2015/5/3 (Sun) at 7:43 pm

映画|スターリー・アイズ|Starry Eyes

スターを夢見るカワイコちゃんが悪魔崇拝カルトに一本釣りされるホラー映画。話題作。アレクサンドラ・エッソーファビアン・テリースノア・セガンアマンダ・フラー。監督Kevin KolschDennis Widmyer。2014年。

スターリー・アイズ / Starry Eyes DVDDVD画像

ここはLA。

女優デビューを夢見るカワイコちゃんのサラさん(アレクサンドラ・エッソー)は、しがないウェイトレス仕事をやりながら、来る日も来る日もオーディション巡りをやるが、ぜんぜんだめである。くやしいですわ。

彼女には、同じ夢を持つ友達連中(アマンダ・フラーノア・セガンシェーン・コフィNatalie Castillo、他)がいて、いつも一緒にゴロチャラしているが、その様子を見ていると、仲間内では引っ込み思案な女の子らしい。

ライバル心むきだしのいぢわる娘(ファビアン・テリース)にイヤミをいわれても、言い返すことができず、うじー、としてしまう。なんだかいじらしい。がんばってくださいよ。

ある日、いつものようにホラー映画のオーディションにいったが、面接はかんばしくなく、「やっぱり今日もダメですわ」と敗戦思想に取り憑かれていたが、なぜか受かってしまった。しかも相手は大手のプロダクションである。いや、受かったかどうかはわからないが、選考に残って、興味を持ってもらえたことは確かなよう。

彼女はいったん落ちたと思って、もうだめですわ、と落胆し、トイレにこもってヒーヒー唸っていた。

内向的な人というのは、他人の前では表情を殺している代わりに、ひとりになると感情を露にし、泣いたりわめいたりすることが多いと聞くが、サラさんもその典型で、その悔しがり方というのが尋常じゃないのです。ギーギーわめいて髪の毛をむしるわむしるわ、大変な状態になってしまう。こうなるともう『発作』です。

ところが、皮肉なことに、この『髪の毛むしり発作』が彼女の運を開いた。うんうん唸っていたところに、さっきのオバちゃん(マリア・オルセン)が現れ、「いまの発作をもういっぺんやってみ」といわれて、もうわけがわかんなくて、涙目でドタバタやったら、気に入ってもらえたということで、世の中なにがどう転ぶかわからないもんです。

「運を開いた」と書いたが、本当にそうだったのか。じつは悪魔に魅入られたということなんだが、彼女のような女にとっては、それも『運』の内であろうと私には思えるが、この時点ではまだそこまでの覚悟はなかった。さてさて、次はいよいよプロデューサーさんの最終面接ですよ。

有頂天になった彼女は、バイトを辞めちゃう。こうなったらもうリーチですよ。千点棒をバーンと投げてつけてね、オリャーつって、一発ツモですよ。それしかない!

最高気分で、おめかしをして、でかけていく。頭の中にはレッドカーペットがジャジャーン。おめめきらきら。友達連中に優越視線を投げ、うれしげにでかけていった。つ、ついに、わたくし、スターになるんですわ。

お屋敷に案内されて、部屋に入ると、プロデューサーを名乗る金持ち中年男(Louis Dezseran)が出てきた。彼はメフィストフェレスのように甘美な誘惑の台詞をいう。サラさんは夢見る少女の顔になる。ところが、途中から雲行きが怪しくなり、あれれ、気がついたら、男の手がスカートの中に入ってきましたよ。ナヌー!

