2009/6/19 (Fri) at 7:39 am

映画|ドニー・ダーコ2|S. Darko

『ドニー・ダーコ』から7年後の世界。妹サマンサは兄の軌跡を追体験する。デイヴィー・チェイスブリアナ・エヴィガンジェームズ・ラファティ。監督クリス・フィッシャー。2009年。

ドニー・ダーコ2 / S. Darko DVDDVD画像

ふたりのティーンネイジャー、サマンサとコリーはヴァージニアを脱出し、LAに向けて旅に出る。サマンサはドニーの妹でいまは18歳。前作と同じくデイヴィー・チェイスが演じています。カワイコちゃんになりました!

旅の途中でクルマが壊れ、ふたりはConejo Springsていう小さな町に足止めされる。サマンサとコリーは仲良しだがその性格はかなり異なっているようだ。貧乏旅行で大事なクルマが壊れてモーテル代もナイ!というピンチだが、コリーは「しょうがねーヨ」とケラケラ笑ってすぐに地元のアンちゃんと仲良くなり、誘われてホイホイついていく。一方、サマンサはみんなと交わろうとせず、陰気顔でムスッとしている。

映画を観ている私たちとしては「アレからドニー家はどうなったのか?」という点に注目するわけだが、サマンサの口ぶりからするとどうやらそれは辛い日々だったらしい。ドニーが死んですべてが変わってしまい、家族の幸せは失われ、18歳のサマンサはヴァージニア脱出を決意したってことらしい。彼女の陰気顔はそれが起因していると思われる。

町にはイラク・ジャックと呼ばれるイラク帰りの元兵士がいる。彼は孤独であり、ノラ犬のような暮らしをしている。この町では子供の行方不明事件が頻発しており、町の人々はそれがイラク・ジャックの仕業ではないかと疑い、彼を怖がっている。

夜。サマンサたちが泊まるモーテルの窓からオンボロな風車塔が見えるんだが、イラクジャックがそこに登って足をぶらんぶらんさせている。遠くを眺めてポケーとしているところに隕石が落下する。彼は死亡。するはずだったんだけど、これを救ったのがサマンサであった。

サマンサはかつての兄がそうだったように夢遊病みたくフラフラ外に出てきて、イラクジャックにお告げをする。「4日17時間26分31秒後に世界はおしまい」と教え、彼を導く。イラクジャックはあのときのドニーのように救われる。このときのサマンサは顔から流血し、オバケのような外観である。それはちょうどバニーちゃん仮装をやっていたフランクのよう。

てわけで、こんどはサマンサがManipulated Deadとなり、イラクジャックがLiving Receiverとなる。その目的はもちろんTangent Universeを閉じることにある。

S. Darko trailer #1
S. Darko
S. Darko trailer #2
S. Darko
S. Darko trailer #3
S. Darko

※感想

前作『ドニー・ダーコ』を見ていないとぜんぜんわからないと思います。前作で出てきたスパローの本『The Philosophy of Time Travel』が教えるセオリに従えばサマンサの役どころが想像つきますが、前作と違うのはManipulated Deadであるはずのサマンサが生きているってことで、なんでそうなってるかというと、彼女はもうひとつのTangent Universeで死んでるから?つまりこの映画ではTangent Universeが2つ存在するってこと?ややこしー。

てわけで、『ドニー・ダーコ』リチャード・ケリーが考えた独自理論を元に構築されたお話です。感想は ... 微妙。『ドニー・ダーコ』がなぜあんなにカルト的な人気を博したかといえば、出てくるキャラがおもしろくて思わず感情移入してしまったからだと思うのですね。ドニーもよかったし、それを支える脇役のみなさんもそれぞれ味わいがあった。自分の身に回りにいるだれかにイメージをかぶせて遊ぶという楽しみがあり、そこには人生があった。だからこそ、難解な謎解きにチャレンジする価値があったと思うんですが、この続編においては、サマンサさえ含めて魅力的なキャラがいない。散発的におもしろいラインはあったけど、全体を支えるシンフォニーがない。世の中どんどん新作映画が出てくるわけで、これだけを特別扱いして2度も3度も見る気にはならないよな。と思いました。

私がいちばんガッカリしたのは、ダーコ家のみなさんがドニー死亡の悲しみを乗り越えられなかったという点です。ドニーがあんな自己犠牲をしてみんなを守ったのに!それが7年後にこうなってしまうなんて夢がないなー。サマンサのユニコーン話がオマージュとして出てきますが↓

There once was a unicorn named Ariel. Ariel was the most beautiful unicorn in the world.Ariel was discovered by a prince named Justin and the prince was led into a world of strange and beautiful magic. Nobody could see how beautiful she was because she was invisible, invisible to everyone except Justin.

