2008/2/19 (Tue) at 3:59 pm

映画|アウェイク|Awake

手術の際、全身麻酔がまったく効かないという珍症例がある。患者は全身がマヒし、声も出せずにヘビーな恐怖を体験する。ヘイデン・クリステンセンジェシカ・アルバレナ・オリン他。監督ジョビー・ハロルド。2007年。

アウェイク / Awake DVDDVD画像

映画の冒頭にて『Anesthesia Awareness / アネセシア・アウェアネス』という珍しい症例について説明される。それは全身麻酔がまったく効かない症例である。患者は覚醒しており明瞭に意識があるが、肉体を動かすことができない。声を出せないし、手を上げられないし、眉毛を動かすこともできない。想像するだけで恐ろしいな。

クレイはNYの大財閥の跡取り息子。若くてハンサムな億万長者である。そんな彼がきれいで優しいメイドに恋をした。美男美女のカップル。大金持ちのハンサム息子とくれば、決まって登場するのが口やかましい母親である。会社の実権を握り、息子を溺愛する母親。彼女が結婚を認めてくれる可能性はゼロなのでクレイは心が重い。それだけが悩み。

ところでクレイは心臓疾患を抱えている。見ためは健康そうに見えるが、極度に昂奮するとウグッとうずくまったりする。優しい恋人がいつも傍らにいて薬を渡して介抱する。クレイはいずれ心臓の移植手術を受けることになっている。主治医は親友でもある。この医師は温かい人柄の人物で、いつも話し相手になってくれる。「手術の前に彼女と結婚しろ。ママはおまえを愛してるんだから心配ない」と人生のアドバイスをくれた。クレイは母の反対を押し切って結婚した。大奥ママはぶっちんと静脈が切れかけたが、いずれ時間が解決してくれるであろう。

なーんてありがちなホームドラマである。なんかつまんねーの。トルティーヤをバリバリ食いながら金持ち美男美女のラブラブぶりを鑑賞する人生なんていやー!と落ち込んでくるが、その先はおもしろいぞ!

手術の日がきた。クレイは気合いを入れて挑む。母親は「おまえのためだから」といって金持ち御用達の天才医者を連れてきたが、クレイはここでもがんばって母を説得した。「ぼくは自分の医者を信頼している。彼は親友なんだ」と説き伏せた。クレイの主治医というのは、じつは、医療過誤の訴訟を4件起こされたという過去がある。こりゃ大きな不安要因だが、医師はそのことを聞かれて「患者を救おうとしただけである」とクレイに説明し、彼はその言葉を信じた。

医者にすべてを任せていればいい。目が覚めたらぜんぶ終わっている。のはずだったのにこの先エラいことが起こる。映画の冒頭で説明されたAnesthesia Awareness。「麻酔は?」「赤ちゃんみたいにスヤスヤ寝てるヨ」という医者たちの会話はクレイの耳にぜんぶ聞こえている。クレイはこりゃへんだと思った。ちょちょちょと待ってくださいヨと焦るが、医者たちは異変に気づかない。胸に冷たい液体をベタリと塗られて、メスが入る瞬間、クレイはウギャーと悲鳴をあげた。ありったけの心の悲鳴。その声はだれにも届かない。完全マヒして目も開けられない。100%悪夢の苦痛拷問タイムのはじまりはじまり。こりゃ長い手術になりそうである。

Ah! It's just pain.
It doesn't fucking hurt!

※感想

ヘイデン・クリステンセンジェシカ・アルバという美男美女カップルっていうのは、いま最もノリノリのキャスティングではないか。そして、ふたりのあいだで大きな役割を果たすクレイの母役のレナ・オリンは『エイリアス』のシドニーママである。どこからともなく現れてシドニーを助ける、かと思ったらいぢわるをして去っていく謎の美女ママ。黒のぴったり衣装で銃をばんばん。かっこよかったなー。この映画の彼女の役割はとてもすごい。「キャスティングのわりにはつまらなかったな」という映画が多いので期待ゼロだったが、それがかえってよかったみたい。おもしろかったわ。ほんと!あーおもしろかった。

Spoiler Alert !!!!
ネタバレ注意!!
ネタバレオッケーな方のみこの下をスクロールしてご覧下さい↓

映画の冒頭で説明されたAnesthesia Awareness、すなわち全身麻酔がまったく効かない状態にクレイは陥った。孤立無縁である。その次のtwistがおもしろい。彼は自分の肉体を切られる苦痛に耐えていたが、やがて医師たちの会話から、自分がハメられたと知る。な、な、なんと親友と信じていた温厚な医者はじつはわるもんで、助手2名もグルであり、さらに愛するヨメも悪女であったと明かされる。ナヌー!

