2013/12/14 (Sat) at 10:36 am

映画|Thanatomorphose

腐敗女の『腐敗性愛』を描いたグロゴア腐敗日記ホラー映画。グジュグジュ腐敗きもちわりー。これがほんとの腐女子?!ケイデン・ローズ。監督エリック・ファラードー。2012年。

Thanatomorphose DVDDVD画像

どっかのアパート。

眼鏡のネーチャン(ケイデン・ローズ)が出てきて、同居する身勝手男を相手に無気力sexをやったり、彫刻作品をいぢくったり、オナニーをやったり、空虚な日常が描かれる。

「この女はなんだ!うだうだしやがって!」と思ったら、ある日を境に、女は生きたまま腐り始める。

小さな痣ができたら、みるみる体中に広がり、ゲホゲホと具合が悪くなり、爪がボロッと剥がれ、髪の毛がゴボッと落ち、糞尿を漏らし、ゲロを吐き、体にウジがわく。

やがてバケモノみたいになってくるが、この女はどういう了見だか知らないが、医者にいく気は毛頭なく、心配してようすを見にきた隣人男にフェラチオをし、ペッと精液を吐き出す始末である。隣人男はヒャーと逃げた。

腐敗女はドテッとベッドに寝転んでいるが、やがてもぞもぞと動きだし、氷の水に入る。つくりかけの彫刻作品を取り出し、死ぬ前のあがきだろうか、創作をやろうとするんだが、指がもげてしまう。木工用ボンドでひっつけてみようと空しい努力を試みるが、うまくいかないと知るや、腐った自分の肉体を観察し、ビンを集めて、グジュグジュの肉片を拾い集め、眺めていたりする。おまえはなにをやりたいんだ。

腐敗女を見よ!腐敗腐敗腐敗腐敗腐敗!グジュグジュ!

トレイラー動画

Thanatomorphose (2012) trailer

感想

最近は『腐敗娘』というのはbody horrorの中にジャンル化されているんですかね。この前記事を書いた『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間 (2013)』と似ているが、印象はぜんぜん違う。似たプロットでも、手法が変われば、こんなにも別モノになるという好例ですね。

あっちはいちおう映画的につくってあったが、『Thanatomorphose (2012)』は物語もへったくれもなく、女が腐敗/溶解/悪臭を放つ/液状化/姿をなくしていく様が連綿と映し出されるだけである。舞台は部屋の中だけ。登場人物は数人だけ。ただもう腐敗だけが執拗に描かれる。あるのは腐敗ばかり。腐敗を愛でる映画。

最初のうちは「腐敗女の闘病記ですか」と思ったが、それもちがう。この女はぜんぜん闘っていないから。この映画の制作者は「腐敗女に娯楽性なんか要らない」と思っているのだろう。そのぶん退屈であるが、こっちの方がアングラぽくて、グロ度は高く、きもちわるい。不快です。こんなもん見ててすみません。というきもちになってくるよ。見てるこっちも腐ってくる。それがたまらん。

以下はメイキングにあった監督さんのお言葉です↓

エリック・ファラードー監督
エリック・ファラードー / Eric Falardeau 画像

Eric Falardeau: "Thanatomorphose" was originally inspired by a simple discussion with my ex-girlfriend. We were making jokes about someone rotting from the inside. And I always had an interest for filmmakers such as Jorg Buttgereit (Nekromantik). So we joked around a lot that night, but then I thought, "Hey, maybe there's a good idea here." In parallel, I was reading a lot about existentialism, Kierkegaard, Camus and other similar readings. I was also working at that time on my thesis, which addressed the issue of body fluids in gore and porn movies. It allowed me to address certain issues that go beyond the usual visual representation.

以前、元カノとバカ話をしていて「人間が内側から腐っていくだけの映画があったらおもしろいじゃん」なんて笑っていたのが、『Thanatomorphose』の始まりです。ぼくは以前から『ネクロマンティック (1987)』のユルグ・ブットゲライトが好きだった。そして、キェルケゴールやカミュといった実存主義文学をたくさん読んでいた。ゴアとポルノを混ぜ合わせたようなグジュグジュ映画を考えていた。そんないくつかの着想が絡まりあって完成したのが、この映画です。常軌を逸した視覚表現に挑戦をしました。

なるほどー。

私的には『ネクロマンティック (1987)』よりも同監督の『死の王 (1990)』に類似を感じた。あの映画の中で、死体が腐敗しガイコツに変わっていく場面があったじゃん。あれに似ていると思った。でも同じ『腐敗』でも、あっちは死体だが、こっちは生きている女だからだいぶちがうよね。

