2008/2/29 (Fri) at 8:04 pm

映画|アイズ|The Eye

タイのホラー映画『アイ/The Eye』のハリウッド版リメイク。主演ジェシカ・アルバ。監督ダヴィド・モローザヴィエ・パリュ。2008年。

アイズ / The Eye DVDDVD画像

5歳で失明したヴァイオリニスト女性のシドニーは、角膜移植の手術をして視力を取り戻した。手術は成功したが、見えたら困るものまで見えるようになった。それはオバケ。少年のオバケが出てきて質問されたり、交通事故で死んだ人が死神に連れていかれるところを目撃してびっくりした。さらに、身の回りで火事が起こって自分が丸焼けになるという恐怖の幻視を見るようになった。

※感想

オキサイド・パン&ダニー・パン監督の『Gin gwai (The Eye)|アイ』のプロットとほぼ同じだが、ハリウッド版らしく全体的に明るい雰囲気につくりかえられている。私はオリジナル版のほうが好きだな。映画の前半、オバケが見えるようになったシドニーの不安を描写するところまではおもしろかったが、後半は盛り下がった。オチを知ってるから余計にそう感じられたのかもしれないけど。

ずっと全盲だったひとがある日を境に『見えるようになる』というのは大きな喜びであると同時に、想像を絶する不安だろうなと思う。感覚器官がひとつ増えるわけですよ。こりゃすごいことだ。とつぜんの変化に脳のほうが耐えきれなくて、ありえないものが見えてしまったり、人格が破壊されるなんてこわいことだ。シドニーはさいしょのうちボヤーとして見えなかったので不安に思う。医者に聞いてみた。「どれくらい経てばもっとクリアに見えるようになりますか?」と質問したら「数日間か数週間か。でもそれは重要じゃない。注意すべきは君の脳がスムーズにそれを受け入れるかどうかだ。だからセラピストを紹介する」みたいなことをいっていた。

そんな不安いっぱいのところにもってきて、オバケが見えたり炎で焼かれる幻視が出てきたらたまらなくこわいだろう。ここらへんの心理描写は前作においても上手に表現されていたが、ジェシカ・アルバ演じるシドニーもなかなかのもんだった。でもその後、謎が明かされていって、仰天ラストにつながる後半部分は前作のほうがずっとおもしろくてスーパードライである。余韻のあるラストもオリジナル版のほうが私は好き。

前作と同じくヴァイオリニストという設定だが、前作では障害のあるひとたちだけのアマチュアオーケストラの一員だった。オリジナル版では「君はもう障害者じゃないから」といってオーケストラに入れてもらえなくなっちゃったんですよね。それがすごくかわいそうだったが、リメイク版ではそんな悲しいシーンはナシ。ザッツ・ハリウッドだから。以下ネタバレ。

Spoiler Alert !!!!
ネタバレ注意!!
ネタバレオッケーな方のみこの下をスクロールしてご覧下さい↓

「オバケが見える」とセラピストに訴えたが、信じてもらえなかった。が、彼女は病院で出会ったガン少年といっしょに撮ったスナップ写真の自分の顔を見て仰天した。自分が鏡で見ている顔と別人だったからである。「これは幻視などではない。角膜ドナーの過去に秘密がある」と確信する。生体移植のドナーの身元を明かすことは法律で厳しく禁じられているが「どうしても知りたい!」っていうんで、セラピストが一肌脱いで助けてくれることになった。

シドニーに角膜を与えた女性の過去が明かされる。それは魔女扱いされていぢめられて死んだかわいそうなメキシコ女性なのだった。彼女は生まれつき死神を見ることができたので、村の中でだれが死ぬかを予知することができた。死が近づくひとの家の前で彼女が泣いているところをみんなは見た。彼女が泣くとその家の人間が死ぬっていうんで、魔女と呼ばれていぢめられた。かわいそ。ある日、村で大火事が起こってたくさんのひとが死んだのだが、そのときも「逃げろ!」とみんなに警告したんだが、だれも信じなかった。たくさんの死体を前にボーゼンとしてたら「おまえが殺した!」とワーワーいわれて、彼女は悲しく首吊り自殺をしたのであった。シドニーが目撃した炎の幻視はコレだったのである。

