映画|ゲスト|The Uninvited
韓国ホラー『箪笥』のハリウッドリメイク。エミリー・ブラウニング、エリザベス・バンクス、アリエル・ケベル、デヴィッド・ストラザーン。監督チャールズ・ガード、トーマス・ガード。2009年。
エミリー・ブラウニング演じるアナはおとなしくて思慮深い性格のティーンで、その姉、アレックスは妹とは対照的な活発アメリカンギャル。というキャラ設定からして『箪笥』とはかなりちがうが、ふたりが仲良しであるという点は同じ。また『箪笥』のほうで姉の役どころだったのが、こっちでは妹になった。
ふたりの家は湖畔にあるきれいなお屋敷で、パパママがいる。ママは病気で、離れのボートハウスに住んでいる。映画はこのボートハウスが爆発炎上し、病気ママが死亡するところから始まる。事件を目撃したアナはショックで入院。前後の記憶が消えてしまったが、ようやくきもちが落ち着いてきて、医者は退院してよいといった。アナはワーイと喜んで家に帰る。ホームスィートホーム。
優しいパパと仲良し姉が待っててほっとあんしんと思ったら、イヤなヤツがひとりいた。レイチェルは元々病気ママのめんどうを見ていた看護師だったが、いまじゃパパの恋人で、家族ヅラをして家に住みついている。ママが死んだショックで入院しているあいだに父が新恋人をつくり、それが我がもの顔で家にいて「おかえりなさーい」なんて迎えられたら、腹が立つのは当たり前だ。その夜、アナは死んだママのオバケを見た。レイチェルのことを警告しているのかな。
アナは姉アレックスとパパの新恋人について話し合う。ふたりはこのオンナがだいきらいだが、パパはデレデレである。再婚するといいだすのも時間の問題か。アナたちは「そんなのイヤー!」と拒否するのであり、なんとしてもレイチェルが悪女であるという証拠を見つけてパパの目を覚まさせなくては!
アナとアレックスは仲良し姉妹の連携プレーでレイチェルのことを調べ始める。持ち物を調べたり、彼女を派遣した会社に電話してみたり。したらば、○○とか、××とか、じつにまったく疑わしい点がゴロゴロでてきて、これはやっぱり正真正銘の悪女ではないか!という確信を持つ。
姉妹がレイチェルのことを疑い、その裏側を調べるきっかけになるのがマットというアンちゃんがいった言葉であり、彼はアナのデート相手である。これは『箪笥』にはなかった筋書きだが、物語をよりわかりやすく見せるという点において、上手に取り入れられている。詳しくは映画でどうぞ。
さて、姉妹はレイチェル追い出し作戦をやるんだが、こういうのはいろいろとたいへんだ。なにしろパパは悪女にデレデレで、彼女のいうことならなんでも聞く状態になっちゃってるのだ。それにアナは精神病院から出てきたばかりなので、ここで感情に身を任せてヒステリックにわめいたりしたら、病院に戻されるのがオチである。レイチェルはアナ姉妹よりもずっと大人で、悪事に長けているようであり「わたしを追いだすなんてムリムリ、オッホッホー」なんて余裕の表情である。憎たらしィ!
ラストでは意外な事実が明かされ、アッと驚くtwistまで一直線!
