映画|ザ・チャイルド|Come Out and Play
幸せカップルが狂った子供たちに襲われてびっくりするホラー映画。スペインホラー『Who Can Kill a Child? (1976)』(邦題『ザ・チャイルド』)のリメイク。エボン・モス=バクラック、ヴィネッサ・ショウ。監督マキノフ。2012年。
白人の幸せカップル(ヴィネッサ・ショウ、エボン・モス=バクラック)がメキシコで楽しく観光旅行中。
夫はスペイン語が堪能で、優しくて、いつも妻を気遣う。かわいい奥さんはおなかが大きい。ふたりは心からバカンスを楽しんでいます。こんなカップルがヒデー目に遭うなんて、ほんとうにかわいそうですね。あー。
ふたりは地元のアンちゃんにボートを借り、小さな島にいく。観光客が知らない穴場にいって、ふたりきりで美しい自然を満喫しようではないか。ヒャッホー。
ところが、島に着いたら、変な具合である。島には子供しかいない。大人がひとりもいない。お店に入っても、ホテルにいっても誰も出てこない。おっかしいなあ。みんなはどこにいったのかなあ。カップルはのんきにそこらへんを探検するんだが、やがて真実を知る。
この島では、ある朝、子供たちが狂っちまって、大人たちを襲い始めた。不気味なウスラ笑いを浮かべ、親たちをとっつかまえ、「かーごめかごめー」と遊ぶような調子でなぶり殺しにした。大人たちはなにが起きているのかわからず、あわわ、とパニクるばかりだった。そして全滅させられた。
そんな異常事態のさなかに、何も知らない幸せカップルがやってきたというわけでした。彼らは子供たちの異変に気がついて、ひえーつって逃げ回る。いったいぜんたいどうなっているんだこの島は!
おそろしく後味の悪いスペインのホラー映画『Who Can Kill a Child? (1976)』(邦題『ザ・チャイルド』)のリメイクです。
トレイラー動画
Come Out and Play (2012) trailer
邦題『チャイルド』でただいま公開中
私は今月発売されたUK版DVDを見ましたが、日本でも邦題『チャイルド』にて劇場公開中。ヒューマントラストシネマ渋谷他にて全国順次ロードショー!だそうです。詳しい情報は公式サイトでどぞ↓
感想
オリジナル版『Who Can Kill a Child? (1976)』では、冒頭において、戦争や饑餓などの悲惨な社会派ルポ的映像がえんえんと流れ(いやっちゅうほどでした)、「犠牲になるのは常に子供たちなのだ」と訴え、映画の中でもそのような演出がいくつかあり、アグネス・チャンが出てきてもおかしくないような調子であったが、リメイクではそういうのナシ。いまの時代にそんなものをやったら説教臭くてかなわないから、そこはカットしたのだろう。
オリジナル版では場所がスペインだったが、こちらはメキシコ。
その他、いくつかの違いはあるが、大筋は同じ。最後の方でゴア場面が少しあるが、大したもんではない。「ホラー的なヤツをチョロッとやってみましたよ」みたいな。
「わざわざリメイクをつくる必要があったのかね?」と疑問が浮かぶが、まぁいいや。元を見てないひとがこれを新鮮に楽しめるのだとしたら、多少は意味があるのだろう。
なんて思いながら見続けていったのだが、ほんとに最後の最後まで同じだった。あのなー。少しくらい変えろ。と思ったら、エンディングがさ、ちょっと違うんだよね。
あれれ。こんな風だっけ。後からオリジナルを再見したが、あそこは元のヤツのほうがいいんじゃないかなと思ったが、これはネタバレになるので、一番下に後述します。
『Who Can Kill a Child? (1976)』の主題は、単に、「子供たちに襲われる恐怖」でなく、そのまた先にある恐怖心理だった。と私は思う。
「子供たちに襲われたからといって、反撃しちゃっていいのだろうか。相手は子供だよ。それをやったら人間失格ではないか。子は宝だよ。かわいいんだよ。やっちゃいけないよ。でも実際に襲われたらどうする?」
こんな選択を迫られる恐怖感があった。
映画の後半。カップルは子供たちに追われて、建物に逃げ込む。外には子供たちが押し寄せ、扉をどんどん叩いている。という緊迫場面において、男はやむなく少年を射殺する。すると、他の子供たちはサーッと引きあげていく。
オリジナルこのシーンは映画の主題をよく描いていた。私はあのときの男のきもちをこんな風に感じた↓
男は「つ、ついに、やっちまったー」顔になり「でもこうするしかなかったよね」と気持ちを抑えつつ、ふと思いつく。大人が反撃すると子供たちは逃げていく。てことは、全滅した島の大人たちは一度も反撃をしなかったのかな、彼らは本当に子供たちを愛していたんだな、と思いつく。「それにひきかえこのおれはなんてことをやらかしたんだ」と絶望する。「でも妻を守らなくちゃいけないんだから」と堂々巡りになる。
こんな独白台詞はなかったんですよ。実際の台詞は少し違うんだけど、私はその心理を想像し、彼の絶望というものをガビーンと感じたのです。
