2013/8/27 (Tue) at 2:41 pm

映画|サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド|Sightseers

サエないキチガイカップルがホイホイ殺人をするUKのお笑いホラー映画。アリス・ロウスティーヴ・オラムアイリーン・デイヴィス。監督ベン・ウィートリー。製作エドガー・ライト。2012年。

サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド / Sightseers DVDDVD画像

ここはイギリス。

平凡幸せカップル、クリス(スティーヴ・オラム)とティナ(アリス・ロウ)は、1週間のお遊び旅行を計画した。トレイラーハウスでヨークシャーの山にいくっていうんで楽しげだが、ひとつ問題がある。

それはティナさんのママ(アイリーン・デイヴィス)。疑り深くて、いぢわるで、他人と容易になじまない偏屈ババアは、死んだ愛犬の思い出だけに生きている。

娘のカレシをトガリ目でにらみつけ「おまえがきらいだ」と叫ぶ。それでもふたりが出ていこうとすると、娘に向かって「ひとごろし!」と怒鳴りつける。物騒なことをいうからびっくりするが、この言葉の意味は後半に明かされます。

ちなみに、死んだ愛犬てのは、小さいテリアである(ホワイトテリアに似てるけど、ちょっと色が入ってるから違うと思うがよくわからない)。テリアてのはかわいい顔をしているくせに、気が強い犬種で、うちの近所でもしょっちゅうガウガウやっているが、このババアも相当のもんですね。人間テリア!

でも恋するふたりには、偏屈ババアの怒鳴り声なんか耳に入らない。彼らは幸せいっぱいで旅に出る。映画を観る私たちは、導入部においては、このカップルをほほえましく思うだろう。

ふたりとももう若くはない。ティナさんは変人ママに干渉される人生にお疲れ気味。対するクリスさんはヒゲをたくわえた優しげな男で、彼女をいたわるように接している。今回の旅は、長期休暇を得たクリスが「新しい世界を見せてあげるよ」というノリで発案されたものだった。

クリスという男は物書き仕事に憧れているようであり、ノートを持ち歩いている。「ぼくは創作をするんだ」と意気込みを語り「きみはインスピレーションを与えてくれるぼくのミューズ」なんていったりする。

雰囲気から察するに、彼らは『チョット不幸な』人生を歩んできた者同士なのだろう。漠然とした倦怠/無力感と同居しているうちに、のらくらと年を食ってしまった。そんな平凡な男女が巡り会い、旅に出るなんてイイ話じゃないの。

と、まァ、人情味あふれるラブコメ風に始まるわけだが、これは宮本輝の小説ではないので、その後の展開はびっくり仰天血塗れギョギョギョなんですよ。

最初に本性を現したのはクリスだった。彼はマナーの悪い観光客を轢いてしまう。彼らはアワを食って、よき市民として警察に届けた。事故として処理され、クリスは後悔ヅラをするんだが、じつは、内心ニターリ。本当はわざとやったんですね。この男の心の内奥で、悪のキノコがニョキッと生えた。

次の標的は、キャンプ場で出会ったインテリ夫婦(ジョナサン・エイリスモニカ・ドラン)の夫。彼らが出会う場面のコントはむちゃくちゃおもしろい。クリスは相手が自分のトレイラーよりも新型に乗ってて、しかもその夫というのが物書きで、三冊目を執筆中であると知ると、きげんがわるくなり、翌朝、男をブッ殺した。

直接の引き金はインテリ夫婦のインテリ臭い言動であるが、そこに輪をかけて、彼らがよく似たテリアを飼っていたせいかもしれないし、キャンプ場にいたへんな宗教連中が太鼓をどんどん叩いていたせいかもしれない(余談だが、あの太鼓の場面は、ベン・ウィートリー監督の定番です)

クリスはティナにナイショで殺人を繰り返していたが、やがてバレた。彼女はショックを受けたが、これがまたイカレたことに、この女もそっちの道に開眼してしまうのである。

ふたりは殺人カップルになる。殺した相手から盗んだワンコを連れ、観光コースを練り歩きながら、ホイホイ殺す。彼らは金のために殺人するわけでなく、かといって快楽のためにやってるという風でもなく、山歩きをする人が邪魔な枝を払うような調子で殺しまくる。

なんにも書けないくせに大作家になったつもりのクリスは、ティナを『ミューズ』と呼び、いわれたほうは馴れない化粧をやって、本人はボニー&クライドになったつもりなのかもしれないが、締まりがないことおびただしい。このカップルは何をやってもサマにならない。

映画を観る私たちは彼らのマヌケさというものに含み笑いをし、ウィリアム・ブレイクの神を称える聖歌がジャジャーンと鳴り響くと、スクリーンを指差してケタケタと大笑いする。ウスラバカの殺人カップルはどこまでいっても充足を得られず、血塗れの死体がゴロゴロと残るばかり。