彼らの目当てはクレイの財産である。彼が死んだら新ヨメは相当の財産を相続するだろう。それを狙った大掛かりな詐欺チームの陰謀なのだった。だから医者は「手術の前に結婚しろ」と勧めたのだ。クレイは医者たちの会話からハメられたと知ったが、身体がマヒしちゃって動かない。反撃できるチャンスはゼロである。くそォ!悔しィ!

心臓移植の手術は適合性の問題から失敗することもある。ゆえに医者にとって、患者を故意に殺すことは簡単だ。わるもん詐欺チームの描いた筋書き通りにクレイは死亡。親友医者は涙目で「手は尽くしたのですが」と演技した。悪女ヨメはひぃいいいと泣き崩れる演技をした。完全犯罪である。やったぜベイビー。と思ったら、次の展開が!

息子の死を知らされた母親は大きく落胆し、もはや怒る気力もなく、その落ち込みようはすさまじく、彼女はピルをガバガバ飲んで自殺した。あーあー。かわいそうにな。とみんなは思った。うるさいババァだったけどこうなっちゃうとかわいそうだなと私も思った。詐欺チームの連中は「おー、これでますます分け前が増えるぞ、うしし」と喜んだ。

だが、この母親は大したもんである。これは彼女の死を賭けたウルトラCだったのだ。愛する息子が急死という非常事態に、彼女はじつは新ヨメがわるもんだと見抜いていた。でも見抜いたときにはもう遅くてクレイは死んじゃった。そこで彼女は大急ぎで自分の命を投げ出した。息子に自分の心臓を与えるためである。

ここで母親が推薦した天才医者が再登場。彼はすぐに事態を把握し、テキパキと指示を与えた。プロフェッショナルである。彼は最初出てきたときにはいかにもイヤミなかんじで「おれは金持ちしか診ないよ」みたいだったが、こうなるとヒーローに見えるな。人間の印象って簡単に変わるものだな。

天才医者は大急ぎで母親の死体を手術室に運び、死んだばかりのクレイを診て「ワザと殺したな」と見抜いた。「ここから先はおれがやるからよい。ポリスを呼んだからおまえらは逃げたほうがいいぞ」と詐欺チームを追いだした。この早ワザのおかげでクレイは生還。母の心臓をもらって生き返った。わるもん一味は逮捕。ヨメも逮捕。というスカッとしたラストになりました。これはおもしろかったな!

※感想

Anesthesia Awarenessというのがいちばん最初に明かされるのでソレ自体は驚かないが、その後の展開がおもしろかった。良い人キャラだったのがじつはわるもんだったと明かされていく流れがとても意外であった。かなりおもしろかったと思うが、以下の2点のみちょっぴりマイナス(私の個人的な好みの問題だと思いますが)。

Anesthesia Awarenessていうのをどんな手法で映像表現するのだろうという点に期待して見たのだが、幽体離脱みたいなやり方を取り入れていた。あれは平凡である。

母と息子の結びつきを強調する小道具として父の死の秘密が明かされるというサブストーリィがあったが、あれは要らないと思った。

でもおもしろかった。

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原題: Awake
別題: Bajo anestesia
Éberség
Acordado
Anestezi
Awake - A Vida Por Um Fio
Awake - Anestesia cosciente
Conscient
Consciente
Despierto
Przebudzenie
Siopilos efialtis
邦題(カタカナ): 『アウェイク』
制作年: 2007年
制作国: アメリカ
公開日: 2007年11月30日 (アメリカ)
2008年1月10日 (ロシア)
2008年3月27日 (韓国)
2008年3月28日 (スペイン)
2008年4月4日 (イギリス)
2008年10月16日 (香港)
2008年11月14日 (イタリア)
2008年12月12日 (ドイツ) (DVD)
2009年1月6日 (フランス) (DVD)
2011年5月21日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Awake
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
音楽
シネマトグラフィ
編集
キャスティング
プロダクション・デザイン
アートディレクション
セット制作
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞
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    「アウェイク」★★★☆WOWOW鑑賞ヘイデン・クリステンセン、ジェシカ・アルバ、レナ・オリン、テレンス・ハワード、クリストファー・マクドナルド出演ジョビー・ハロルド監督、85分、2011年5月21日公開2007,アメリカ,ショウゲート(原題/原作:AWAKE )

    2012/5/22, 7:48 AM

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