2013/8/2 (Fri) at 7:47 am

映画|美しき獣|Kiss of the Damned

トワイライト』は子供臭いから嫌という人のためのヴァンパイア主題のホラー映画。ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボームマイロ・ヴィンティミリアロキサーヌ・メスキダ。監督ザン・カサヴェテス。2012年。

美しき獣 / Kiss of the Damned DVDDVD画像

ここはコネチカット。

森のお屋敷に住むヴァンパイア女のデュナさん(ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム)は、色男のパオロさん(マイロ・ヴィンティミリア)と運命的に出会い、ふたりの恋は夜空を焦がして燃えあがる。

ヴァンパイア女にとって、人間の男を愛するというのは、こっちの道にひっぱり込むという意味であるから、彼女は「だめよだめよ」と拘泥していたのであったが、恋するパオロさんにしてみれば、拒否されればされるほど狂おしく焦がれ焦がれて、煩悶懊悩焦心苦慮、何度も名前を呼んで、決して諦めない。

障害なんてあるものか。そんなものはおれのチンコで吹き飛ばしてやるぜ(という台詞はないですが)。

一途な男の情熱にほだされ、やがてデュナさんの心に深く埋もれていた『渇望』に火が灯る。燃え盛るふたりの前では、横たわる障害などは、約束の地に導かれるための前戯だったのか。ふたりは熱く熱く猛々しくエーゲ海に咲く大輪の花となり、もはやヴァンパイアも人間も神の前では等しく愛獣である。溺れるようにひとつになった。

あー。くどい文章ですません。ちょっとこういうの書いてみたかったんだよね。ま、簡単にいうと、ふたりはナニしてくっついたということなんですよ。

てわけで、パオロさんは、なんの未練もなく、人間の生活に見切りをつけ、ヴァンパイアの仲間入りをした。ふたりは屋敷にこもって幸福な愛の日々を耽溺していたが、ある日、均衡を覆す事件が起きた。

それはデュナの妹、ミミさん(ロキサーヌ・メスキダ)の到来である。いったいどういう事情があるのか謎だが、この姉妹はものすごく仲が悪い。すべての原因はミミさんが無茶苦茶な女だからということらしいが、もっと根が深い理由があるように感じられる。

この映画の世界では、ヴァンパイアは人知れず隠れて生きる一族の総称であり、人間を襲わない。動物の血や人工血液で生きている(『True Blood』に似た設定)。

デュナさんが住む屋敷の持ち主は、ゼニアというオバちゃんのヴァンパイア(アナ・ムグラリス)なんだが、こいつはヴァンパイア一族を統率する親玉であり、表の顔は演劇女優である。

ヴァンパイアたちは世界中に散らばっているが、目立つことを嫌い、こっそり会合をしたり、連絡を取り合っている。ところが、妹ミミはそんなことはお構いなしの放埒快楽主義であり、そこらへんの人間をガオーと襲って好き勝手にやる。デュナをセセラ笑う態度は傲岸不遜の悪女。姉デュナはキーッと怒って、すぐにケンカになる。しかし、こんなことをやっていたら、いつか問題が表面化して、妹の方は罰を受けるんじゃないですかね。どうなるんですかね。

パオロさんは脚本家という設定なんだが、彼のエージェント役でマイケル・ラパポートが登場します。彼はお人好しでかわいそうな役どころです。じつに彼らしい。

また、デュナさんの屋敷には、人間のオバちゃんの召使いがいます(チン・ヴァルデス=アラン)。彼女は『ヴァンパイアがムラムラしない特殊体質の人間』であり、先祖代々、ヴァンパイアに仕えている。ヴァンパイアは昼間は外に出れないから、いろいろと不便なので、こういうお助けがいないと困るのです。このオバちゃん召使いは台詞の少ないチョイ役なんだけど、最後の最後に、重要な役割を担う。

60-70年代のフランス/イタリア映画を思わせる、たゆたう雰囲気の、大人のヴァンパイア映画です。なかなかいいよ。

トレイラー動画

Kiss of the Damned (2012) trailer

感想

「ヴァンパイアの恋愛話はいいが『トワイライト』は子供くさくて見る気にならない」というひとにオススメ。

音楽がいいなあ。昔のヨーロッパ映画みたいな哀しいメロディが、たららーん、って鳴るんですよ。監督自身、古い映画に影響を受けていると語っています。

キャストもよい。マイロ・ヴィンティミリアを好きな女性ファンは、彼のwomanizer(女道楽男)演技を楽しめるでしょう。なんていうと「この映画のパオロさんは一途な男なのだから、女道楽男なんて呼んだら失礼だ」とかいわれるかもしれないが、最初の方にどっかの女からのメッセージがチラと聞こえる。あれを聞くとやっぱ女道楽のモテ男なのだろうと思う。

ザン・カサヴェテス監督は、『ローズマリーの赤ちゃん』にも出ていたジョン・カサヴェテスの娘で、IMDbによれば、これが長編2本目だが、前作『Z Channel: A Magnificent Obsession (2004)』はテレビ向けのドキュメンタリなので、実質上、これが長編デビュー。

この映画は、彼女の個人的な嗜好や思いが色濃く押し出された記念すべき第一作。映画一家に育ち、子供の頃から古い映画をたくさん観て大きくなったのだなあと想像され、実際にそのような環境だったようです。ネット上にたくさんインタビューが出ている↓

コメンタリはおすすめ

上にリンクしたインタビューを読むとかなり背景がわかるが、加えて、コメンタリが超おすすめです。コメンタリといえばにぎやかなにべらべらしゃべっているのが多いが、この映画のヤツは監督さんの静かなひとり語り。ぢっと聞いていると、隣に座って映画を解説してもらっているようなきもちになります。