※感想
オリジナル版の『箪笥』は陰気でよくわかんない映画であった。よくわかんないていうのは、韓国の文化的な背景を私が知らないせいなのかなという気がした。英語の字幕で見ているからきちんと制作者の意図が伝わらない部分があるのかもな。なんかしらんけど陰気な映画だったな。という感想だったです。
んでコレですが、さいきんのアジアンホラーリメイクはじつにアレなので、これもどうせハズすんだよなという湯加減で見始めたんだけど、予想に反してなかなかよかった!ホラーというより、オカルト描写がチョロッと出てくるサイコサスペンスに生まれ変わった。
『箪笥』の脚本に通底する骨子はそのままに再構築されたadaptionは、オリジナル版『箪笥』よりもずっとわかりやすいお話になった。夢だか現実だかわかんない難解なラストに悩まなくてすむ。姉妹と父、義母という主要キャラはもちろん出てくるけれど、そのムードはかなり変わっている。
姉の役柄が妹に、妹の役柄が姉になったというのは細かな違いだけれど(映画の中ではどっちが年上かわからなかったが、DVDのメイキングを見てわかった。16歳と17歳という設定だそうです)、ふたりのムードはガラリと変わり、ママが死ぬところは別の筋書きになり(だから『箪笥』ではない)、新しい脇役のみなさんが編み出され、新しいシーンが盛り込まれた。それでいて、オリジナル版のコンセプトは明確に受け継がれている。
主演のエミリー・ブラウニングは気弱さと思慮深さが同居する演技がよかったし、またエリザベス・ハンクスの悪女演技もよかった。
もしあなたが『箪笥』を見ていないのならラッキー。これはリメイクなんだという点は忘れて、ひとつの新作サスペンスとして見れば楽しいのではないか。私自身は『箪笥』を見たので、あのtwistを知ってるもんだから楽しみは半減してしまったが、それでもまぁかなりちがう部分があったのでおもしろく見れた。さいきんのハリウッドアジアホラーリメイクの中ではいちばんよかったなとおもった。
ヘザー・ドークセンがおいしい役どころだったかも。冒頭とラストにチラと出てくるだけの脇役なんだけど、彼女がなんちゅうかひとつのシメどころなのですね。台詞は少ないけれどいい演技だった。
以下おもしろかったquotes。
退院したてのアナがマットに再会し「心配したぜ〜」と笑顔で迎えられて答える台詞。
You should have slit your wrists, too. We could've been roommates.
あなたも手首を切ればよかったのに。そうすりゃわたしのルームメイトになれたのよ、うふ。
アレックスが悪女レイチェルのことを調べるために電話で問い合わせるところ。
Summers. S, U, M, M, yeah, as in mother, E, R, S, as in Satan.
彼女のファミリーネームはSummers。そうそう、MはmotherのMで、SはSatanのSです。ウヒ。
悪女レイチェルがアナに注射するところ。
Don't be afraid, I'm a nurse.
こわがらないで。わたしはナースなのヨ。イッヒッヒー。
映画のラストでアナが医者にいう台詞。ナニをfinishしたんでしょうか。
I finished what I started.
SPOILER ALERT!!!!!
ネタバレ!
アナとアレックスはパパの新恋人レイチェルについてアレコレ話し合う。なんてイヤな女だ!とわーわーやってるところに、新キャラのマットくんが登場。彼はアナのデート相手で、ママが爆死した直前までアナといっしょにいた人物であり、いまは配達のバイトをやってるんで、アナの家にきたってわけです。彼は久しぶりにアナに会えてうれしそうだったが、気になることをいった。ヒソヒソ声で「おれ、あのときぜんぶ見たよ」と囁いたのだ。
