2015/7/18 (Sat) at 1:54 pm

映画|Alleluia

中年男女肉欲狂気の修羅場を見よ。熟女キラーの詐欺師ジゴロと、愛欲に溺れる嫉妬ヒステリー女が出てくる陰鬱スリラードラマ。現代フランス版『ハネムーン・キラーズ (1970)』。おすすめ。ロラ・ドゥエニャスローラン・リュカエレーナ・ノグエラ。監督ファブリス・ドゥ・ヴェルツ。2014年。

Alleluia DVDDVD画像

ここはフランス。

グロリアさん(ロラ・ドゥエニャス)は仕事と子育てに勤しむ平凡な独身オバちゃんで、恋人をつくる気なんてさらさらなかったが、友達の勧めでオンラインデートに申し込み、男前紳士のミシェルさん(ローラン・リュカ)と出会った。ふたりのデートはあれよあれよと盛り上がり、彼女はめくるめく夜を味わった。

ところが、この男は熟女キラー専門のジゴロ詐欺師であった。彼はいつもやるようにグロリアさんをヒーヒー歓ばせた後、大金を引き出したら、ホイと逃げた。一丁アガリである。

ところが、諦めきれないグロリアさんは、必死の思いでミシェルさんを探した。やっと見つけたら、彼は夜のクラブで仕事中だった。つまりどっかのオバちゃんとよろしくやっていた。グロリアさんは爆発ドッカーン!

と思いきや、彼女を見た詐欺師男は、誠に都合よく、頭痛で失神した。じつに詐欺師臭い野郎だ。と思ったが、ほんとに頭痛持ちらしい。彼が気を失っているあいだ、彼女はこの男の持ち物を調べてすべてを知ったが、目を覚ました彼に意外なことをいう↓

「わたしはあなたがあなたでもかまいません。愛しているのだから、どうか恋人になってください。あなたはそのままでいいのです。あなたの頭痛を癒してあげる」

長年男日照りだったゆえに忘れられないのか。あるいは、元々こういう性格なのか。あるいは、よほどナニの具合がよかったのか。そんな理由なのかなと想像されます。

素っ頓狂な愛の提案を聞かされた詐欺師のミシェルさんは「ほんとにそれでいいの?」とめんくらい、しかし相手が本気であると知ると満足げであり、「ヨッシャ。ヨッシャ。愛しているぜベイビー」てな調子で(じつに詐欺師臭い)、その日からふたりは詐欺師コンビになった。

じっさい、この男の詐欺師演技は大したものである。このお調子者演技は『24』のローガン大統領みたいだと思った。ま、あれよりは男前なんですが。本人はハンフリー・ボガートに憧れているらしいです。

彼はたくさんのカモリストを持ってて、どれもこれもが大金持ちのオバちゃんである。言葉巧みにカモをだまし、得意の寝技で歓ばせ、金を引き出す。これが彼の常套手口だが、グロリアさんというパートナーができて以来、彼女は妹と名乗ってくっついてくるようになった。

妹同伴のジゴロなんてサマにならないね。デートの邪魔だ。と思うかもしれないが、この場合、相手は金持ちオバちゃんであり、お上品な貴婦人マダムばかりであるから、妹の存在は邪魔になるどころか、逆に、カモをだまくらかすのに都合がいいのである。兄妹の思い出話などを聞かせてやれば、相手はコロリと信用する。なかなか息の合った詐欺コンビではないか。

と思いきや、誤算が発生する。グロリアさんは嫉妬心をコントロールできない。愛する男がカモ女といちゃいちゃしているのを見ると頭にきちゃう。怒り狂って、ンモー!つって、ギャーギャー怒って、カモから金を引き出す前にズガーンとブッ殺してしまうのだ。うへー。

殺した後は、「わたしにまかせとき」つって、ノコギリでギーコギーコと死体をバラす。書き忘れたが、この女は死体安置所で働いていたのである。死体の扱いは手慣れたもの。詐欺の仕事はミシェルさんの独断場だが、死体処理になると、グロリアさんの方が格上の師匠である。息が合ってるのか合ってないのかわからないコンビでありますね。

中年男女の愛憎がグジュグジュに詰まった陰鬱なスリラー映画です。最後は大迫力の修羅場!修羅場!

Gloria: You can fuck her, you can kill her! Kill her!