彼女はドドーンと頭にきて、悔しさと悲しみと怒りの虜になり、逃げ出してきてしまう。自分の全人格を否定されたと思ったんですね。

レッドカーペットはパー。ウェイトレス仕事に逆戻り。バイト先のオヤジ(パット・ヒーリー)に泣く泣く頭を下げて、元の仕事に戻してもらった。辛いですわ。泣くしかありませんわ。

ここで優しい言葉をかけてくるのが、ノア・セガン演じる親切アンちゃんで、彼はインディーズ映画監督をやりたがっていて、「エロオヤジのことなんか忘れて、ぼくの映画に出てくださいよ。君に出てほしいよ。いっしょに映画をつくろうよ」てなことをいう。サラさんはいったんはそっちに行きかけたんだが、やっぱり迷ってしまう。お安いインディーズ映画なんかより、大手プロダクションの方がいいよね。当たり前だよね。

なにがなんでも夢を叶えたいサラさんは、悪魔崇拝カルトに自ら身を投げていく。このお話は空想の産物のようでいて、どこか現実味がある(ように私には思える)。

「女の夢と欲望が渦巻くLAにはこんな悪魔がいるんだ。スターはこんな風に生まれるものなんだ」

そんな考えが頭に浮かんで、しみじみと納得してしまうホラー映画です。カワイコちゃんが女優になる夢を叶えるためにジタバタし、髪の毛むしり取ってズタボロになり、悪臭を放つようになり、血塗れ汚物にまみれ、ウギャーと狂って、ついに髪の毛は一本もなくなって坊主頭になる。この女はこのまま腐乱死体と化すのであるか。

と思ったら、最後の最後には、きらびやかなスターに変身する。どこがどうスターになるのかは映画を見てくださいよ。

悪魔崇拝カルトの親玉、金持ちプロデューサーがサラに述べた台詞↓

the producer: It's kind of my love letter to this town. Ambition, the blackest of human desires. Everyone has it. But how many act on it? That's what intrigues me.

「この映画は私のこの町へのラブレターだ。人々の野心。人間の黒い欲望。誰もがそれを持っている。でも、実際に栄光を手にする人間はどれだけいるだろう?私はそこにいつも感動する」

トレイラー動画

Starry Eyes (2014) trailer

感想

サラという女はいじらしくて夢見る娘キャラだが、後半の場面では、友達が大けがをしたのを遠くから見て、ニターッ、とするなんていう憎い演出もあるからいいですね。人間なんかこんなもんですよ。他人の不幸な人を見るのはきもちいい。自分さえよけりゃいいんですよ。

他の連中と比べて、彼女が抜きん出ていたのは、その『欲望』だと思う。「スターになりたい!」という欲望がものすごく巨大で、それが悪魔崇拝カルトに一本釣りされる要因になったんじゃないかな。

欲望の強さに加え、その性格も悪魔好みだったんじゃないか。表面的には夢見るカワイコちゃんだが、一皮剥くと女の欲望がギラギラとたぎっている。ホラー映画には人間を誘惑する悪魔がよく出てくるが、駆け引きに淫する悪魔っていうのは、こういう相手をよく選ぶよね。悪魔って駆け引きが好きなんだよね。以下は面接でサラがいわれた台詞である↓

Let your inhibitions go.

「抑制を解き放ちなさい」

Sarah, if you can't really let yourself go how can you ever transform into something else?

「自分自身を解放できなくて、どうやって生まれ変われるというのですか?」

悪魔のキャスティングディレクターが好みそうな台詞だ。サラが染まっていく過程を見物していると、「悪魔カルトに騙されて引っぱりこまれた」ように見えるが、映画を見終わって思うに、サラみたいな人はたとえ相手が悪魔だと知っていても、突き進んでいったんじゃないのかな。悪魔の方にしてみれば、子分がひとり増えたくらいに思っていたのが、やがては、悪魔プロデューサーもヒキツリ顔になるような悪魔女になるんじゃないのかね。

