2007/9/23 (Sun) at 5:15 am

映画|NEXT -ネクスト-|Next

愛とペシミズムと2分後の未来。原作フィリップ・K・ディック。主演ニコラス・ケイジ。監督リー・タマホリ

NEXT -ネクスト- / Next DVDDVD画像

物語

クリスはべガスのマジシャンで、2分先の自分の未来を予見できるフォーチュンテラー。そんなスゴい能力を持ってるわりには幸せそうでないという点がディック的である。彼はその能力を使って愛する女性を見つけた。見つけたというより『見つける自分を見つけた』というべきか。クリスの未来はスカーッと一本道のハイウェイになってるのではなくて、とても複雑に入り組んだ迷路のようである。彼は2分後の自分を見据えながら慎重に行動していて、その目的は「愛する人と出会いたい」という一点のみであり、それさえ得られれば彼は満足なのに、その人生はいつまでたっても障害物レースである。そんな能力を持ってしまったばかりに政府関係者につけ回され、挙げ句にはそのようすを見張っていたテロ集団が出てきて「ヤツラが捕まえたがってるということは、あのマジシャンはおれらの敵であるにちがいない」なんて目をつけられ、スナイパーとMIBに追われる日々。テンポがとてもよく、アクションシーンも爽快です。

感想

クリスを捕まえたがっているFBIの女性捜査官はテロリストの核攻撃を防ぎたいという目的の元に行動しているので決して悪人ではないものの、彼女は捕まえたクリスをハイテク兵器のひとつであるかのように取り扱うという冷血な一面も持ち合わせている。「LA住人のためにおまえのフリーダムなど無視する」といわれる恐怖。「組織に自由を奪われる」という強迫観念は、実生活において政府から監視される恐怖を体験したディックの本質だろう。他方、やっぱりディックはディックなので「愛がなくっちゃ」という救済もある。だから私たちは救われる。厭世的でなおかつユーモアを忘れないからディックなのだ。

未来予知能力を持つべガスのマジシャンがMIBに追われて、それを追うテロリストに追われるという荒唐無稽な物語がとてもテンポよく進む。しょっちゅう時間軸がグニャグニャする。現在だと思っていたらば、それはじつは「もし〜だったら」の世界だったなんていう仮定ワールドが相乗的に攻めてくるので見てるうちにわからんようなわかったようなきぶんになる。細かい矛盾点はいっぱいありそうだけど、大局的にはわかりやすくて、アクション満載で、ニコラス・ケイジもイイ雰囲気であった。

よい台詞があったのでご紹介。クリスとリズ(クリスが愛する女性)が山道をドライブしてて、すごい雨降りになり、土砂崩れがあったんで2人は足止めされてしまう。初めて会ったその日に2人はモーテルに泊まることになったんだけど、ベッドはひとつしかない。クリスは相手を気遣うように「ぼくはクルマで寝るから心配しなくてよい」と安心させる。そのときにいう台詞がコレ↓

Chris: Hey, did you hear the joke about the zen master who ordered a hot dog?Liz: No.Chris: He said he would have one with everything.

といわれてリズはポカン顔となり、クリスだけがナットク顔でそのままクルマに行くんだが、これじゃ映画を見てる人たちもポカン顔になるんじゃないか?じつはこれは有名なジョークでこの先に続きがある。私が聞いたヤツはゼンマスターじゃなくてダライラマだったんだけどきっといくつかのバージョンがあるんだと思う。"one with everything" ていうのは「ホットドッグの中に具をぜんぶ入れてくれ」という意味です。その通りにホットドッグをつくってもらってお金を渡したらホットドッグ屋はオツリをくれない。ゼンマスターが「オツリは?("Where is my change?")」と聞いたら、相手は "Change must come from within." と答えたというオチで、これはchangeつながりのジョークだと思うんで日本語にうまく訳せないが、つまりクリスは "Change must come from within." → 「(未来の)変化は内側から起こる」 → 「未来は君次第さ」ていうような意味を暗にほのめかしたんじゃないか。そしてこれが作者がいいたい『未来の定義』なんじゃないか。と思ったんですけどどうなんですかネ。ハズしてるかもしれませんがw。

次に挙げるのはかなりわかりやすい。シャワーから出てきたリズに見とれたクリスが「君はきれいだ」と褒めるシーンの台詞はそのまま彼女に使えるゾ!何度も読んでスラスラいえるようにしましょう↓

There is an Italian painter named Carlatti. And he defined beauty. He said it was a summation of the parts, working together in such a way that nothing needed to be added, taken away or altered. That's you. You're beautiful.

とてもスィートな台詞でニコラス・ケイジの魅力がじわーんでした。こういう中年男になりたい!2人の泊まったモーテルの名前が『クリフハンガー』っていうのもなんだかおもしろい。

後から追記。2014年6月1日。

本日、読者の方から以下の情報を頂きました。読者のみなさんに有益と思われるので、以下に引用をします。尚、以下の内容は頂いたメールを引用しているだけで、私自身は検証等をしていませんので、正確性などについてはわかりませんよ。こんな古い記事を読んでくださり、メールをくださりありがとうございます。7年前に書いたヤツだ!

以下引用。

本作品はフィリップ・K・ディック原作と謳われておりますが(「ゴールデン・マン」という短編です)、「未来が見える能力」というアイデアだけを基にしており、ニコラス・ケイジの役柄や核兵器云々とそれに纏わるFBI、テロリストとの邂逅、運命の女性との出会いは映画独自のものです。簡単に、原作と映画の相違点を以下に記載致します。

【原作】

・クリスは主人公ではない
・クリスは全身黄金に輝くミュータントである(=人間ではない)
・突然変異として生まれるミュータントは捕まると安楽死という名の抹殺をされる
・未来を見る能力に「二分先」等の時間的な制限はない(具体的な時間は言及されていません)

【映画】

・クリスが主人公である
・クリス未来視の能力を除いて普通の人間である
・クリスはマジシャンである
・FBIとテロリストの攻防に巻き込まれる
・未来視を使って運命の女性に出会う

【共通点】

・クリスは未来が見える
・未来視を使って追手から逃れる

【共通点】

以上、曖昧な部分もありますが、参考になれば幸いです。

引用以上。

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