映画|マスト・ラブ・デス|Must Love Death
自殺志願のダメ男が、拷問好き変態男たちにとっつかまってヒデー目に遭う、ちょっと変わったホラー映画 from ドイツ。お笑いあり。『ネクロマンティック (1987)』のユルグ・ブットゲライトがチョイ役出演。サミ・ロリス、マノン・カール。監督Andreas Schaap。2009年。
ここはNYのスタジオ。ノーマン(サミ・ロリス)はミュージシャンだが、最近の彼はじつにパッとしないので、長年付き合いのある親友プロデューサーに「ちょっと休め」といわれてしまう。この業種の人間にこういわれたら「あんたもうだめね」と同じ意味である。ショービジネスは非情なのです。
ノーマンはやけっぱちになり、自分をフッた女に会いにいく。「死んでやるー」と銃を出すが、結局死ねないというダメ男ぶりを露呈して赤っ恥をかく。それを見た女はセセラ笑う。「あんたのそういうダメっぷりがダメなわけです。ははは」と勝利宣言されて、トホホである。
さらに、そのあと、彼はクルマに轢かれる。もうぼくはだめですよこのままウジ虫のように死んでいきますよみなさんさようなら、と思ったかどうか知らないが、まァ、そんな調子でズタボロの底辺に落ちた彼は、人生というものに愛想を尽かす。もう涙も枯れました。
が、この先、幸運がやってくる。その、彼を轢いた相手というのが、スゲーカワイコちゃん(マノン・カール)だった。派手にぶつかったわりには、指をケガしただけですんだという点も幸運だった。彼はカワイコちゃんと恋に落ちて大ハッピーになる。と思ったら、ほどなくして、またまたヒデーことが起き、お先真っ暗の急転直下。彼はもう立ち直れない。再起不能の精神状態になる。
ノーマンは自殺志願者となり、集団自殺に参加することを決断する。死にたい者同士が集まるやつです。ジャージーまでドライブ。指定された山小屋に行ったら、男2名がいた。しばらくしたら女もやってきた。
彼らはビールをまずそうに飲みながら、ぎこちなく挨拶する。お互いに偽名で呼び合い(ポールとかジョンとか)、もう死んでしまうのだからいまさら何を話すでもなく、間の悪い会話をする。ややあって「さぁ、そろそろやりますか」なんつってロープを用意する。みんなで仲良く首吊り自殺。この世とオサラバです。
と、思ったら、ノーマンが目を覚ましたら、彼はイスに拘束されていた!いっしょに死ぬはずだった3人がうれしそうにこっちを見ているではないか。タバコの火を押しつけられ、両手の指をポキポキ折られた。うぎゃああああああ。相手は「おもしれー!小枝みたいに折れるわ!」とゲラゲラ笑う。
なんとコイツらは拷問好き変態チームなのであった。ノーマンは彼らの仕掛けたワナに落ちたのである。彼らは自殺志願者をだまくらかして、引っぱり込んで、拷問して、遊ぶ。そのようすを喜んでビデオに撮影する。
途中から女が怒りだして「あんたら病気!もうわたしやめる。帰る!」とかいいだして、どういう経緯かわかんないが、どうやら彼女はよくわかってなかったみたいである。彼女は途中から犠牲者組に入る。
拷問マニア男2名はノーマンと女を拘束し、さらに、近所でカーセックスしていたカップルも引っぱり込んで大喜び。「拷問ショーのはじまり〜。オーイエー!」とノリノリMCをやりつつ、ドリルだのなんだのと持ってきて痛いことばかりするのです。
という状況に追い込まれたノーマンであるが、彼はたしかに死に場所を求めてやってきたとはいえ、こんなキチガイのオモチャにされちゃたまらない。生きたい欲求が再びメラメラとわく!
『ネクロマンティック (1987)』のユルグ・ブットゲライト監督がチョイ役で出演します。おぉおおおおおおお!
トレイラー動画
感想
ホラー映画の恋愛話ってのは添え物みたいなもので、みてくれのいいおねーちゃん&アンちゃんがギャーギャーいってればオッケーというのが多いですが、この映画は、世にも稀な『恋愛話をきちんと取り入れた拷問ホラー映画』です。シリアスじゃなくてラブコメ風のヤツです。といっても拷問シーンは添え物でなく、ちゃんとあります。コーヒーとミルクを混ぜるだけではおいしいラテにはならないでしょう?濃厚なクリームがいいかんじにまざりあったやつがおいしいでしょう?ラブコメと拷問ホラーが、おいしいラテのように混ざり合っている映画です。クライマックス虐殺シーンで愛の告白をするんですよ!珍品!おもしろい!