上の台詞をしゃべったのはマリア・オルセンという人で、鼻にセロテープを貼ったような顔のオバちゃんだが↓

マリア・オルセン / Maria Olsen

彼女は最近のホラー映画で急激に露出度が高くなり、2014年以降の出演本数がものすごい。不気味オバちゃん脇役女優としてあちこちで重宝されているようだ。

マリア・オルセンだけでなく、この映画では脇役陣に潤沢なホラー人材を配している。お人好しの若いインディーズ監督にノア・セガン、サラのルームメイト親切娘にアマンダ・フラー(『Red White & Blue (2010)』の悲しいヤリマン娘)といったあたりは贅沢です。プロデューサーを演じたLouis Dezseranという人を私は知らなかったけど、もったいぶった尊大な言い回しの演技がトニー・トッドみたいでよかった。皮肉娘のファビアン・テリースは、スティーヴン・C・ミラー監督の『キッズ・リベンジ (2012)』でお姉ちゃんを演じていた。彼女も演技がうまいです。これらの脇役陣が一丸となり、サラを演じるアレクサンドラ・エッソーを盛りあげている。

最近のDarkSkyFilmsはノリノリだが、この会社は単に映画を仕入れて売るだけでなく、制作も手がけていることが多い。若い監督にチャンスと予算を与え、映画をつくらせ、ジャンジャカ宣伝する。監督さんにしてみれば、ありがたい存在だろう。じつは悪魔カルトなのかもしれないが。

私が20代の頃、ドングリの背比べで競い合っている友達の中から、ある日、とつぜん、大きな仕事をもらって出世する人というのがいた。当時の私たちはそんなヤツを見て「スゲーなあ」って噂した。私はこの映画を見つつ、「アイツもこんな風に髪の毛をむしっていたのかな」なんて想像した。

私には『ブラック・スワン (2010)』よりも『Starry Eyes (2014)』の方がずっとしっくりくる。「黒い白鳥と白い白鳥の両方を演じなくちゃ」という二元論がそもそも私は好きじゃなかったのだ。人間なんて黒も白もゴッチャなのだから。

Starry Eyes (2014)』のエンディングはハッピーエンディングだ。サラさんは自分の夢を叶えたのだから。よかったじゃないか。おめでとう。<3 LA !

『Eat』もおもしろいよ

この前レビューを書いた『Eat (2013)』という映画にも女優を夢見るネーチャンが出てくる。こちらは『Starry Eyes (2014)』よりもずっと安っぽくてインディーズ臭いが、見比べてみるとおもしろいですよ。LAという町で夢を叶えるのはたいへんだ。自分の髪の毛をむしり取ったり、自分の体をバリバリ食ったり、みんなすごい苦労をしているんだなと思った。うだうだとホラー映画を見て、ゴロゴロしている私には想像もつきません。

US版Blu-Ray/DVDが発売中

アレクサンドラ・エッソーと監督コンビのKevin KolschDennis Widmyer
アレクサンドラ・エッソー / Alexandra Essoe

私が持っているのはDVDだが、以下のオマケが入っていた。英語字幕つき。Blu-Rayも同じだと思うけど、未確認です。

  • Commentary with Writer/Directors Kevin Kölsch and Dennis Widmyer and Producer Travis Stevens
  • Deleted Scenes
    • Earthquake
    • There wasn't an Earthquake
    • Danny's Big Idea
    • Jogging Nightmare
    • I Think I Just Got the Part
    • Tears of Regret
    • Waiting for the Call
    • A Night She'll Never Forget
    • Lip Service
    • Stay in Bed, Sarah
  • Jonathan Snipes Music Video
  • Alex Essoe Audition Video
  • Behind the Scenes Photo Gallery
  • Trailer

Deleted Scenesにはサラがドタバタする場面がたくさん入っている。なかなかおもしろいし、ずいぶんお金がかかっていそうなシーンもある。でも考えた末にこれらを削ったのだろう。こういうのがあると、並のホラー映画になっちゃうと思ったのかな。