映画の序盤。デュナとパオロが出会ってくっつく流れがじつによかったと思うんだが、あの場面は、監督さんがママ(女優のジーナ・ローランズ)から直接聞いた話、パパとの出会いの話に基づいているそうです。

「女優になるためにNYに出てきたママは、とにかく女優になることしか考えてなくて、男とどうこうするなんてきもちはこれっぽっちもなかったんだが、ある日、映画学校でパパとばったり出会ったら、おなかにパンチを受けたきもちになった」

なんだそうで、つまり、そんな風に『ひとめで恋に落ちるふたり』というイメージで脚本を書いたそうです。こんなことを書いているときりがないが、このDVDのコメンタリはほんとにいいよ。みんなも買って聞いてください。

ブニュエルの『ビリディアナ』が引用されている

パオロが初めてデュナの家にきたとき、いっしょに古いモノクロ映画を見る場面がある。あれはなんだっけと思ったら、コメンタリを聞いてわかったんですけど、ルイス・ブニュエルの『Viridiana (1961)』でした。この引用場面は、後にふたりがやることに少し似ている。いや、似てない。違うんだけど、連想されるかんじがあって、いいオマージュでした。

サウンドトラック売ってます

私も買ったよ。試聴できます↓

上のリンク先にある一番上の曲『KOTD Love Theme』がいいなあ。昔のヨーロッパ映画みたいじゃん?こういうのよくあったじゃん?

DVD/Blu-Rayのオマケ

オマケはインタビューとコメンタリです。ふたりともきれいですね。

ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム
ジョセフィーヌ・ドゥ・ラ・ボーム / Joséphine de La Baume 画像

ロキサーヌ・メスキダ
ロキサーヌ・メスキダ / Roxane Mesquida 画像

  • Commentary with Writer/Director Xan Cassavetes
  • INterview with Josephine de La Baume as Djuna
  • INterview with Roxane Mesquida as Mimi
  • AXS TV Interviews
  • Theatrical Trailers

この映画のDVD/Blu-Rayはパケ違いで2種類売っています。中身は同じですが。

普通のパケ
キス・オブ・ザ・ダムド / Kiss of the Damned パケ 画像

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そしてこれがAlternate Artwork版
キス・オブ・ザ・ダムド / Kiss of the Damned パケ2 画像

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私は知らずに普通のヤツを買って後悔しました。こんな風に2種類出すならリバーシブルにすればいいのに。ときどきあるでしょう。両面印刷してあるパケのヤツ。

最後にちょっと文句

ベタ褒めしているが、残念な点もあった。以下、結末には触れていませんが、ネタバレ度中です。頭カラッポで観たい方はここらへんで止めてください。

奔放ヴァンパイアの妹ミミさんは好き勝手に人間を襲うんだが、これは掟に反する行為なんですね。そこで彼女はヴァンパイアの親玉のアナ・ムグラリスの弱みを握って、自分を守ろうとするんだが、そのやり方がおもしろく、また、同時に、残念だった点でもある。

ミミさんは17歳の処女の娘(ライリー・キーオ)を連れてきて紹介するのです。あなたの熱烈なファンなのですよって。親玉は女優をやってるから。すると親玉はビビッてしまうのです。

「ちょ。あれは処女じゃないの。わたしは40年も人間の血を飲んだことがないのよ。処女の血なんて100年も飲んでない。刺激が強すぎるわ。はやくあの娘を連れて出ていきなさい」

なんていう。結果、親玉さんは誘惑に勝てず、ガブリといってしまう。そして大後悔する。ミミさんは悪女顔で「死体の処理はおまかせください」つって、暗に脅しをかける。

ここはものすごくシリアスな場面で、親玉さんの「やっちまったー」顔が印象的なんだが、私、笑えて笑えて仕方がありませんでした。処女の娘に動揺するなんて、1週間オナニーを我慢した中学生みたいじゃんね。ヴァンパイアの親玉なんだから、あれくらいのことでチビリ顔にならないでほしいよね。

あとさ、この映画はロマンス主体だけど、いちおうホラー映画なので、ガオーな場面もあるんだが、それはよくできているが、もう少し派手な演出が欲しかったなあという気がする。ミミさんがびっくり仰天の大殺戮をやるとかさ。HBOの『True Blood』と世界観が似ているから余計にそのように感じられるのだろう。テレビであれだけやるのを観ていると、映画でこれは少し地味だよね。

と、まァ、不満な点はあるが、総じてよかったです。

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原題: Kiss of the Damned
別題: Neetute suudlus
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邦題(カタカナ): 『美しき獣』
制作年: 2012年
制作国: アメリカ
公開日: 2012年9月 (イタリア) (Venice Film Festival)
2012年10月19日 (イギリス) (BFI London Film Festival)
2013年3月12日 (アメリカ) (SXSW)
2013年3月28日 (アメリカ) (internet)
2013年4月5日 (アメリカ) (International Horror & Sci-Fi Film Festival)
2013年4月5日 (アメリカ) (Phoenix Film Festival)
2013年5月3日 (アメリカ)
2013年5月5日 (イギリス) (Dundead - Dundee Horror Film Festival)
2013年9月13日 (ドイツ) (Oldenburg Film Festival)
2013年10月11日 (スペイン) (Sitges International Fantastic Film Festival)
2014年4月25日 (ドイツ) (Blu-ray & DVD premiere)
2014年6月13日 (フランス) (Champs-Élysées Film Festival)
2015年1月10日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Kiss of the Damned
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
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キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
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