2012/9/23 (Sun) at 1:57 pm

映画|ウバルド・テルツァーニ・ホラー・ショー|Ubaldo Terzani Horror Show

新米ホラー監督が売れっ子ホラー作家と出会ってこわい目に遭うホラー映画。ゴアゴアあるよ。ジュゼッペ・ソレリパオロ・サッサネッリローラ・ギガンテ。監督ガブリエレ・アルバネージ。特殊効果セルジオ・スティヴァレッティ。2010年。

ウバルド・テルツァーニ・ホラー・ショー / Ubaldo Terzani Horror Show DVDDVD画像

ここはローマ。

アレシオさん(ジュゼッペ・ソレリ)はホラー監督の卵である。監督デビューを夢見てがんばってるんだが、現実は厳しい。

プロデューサー(アントニーノ・ルオリオ)に脚本を見せたら、

ランベルト・バーヴァの時代じゃないんだから、いいかげんにスプラッター路線はやめて、テレビでオンエアできるヤツを頼むヨ」

なんていわれて凹むのであるが、プロデューサー氏は最後にこういった。

「君によい脚本家を紹介してあげる。彼と組んで仕事をしなさい」

こんな世話を焼いてくれるわけだから、いちおう期待はされているようです。氏が紹介してくれたのは、ウバルド・テルツァーニという人気ホラー小説家で、映画の脚本も手がけるそうな。アレシオさんはさっそく本屋にいってウバルドさんの本をドカ買いし、アパートに帰ってくる。

彼の部屋のようすが映し出されると、ホラーファンならこの男の人生というものを一目で了解するだろう。『アクエリアス(Deliria)』『オペラ座・血の喝采(Opera)』等々、古い映画のポスターがたくさんあって、ひときわ目を引くのはセルジオ・レオーネの大きな肖像画。

とにかく彼は映画好きで、イタリア映画にドップリで、それしか頭にないんですな。主人公がこんな調子なので、この映画はそこかしこイタリアンホラー、ジャーロへのオマージュが散りばめられています。ルチオ・フルチダリオ・アルジェントアンドレア・ビアンキマリオ・バーヴァセルジオ・マルティーノ、等々があちこちで視界に入る。ポスターやら、アレシオさんが着ているTシャツやら。

彼は買ってきた本をさっそく開いて読み始める。したら、その恐怖世界にどんどんハマる。おぉおお、これはスゲーなあ、こんな怖い小説は読んだことがないなあ。本を読みながら寝たら、キラーにおなかを刺される夢を見たりする。

ホラーを知る男がこんな風に思うくらいだから、ウバルド・テルツァーニという作家はすごいのである。『ホラー小説界の錬金術師』というようなカリスマがある。

アレシオさんはウバルドに会うため、カワイコちゃんの恋人(ローラ・ギガンテ)をローマに残し、トリノにいく。このカワイコちゃんはイタリア版ジェニファー・カーペンターてかんじの、ものすごいカワイコちゃんである。映画の中盤になると、彼女もトリノにきて重要なroleを演じるようになりますが、ここはしばしのお別れであります。

さてさて、ウバルド・テルツァーニなる小説家はいったいどんなヤツなのか。どんな家に住んで、どんな暮らしをしているのか。もしかして屋根裏部屋に住んでる世捨て人か、汚いせむし男みたいな相手だったらどうしよう。アレシオさんは不安と期待でどきどきするが、会ってみたら、いいかんじの紳士(パオロ・サッサネッリ)であった。知的でさりげなく世馴れたダンディ中年男っていうんですかね。

アレシオさんは彼に弟子入りするような調子で家に住み込んで、いっしょに物語を練る。ウバルドはこの若造を鷹揚に迎え入れ、ホラーの手ほどきをする。緊張するアレシオさんの気持ちを解きほぐすようにこんなことを述べた。