アレクサンドラ・エッソーのオーディション風景を見ると、映画の中の場面とダブッて妙な心地になります。

Memorable Quotes

the producer: It's kind of my love letter to this town. Ambition, the blackest of human desires. Everyone has it. But how many act on it? That's what intrigues me. That's what lights me up as they say. There's something primal they're and that's why you're sitting right here in this room.
Sarah: But I mean, it's a horror movie as well.
the producer: Of course. The two are not mutually exclusive. This industry is a plague Sarah, a plague of unoriginality, hollow be thy name, shallow be thy name. Yes, it's a plague alright. And what does every plague have a lot of?
Sarah: Rats?
the producer: Precisely. Yes, thousands of them, hungry little rats, hungry for the cheese. You cut through the fog of his town and you get desperation, plastic parishioners worshiping their deity of debauchery. But that's what I find interesting, Sarah. That's what I want to capture in this film, the ugliness of the human spirit.
Sarah: Yeah, okay, I mean, I can see that.
the producer: So why do you do it, darling?
Sarah: Why, why do I do what?
the producer: Why do you pull your beautiful hair out?
Sarah: Um.. it's just a habit. I started doing it when I was a little girl and it helps me focus on the moment.
the producer: The moment. Well, this is a moment.
Sarah: Yes, yes, it is.
the producer: The role of Celeste is a really big deal for a young actress with no other credits to her name. Your face will be on the poster. The poster on a wall, a wall in a lobby, a lobby of a movie theater, a theater with a marquee, The Silver Scream. Now you know that doesn't happen very much anymore, right? This is a great opportunity for a young actress, a great opportunity for an actress with ambition.
Sarah: That's me. I'm your girl. I'll do whatever it takes for this role.
the producer: Good. Because we want to offer it to you. We think you could be great in this role, Sarah. I think you could be great in this role.
Sarah: I agree. Truthfully, I think I am this role. I mean, this character has a dream and she has so much potential.
the producer: Sarah, forget about all that. This world is about the doers, the people who don't just talk about what they're going to do, they just do it. And that's you.
Sarah: Thank you. Thank you for saying that. I worked so hard, you know. Every week it's a new class, a new audition and I just never... Uh, if you want me to, to read more with other actors, um, or another audition.
the producer: Sarah, this is the audition. I told you before, very very few actresses ever get to this room. Sarah, you're at the gates. All you need is for me to open them for you. I can make you a star, Sarah. You know I can.
Sarah: Whoa! No! Let me out! Open the door!

the producer: Show me the girl I thought you were. Let me see the real, Sarah.

the producer: You can go into the ground to be forgotten forever or you can be reborn. Did you expect it to be painless, that it would be easy, that you'd simply wake up one morning with everything you ever wanted laied out before you? I told you Sarah, dreams require sacrifice. And so do we. I can give you what you want Sarah, but you need to embrace who you really are. It's time to become one of us. It's time to be remembered.

Sarah: There's only one thing in this whole world that I want and they're going to give it to me. They see the real me.

the producer: She is ready to transform!

画像

画像をもっと見る (50枚)

twitterのご案内

当ブログをお読みくださり、ありがとうございます。twitterやってます。ホラー映画好きな方はフォローしてくださいませ。サイトの更新や新作ホラーの情報を随時流しています↓

Facebookのご案内

ホラー映画 :: 洋画』の最近のエントリ

ホラーなブログの方はどうぞ
原題: Starry Eyes
制作年: 2014年
制作国: アメリカ
公開日: 2014年3月8日 (アメリカ) (South by Southwest Film Festival)
2014年4月25日 (アメリカ) (Stanley Film Festival)
2014年7月29日 (カナダ) (Fantasia International Film Festival)
2014年8月27日 (ドイツ) (Fantasy Filmfest)
2014年10月5日 (スペイン) (Sitges International Fantastic Film Festival)
2014年11月14日 (アメリカ)
2014年11月14日 (アメリカ) (Video On Demand)
imdb.com: imdb.com :: Starry Eyes
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

ホラーSHOX [呪](『ほらーしょっくすのろい』と読む)は新作ホラー映画のレビュー中心のブログです。たまに古いのやコメディ等もとりあげます。HORROR SHOX is a Japan-based web site, which is all about horror flicks.

 

すべての投稿 (1544)

CALL GIRL COMIC by DAIJU KURABAYSHIEL GIGANTE COMIC COMIC by DAIJU KURABAYSHI
HORROR SHOX - Horror Reviews, News