2015/5/3 (Sun) at 6:06 pm

短編ホラー映画|Greater Than

愛する女から切断腕が送られてきてびっくりする30分弱の短編ホラー映画。監督Darryl Shaw。2014年。

短編ホラー映画 / Greater Than DVDDVD画像

偽IDづくりをやってるベン(Adam Buller)のところに、友達の紹介で、謎のエキゾチック美女風の、不法移民の女(Dana Tartau)がやってきた。

「偽IDをつくってくれ」と頼まれ、これをきっかけに、ふたりは急接近。恋人になる。

ところが、やがて間もなく、この女の奇癖が明らかになり、その壊れっぷりは相当のもんであり、ベンの人生はのっぴきならなくなる。

2度目のデートに喜び勇んで花束を持っていったら、こんなことをいわれてしまう↓

「これをわたしにくれるために、あなたはどれだけの犠牲を払ったの?」

なんだこの女は。ばかやろうめ。自分を何様だと思ってやがるんだ。

相手の予想外の冷淡さに怒るベンだったが、さらに驚いたことに、後日、彼の部屋に切断された片腕が送られてきた。きもちわりー。ナニゴトであるか。

つまりですね、この女は、『愛は自己犠牲』なる信条の実践者で、いわば究極の『根性焼き体質女』だったのであります。一点の曇りなく『犠牲愛』を信じる彼女は、自分自身の腕を切断し、ベンに送ったというわけで、彼女は身を以て「これが愛なのですわ」と示したのである。おそろしい。

こんな地雷女に出会ったベンさんは当然ながら「ひぇー」とおったまげ、スタコラ逃げ出すと思いきや、なにをトチ狂ったか、自らも腕を切って愛の返礼をした。痛痛痛痛痛痛痛痛。

こうなったら後戻りはできませんね。ふたりで傷つけあって、最後には、仲良く爆死するしかありませんね。

Darryl Shawの短編映画『Greater Than』は、こんな阿呆なお話を大まじめにやっているbody horrorである。お笑いではないんですよ。エロスとタナトスに彩られた究極の血塗れ恋物語なんですよ。へんなもの見たー。

“The only thing worth giving is the one you don't want to lose.”

感想

監督のDarryl Shawさんのご好意でスクリーナーを見せてもらいました。ありがとうございます。この映画はBlood in the Snow Canadian Film Festivalていう映画祭で、Best Short Filmをもらったそうな。すごい!

さて、感想です。

この映画に出てくるベンという男は、ヤバい偽造仕事をやってるという点を除けば普通のアンちゃんで、自分の腕をチョン切って愛を証明するなんていう狂気とは無縁だったが、美女の瞳に吸い込まれ、ズブズブにあっちの世界にいってしまう。なかなかおもしろいですね。こんな自己破壊的変態体質の人は本当にどこかにいそうな気がする。この映画は激安低予算で、色々と安っぽい。お金がもっとたくさんあればもっと差し迫る感が出たと思うが、そこはしょうがないかなと思う。

Darryl Shawという人は伊藤潤二やら日本のホラー漫画の熱狂的なファンであり、えもいわれぬきもちわるさを描く短編ホラー映画をこれまでに何本もつくっている。本作『Greater Than』は、そんな彼の嗜好というものが色濃く反映されたbody horrorといってよいだろう。

彼について詳しくは以前私が書いたインタビュー記事をご覧下さい↓

おもしろかったけど、ひとつへんに思ったことがある。ベンが腕をチョン切るシーン。彼は痛みに耐えるため、アルコールをガブ飲みするが、それはいいんだが、その後のシーンになると、わりと平気な顔でスタスタと歩き回っているのだ。なぜか痛みの演出は淡白であるように見える。

傷口に衣服が触れるたび、彼は強烈な痛みに襲われるのではないだろうか。手を上げようとしても上げる手がないことに気づいて、ハッとするんじゃないだろうか。その度ごとに、彼は『愛』のなんたるかを知るのではないか。

オラフ・イッテンバッハが描く悪夢のような、まさに全方位的な「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」表現があってこそ、この映画が指し示す『狂愛』の意味が強調されるのではないか。痛みをあらわす演出がもっと迫っていたら、もっとよかったんじゃないのかね。と不思議に思った。なにか意図があって、わざと淡白にしたのかもしれないけれど。

以下はこの映画に関するDarryl Shawのインタビュー↓

この映画について最新の情報を知りたい方はfacebookのページをどうぞ↓

English Review

First of all, Darryl, thank you for letting me see your latest short GREATER THAN. To be honest, I liked it partially but I thought it could be much better in some parts. Here's my thoughts.

Good point:

The plot was very interesitng. Super extreme and creepy. Even though the story is pretty much out of ordinary, it was convincing to me. I felt this kind of mental illness could exist in real world. Your concept is very unique and original. I respect that.

But I wonder:

I thought it could be better if the pain (physically and mentally) was described/explained more painfully. I mean, when he cut his arm by himself, he was trying to endure it by drinking alcohol, the scene was truely painful. It was fine. But later on, it was as if he doesn't feel pain at all. He walks around like normal people. Why?? He just lost his arm! Isn't it much more painful!? I am not sure if you did that way intentionally or not but it was strange to me. In my thoughts, "pain" is one of the most significant thing especially in body horror.

Thank you for reading!

画像

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原題: Greater Than
制作年: 2014年
制作国: カナダ
公開日: 2014年6月19日 (カナダ) (Niagara Integrated Film Festival)
2014年11月28日 (カナダ) (Blood in the Snow Film Festival)
2015年1月17日 (アメリカ) (Macabre Faire Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: Greater Than
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