アナはびくんとした。彼女は事故前後の記憶をなくしているのだ。彼はいったいナニを見たのだろうか。マットの口調からしてなにやら秘密めいたかんじである。アナはその先を聞きたがったが、そこにレイチェルが現れ「マットちゃん、ごくろうさま!またねーーー」と割り込んだので話を聞けなかった。
アレックスとアナはふたりだけで話し合う。マットはなにを見たのだろう。想像にオヒレがついて、ふたりが次のような仮説を立てるのは時間の問題であった。「もしかしてあれは事故でなく、レイチェルがママを殺したのかも。それをマットが見たのかも」という憶測を述べ合うのであった。
なんとしてもマットから話を聞かねばと思ったアナは、買い物に行くというレイチェルにくっついて町にいった。彼女の目を盗んでマットを捕まえ、その夜に家に近所で会うと約束。やった!と思ったら、マットはその夜に事故死した。彼が海で死んだころ、アナの寝室にマットのオバケがきていた。
マットは事故死と判定されたが、アナ姉妹はますます疑いを持つのであり「レイチェルが殺したのかも」とおもった。レイチェルの持ち物を盗んでアレコレ電話して身許を調査したらば、その名前が偽名ではないかという疑いが浮上。ナヌー。
ついに尻尾を掴んだぜと確信したアナはレイチェル本人に疑問をぶつけてみた。「あなたのソーシャルセキュリティ番号の持ち主は確かにレイチェル・サマーズだが、彼女はニューオーリーンズの教師で、5年前に死んでいる。おまえはだれだ」といってやったら、相手は不敵な悪女スマイルで「わたしを追い出すなんてムリムリ!」と怒り「もういちど病院に戻ったほうがよさそうね、オッホッホー」なんていうから腹が立つ!レイチェルは仮面は脱ぎ捨てて悪女キャラ全開。
さすがにわるもんはてごわいな。うまくやらないと負けそうである。対する姉妹は世間知らずのティーンネージャーだからタジタジ押され気味。
その夜、レイチェル主催のホームパーティがあり、パパの仕事関係のみなさんが大勢やってきた。家内のギクシャクムードはひとまずおいといて、ニセ家族はニセ笑顔を浮かべてパーティは進行するが、台所でオバケが見たアナがひええとわめき、レイチェルと痴話ケンカをして、ムードは悪くなる。遅い時間、アナは勇気をだしてパパと話してみたが、まるきり信じてもらえず「レイチェルと結婚する」といわれて絶望する。
翌朝。パパは仕事の用事で出ていった。残った女たちは死んだマットの葬式にいく。パパがいないときのレイチェルは開き直った態度で悪女オーラむんむんであり「はやく着替えなさいよ。わたしらが仲良しの家族に見えるようにしてよねー」なんていう。
葬式のさいちゅう、アナは3人の子供のオバケを見る。この子供たちはこれまでに何度もアナの前に現れる謎のオバケチームだったのだが、アナはその意味がやっとわかる。オバケ子供はアナを森に案内した。そこにあったのはライトというファミリーのお墓だった。
アナはその名前を調べて10年前の事件を知った。林の中で3人の子供の死体が発見された。子供たちはヤクで眠らされたあとにナイフで刺殺された。犯人は子供たちのベビーシッターをしていたミルドレッド・ケンプという女性。当時19歳。彼女は子供たちの父親とナニしてたそうである。警察は彼女を捕まえることができなかった。犯人逃亡で迷宮入り。
子供が邪魔になったから殺したのかな。アナたちのパターンと似ているではないか!と思ったら、殺人者ケンプの写真が出てきた。写真に映っているパールのネックレスはレイチェルが大事にしているものとそっくりだった。レイチェルは、以前、それを自慢げに見せ「昔の患者さんからもらった」と述べていた。ひええ。さらにレイチェルの持ち物の中にトランキライザーらしきものがあったという点も合致する。
姉妹はおののく。悪女どころか殺人者だったのか!もはや一刻の猶予も許されない!
