2011/3/11 (Fri) at 6:32 am

映画|ディア・ミスター・ゲイシー|Dear Mr. Gacy

死刑判決を受けたシリアルキラー、ジョン・ゲイシーと、優秀大学生の文通交流が予想外の事態に発展する、実話ベースのスリラー映画。原作はジェイソン・モス著『「連続殺人犯」の心理分析(The Last Victim)』。ジェシー・モスウィリアム・フォーサイス。監督ズベトザル・リストフスキ。2010年。

ディア・ミスター・ゲイシー / Dear Mr. Gacy DVDDVD画像

1978年。

稀代のシリアルキラー、ジョン・ウェイン・ゲイシー(ウィリアム・フォーサイス)が逮捕された。犠牲者は33人。全員が若い男性または少年。彼の家の地下から多数の死体が発見され、容疑は鉄板。この事件は世間の大注目を集めた。

そして13年後。

ジョン・ゲイシーは死刑を求刑されたが、現在に至るまで、容疑を否認し続けている。上告を重ね、13年間を刑務所で過ごしたが、これ以上彼が上告できるチャンスはない。間もなく刑の執行が行われる。こんな変態犯罪者は早くオダブツにしてしまえ。

という内容のテレビニュースを興味津々で眺める大学生が登場。彼の名前はジェイソン・モス(ジェシー・モス)という。犯罪学を学ぶジェイソンはこの犯罪者に多大な興味を抱き、課題リポートのテーマにしようと思いつく。

その手法は『文通』。

手紙を書いて、文通友達になって、だまくらかして、キラーの告白を引き出してやるぞという話だが、なにしろ相手は超有名な犯罪者なので、並のファンレターでは無視されてしまうだろう。どうすればキラーの気を惹けるだろうかと考えに考えて、過去情報を収集し、論理を積み上げていくところは大学生ながらいっぱしのプロファイラー。

ジェイソンは周到に技巧を凝らし、こんなインチキ人物をこしらえた↓

「暴力父と口うるさい母に愛想を尽かしているゲイの大学生。勉強なんか大嫌い。親にいい顔をするために大学に入ったが、早いところカネを貯めて家出をしたい。手っ取り早く稼ぐために、男娼のバイトをしようと考えている。ガールフレンド?いるわけないでしょーが!」

さらに、バーベルをわっせわっせと持ち上げてカラダをつくり、ゲイモデルみたいなポーズの写真も撮った。これで食いついてくれるかな。

という調子なんだが、本当の彼はぜんぜんちがう。

教授(アンドリュー・エアリー)から一目置かれる優秀な学生で、ドロップアウトする気なんかなく、カワイコちゃんのガールフレンド(エマ・ラハナ)と優しい家族がいる。彼は夢中になってこのプロジェクトに取り組むんだが、そのようすを見ていると、優秀であることに加え、集中力があるという点もわかる。

ジェイソンの最終ゴールは、シリアルキラーの脳内の闇にスポットライトを当てることであり、すなわち、本人による自供を得ることです。

このまま死刑になったら、真相は謎のままで事件は終わりになる。でもそれを暴くチャンスかも。自分だったらやれるかも。これはFBIさえなし得なかったことだから、大学生の彼にとっては、大きなチャレンジです。

映画を観ていると「ほんとに賢こそうなやつだなあ。こんな男ならうまいことやるかもしれんなあ」と期待させるんだが、ここから先がさらにおもしろい。

手紙を受け取ったゲイシーはこのエサに食いついて返事をよこし、ふたりの交流が始まるんだが、こちらも負けず劣らず知恵が回る男で、他人を懐柔することに長けている。彼は10年以上容疑を否認し、検察をてんてこまいさせたくらいだから、キモの座った犯罪者なのである。

犯罪心理学の知識を武器に動き回るジェイソンと比べて、こちらは『経験者である』という強みがあるわけです。ジェイソンくんはこの強敵、33人をブッ殺して平然としているシリアルキラーを相手に目的を達することができるんでしょうか。

ジェイソンの父親にマイケル・ライアン。母親にベリンダ・メッツ。弟にコール・ヘッペル。かつてゲイシーに襲われたが、殺されずに済んだ男にパトリック・ギルモア。彼は迷えるジェイソンに重要なヒントを与えます。

トレイラー動画

Dear Mr. Gacy (2010) trailer

Dear Mr. Gacy (2010)』は実話ベースの映画

ジョン・ウェイン・ゲイシーは『殺人ピエロ』の異名を持つアメリカ犯罪史に残る凶悪犯罪者で、スティーヴン・キングの『IT』のモデルにもなったが、ジェイソン・モスという人物もまた実在した。当時大学生だったジェイソン・モスは本当にこういう行動をして、ジョン・ウェイン・ゲイシーに接触したそうな。

ジェイソンはゲイシーと交流する過程において、思いもよらない、深くて、暗い経験をした。それは彼の人生に大きな影響を与えた。んで、その経験を本にまとめたのが『The Last Victim』。映画『Dear Mr. Gacy (2010)』はこの本を原作にしています。

翻訳もあるんだが、絶版になってるみたい。

この映画がもし日本で公開されたら、本の方も売れるだろうから、出版社のえらいひと、よろしく!

