仏教うんぬんは置いといて、エンディングには脱力した。あえてSFのベタをやったということなのかもしれないが、意図が読めなかった。『悪魔を見た (2010)』はすごくよかったんだが、こちらは私には合わなかったなあ。
てわけで、私が気に入った2本『Happy Birthday』『A Brave New World』は共にイム・ピルソン監督の作品です。どちらもパニックを扱っているという点で共通していて、チョコチョコと出てくる小ワザ的な演出がどちらもよかった。
テレビの討論番組に『韓国版 福島瑞穂』みたいなババアが出てきて、ギャーギャーわめいたり、アナウンサーのネーチャンがへんな告白をやらかして、スタジオで大ケンカするとかね、ああいうのいいよね。なんか韓国っぽいよね。
DVDのオマケ
US版DVDは英語字幕つき。オマケはトレイラーのみでした↓
Memorable Quotes
In-myung: To perceive is to distinguish, merely classification of knowing. While all living creatures share the same inherent nature, perception is what classifies one as Buddha and another as machine. We mistake perception as permanent truth and such delusions cause us pain. Perception itself is void, as is the process of perceiving. As I am a perception of this void, please see me for what I am.
girl monk: Brother In-myung.
In-myung: Fill your mind with nothingness.
In-myung: From where have I come, and to where do I go? What am I? What am I?
Min-seo: Maybe it was a website for aliens!
uncle: How did you eight ball get destroyed in the first place?
Min-seo: Oh, I don't know... Maybe it was just time for it to get destroyed. Like this place.
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