2008/3/22 (Sat) at 6:33 pm

映画|死の王|Der Todesking

ひたすらに死が連続する自殺オムニバス映画。この死を操ってるのはだれなのか。残虐暴力表現多。監督ユルグ・ブットゲライト。1990年。ドイツ映画。

死の王 / Der Todesking DVDDVD画像

1週間のあいだにいろんなひとたちが自殺していく。

月曜。真面目そうなサカナ好き男が入念に部屋を掃除した後にバスタブで薬物自殺。このシーンでカメラがぐるーりぐるーりとひたすら回り続けて、時計の針が少しづつ進んでいくという手法がおもしろい。

火曜。ホラー映画好き男がゲシュタポ拷問映画を笑って観てたら女が現れてギャーギャー怒りだした。男は女を射殺。と思ったら、それはどこかの部屋で流れていたビデオだった。その部屋ではだれかが首吊り自殺していた。

水曜。女が雨の中を歩いている。悲しげな顔つきで手紙を水たまりに捨てる。男と別れたのだろうか。女は外のベンチでどっかの男に会う。男は長々と自分の人生をしゃべり、妻を殺したことを告白する。女はバッグから拳銃を出して彼を射殺。したつもりだったんだが、タマが出なかった。男は黙って銃を受けとり、ガチャンと銃弾をロードして、銃口を自分の口に入れる。女の顔を見ながら引き金を引いた。

ひとけのない場所にある巨大なコンクリート製の橋。無機質な建造物のあちこちがいろんな角度で映しだされる。様々な職業のひとたちの名前の字幕が入る。ここで死んだひとたちみたいだ(DVDのエクストラを見たら「この橋は自殺の名所」と説明されていた)。

木曜。自殺の名所の巨大橋で71歳の俳優が死んだと字幕が入った。

金曜。覗き趣味のある中年女が、Hするカップルを目撃。カップルの部屋の回りをウロウロして、郵便物を盗んだ。それで住所を調べてイタズラ電話をしたが、相手が出ないのでつまらなくなってやめた。盗んだ郵便物の中身を見たらば、自殺をうながすチェーンメールだった。女は興味ナサゲにクシャポイして昼寝した。子供の頃に親がsexしてるのを目撃した夢を見た。起きた。その頃、カップルは血塗れで死んでいた。このときのチェーンメールの全文を下に挙げときます(英語)。

土曜。複数のひとたちが部屋にいて、撮影済みのフィルムを映写機にセットする。殺人女の記録映像が出てくる。彼女は拳銃を持ち、プロ用の大きな撮影カメラを身につけてライブハウスに行く。つかつか入っていって、演奏中のギタリストを射殺。手当り次第に前列の観客をダダダと連続射殺。その後だれかに射殺された。このシーンでは、殺人者の視点の映像と客観的な視点の映像の2種類が流れる。

日曜日。男がひとりで部屋にいてギャーギャー泣きわめいて壁に頭を打ちつけて死亡。

この映画ではシーンが切り替わる合間に、放置された男の死体が映される。映画が進むにつれて死体は腐敗し、ウジムシが湧き、ホネが見えてくる。最後になるともはや原型をとどめずガイコツ腐乱死体と化す。この死体の主が題名にもなってる『死の王』ってことらしい。途中で出てきたチェーンメールの内容に「神は6日間で天地を創造してから、7日目に自殺した」という文言があったなってことを見てる私たちは思いだす。

ラスト。

絵を描いていた少女が自分の絵を見せて、カメラに向かって台詞を言う。"This is the king of death. He makes people want to die."「これが死の王です。彼がみんなを死にたくなるように仕向けています」。おしまい〜。

※感想

一見すると難解な映画に思われるが、そうでもないような気がする。コメンタリの中で監督自身が「人がバタバタと自殺する映画をつくろうと思っただけ」といってるので、単にソレだけなんじゃないか。映像から感じるものを感じてくれーーーという投げやりスタイルていうんですか。