ちなみに、オリジナル版も似たようなあらすじだが、演出がかなり違う。リメイク版では、シドニーに打ち明け話をしていたドナー女性の母親は途中で倒れてそのまま病院で死亡。ひとりになったシドニーがドナー女性のオバケと出会うという流れであった。が、オリジナル版ではこの母は死なない。「わたしは娘を許さない!必死で守ったのにわたしより先に死んだ!娘は負けたんだ!」と恨み言をいう母は絶望的に痛々しい。その母親が夜になって出現した娘のオバケと仲直りするという感動シーンがあったのだ。この村ちゅうのがものすごく貧しくて陰気なところであり、幼い女の子が村人たちに悪魔呼ばわりされて、それを母が必死で守るという回想シーンに多くの時間が割かれたが、リメイク版では悲惨さは薄められている。ハリウッドは陰気なのがきらいなんだな。

衝撃のラスト。

長いドライブを経てアメリカに帰ってきたシドニーとセラピストは渋滞に巻き込まれる。人々はブーブーいいながら道が空くのを待っているが、ここでシドニーはおびただしい数の死神を目撃。そこに停車していた巨大なタンクローリーが爆発してみんな死ぬのだと知った。彼女は大急ぎでみんなに警告した。人々はテロだと思って大急ぎで避難した。キチガイドライバーが突っ込んで大爆発炎上。人々はギリギリ助かった。このときシドニーのめんたまにガラスの破片が直撃。彼女は再び視力を失った。ラストはヴァイオリンを弾くシドニーの勇気あふれる映像でおしまい〜。

というのがリメイク版のラストだが、前作ではぜんぜん違う。似てるけど違う。死神の姿を目撃した主人公女性は大急ぎでみんなに警告するが、だれも信じない。必死で逃げろといったが、返ってきたのは冷笑のみ。「へんなひとだ」とセセラ笑われた。そのありさまは魔女だといぢめられたドナー女性と同じである。結局、その場に居た者たちは爆死した。主人公女性は運良く生き延びたが、人々の焼死体を見ることはなかった。爆風のかけらがめんたまを直撃して再び視力を失ったから。似てるけどだいぶちがうよね。

最初と最後のナレーションを比較すると、両者のちがいがよくわかるような気がする。私はアンジェリカ・リーの "Things I'll never forget." のほうが好きだ。オリジナルの言語はタイ語なのでこれは翻訳ですが。

ジェシカ・アルバが演じたリメイク版のナレーション↓

(opening)
People say, seeing is believing. But for me that's not entirely true. I lost my sight when I was 5 years old. Those memories of what I have seen so much that I doubted even recognise myself anymore. Now I see using my other senses. I can smell the rain before it drops. But I can not watch it fall I can feel the sun on my face. But I can not see a rise or set. I want to see the world like everyone else. To see the sun, rain and music. I bet that the music looks beautiful.

(ending)
Some say, seeing is believing. Now I know what they mean. Ana Christina tried to prevent death. But she was ultimately powerless to stop it. Ana and I sure both have a blessing and a curse. I know, now, I don't need eyes to see what truly matters. The gift of Ana's sight lead me. See what I was afraid to. To use that vision, to not only save myself and others... but to give Ana the peace she never found in life.

アンジェリカ・リーが演じたオリジナル版のナレーション↓

(opening)
Some people say this world is ugly yet it is beautiful at the same time. I don't know if they are right, but I'm about to see the world with fresh eyes.

(ending)
Ever since that day, Ling never appears again. I hold no resentment towards her... Since I saw and experienced the same pain that she did. But aside from pain I saw beauty. I no longer question why am I blind. It is becasue I've already seen the most beautiful things in this world. Things I'll never forget.

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The Eye
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Ha'ayin
Eyes
O Olho
Глаз
Göz
邦題(カタカナ): 『アイズ』
制作年: 2008年
制作国: アメリカ/カナダ
公開日: 2008年1月31日 (アメリカ) (Hollywood, California premiere)
2008年2月1日 (カナダ)
2008年2月1日 (アメリカ)
2008年2月21日 (ロシア)
2008年3月6日 (香港)
2008年3月13日 (オーストラリア)
2008年3月14日 (スペイン)
2008年4月4日 (イタリア)
2008年4月9日 (フランス)
2008年4月24日 (イギリス)
2008年5月29日 (ドイツ)
2008年6月5日 (韓国)
2008年11月1日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: The Eye
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出演
プロデュース
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