「プロデューサーのことは心配しなくていいのだよ。ぼくはすでに彼と話して、自由に創作する許可を得た。だから、テレビ向けだとか、売れなくちゃとか、つまらないことに気を回す必要はない。ここはいっちょう、君とぼくで力を合わせて、最高の脚本を書き上げようではないか。わっはっは」

大作家からこんな風にいわれるのは、大変な名誉である。一日も早く監督デビューしたいアレシオさんは相手の言葉を信じておおまじめに取り組む。

「あなたの小説のおそろしさには、ほんとうにびっくりしました。なにか秘訣があるのですか」

と弟子らしく質問を投げてみた。すると相手はこんなことをいう。

「恐怖の物語はいますでに君の中にある。君の心の奥底に沈殿する、漠然とした恐れ、君を不眠におとしいれるもの、それを取りだして、ちょちょっと味つけすればいいのです」

映画の中ではもっとたくさん長々としゃべっているのであるが、アレシオさんにとっては言葉のひとつひとつが魔法のように作用し、深く感じ入ってしまう。話がクライヴ・バーカーに及んで「あれは二流だ」とコキおろす段に至っても、なんだかこの男のいうことは真実味が感じられるのである。それくらいにウバルド・テルツァーニという男は強烈な魔性オーラを放っている。メフィストフェレス風。

映画を観ている私らとしては、このあたりの話を聞かされていると、期待と懐疑がまぜこぜになったきぶんになるであろう。こんなに大風呂敷を広げておいて、つまらんかったら許さんぞ。という湯加減で観続けていったんですが、これはなかなかのもんでありました。おすすめ。

トレイラー動画

Ubaldo Terzani Horror Show (2010) trailer #1
Ubaldo Terzani Horror Show (2010) trailer #2

感想

  • これはいい。
  • びっくりした。
  • ゴアゴアいいよ。
  • カワイコちゃんも出るよ。
  • 演技ヨシ。
  • 脚本ヨシ。
  • みんなも観よう。

ガブリエレ・アルバネージ監督の前作『イタリアン・チェーンソー (2006)』は、うだうだと悪趣味ゴアがまぜこぜの映画でありました。冗長かつ意味深な演出が多用され、うだうだうだうだうだと進んでいく物語は観客に忍耐を強いる、「そこがたまらん!」という人もいるみたいだが、これはどうにもしんどいなあ、という調子だったです。

ところが、本作『Ubaldo Terzani Horror Show (2010)』はじつにテンポがよくなった。その内容は、上に述べたようにオマージュ全開です。映画の最初の方で、フルチ先生の『ナイトメア・コンサート (Un gatto nel cervello) (1990)』がシネマ・イン・シネマ手法で出てくる。あの話を知ってればなんとなく先が読める。監督さんはわざとネタバレをしながらニヤニヤ笑ってやってるようにも思える。

でも懐古趣味だけで終わってるヤツではないのですよ。懐古路線に現代味を混ぜるさじかげんがうまい。だから、古いイタリア映画好きのみならず、そこらへんをよく知らない方でも楽しめます。セルジオ・スティヴァレッティが特殊効果を手がけているので、ゴア描写に注目するひとが多いと思いますが、その期待ももちろん裏切らないが、サスペンス映画としてよくできている。

中盤以降、ウバルド・テルツァーニは内なる魔性を露にして、どんどんこわくなってきます。まじめ青年のアレシオさんは悪夢世界に溺れて、ヘロヘロになる。そこに登場するのがカワイコちゃんであります。美女です。普段、低予算インディーズのデブ女優ばかり見ている私は「女優ってこんなにきれいだったんだ!」と感動しました。この3者が揃うと、まさに『オールド・スクール・ホラー』ですね。どきどきしたなあ。みなさん、演技がいいの。

一般的な話、オマージュだらけの映画というのは、映画好きの自己満足凡作が多いので、かなり疑いの視線で観始めたのですが、どんどんおもしろくなって、最後までブレがなく、きちっとまとめあげてくるからびっくりしました。