いろんなオマージュが出てきた。ホラー映画好きの男の話では、彼が立ち寄ったレンタルビデオ屋の棚がズラーと映し出されておもしろかった。『ネクロマンティック』のポスターがデカデカ貼ってありましたね。往年の名作映画のパッケージがたくさん出てきたが、知らないのもたくさんあった。ホラーがほとんどだったけど『市民ケーン』なんてあったな。トビー・フーパーの『悪魔のいけにえ(The Texas Chainsaw)』の隣にウディ・アレンの『ハンナとその姉妹(Hannah And Her Sisters)』が並んでいるのがウケた。男が借りたゲシュタポ拷問映画はきっとなにかのオマージュなのだろうと思うが、メイキングの中でそんなようなことをいってたが、私は元ネタをよく知らない。ドイツの古い映画なんだろうか。あと月曜日の自殺男の部屋の向こうに『ジョーズ』のポスターが貼ってあった。

チェーンメイルの中の決め台詞 "I DIE, THEREFORE I AM!!" は、デカルトの『我思う、ゆえに我あり』英語でいう "I think, therefore I am." のもじりかな。デカルト先生が聞いたらなんていうんでしょうか。

ゲシュタポ拷問映画の中でチンコカットされる犠牲者は監督のユルグ・ブットゲライトが演じている。余談だが、ホラーの映像作家ってグログロぐろーすなもんをつくってるわりには俳優でも通用しそうなかっこいいひとが多いな。また、メイキングの中ではあの死体をつくってるようすが説明されていた。死体に使われたガイコツはネクマンティックの撮影で使ったヤツだそうである。「リサイクルしてるんだ」といっていた。

※参考その1。

映画の中で出てきたチェーンメールはドイツ語で書かれていたんだが、DVDのエクストラの中にこれの英語版が入っていた。これを読むとこの映画の主題がなんとなく見えてくる。書き出してみた↓

This is a chain letter. And it is a message. And it is the final word. to end a very long struggle. When you get this letter. WE ARE DEAD. And we want you, after you have sent as much copies as possible to the *not - yet - dead*. TO TAKE YOUR OWN LIFE without hesitation. According to our realization:

* I DIE, THEREFORE I AM!! *

Life is an illusion and becomes ridiculous meaningless once we face it. The one seurity life has to offer is DEATH.

We aim towards HIM. We are promised to HIM and before there's just agony and absurdity. Man comes alone and remains alone. His life is an endless fight put upon him, a struggle against this ancient desire. the sweetest urge. that holds ALL of us in its hands:THANATOS:the longing for death. All we demand of you is to follow this longing. It's about time... Life is an anachronism.

*In six days, god created heaven and earth. On the seventh day he killed himself...*

* LET US DIE *

The gospel according to *The Brotherhood of the Seventh Day*

※参考その2。

ライブハウスで大量殺人した女が少女に本を読んで聞かせるシーンがある。子供に聞かせる内容としてはずいぶん難解で長文である。私は字幕で読んでたらよく意味がわからなかったので、ちゃんと読もうと思ってぜんぶ書きだしてみた。かなりpatheticな内容ですね。落ち込んでるときには読まない方がいいな。DVDの英語字幕の台詞です。映像を見ながらタイプしたので入力ミスがあるかもしれない↓

The person running amok doesn't always choose his target consciously. With his urge for spectacular publicity he is sometimes trying to correct an imbalace. Through the act of killing, he or she compensates their own lack of celebrity of importance. By the end of the twentieth century, man has come to feel that he no longer has to endure everything. No longer does he accept miseries and disasters with the stoicism of a cow standing in the rain. He has come to feel, that he deserves justice and a degree of consideration as an individual. Where in the past he was passive, modern man has become reactive, therefore even a person nauseated by life, the potential suicide, doesn't only think of a quiet escape through the backdoor. Cheated by life, this creature is trying to give a final signal, to give its life a post-humous meaning by its way of dying. The frustration about its own existence and its neglect by a callously progressive society manifests itself in this universal act of vengeance. The Amok-suicide seems to aim at all those who always ignored him. For once HE is making history he is standing in the limelight and finally people are interested in his biography. He escapes a "dead" life into a "living" death, knowing that, at least for a few days, he will have the almost undivided attention of the general public. This absurd hope is probably more authentic and genuine than his whole virtually non-existent life before. He, the "motiveless-mass-murderer" is the martyr of Post-modernism.

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原題: Der Todesking
別題: El rey de la muerte
Le roi des morts
The Death King
邦題(カタカナ): 『死の王』
制作年: 1990年
制作国: 西ドイツ
公開日: 1990年1月25日 (西ドイツ)
imdb.com: imdb.com :: Der Todesking
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
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