最後の最後は垂直自滅に陥るが、これまたイヤーなエンディングが出てくるもんで、観客はあっけにとられる。

ははははははは。

トレイラー動画

Sightseers (2012) trailer

邦題『サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド』

この映画は邦題『サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド』にて、2013年9月28日に劇場公開予定だそうです。詳しくは公式サイトをどぞ↓

サイトシアーズ 公式サイト
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感想

ウィリアム・ブレイクに爆笑です。いいコメディというのは、実際に起こり得る笑い話をベースにどこか微妙にズレてて、そのまんまじゃなくて、非現実のエッセンスをふりかけるさじかげんがうまいっていうのかね。そういうワザってあるよね。

この映画を観て、この殺人カップルを「きちがいめ!」と感じるか、あるいは「わたしにもこんな面があるかもしれない」と感じるかは、人それぞれだろうけれども、私には「もしかしておれも?」って感じられるんですよ。人間って一皮剥いたらこんなケダモノなんじゃないの。みたいな。大笑いをしたあとに、そこを思い出して、ひやっとする。

上のあらすじを読んだだけだと、ベン・ウィートリー監督の前作『キル・リスト (2011)』に比べるとずいぶん路線が変わったと思われるかもしれないが、そんなことはないですよ。『キル・リスト (2011)』は基本シリアスだけど、チョロッと妙なお笑いがあったでしょう?その部分をギューと集めたかんじで、通底するテーマは同じであるように感じられる。

以下、結末には触れてませんが、ネタバレ度中です。頭カラッポで映画をご覧になりたい方は、ここらへんでストップしてください。

映画の後半で、マーティンていう自転車男(リチャード・グローヴァー)が登場します。彼はマウンテンバイクで旅をする男で、発明家でもある。自分でつくった寝床テント(棺桶に車輪がついてるようなもの)をくっつけて、旅をしている。それを見たクリスが「すごいすごい!」つって、ふたりは意気投合し「商品化して売り出そう!」とかいう。

私、昔、マウンテンバイクが好きで、わっせわっせと山に自転車でいって、そこらへんでキャンプする、というのをよくやってたんですが、マーティンみたいなヤツがよくいたなあと思い出した。自転車キャンパーは自分が便利に思える道具を自作しているヤツが多いの。「これすごいね」とかいって、素材はなんだとか、このカーブをつくるのに苦労した、とかさ、夜通し語り合って、仲良くなって、連絡先を交換するんだけど、結局、連絡しないんだよね。家に帰ってくると、なんとなく忘れちゃう。そのまま会わなくなる。

クリスという男もきっとそのパターンなんだろうなあと思った。彼は優しげで、思慮深そうで、夢があって、魅力的な男に見えるが、映画の後半になると、ただの失業男だったとわかっちゃう。彼はきっと、ああいう風に、つまり、自転車男を相手に夢を語って、でも時間が経つと忘れてしまって、結局、なにも産み出せない、夢想するだけで満足しちゃう悲しい性を繰り返している野郎なんだろうなあと思うが、これって世の中の大半の人間がそうだよね。

だからさ、「頭にプロペラがついてるバケモノが出てきたらおもしろいじゃん」なんてヨタ話をおおまじめに考えて、脚本書いて、資金を集めて、人を雇って、予定表とかつくって、『武器人間 (2013)』のような映画をつくってしまう、ホラー映画制作者というひとたちは、本当にすごいやつらだなあと私は尊敬するんですよ。

関係ない話になっちゃったが、感想はこれにておしまい。

DVDのオマケ

いつも置物みたいな顔をしているベン・ウィートリー監督
ベン・ウィートリー / Ben Wheatley 画像

殺人カップルを演じたアリス・ロウスティーヴ・オラム
アリス・ロウ / Alice Lowe, スティーヴ・オラム / Steve Oram 画像

  • Cast Commentary with Alice Lowe, Steve Oram, Richard Glover and Ben Wheatley
  • Technical Commentary with Ben Wheatley and Laurie Rose
  • Audio Description
  • Bihind The Scenes
  • Out-Takes
  • Trailers

UK版が発売中。英語字幕つき↓

Memorable Quotes

Chris: Hey, I understand you collect snow globes.
Carol: I don't like you.
Chris: Okay, well, see you, then.
Tina: Show me your world, Chris.
Chris: Well, I thoght we'd start with Crich Tram Museum.
Tina: Great.
Carol: Murderer.
Tina: It was an accident, Mum.
Carol: So were you.
Chris: Don't listen to her.

Ian: We're pretty intent on doing some serious walking. I'm writing a book. Walks Along the Ley Lines of Britain.
Janice: Actually, it's his third, so...
Ian: I'm out at the crack of dawn, having a reconnoitre.
Chris: Yeah. Are you?

Ian: So how many chickens have you got?
Mr.Grant: Now I've only got nine. But I had twelve. Barbara, Margot, and the cockerel... Ronnie Wood.