いや、少し褒めすぎたかもしれない。
ちょっと冷静に。。
前半はつまらなくおもえました。恋愛もののテレビドラマみたいな調子で始まり、英語のアクセントがへんなヤツがいたり、『The Last Quorarian』ていうへんなSFドラマの主役をやってるというイヤミなセレブ男が出てきてサムイギャグをいったり、ビートルズネタの笑えないギャグがあったりするんで、こりゃまたpretty lameですなと呆れました。その後、我慢してたら、後半になって拷問男たちの正体が明かされたら、おもしろくなってきたんですよ。
ほう、これは意外だな。と身を乗りだして、よおく見てたら、細かいところがかなり凝ってるなという点に気づいたのです。拷問男2名は潔癖性のデブ男とおしゃべりヒゲ男なんだけど、役づくりが細かいです。こういうの↓
ヒゲ男が逃げたノーマンを追うシーンです。ヒゲ男はノーマンのゲロを顔に浴びる。彼は顔をきれいにするために一時あっちに行く。顔を拭いて戻ってきたらノーマンがいないから走って追いかける。というところをよく見ると、顔にちょっぴりゲロが残ってるのです。ヒゲ男はそれをぺろりとなめて、にたりとするの!瞬間芸的演出ですが、変態性がよく現れていて、いいなあとおもいました。あと、彼のマグカップもよく見るとおもしろい。私、こういうのが好きなのですね。
私は、この映画にユルグ・ブットゲライトが出ていると聞いただけでDVDを即買いしたのです。ホラーかどうかさえ問題ではなく。私は彼が動いているところを見れさえすれば満足だったのです。だから映画のデキに関しては期待ゼロだった。そして、前半がとんでもなくつまらなく思えたので、ますます脳内ハードルが下がって、そのぶん余計に楽しめたということかもしれない。
前半は山小屋にやってくるノーマンの描写の合間に、フラッシュバックが出てきて彼がズタボロになった理由が明かされます。後半は拷問が始まり、そしてときおりシーンが変わって、NYの関係者のみなさん、カワイコちゃん、親友プロデューサー、へんなSFドラマの主役のイヤミ男のイヤミシーンなどが挿入されます。あっちとこっちが交互に出るという、テレビドラマによくある手法ですが、うまく編集されていました。
へんなSFドラマの話がちょくちょく出てきて、どうやら最近そのドラマの主役が降板してどーのこーの(イヤミ男はその次に抜擢された俳優、んで、カワイコちゃんはこのドラマのプロデューサーの姪)とかいろいろあるんだけど、最初のうちはそこらへんがどうでもいい!と腹立つんだけど、最後のオチになるとこれらの前置き話がうまいこと収まるのです。ぜんぶ明かされると、エンドロールの小ネタがとてもおもしろいです。そういうことかあ。みたいな。
残念ながら、ゴア描写はちょっとマイルド。off-screen gore(肉体損壊の瞬間を見せないヤツ)が多用されます。この映画は、場所はNYだけどプロダクションはドイツなので、いろいろ事情があるんじゃないですか。やれる範囲内でjuicyにつくったよという気合いはあったと思う。『その瞬間』は見せないけど、チョン切った首とか手とかは出てきましたから。頭に○○をズッコーンってのは直接描写だった。あとかわいいウサギ(かな)をブッ殺すなんてのもありました(つくりもの)。これくらいがギリギリだったんじゃないですか。ゴアラバーからすると少し物足りないけど、でもそれはいいのです。
いくつか残念なぶぶんがあるし、決して傑作ではないと思うけど、新しいことをやってみたよというノリはビンビンかんじられました。観る側が想像力をふくらませて、脳内補填しましょう。それをやる価値はあるなと。万人ウケではないと思うけど、私はこの映画すき。
さて、注目のユルグ・ブットゲライトですが、彼は最後にホイと登場して、ばーんと見せてくれました。どんなチョイ役なのだろう、いったいどこで出るんだろうとそればかり気になってたんだけど、イッパツでわかりました。泣けました。彼の台詞はコレだけ↓
It's okay, lady. You're safe now.
この台詞の意味は映画を観て知ってください。おもしろいよ。
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Must Love Death | |
2009年 | |
ドイツ | |
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imdb.com :: Must Love Death |
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