ジェイソン・モスはこの本がベストセラーになって、有名人になって、弁護士の仕事を得、結婚もした。充実人生を送る成功者と思われたが、2006年6月6日、自殺した。遺書は残されておらず、自殺の原因は謎めいている。

映画のラストで、ジェイソン・モス本人がテレビに出演したときのアーカイブ映像が出ます。なかなか興味深い。

ところで、余談だが、ジェイソン・モスを演じたジェシー・モスだが、名前がすごく似てるので、なんかあんの?と思われがちなんだが、この類似はただの偶然だそうです。

感想

これはなかなかよかったですよ。ジェイソンを演じたジェシー・モスと、ゲイシーを演じたウィリアム・フォーサイスがよかった。脇を固めるみなさんもオッケー。

映画の前半は、ジェイソンという大学生の賢さ聡明さが際立ちます。彼には『没頭しすぎる』という欠点があって、周囲の人たちの助言にぜんぜん耳を貸さない、やるぞと思ったらずんずん突き進む、という点が玉にキズなんだが、それは彼の長所でもあるわけだし、見ていると清々しいというか「ヤレヤレ」といいたくなってくるよ。

FBIの捜査官に面会し、情報を得ようとしたらば「アイツにちょっかいだすなんて危ないからやめときな。学校の課題?それなら大学生らしく『マリファナ合法化』みたいなテーマをやってろ」なんていわれるんだが、ぜんぜんメゲない。だから粘り強さもある。

が、後半になると、ゲイシーの薄気味悪さが際立ってきて、ジェイソンの快活さは次第に失われ、彼は冷や汗ダラダラの、デヴィッド・リンチの映画に出てくるひとみたいな顔になってくる。

毎晩刑務所から電話がかかってくるようになるの。手紙ならゆっくり考えてウソ話を捏造できるけど、電話だとそうはいかない。ジェイソンはボロを出さないようにジタバタします。

彼は「ゲイの大学生」ってことになってるんだが、そんなアンダーグラウンド世界のことなんかまるで知らないから、話を合わせるためにわざわざヤバい場所にいって、男娼(ジェフリー・ボウヤー=チャップマン)に声をかけて「あー、ちょっとすません。この世界のことを教えてもらえませんか。おかね払います。お願いします」なんつって、取材をするのです。彼はそこでヒデー目に遭い、ひーこらいって逃げてくるんだが、あそこでわるいやつに当たっていたらホイとブッ殺されてたかもしれない。そういう熱意が彼のいいところでもあるんだが、じつにあぶなっかしい。

ゲイシーはジェイソンをテストするように、細かな質問を投げてくる。そしてゲイ世界へ誘おうとする。

こうなるとジェイソンは本気で後悔しはじめます。シリアルキラーと接触するといっても、相手は刑務所に入っているのだから、なにも危険はないだろう。当初はそう考えていたのだろうけれど、その思惑は外れて、精神が浸食されるように蝕まれていく。知能明晰に見えたこの大学生が、世間知らずの優等生、じつは使えないヤツだった、というキャラに変わってしまうのです。

私はコレを見て、凶悪犯罪者を相手に仕事をするってのは、本当にたいへんなことなんだろうなあと想像できました。心理学を勉強して、経験もあって、想像力もあって、プレッシャーに負けないバランス感もあって、という調子で、すべてを兼ね備えていないといけないんだろうなあ。『羊たちの沈黙』のジョディ・フォスターはすごいひとだったんだなあ。なんて、おもいました。

クライマックス近くでは、このふたりが実際に顔を合わせます。ジェイソンは学究的な興味からこれを始めたんだが、その結果、彼の予想をはるかに超える事態に発展し、その後の人生に大きな影響を与えるほどの希有な精神世界を体験する。そのスリリングさがこの映画の要点と思われます。