本作品はネクロフィリア主題の映画ではないが、腐敗娘がナニする場面はある。だからさ、これは『死体性愛』のさらに上をいく変態世界であるところの、『腐敗性愛』を描いたという点で、なかなかのもんではないか。腐敗性愛ですって。きもちわりー。書いててうれしくなってきた。

スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間 (2013)』は日本でも劇場上映されるそうでめでたいが、『Thanatomorphose (2012)』が日本で公開されるという話はいまのところない。もしこの先、日本で『腐敗映画祭』なるものを企画する興行主さんがいれば、ぜひこれをpick upしてくださいよ。

追記。

「退屈」と書いたが、確かに退屈な映画なんだが、最後にはどどーんと見せ場があるんですよ。そこはちょっとすごいよ。

追記以上。

ちょっと注意点

「グロ度高い」と上に書いたが、この映画は典型的な低予算インディーズのつくりで、暗くてぼわぼわの場面が多い。しかしそれをもってチャチなつくりと考えるのは早計である。DVDに入っているメイキングを見ると、彼らが相当に気を遣ってゴアメイクをやってるのがわかるし、映像をよーく見れば凝ってるのがわかるよ。インディーズ映画を生暖かく見守ってもらいたい。なんて私が弁護するのも妙だが、この監督さんを気に入ったからいちおう書いといた。

UK版DVDのオマケ

UK版DVDのオマケは色々あるよ↓

  • Making Of Thanatomorphose
  • Animated Short Films
    • Crepuscule
    • Purgatory
  • Theatrical Trailer
  • Also Available from Monster Pictures

メイキングは制作者のインタビューとグロゴアメイクの舞台裏を明かしている。なかなかおもしろい。

Thanatomorphose 画像

Thanatomorphose 画像

また、オマケの2本のショートフィルムを見ると、エリック・ファラードーという監督さんの方向性が明瞭に見えてくる。この人は本気でbody horrorをやろうとしているようだ。

短編映画『Crepuscule
Thanatomorphose 画像

Thanatomorphose 画像

Crepuscule』はなかなかの出来のクレイメーションアニメで、こんなお話です↓

森の妖精だかなんだか知らないが、背中にへんなものが生えた怪物さんがうわーと出てきて、森でsexする人間をまぢまぢと観察する。「アングラ版ジブリみたいなもんすか」と思ったら、最後はまさかのグチャグチャゲロゲロの血塗れオチ。

2本目のショートもゴアゴアのヤツなんだが、こっちはあまりおもしろくなかった。早送りしたくなった。

この監督さんはまだ若くて、荒削りだが、ポテンシャルが強く感じられる。このひとはいつかびっくりするもんをこしらえるんじゃないか。そのときにはこんな絶賛キャッチフレーズを捧げたいものである↓

『クローネンバーグ・ミーツ・ブットゲライト!』

期待が高まるなあ。長生きしないとなあ。

と、ベタ褒めレビューになったが、あなたがこれを見て私と同じように感じるかどうかは知らない。わけわかんねーヨ的な感想も多くて、評価がわかれるみたいだから。でも私はこの映画をものすごく好きなのである。

このDVDは字幕はついていませんでした。

ところで『溶解人間』

Thanatomorphose (2012)』とはあまり似てないけど、グジュグジュつながりでついでに書きますが、グジュグジュのドロドロといえば『溶解人間』が思い出されます。日本版Blu-Rayが出るそうでずいぶん話題ですね。来年出るんですかね。

溶解人間』に関して、こちらの記事を楽しく読ませてもらったんですが↓

来年スティングレイさんから日本語吹替入り(音源はネズミツオ[@yu131]さんご提供!)DVDが発売予定ですので、復習の意味をこめて、少しだけこの作品の魅力にせまってみたいと思います。

ネズミツオさんが音源を提供しているんですか!すっごーい!さすが!とびっくりしましたよ。そこまで知らなかったもんで。私が『溶解人間』で好きなのは、ジジババが畑で襲われるところです。あのおばあちゃん、おもしろかったなあ。

こちらは今年の夏に発売されたUS版Blu-Ray↓

日本のアマゾンでも売ってた↓

画像

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原題: Thanatomorphose
別題: Thanatomorphosis
制作年: 2012年
制作国: カナダ
公開日: 2012年10月4日 (スペイン) (Sitges International Fantastic Film Festival)
2012年11月3日 (スペイン) (Festival de Cine de Terror de Molins de Rei)
2013年12月9日 (イギリス) (DVD)
2014年1月21日 (アメリカ) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Thanatomorphose
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
アートディレクション
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
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