姉妹のナイショ話はレイチェルに立ち聞きされてしまった。彼女は注射器を持ってアナを追いかけ回す。アナ、逃げる。格闘。アナは必死で相手からパールのネックレスを奪い、その場から逃げたが、アレックスは注射を射たれて動けない。このままではヤラレちゃうよ〜。
アレックスは「助けを呼んできて」と頼む。アナはひとりで窓から脱出し、ポリスにいちもくさん。出てきたシェリフはアナの過去を知る優しいオッサンで、アナの話を聞いてくれた。「わしはレイチェルを捕まえてくるから、きみはここにおれ」といって出ていった。アナは「アレックスをはやく助けてください」とお願いした。シェリフは「だれも死なないからだいじょうぶ」と答えた。
心配げに待っていたら、レイチェルがシェリフといっしょに戻ってきた。手には注射器。うまいことシェリフをいいくるめて「あの娘は狂ってるのよ」とかなんとかいったんだな。アナはコテンと眠らされてしまう。
目が覚めたら、家のベッドで寝ていた。床に血のあとを発見。たどっていったら、外のゴミ箱でレイチェルの惨殺死体を見つけておののく。そこにアレックスが血塗れで現れ「こうするしかなかったのだ」と述べる。手にはナイフ。
姉妹は抱き合って泣く。そこにパパが帰ってくる。血塗れの娘を見ておののく。ナニゴトか!といったら「アレックスがレイチェルを殺した」と聞いた父はがっくし落胆し、「アレックスはもういないだろ」と答えた。アナはがびーーーーーん。
てわけで、『箪笥』を見た方ならご存知の通り、アレックスはアナの脳内産物なのだった。アレックスは母の事故に巻き込まれて既に死んでいたのだと明かされる。
ここでやっとアナの記憶が鮮明に蘇る。
あの夜。アナはパパとレイチェルがナニしているところを目撃して瞬間沸騰した。ボートハウスでは病気ママが寝ているんだから怒るのは当たり前だ。怒りに駆られたアナは「ぜんぶ燃やしてやる」と決め、母がいるボートハウスの隣にある倉庫から灯油を汲んできた。それを家の中に撒く予定だったが、興奮アナがバルブをちゃんと閉じなかったせいで、ママに近いところで引火してしまった。ドッカーン。たまたまそこにいたアレックスも巻き込まれてママといっしょに爆死した。というのが真相なのだった。
マットが「ぜんぶ見たぜ」と囁いたのはこのことだったのであり、多重人格化したアナは発覚を怖れてマットを殺したのである。という点をやっとこさ、ぜんぶ思いだした。
アナはサイコ病院に逆戻り。
てな具合に謎が明かされたが、レイチェルはママの死とは無関係であるとわかったが、映画を観ている私たちにはそれでもなお疑問が残る。なぜレイチェルは偽名を使っていたのだろう。彼女は本当に悪女ではなかったのだろうか。
パパが最後にシェリフに答えた台詞によれば「しつこいストーカー男から逃れるために名前を変えたと聞いた」そうである。なーんだ。子供を殺したベビーシッター、ミルドレッド・ケンプは無関係だったのか。あの悪女顔を見てるといいひとだったかどうかは疑問だが、シリアルキラーではなかったみたい。
ラスト。
アナが病室にいる。ファミリーの写真をいぢくりまわし、その中に映っているレイチェルの顔を削り取っている。医者がようすを見にくる。「調子どう?」と聞かれたアナはこう答える。
I finished what I started.
医者は考え込み、複雑顔で去る。その入れ替わりに入院患者のキチガイ女が話しかけてくる。コイツは映画の冒頭でもチラと出てきて「あんたがでていっちゃたら、アタシ、つまんなーい」というような台詞を述べていたが、最後でもチラと出てきて、キチガイらしい台詞をいう。にたーりと笑って「ホーレ、見てみ。やっぱりあんたは戻ってきたじゃんか。イッヒッヒ」なんつって自分のドアをバタンと閉じる。
キチガイ女のドアの名札は『ミルドレッド・ケンプ』であった。彼女はパールのネックレスを持っていた。アナはそれを見てにっこりする。
おしまい〜。
※DVDには、別エンディングが入っている。それを見たら、冒頭とラストだけに出てくるキチガイ女の扱いについて、制作者はずいぶん考えたのだろうなとおもった。
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『ゲスト』 | |
2009年 | |
アメリカ/カナダ/ドイツ | |
2009年1月30日 (カナダ) 2009年1月30日 (アメリカ) 2009年3月26日 (オーストラリア) 2009年4月9日 (韓国) 2009年4月24日 (イギリス) 2009年4月28日 (アメリカ) (DVD) 2009年4月30日 (ロシア) 2009年5月28日 (ドイツ) 2009年5月29日 (イタリア) 2009年5月29日 (スペイン) 2009年6月10日 (フランス) 2010年1月8日 (日本) (DVD) | |
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