てわけでなかなかおもしろかったですが、残念な部分もある。後半の描写がやや雑ではないか。ジェイソンとゲイシーの関係性というもの、このふたりの心の奥底に沈殿する陰鬱さというものを、もっと掘り下げて、細やかに表現してもらいたかったな、と。でもそれは原作を読めば補填できるかなという気がする。私は、本のほうは未読なので。

US版DVDのオマケ

DVDのオマケはこれだけ↓

  • The Gacy Files: Portrait Of A Serial Killer

20分程度のフッテージ。ゲイシーを演じたウィリアム・フォーサイスが、役づくりのために関係者から話を聞くドキュメンタリ。子供時代の友達、イリノイPDの刑事、DA、科学捜査の鑑識の責任者、Jeffrey Kottler(『The Last Victim』の共著者)といったみなさんが登場します。

映画本編は英語の字幕がありますが、Extraは字幕ナシ。

ゲイシーは「表面上は立派な善良市民を演じていた」そうで、シリアルキラーにはそういうパターンが多いそうですが、つまり、彼らは、変態で殺人者であるという点を除けばすごくいいひと、なのですね。こわいですね。

私らはこういう話を聞くと、つい『仮面の裏には』とか『偽装していた』という風に捉えてしまうけれど、キラー本人にしてみれば、どちらも自分なんだよ、と思っているのかもしれない。殺人をやりながら善人をやることで、無意識に精神的なバランスを取ろうとしているのかもしれない。

UK版は『The Last Victim』

この映画はUK版では『The Last Victim』という別題になってて、これはジェイソン・モスが書いた本のタイトルをそのまま使ったということで、タイトルはいいんですが、ジャケがミスリード↓

amazon.co.uk - The Last Victim [DVD]

The Last Victim UK DVD

よくやるなあ。コレだとみんな大好きゴアゴアホラーを期待しちゃうと思うんですが、ソレ系ではないです。心理描写に重きを置いた、サスペンススリラー映画です。

チョット似たかんじの別の映画

去年見たコレを思い出した↓

こちらはずっと低予算ぽいかんじで、あまり話題にもなりませんでしたが、なかなかよかったんですよ。少年ばかりを狙うシリアルキラーの内奥を描いたホラー映画です。コレ系に興味のある方はぜひ。

Memorable Quotes

Jason Moss: My relationship with my parents is ot the greatest. My mom is always on my ass trying to control my life. My dad's normally more passive. However he has a temper and loses it once in a while and can beat my ass pretty good. Nobody knows I'm thinking about being a nude dancer to earn extra money, which is a bit tight for me right now. I don't even know why I'm telling you all this. I guess I just feel like I can open up to you. Well, I really want us to become friends. So I look forward to hearing back from you soon. Yours, Jason.

John Wayne Gacy: One of the things you should know about me is that I'm open-minded, outspoken, not very tactful, nonjudgemental, liberal, and I say what I mean. The only thing I ask is don't assume anything of me. If you're not sure, then ask. Nothing offends me and nothing is personal. No subject is off limits as long as you're willing to be just as open and honest as me.

Jason Moss: Jason, you are a fucking genius! hahaha!

John Wayne Gacy: Well, Jason, you really took me for a ride. You were right, I never saw it coming. Of all the people who fucked me over in my life, I never thought it would be you. But it must have been fate. Thousands of people wanted me, but I picked you. We had a real connection, the two of us. And now that I know the truth, I know more than ever that you and I are a lot more alike than you think. It's time to die now. See you on the other side, buddy.

Jason Moss: I never imagined that the one who would ultimately be manipulated and controlled would be me.

Jason Moss (archive footage): I portrayed an image to Gacy of this lonely boy that had no friends. I wanted to someone to teach me or help me. I presented myself as very naive. I didn't want to just learn about Gacy. I wanted to actually talk to him, find out about his crimes, find out the things that no one else could find out about. I thoguht, "I'm gonna find the secrets that the FBI couldn't figure out. I want to do what the psychologists failed to do." And every letter I got back, I thoguht that was one step closer to finding out why Gacy buried those kids. But he was also a part of my life for seven months. He was my friends, my confidant, the subject of all my nightmares. But it's weird to know that he's gone.

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Serial Killer Clown: Ce cher Mr Gacy
The Last Victim
To teleftaio thyma tou Gacy
Drogi panie Gacy
Szanowny panie Gacy
Caro Sr. Gacy
制作年: 2010年
制作国: カナダ
公開日: 2010年2月19日 (アメリカ)
2010年5月11日 (カナダ)
imdb.com: imdb.com :: Dear Mr. Gacy
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
セット制作
衣装デザイン
特殊効果(Special Effects)
Makeup
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