2013/8/3 (Sat) at 6:57 pm

映画|ビニース|Beneath

湖で人食い巨大魚が出てきてびっくりするホラー映画。ダニエル・ゼヴァットボニー・デニソンクリス・コンロイ。監督ラリー・フェセンデン。2013年。

ビニース / Beneath DVDDVD画像

ここは田舎の湖、ブラックレイク。

地元の男女6人が水遊びにやってくる。こいつらは高校を卒業したばかりの仲良しグループで、これからは別々の道に進んでいくから、最後にお別れパーティをやろうジャン、という話で集まったのであった。

彼らは湖のあっち側に行くために、手漕ぎボートに乗ってのんびりと湖上を滑っていく。楽しそうでいいですね。

と思ったら、人食い巨大魚が出てきて襲われる。ナンじゃこれは?!ドラゴンボールで悟空が水に潜って捕まえてたヤツみたいよ。

「この湖にはこわい巨大魚がいるよ」という話は確かにあったんだが、それはUMAというか、言い伝えのようなもので、誰も信じていなかった。まさかほんとにいたなんて!

連中はギャーギャーわめいてピンチ脱出しようとするんだが、ボートに穴が空き、おまけにオールを失ってしまう。このままでは魚の餌になるのを待つばかりではないか。

という状況において、彼らのとった行動は『投票』であります。誰かひとりが犠牲になって魚に食われる。残った連中はそのあいだに手でジャブジャブやって、えっちらおっちら逃げていこう。という話で、つまり犠牲になるべき人間を多数決で決めるというのです。

こんなことを思いつく阿呆でありますから、その先は醜い争いに発展します。犠牲になるのは誰もが嫌だから、自分に投票されないよう、いろんなことをやる。

自分がいかに人類に寄与できる人間であるか(つまり死ぬべきでない)をべらべらしゃべったり、自分に投票されないように暴露話をしたり。いやらしいですね。人間って汚い!ひどい!おまえら、死ね!という修羅場に突入していくのであります。阿呆なみなさんの横顔をざっと紹介しましょう。

キティ(ボニー・デニソン)... 鼻ペチャの丸顔娘はアンパンマンみたいだが、これがカワイコちゃんのモテ女という設定。「田舎じゃこういうのがモテるんだよな」的な外観は妙に生々しく、そそられるかんじ。後半になると彼女の悪女ビッチぶりが露になるんですよ。うへー。

ジョニー(ダニエル・ゼヴァット)... 悩める若者。彼のおじいちゃんはUMA巨大魚を調べていたらしい。ジョニーはキティさんの高校時代の元カレで、いまも未練タラタラです。巨大魚に襲われないお守りをこっそり彼女に渡そうとするんだが、「わたしら、終わったのよ」なんていわれて玉砕します。この場面で、この娘はこんな台詞を口にします↓

Kitty: Don't make me regret digging you.

「あなたを好きになったことを後悔させないで」

いかにも田舎のモテ娘がいいそうですね。むかむかします。なにがキティだ。

マット(クリス・コンロイ)... こんなキティさんは、いまはこのタフガイ男とつきあっています。親は地元の金持ちです。筋肉単細胞キャラですね。ふたりはジョニーに見せつけるように、みんなの前でブチュブチュします。

サイモン(ジョニー・オルシーニ)... マットの弟。こちらも単細胞キャラなんだなと思ったら、スカラーシップをとったとかいうので、頭は兄貴よりもいいみたい。

ジーク(グリフィン・ニューマン)... 映画製作者になりたい自信過剰のオタク男。自分が世界を変えると本気で信じるこの男は、若い頃のウディ・アレンにすごく似ています(顔が)。オマージュ的なキャラ設定なのかな。と思ったけど、そんなことを書いているレビューはなかった。

デボラ(マッケンジー・ロスマン)... 普通のネーチャン。彼女は序盤で死亡します。映画を観終わって思えば、この人だけが天国に行けたのかも。

以上のみなさんに加え、チョイ役でマーク・マーゴリスが登場します。彼はジョニーさんのおじいちゃんの友達で巨大魚を信じている人。

キャストはこの7人のみ。映画のほとんどは狭いボートのみ。という限定状況の小さなドラマですが、なかなかおもしろいよ。フェセンデンさんも少しくらいは出ればよかったのに。