私がいちばん気に入ったのはエンディングです。

ウバルド・テルツァーニは最後に死んじゃうんだが、死に際に、ある台詞をいうのですね。これが普通のホラー映画なら「ざまーみろ、くそったれ」調の皮肉になっちゃうような台詞なのだが、この映画では、それが皮肉でなく、ウバルドは本気であのように思って死んでいったのだろうと感じられました。そこがよかったよかった。

余談ですが、この映画には、イタリアンホラー業界の舞台裏的場面がいくつかある。アレシオさんにライバル心むきだしの若いディレクターとか、「家族を食わせないとな」なんていう大監督なんかが脇役で登場します。パーティのシーンでは、ホラー業界人がチョロチョロ出てきて、雰囲気を盛り上げます。コメンタリの中で「多少は誇張してあるけど、だいたいおれらの業界はこんなかんじだよネー」なんつってました。へー、ってかんじ。

DVDのオマケ

Extraはこんだけ↓

  • Audio Commentary With Gabriele Albanesi And Antonio Tentori
  • Laura Gigante Screen Test (03:19)
  • "The Hunted" - A Short Film by Gabriele Albanesi (24:14)
  • Trailer 1 (01:36)
  • Trailer 2 (01:09)
  • DVD Credits

ローラ・ギガンテちゃんローラ・ギガンテ / Laura Gigante 画像

コメンタリはおもしろいですよ。一部、抜粋して書いてみました。この下にありますがネタバレが含まれるのでご注意を。

『The Hunted』はガブリエレ・アルバネージ監督のショートフィルム。内容はマカロニ・スプラッター。4人のカウボーイ家族がシェリフに追われて、森の小屋にたてこもっている。父親は狂ったように「撃ち返せェええエえ!」と叫ぶんだが、絶望的に逃げ場ナシ。夜になったら暗闇からこわいもんが出てきてウギャー!ていう話。

DVDのケースの中に小冊子が入ってました。7ページ。カラー。内容はFangoriaのChiris Alexanderによるレビューです(英語)。こういうオマケはうれしいよね。

このDVDは、映画本編/コメンタリ/Extra、ぜんぶ英語字幕つき。

コメンタリより抜粋

コメンタリでは、ガブリエレ・アルバネージ監督とアントニオ・テントリーがしゃべっています。アントニオ・テントリーは、シネマ・イン・シネマで出てくる『ナイトメア・コンサート (Un gatto nel cervello) (1990)』の脚本を手がけました。

映画好きの男ふたりがぐだぐだと会話している内容は、興味のない人にはおそろしく退屈ですが、イタリアンホラー好きなら楽しいでしょう。

以下、その中からいくつか抜粋しました。かなりハショってますから、興味のある方はすべて聞いてみるといいですよ。

ここから先は、映画を観てからのほうがいいと思う。

・ウバルド・テルツァーニの家は、元はEnrico Paolucciという有名な画家が住んでいたそうで、いまは美術館みたいになっているんだが、許可を得て使わせてもらった。この画家の絵があちこちに出てくる。

・「アレシオさんがウバルドの本の匂いを嗅ぐ」という演出があるが、これはガブリエレ・アルバネージ監督自身の癖である。彼は本好きが講じて本フェチなんだそうで。

・クライヴ・バーカーが二流(medicore)というのは、ウバルド・テルツァーニの意見であって、監督の意見ではない。

・パーティのシーンは、映画監督ジョナサン・ザラントネロの家を借りて撮影した(私はこの監督さんを知りませんでしたが、新作『The Butterfly Room (2012)』てのがあって、なんとバーバラ・スティールさんが出ているスリラーだそうな。まだ生きてたのか!)。

