短編映画|Just Before Losing Everything

朝。フランスのどっかの田舎町。

坊やが学校に行くのかと思ったら、なぜか家の近所の橋の下に隠れる。そこに乗用車が止まる。中年の婦人が運転している。坊やは車に乗る。

車はしばらく走って、こんどは若い娘を拾う。娘はボーイフレンドらしき男とキスをしてお別れし、車に乗る。

運転する女性（レア・ドリュッケール）、坊や（Miljan Chatelain）、若い娘（Mathilde Auneveux）。このトリオはナニモノであるか。

ママと息子と娘は、おそろしい暴力パパの非道にながらく耐えてきたのであったが、ついに逃亡する決意を固めたのである。出かけるフリをして、このまま逃げちゃうつもり。

ママは子供たちを自分の職場である大きなスーパーに連れていく。同僚たち（アン・ブノワ他）の何人かは事情を飲み込んでいるようす。彼女のために手を貸してくれる。

上司男（クリスチャン・ベネデッティ）は話を聞くと「告発をしなければいけないよ」「給料の前借りをさせてあげる」なんつって、非常に協力的。フランスってみんながこうなの？

かわいそうな親子3人はこのまま逃げていくんだなと思ったら、そこに例の暴力パパ（ドゥニ・メノーシェ）がやってくる。緊張が走る。

30分のスリリングなショートフィルムは、オスカー短編賞ノミニーの話題作。ただいまiTunesUSで公開中。

トレイラー動画

Just Before Losing Everything (2013) trailer

感想

なんだかすごいよと話題になっていたので、私も観てみました。普通、短編映画ってタダで見せてもらえるのが多いが、これは3ドルかかる。オスカーノミニーともなると強気だなあ。と思いつつ、買ってみた。

確かにスリリングでおもしろいけど、それほどのもんでもないような。最後にオチがあるが、観客はその先を知りたいんじゃないかな。そこを描くべきなんじゃないのって思いました。

しかし、制作者の意図を想像するに、この短編映画は、本来ならば「そういう理由であんたらは逃げていたんですかー」とびっくりさせる狙いがあったのだと思われる。

映画の前半においては、3人家族がなにをやりたいのか、観客は教えてもらえない。ママの同僚が「たいへんだわねえ」と同情顔をしたり、坊やがライフルの話をしたり、思わせぶりな演出があって、なんだか深刻らしいぞ、と気を持たせたのち、ようやく、「暴力パパから逃げる決意をしたみなさん」という点が明かされるのである。

だったらネタバレすんな！とかいわないでもらいたい。すでにウェブでは「暴力パパから逃げてる家族が...」とあちこちに書かれてある。私が隠しても意味がないだろう。内容をぜんぜん知らずにこれを見たら、印象もだいぶ変わるのだろうと思った。これはしょうがない。映画祭などでいちばんに観た者だけが、監督さんの意図した通りに映画を楽しめるという話はこの映画に限らない。よくある。

• 
• 
• 
• 
• 
• 
• Tweet