マニアック、ボカシの件。私的暫定報告。
18日間を振り返ってのまとめであります。
6月1日。私は『マニアック』を封切り日に観た。そして、この映画においては、観客に告知することなく、ボカシ修正が施されていることを知り、翌日、エントリをアプした↓
私は「検閲は是か非か」という話を始めるつもりはなく「修正したのなら、その事実/理由/経緯を観客に明示してほしい」という一点のみを主張したかった。検閲に賛成する人も反対する人もそこに異論はないだろうから、そのように主張した方が、みんながひとつになれていいだろうと思ったから。
私は上の記事を書きながら、海外向けの英文記事も書こうと思いついた。んで、Usagiの協力を得て、3日後にアプした↓
この英文記事を書いた経緯/理由/内容などはこちらにある↓
そして次の日からは、世界のみなさんに読んでもらえるよう、いろいろと手を尽くした。したら、幸運なことに、ホラー関係で超有名な次の3サイトにpick upしてもらえた↓
そうこうやっているあいだに、ナマニクさんのコレが出た↓
私はこの情報をさっそく翻訳して英文記事に追記した。んで、メールやtwitterでいろんな人に呼びかけて「読んでください。なんかいってください」とお願いして回ったら、けっこう反響があった↓
- ロイド・カウフマン
- 『マニアック』に出演した女優ミーガン・ダフィ
- 『Tokyo Vice』のジェイク・エーデルスタイン
- ドイツのHuan Vu監督
- スウェーデンの映画製作者、Pidde Andersson
- アルゼンチンのGerman Magarinos監督
- Japan Daily Pressがpick up
UK Freightfestのフォーラムにもこの話題が上がった↓
私は少しでもこの問題に関心を持ってもらえるよう、また、反応してくれた人たちへのお礼の意味も込め、上のような個別エントリをアプしたが、そこで取り上げなかったものもある。英文記事『On EIRIN's Terrible Censorship of Franck Khalfoun's "Maniac"』には、私が拾い集めた人々の声をぜんぶ追記した。いま全体を眺めると、ひとつの読み物として充実してきたように思う(自分でいうのもナンですが)。
という調子でやってきたが、「カルフン&アジャのコメントを引き出す」という目標は未だ達せられないものの、それは夢のようなもんだし、非力なホラーファンが行った活動としては、まぁよくやったんじゃないの?という気がしてきた。
普段、このブログにはガイジンさんからのアクセスはゼロに近い。そこに人を呼んでくるというのは、山奥に家を建て、電気を引き、水道をつくるようなもんである。それを考えれば、よくできた方かなと思う。こんな活動をあと200回もやれば、世界のホラーファンの間で「ジャパンのあのブログか」と認知してもらえるくらいになるかもしれない。
怒りMAXで始めた活動だったが、いろんな人に出会い、見識を広めることができた。「カネをドブに捨てた!」と思っていたけれども、損したものの何倍もよいものを得られた。
たくさんのガイジンさんからメールをもらった。世界のホラーファンの仲間意識というのは大したもんである。中には「おまえに贈り物を送るから住所を教えろ」という人もいた。お陰でUnrated版Blu-Rayをタダでもらえそうである。
「こっちもお礼になにかを送るよ」といったら、「おまえは自分のカネを払って求むモノが得られなかったのだから、これを受け取る権利がある。だから堂々と受けとればよい」なんていうから泣けてしまった。こんな友達を相手にうだうだとホラー談義をして、We are good.とかいってりゃハッピーであるが、しかしながら、事はそう単純ではないという気もする。
ガイジンさんの感想で一番多いのがコレだった↓
「日本では、Ichi The Killerや、Auditionや、Battle Royaleや、果てはGuinnea Pigに至るまで、ゴアゴアキチガイ映画がたくさんあるのに、どうしてこんなことが起きるの?」
「チンコとマンコを出さなけりゃなにをやってもいい国なんだと思っていた」
これが一般的な認識だった。今回の『マニアック』の件は「普段の日本では起きないことが起きた」という風に感じる人も多いようだ。「なぜなぜ?」と訊かれても、私はうまく答えられない。個々のケースについて「〇〇は〇〇だから」という話はできるが、映倫と配給会社との関係性や、日本企業独特のあいまいな意思決定システムを、総括的に説明するのはじつに難しい。逆にいえば、ジャパン通のガイジンさんには「ははーん。やっぱり日本だよね」といわれるような話である。
先に「ホラーファンの仲間意識は大したもんだ」と書いたけれども、それがあるからといって、すぐにお互いわかり合えるというものでもない。その感覚は同じチームを応援するファン同士の愛着のようなもので、スタジアムを一歩出れば赤の他人。という状況に似ている。
本当の意味でお互いにわかり合うことができるには、まだまだぜんぜん足りないと思う。なぜわかり合わねばならないかというと、外からの透明性を増すことは、内的な改善につながると思うからである。「日本の映画業界はこうである」という理解が内外で深まれば、色々といいことがあるんじゃないかな。
海外の監督さんが日本のバイヤーと契約するとき、監督さんの目に日本のファンはどう見えているのか。じつはぜんぜん見えていないのではないか。目の前にいるスーツ男だけが視界にあるばかりなのではないか。その先にファンがいるという点を、もっと認識してもらいたいのである。私は。
なんて、見てきたようなことをしゃべっているが、上に書いた、監督さんの意識に関する話は私の憶測である。海外の人たちと話すうち、「日本の事情は外に知られていないんだな。てことは、監督さんたちも知らないんじゃないかな」と考え、上のような想像をしたのである。内部でどんなやりとりがなされているのか、業界のプロの方に解説をしてもらいたい。日本語だけでなく英語でも。
ま、むずかしい話はおいといて、「日本はこうなんですよ。あんたら、知ってた?」というエントリをあげるのはけっこうおもしろいから、みんなもやるといいですよ。いろいろと大変だが、私でもできたんだから、みんなもできると思う。
「英語ができないから」つって足を止める人が多いが、しかし、考えてもらいたい。コミュニケーション力というのは死活問題である。「なんとしてもおまえにこれを伝えないと、おれは死んでも死に切れない」という気合いでやればできてしまうものである。
そして、それをやることによって得られることはすごく多い。なにしろ潜在的な読者数が遥かに多いのだから、反応も大きい。人々の考えを聞かせてもらうのは勉強になる。
という次第で、18日間を過ごしてきたのだが、この問題に関しては、本日をもっていちおうの区切りとし、そろそろ通常運転に戻ろうと思います。
ご清聴ありがとうございました。
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オマケ。
私が『マニアック』の件でドタバタしている間に、ベトナムで別の事例が起きた。以下のtwitchの記事を読むと、より深刻であるように思える↓
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