この場面はリメイクでも同じように描かれているんだけど、果たしてどうなんだろうか。リメイクから入ったひとはどう感じるのだろう。もしこの陰鬱さというものを共有できるなら、このリメイクは確かに意味があったのだろう。
UK版DVDが出てます
UK版はオマケはなんにもナシでした。英語の字幕がついていましたが、完全ではありません。スペイン語をしゃべっているところの一部だけでした↓
日本版は2013年6月5日発売予定だそうです↓
また、オリジナルの方は日本版出てますが、えれー高いです。新品で1万円以上ですと。オマケがいろいろと充実しているようですが、この値段は、あのなー↓
ちょっと安いのもあった。でも高い↓
US版は安くていいですよ。英語字幕もついているよ↓
Quick English Review
Finished "Come Out And Play" remake of "Who Can Kill a Child?" in 1976. The plot is 99% same, I cannot complain but the problem is ending.
— tinker (@horrorshox) May 23, 2013
Original's ending is quite better I guess. It had made me creep out. Not so in remake.
— tinker (@horrorshox) May 23, 2013
1976年製作の『ザ・チャイルド』
オリジナル版『Who Can Kill a Child? (1976)』(邦題『ザ・チャイルド』)はどんなかんじだったのか、画像でかんたんに紹介します。
おじいさんをメッタ打ちの少女はかわいいですね
このあと、ケラケラ笑って逃げていきました
夏休みのプール開きみたい!楽しそう!
これはリメイクには出てきませんでした
ところでスマイリーさん
余談ですが、ついでに書きますが、『ザ・チャイルド (2012)』と同時公開の『スマイリー』はおそろしくつまらないです。4chanネタのゆるーいギャグがチョロッと笑えるくらいで、ゴアゴアも大したことない。ま、好みの違いというのはあるんで「すきだ!」というひともいるかもしれないが、DVDスルーが妥当な平凡な低予算ホラーという点は間違いない。劇場公開なんてよくやるわ。
ホラー映画を見続けるというのは、ドブの中から宝石を見つけるようなものであり、ガラの悪いポンビキ共をケトばし、魑魅魍魎の妖怪の攻撃をかわし、汚い路地を突っ走り、その奥深くで自分を待っているにちがいない愛する女を捜し続ける旅であります。ゆえに、『スマイリー』のような映画にダマされるのも人生の修行。私に修行の機会を与えてくださったスマイリーさんには感謝に堪えません。ほんとまぢで。
ネタバレです
!!!! SPOILER ALERT !!!!
!ネタバレ注意!
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Come Out and Play | |
Come Out and Play - Kinder des Todes Tule välja mängima Juego de niños Aki bújt... The Child Dziecięce igraszki | |
『ザ・チャイルド』 | |
2012年 | |
メキシコ | |
2012年9月13日 (カナダ) (Toronto International Film Festival) 2012年9月22日 (アメリカ) (Austin Fantastic Fest) 2012年9月22日 (アメリカ) (Fantastic Fest) 2012年10月9日 (スペイン) (Sitges Film Festival) 2012年11月24日 (イタリア) (Turin Film Festival) 2013年2月2日 (フランス) (Gerardmer International Fantasy Film Festival) 2013年3月22日 (アメリカ) 2013年5月11日 (日本) 2013年6月13日 (ロシア) 2013年9月6日 (メキシコ) 2013年10月4日 (ドイツ) (DVD) | |
imdb.com :: Come Out and Play |
- Makinov :: マキノフ [imdb] (screenplay)
- Juan José Plans :: ファン・ホセ・プランス [imdb] (novel "El juego de los niños")
- Ebon Moss-Bachrach :: エボン・モス=バクラック [imdb] (Francis)
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