コレがカラ回りしているではないか!アニキが天国で泣いているぞ!

加えて、明らかな(と私には思える)plot holeがあったという点もあります。サマンサがなぜ『The Philosophy of Time Travel』を持ってるのかについて説明がない。また、彼女が子供時代の思い出、Sparkle Emotionのダンスを思いだすというシーンがあったけれど、あれはTangent Universeで起こった出来事ではないか、Primary Universeでも同じ体験をしたのかもしれないが、ドニーのジタバタによって宇宙の事象は変容していると考えるとまったく同じというのは不自然な気がする。他にも矛盾点があったかもしれないけど、私はこの2点が一番気になりました。

つまんないってことはないが、典型的な劣化続編てことですね。immaculateとはいえないな。と思ったら、Part3の制作も検討されているようです。んー。リチャード・ケリーがちゃんとつくってくれるんなら見てみたいですね(本人はsequelの可能性を否定してましたが)。もしそうなるなら、このパート2はなかったことにしたほうがいいんじゃ?

ネタバレは ... どうしようかな、書く気にならないなー。ものすごく簡単にいっちゃうと次のようになります。

SPOILER ALERT!!!!
以下ネタバレ!

サマンサはコリーとケンカした直後にクルマに轢かれて死亡する。このときとつぜん出現した黒クルマはレッカー移動される途中のサマンサたちが乗ってきたヤツである。つまりこのクルマは『ジェットエンジン』的なもの。友達の死に深く悲しむコリーは、サマンサの遺品の中に『The Philosophy of Time Travel』を見つけてLiving Receiverになる。そこに行方不明になってた気の毒子供ビリーのオバケが出てきてコリーを導く。オバケ子供はManipulated Death。コリーがTangent Universeを閉じることに成功すると、時間がグルリと戻ってサマンサは生き返るが、コリーは死亡する。

もうひとつのTangent Universeでの出来事。落下隕石で死亡するはずだったイラクジャックはManipulated Deathであるサマンサに導かれ、Tangent Universeを閉じるためにジタバタを始める。この過程で、イラクジャックはスパロー老女の孫だったと明かされ、また、サマンサは行方不明子供の死体を発見する。時間が戻る。サマンサたちが町に来た直後のあたり。どーんと隕石が落ちてきて、イラクジャックはドニーと同じパターンで死亡。この嫌われ男が世界を救ったなんてだれも知らない。人々は隕石落下の現場をボーゼンと見る。

※Tangent Universeの中にもうひとつのTangent Universeが存在するってことなのか、あるいは両者は平行して存在するのか、そこらへんがよくわかんなかったのですが、こういうかんじですかね。

ラストは切なくも清々しい終わり方をする。Primary Universeではサマンサとコリーは普通に生きてて、死んだのはイラクジャックのみ。隕石落下の現場を眺めたあと、サマンサは急にきもちが軽くなったようであり、ヴァージニアに帰って人生をやり直すのだと宣言する。一方、コリーはこの田舎町が気に入ったようであり、ふたりは切なくバイバイする。ところで、気の毒子供のビリーはこの時点で生きているが、だれもその所在を知らない。ビリーは監禁場所で死を待っている。

※ところで映画の中でちょくちょく出てきた謎の黒スーツ男たちですが、アレは前作で出てきた謎の赤ジャージデブ男の同類なんだろうなと思われ。

おしまいー。

※てのが私の解釈ですがどうすか。「この見方はちがっているぞ。ほんとうは○○は○○であって、この映画はすごくおもしろいのだよ」というようなご意見がありましたら、ぜひぜひご教授下さい。メール待ってます。左上のお問い合わせフォームからどうぞ。

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邦題(カタカナ): 『ドニー・ダーコ2』
制作年: 2009年
制作国: アメリカ
公開日: 2009年5月12日 (アメリカ) (DVD)
2009年7月3日 (イギリス) (limited)
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2010年6月2日 (フランス) (DVD)
2010年10月15日 (スペイン)
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imdb.com: imdb.com :: S. Darko
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