・パーティのシーンでは、コメンタリの話し相手であるアントニオ・テントリー他、イタリアのホラー業界人が何人か登場する。映画業界っぽい雰囲気がよく出ています。

・映画の中でアレシオさんが着ているTシャツは、すべてこの映画のオリジナルである。衣装デザイナーのMaria Vincenza Nardiniがつくった(しょっちゅう彼のTシャツが変わるんだが、いちいち凝っています)。

・ウバルドがアレシオさんの恋人に興味を抱いて「彼女も呼んだらどうよ」と誘うところは、ドラキュラがルーシーの写真を見た場面みたいである(私もそう思った!)。

・アレシオの悪夢にしょっちゅう出てくるキラーを演じたのはホラー監督のFederico Lagna

・エンディング近くの地下室のバラバラ死体の場面。特殊効果担当、セルジオ・スティヴァレッティの真骨頂であります。彼が監督した『肉の鑞人形(Maschera di cera)』を思い出すと同時に、ルチオ・フルチを彷彿とさせる。

・格闘シーン。アレシオがペンを使って逆襲するところ。物書きがペンで殺されるという点がおもしろいトコであるが、これについて、アントニオ・テントリーが『スリープレス(Non ho sonno)』との類似性を指摘したらば、監督は関連を否定し「いや、これは『ミザリー』のエンディングに着想を得た」そうな。あっちはタイプライター、こっちはペン。

・エンディング。監督デビューしたアレシオさんの隣に、よく見ると恋人らしき女性がいる。帽子をかぶってる女性がそうなんだが、小さくて顔は判別できない。手をつなぐ雰囲気からして、恋人であるように見える。あれが殺されたカワイコちゃんと同じ女性であるならば、もしかして全部夢だったの?ええええええ!?

この女性です映画|ウバルド・テルツァーニ・ホラー・ショー|Ubaldo Terzani Horror Show エンディング 画像

監督さんは極めて控えめな手法で、こんなミステリーをエンディングに仕込んだ、てことなんですが、ちょっと、これね、わかんないヨ。控えめすぎ。みんなは気づくのかなあ。私はコメンタリでいわれて初めて知りました。

Memorable Quotes

Ubaldo Terzani: Look, Alessio... together we have to write the story that already exists inside of us. The story that has us obsessed, that won't let us sleep at night. And it has to be the story that guide us, not the other way around. Abstract discourses on the type or rules the story should or should not follow are innate. Don't worry about Curreri. Alreadly spoke to him, and I am responsible for all of our choises. You were entrusted to me, Alessio.

Ubaldo Terzani: Autopsies? No, these are the easy way out, that I willingly leave to the mediocre writers like Clive Barker.

Ubaldo Terzani: The Horror... horror is inside of you. It is deep down, inside of you where you have to look to pull it out. And then work with fantasy to achieve excellence. We have to destroy the common belief that in order to write certain stories we have to live them directly. There is nothing more false.

Ubaldo Terzani: Are you ready to die? To send your soul to the devil?

Ubaldo Terzani: Now I will strangle you, like I strangled that whore of a girlfriend of yours. And you will become material for my novels!

Ubaldo Terzani: You have to thank me, Alessio... because I gave you the gift of inspiration.

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原題: Ubaldo Terzani Horror Show
別題: Ubaldo Terzani Horror Show
Nelle fauci di Ubaldo Terzani
制作年: 2010年
制作国: イタリア
公開日: 2011年3月19日 (イタリア) (Rome Independent Film Festival)
2011年4月20日 (イタリア) (DVD)
2011年5月13日 (フランス) (Cannes Film Market)
2011年6月5日 (アメリカ) (Another Hole in The Head Film Festival)
2011年6月13日 (イタリア) (Fantafestival)
2011年6月17日 (イタリア)
2011年8月23日 (イタリア) (Italian Horror Film Festival)
2011年11月10日 (イタリア) (ToHorror Film Festival)
2012年1月31日 (アメリカ) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Ubaldo Terzani Horror Show
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
プロダクション・デザイン
セット制作
衣装デザイン
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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