2013/8/4 (Sun) at 2:09 pm

映画|iPS イントリュージョン・オブ・プレデター・ステムセル|Errors of the Human Body

ドイツに招聘されたアメリカ人研究者がひたすらに苦悩する医療テーマのSFスリラー映画。マイケル・エクランドカロリーネ・ヘルフルトトーマス・レマルキス。監督エロン・シーアン。2012年。

iPS イントリュージョン・オブ・プレデター・ステムセル / Errors of the Human Body DVDDVD画像

ここはドイツのドレスデン。

アメリカ人研究者のバートン博士(マイケル・エクランド)は『胎児の先天性異常の症例』について画期的な成果を上げ、世界で注目され、ドイツのラボに招聘された。

彼の功績は『バートン・シンドローム』という病名の名付け親になったくらい名誉のあるものだが、彼の名が広く知られるようになったのは、単に功績を上げたからだけではなく「自分の子供をこの病気でなくし、研究を行った」という事情のせいもある。

この病気は100%先天的な異常によるもので、最初はぜんぜんわからない。「げんきな赤ちゃんが産まれた!」と喜んでいたのが、ある日とつぜん発症する。体中に腫瘍ができ、見るも痛々しい兆候を現し、1週間で死亡する。

おそろしいですね。両親はたまりませんね。バートン博士は「自分の子供をなくしたことをきっかけに、これを研究した」っていうんだが、父親の立場で、自分の子供の死体を検分したり、苦しむ様子を見続けたり、そんなことをするなんて、ものすごく辛かっただろうと推察されます。

そんな深い事情があるゆえに、ドイツに歓迎されてやってきたというのに、あまりうれしそうでない。映画の中で徐々に明かされるが、彼は奥さんと離婚したらしい。陰々鬱々とした顔でドイツの風景を眺め、ため息をつき、アメリカにいる元妻(Caroline Gerdolle)に電話をして泣きべそをかき、初日早々に遅刻をします。

彼はきっと過去をフッ切る想いもあってドイツに来る気になったのでしょう。はやくげんきになってくださいよ。

翌朝ラボにいって、所長さん(リック・メイヨール)に挨拶をし、他の研究者たちを紹介され、新生活を始めるんだが、そこで昔の愛人と再会する。レベッカさん(カロリーネ・ヘルフルト)はバートン博士がボストンで教授だった頃にインターンだった。ふたりは教授とインターンがナニするアレだったんですね。まぁ、いやらしい。

といっても、それは昔のことである。彼女はいまは立派な科学者だから、ふたりは対等な間柄。彼らはサバサバした調子で挨拶する。

そこで彼女は驚くべき研究をバートン博士に見せる。それはウーパールーパーの細胞再生能力を飛躍的に高めるeaster geneというもんで、素人の私が見てもスゲーなあというくらいなので、バートン博士もウホーと驚く。彼女はがんばってこれを発見したんだが、マウスの実験ではまだ成功できないそうな。これをほ乳類でやれるようになったらすごいよね。手足をチョン切っても、ニョキーと生えてくるのかな。

レベッカさんは「いっしょに研究してほしい。ふたりでやればぜったい成功できる」と意気込みを語り、彼もオッケーする。なかなか幸先のよいスタートではないか。これならドイツにきてよかったんじゃないの。

と思ったら、同じラボで働くスキンヘッド研究者のヤレク(トーマス・レマルキス)てのが出てきて、へんな具合になる。コイツはレベッカさんの発見を横取りしようとしているらしい。勝手に研究成果を盗んで、一足早くマウス実験を成功してしまえ、そうすればおれのもんだ、イッヒッヒ、という悪いヤツなんですね。バートン博士はこの男が嫌いでジタバタするんだが、その後にズラズラといろんなことが明かされて、事態はそんなに単純なものではなかったとわかる。

功名心に溺れる研究者同士の争い、運命的に絡み合う人間関係を描いたSFスリラー映画。衝撃のエンディングでは、バートン博士が抱える真の苦悩が明かされます。

トレイラー動画

Errors of the Human Body (2012) trailer

感想

ひたすらに悩み苦しむマイケル・エクランドをずっと眺めていたい。ほかはなんにもいらない。というひと向け。

エクランドさんがひとりで気を吐いているような映画であった。このひとはいろんな役をやるけれども、じつになりきり演技がうまいですね。でも、それだけで映画がおもしろいということにはならない。

彼の最後の台詞↓

Geoff Burton: How was I supposed to know?

これは確かにギクリとする重い言葉なんだが、どうもグッとこない。編集が悪いのか、脚本が悪いのか、技術的なことは私にはわからないけれども、盛り上がりに欠ける映画だった。最初の30分はヨサゲなんだが、その先がだめだった。

バートン博士の背景がズラズラーと明かされ、彼がドイツにきて、昔の愛人と出会い、そこでびっくり仰天の研究を見せられる。ウホー。いいかんじになったところで、ヤレクという悪人キャラが出てきて、役者が揃ったね、おもしろそうではないか、と思わせるんだが、その後、ダルダルになる。

レベッカさんが発見したウーパールーパーの実験がマウスで成功し、そしてついに人間も、ということになるんだが、あれはちょっと簡単すぎないか。なにかこう「科学のブレイクスルーを目撃した!」「ついに成功した!」的なギョギョギョ感が欲しかったところである。それがないとつまらないよね。

医療テーマということで、『アンチヴァイラル (2012)』とイメージがダブるけれども、そのような宣伝文句をどこかで見たけれども、あれにはぜんぜん及ばないなあ。

こういう設定のSFは脚本がむずかしいだろうなあと思う。専門用語だらけになってしまうと普通の人にはわからないし、かといって単純すぎるとだめだし。普通の人にわかるように説明しつつ「大発見だ!」という風に見せてくれるかどうか。残念ながら、この映画はその点が不成功だったように思われました。

エロン・シーアン監督は『The Divide (2011)』の脚本家でもある。これはすごくおもしろいですよ。未見の方はぜひ。ナマニクさんの記事↓

US版DVDは8月発売予定

私は『Errors of the Human Body (2012)』をiTunesUSで観ましたが、US版DVDは2013年8月13日に発売予定だそうです↓

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原題: Errors of the Human Body
制作年: 2012年
制作国: ドイツ/アメリカ
公開日: 2012年7月28日 (カナダ) (Fantasia International Film Festival)
2012年9月23日 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest)
2013年3月30日 (フランス) (Mauvais Genre Film Festival)
2013年4月6日 (アメリカ) (International Horror & Sci-Fi Film Festival)
2013年4月6日 (アメリカ) (Phoenix Film Festival)
2013年4月19日 (アメリカ) (limited)
imdb.com: imdb.com :: Errors of the Human Body
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