トレイラー動画

Beneath (2013) trailer

感想

監督のラリー・フェセンデンの映画は日本で未公開が多いので、あまりぴんとこないかもしれませんが、彼はインディーズ映画の第一人者であり、貧乏監督を積極的に支援することで知られています。彼が関わる映画というのは、ことごとく『へんなの』が多くて、おもしろい。最近作では『スウィング・オブ・ザ・デッド (2012)』『THE サスペリア 生贄村の惨劇 (2013)』がすごくいい。ちょっと前の『セール・オブ・ザ・デッド (2008)』もよかった。

そのフェセンデンさんの久しぶりの監督作品ということで、観る前から大期待だったですが、『巨大魚が出てくるホラー映画』という話を聞いたら、少し不思議に思いました。『ピラニア (2010)』、その他モロモロ、人食い魚のホラー映画はすでにたくさんあるじゃないですか。でもさ、彼がやるくらいだから、きっとなにかちがうのだろう。

そんな期待を裏切らない出来でしたよ。これはいいなー。誰もが注目する巨大魚のVFXはよくできている。そして連中が仲違いするドラマもおもしろくて大満足でした。彼がインタビューで触れていますけど、ヒッチコック的なところもある。

どいつもこいつも身勝手なヤツばかりなんだが、人間は一皮剥いたらこんなもんじゃないのって気もします。正真正銘の悪人でなく、貧乏根性の小悪党なんですね。言い換えれば、普通の人たちです(ちょっとデフォルメしてあるけど)。そこがいいですね。

以下は妄想。

私、見終えてふと「お伽話みたいだ」と思いました。もし、メンツの中の誰かが、それはそれは清い心を持っていて「よし、おれが犠牲になろう。みんなは逃げろ」なんていいだしたら、どうなっていたでしょう。ジョニーさんだけはいいヤツだったけど、その彼も疑心暗鬼に駆られて、墓穴を掘って死んでしまった。彼のような風でなく、一点の曇りなく善のキャラがもしひとりでもいたらどうなっていたのか。

もしそんなのがいたら、きっとあのお魚さんはそいつを背中に乗せて岸に連れていってくれたんじゃないかな。あるいは、竜宮城みたいなパラダイスに案内するとか。だからさ、あれは山の守り神なんじゃないのかな。

いやー。これは私が勝手に思いついた妄想です。どうしてこんなことを思いついたのか、自分でもよくわかりません。『ジョーズ』や『ピラニア』を観て、そんなこと思わないのにへんだなあ。私がフェセンデンさんを特に好きなので、特別な意味づけを捏造してしまったのだろうと思います。

こんな想像を呼ぶというのは、私がこの映画を気に入った証拠なのでしょう。みなさんも見てください。そして私の妄想を笑ってください。

私はiTunesUSで観ました。DVD/Blu-Rayのリリースは未定ですが、そのうち出ると思います。買おう買おう。

ラリー・フェセンデンの情報色々

以下のインタビューはすごくいいです。最近の作品について語っています。『セール・オブ・ザ・デッド (2008)』のPART2ができるらしい。でもフェセンデンさんが出るかどうかはまだわからない↓

また、次のインタビューもいい。こちらは『Beneath (2013)』についてのみ語っています。この映画の着想を得たのは、「大好きな『ジョーズ』 + ヒッチコックの『救命艇』 + 俺流のユーモアをくっつけたらこうなった」とかなんとかしゃべってます。なるほどー↓

また、以下のサイトでは『Beneath (2013)』のプリクェルのコミックスが売っています。彼はこういうお遊びアイテム(ウェビソードとか)を出すのが好きですよね↓

また、ラリー・フェセンデンはこちらの話題作にも参加が決まっています↓

そしてこちらは彼がやってるGlass Eye Pixの公式サイトとtwitter。みんなもフォローしよう↓

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原題: Beneath
別題: O Perigo Vem do Lago
制作年: 2013年
制作国: アメリカ
公開日: 2013年5月3日 (アメリカ) (Stanley Film Festival)
2013年7月17日 (アメリカ) (limited)
imdb.com: imdb.com :: Beneath
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