Tina: If you haven't started the book yet, then you might as well write it about smoething else.
Chris: Fuck!
Tina: What?
Chris: Fuck, fuck, fuck!
Tina: What is it?
Chris: Every time I think I've found my oeuvre, someone shits on it.
Tina: Well, I wouldn't shit on you, Chris. Not unless you asked me to.
Chris: Everyone else seems to find it so easy to express themselves. I mean, even you've got your knitting, haven't you?
Tina: But the thing is, Chris, I'm your muse now. And we've got Banjo. So everything will be perfect. You just need to be a bit more patient.
Chris: There's something in me, Tina.
Tina: I'll help you squeeze it out.

Chris: Choose anything you like, love.
Tina: Anything?
Chris: Anything you like, as long as it's under 10 quid.

shop woman: You want a good tread.
Tina: Okay.
shop woman: You heard about the man, didn't you?
Tina: No.
shop woman: He slipped on the crag and went off the cliff yesterday. Did you not hear about that?
Tina: No! Did he hurt himself?
shop woman: Head smashed like a pumpkin.
Tina: That's why I'd never have stone flooring. Although I do love that French farmhouse look.
Chris: Yeah, it's terrible, isn't it, when people don't have respect for the power of nature?
shop woman: Can't find his dog.
Chris: Well, it probably committed suicide. Dogs will do that.

Tina: Actually it's his third.

Tina: This is not my vagina! This is not my vagina!

Chris: I did that for you.

Richard: Good luck with the ley lines.

nattrator: And did those feet in ancient time. Walk upon England's mountains green. And was the holy Lamb of God. On England's pleasant pastures seen. And did the countenance divine. Shine forth upon our clouded hills. And was Jerusalem builded here. Among these dark satanic...

Chris: Report that to the National Trust, mate. You know, 300 years ago his ancestor would have strode down a path just like this, you know, and he'd have seen some common strumpet like you and he'd have gone, "I'm gonna have a bit of that." And I'd have had to have stood by and watched him. 'Cause I'd have been a serf and he'd have been the bloody lord of the manor. And they call them "the good old days."
Tina: I suppose. If you look at it that way, you were defending my honour.
Chris: Oh, don't thank me, thank the democratic process.
Tina: Never thought about murdering innocent people like that before.
Chris: Ah, he's not a person, Tina, he's a Daily Mail reader. Perspective. Grab it with both hands, it's free.
Tina: See if he's got any sandwiches.

Tina: I'm musing.

Chris: You know all that stuff that's been happening, you know...
Tina: It's all right, Chris. It's all right, because I understand you. And I know you...
Chris: Do you?
Tina: And I get it, 'cause it's just about personal empowerment, isn't it? It's just expressing yourself and thinking outside the box. And I've been in a box. I don't wanna go back to the box, Chris. I'd rather die. Do you know that?
Chris: You'd rather die?
Tina: Yeah. How romantic would that be? If we both just died together.
Chris: Well, I mean, going to salsa's romantic. We could maybe try that first.
Tina: What you're doing is you're giving to the world. Take carbon footprints. By reducing people's lifespans, technically, you're reducing their emissions.
Chris: What, so you're saying that... murder is green?

Martin: She don't mind you smoking a bit of the old herb every now and again?
Chris: No, she don't care about that. She doesn't like me drinking and she doesn't like me doing her up the bumhole.

Carol: You didn't let him see you do number twos, did you, Tina?
Tina: Never.
Carol: Mystery, Tina, is a woman's sanctuary.

Tina: Poppy's with the babysitter.
Chris: Don't call him that.
Tina: Make love to me, Chris.
Chris: No, I can't. I'm still processing.
Tina: Please.
Chris: That poor girl. She was getting married. Just the thought of that just makes me feel...
Tina: Sexy.
Chris: Ruined that restaurant for me.
Tina: I've been very bad, Chris. I think you should punish me. With your cock.
Chris: Tina. It's not sexy. It was wrong. You're not qualified.
Tina: Fine!
Chris: What are you doing?
Tina: Finishing what you started.

Chris: Oh, you're a powder keg.

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原題: Sightseers
別題: Turistas
Sightseers - Killers on Tour!
Touristes
Vérturisták
Hufsha nei'ma
Killer in viaggio
Turysci
Assassinos de Férias
Раз! Два! Три! Умри!
邦題(カタカナ): 『サイトシアーズ 〜殺人者のための英国観光ガイド〜』
制作年: 2012年
制作国: イギリス
公開日: 2012年5月23日 (フランス) (Cannes Film Festival)
2012年8月21日 (ドイツ) (Berlin Fantasy Filmfest)
2012年10月4日 (フランス) (Dinard Festival of British Cinema)
2012年11月9日 (イギリス) (Leeds International Film Festival)
2012年11月15日 (フランス) (Sarlat Film Festival)
2012年11月30日 (イギリス)
2012年12月26日 (オーストラリア)
2012年12月26日 (フランス)
2013年2月21日 (ロシア)
2013年2月21日 (アメリカ) (Portland International Film Festival)
2013年5月10日 (アメリカ)
2013年6月7日 (スペイン)
2013年6月13日 (イタリア)
2013年7月19日 (韓国) (Puchon International Fantastic Film Festival)
2013年8月27日 (ドイツ) (DVD)
2013年9月28日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Sightseers
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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