トレイラー動画

Alleluia (2014) trailer

感想

Twitterにこの映画のことを書いたら↓

大畑創監督からこのように訊かれた↓

まさにドンピシャリ。本作『Alleluia (2014)』は「『ハネムーン・キラーズ (1970)』のリメイクである」とは書かれていないが、明らかに相似の部分が多く、そのいくつかは偶然ではないように思うので、オマージュってヤツなのだろう。かなり似ているものの、これまた別の世界感があるので、嫌なパクリを見たというかんじはなかった。

これだけ似ているとリメイクでないことが不自然に思われるが、なにか権利の関係でオリジナルのタイトルを使えなかったのかもしれない。ウラの事情のことなんかは私は知らないが、まぁ、おもしろければいいじゃないですか。

ハネムーン・キラーズ (1970)』はよかった。病院で働くオールドミスのデブ婦長さんが出てきて、色恋沙汰にはまったく縁がなさそうなオバちゃんなのだが、これが色男ジゴロに出会ったらコテンと夢中になり、相手が詐欺師と知ってさえ「そのままでいいのよ」とかいって、ふたりは詐欺師コンビになる。

美男醜女カップルの組み合わせは世の中に多いが、『ハネムーン・キラーズ (1970)』『Alleluia (2014)』のどちらにおいても、そのパターンである。男は小粋な伊達紳士。女はサエないオバちゃん。当然ながら、観客は男の真意が気になる。ほんとに惚れているのかね。まさかね。と思う。

どちらの映画においても、色男は詐欺師だからますますわからない。詐欺師はしょっちゅう愛の言葉を囁くが、なにしろ詐欺師のいうことだから信用できない。ところが、『ハネムーン・キラーズ (1970)』のエンディングはそんな疑いを木っ端微塵に粉砕した。あのアンちゃんはマジにあのデブ婦長さんに惚れていたと明かされる。いいエンディングだった。

Alleluia (2014)』の方ではその点はどうなのか。詐欺師はグロリアさんをだましていたのだろうか。あるいは、『ハネムーン・キラーズ (1970)』のアンちゃんのようにまじに惚れていたのか。そこは映画を見て確かめてくださいよ。

Alleluia (2014)』は『ハネムーン・キラーズ (1970)』をより陰鬱に中年男女の嫉妬心と愛欲を描いており、嫉妬心を煮詰めてコテコテに固めて、中年嫉妬女の愛液をジャブジャブかけたような凝縮感がある。

嫉妬に駆られて逆上するグロリアさんに手を焼いた詐欺男が、渋々ながらという調子で、彼女に睡眠薬を飲ませる場面があった。あれを見ていたら、伊右衛門に毒を盛られるお岩さんみたいで、ついグロリアさんに同情してしまい、いや、ちょっと待て、コイツは頭のおかしい狂女なのだ、と気づいて、妙な居心地の悪さを覚えた。

映画|Alléluia (14) 画像

そして、最後の最後には、ものすごい修羅場がやってくる。大迫力の演技を見た。ゴア場面は少しだけだが、その部分はよくできていた。斧をズダーンと振り下ろしたところを腕で受け止めるところなんて、本当に痛痛痛痛痛痛だった。あと、こわがり子供の演技もよかった。

ひとつだけ文句を。

最後のあれ、〇〇が××を助ける(見ればわかるよ)というのが私には解せなかった。なぜあんな展開にしたのだろう。ふたりは揃って地獄に堕ちていく。地獄への片道電車についに乗ってしまった。という展開が望ましいように私には思われ、だからあそこはあのままズガーンとイッちゃってほしかったですね。

という小さな不満はあるが、総じておもしろかった。おすすめです。私はiTunesUSで見たが、UK版DVDも発売中↓

US版もそのうち出るでしょう。

『ハネムーン・キラーズ』関連映画

後から追記。

この記事をアプしてから、『ハネムーン・キラーズ (1970)』関連の映画は他にもありますよって色々教わった。たくさん出ているんだなあ。この筋書きはよほど映画製作者を魅了するのですね。

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原題: Alléluia
別題: Alleluia
制作年: 2014年
制作国: ベルギー/フランス
公開日: 2014年5月22日 (フランス) (Directors Fortnight Cannes Film Festival)
2014年9月7日 (フランス) (L'Étrange Festival)
2014年9月9日 (カナダ) (Toronto International Film Festival)
2014年9月18日 (アメリカ) (Fantastic Fest)
2014年9月27日 (カナダ) (Edmonton International Film Festival)
2014年10月2日 (ドイツ) (Hamburg Film Festival)
2014年10月4日 (フランス) (Absurde Seance)
2014年10月4日 (韓国) (Busan International Film Festival)
2014年10月5日 (カナダ) (Vancouver International Film Festival)
2014年10月7日 (ベルギー) (Festival du Film Francophone de Namur)
2014年10月9日 (スペイン) (Sitges International Fantastic Film Festival)
2014年10月10日 (アメリカ) (Hamptons International Film Festival)
2014年10月11日 (アメリカ) (Chicago International Film Festival)
2014年10月12日 (カナダ) (Festival du Nouveau Cinéma de Montréal)
2014年11月6日 (ベルギー) (Razor Reel Flanders Film Festival)
2014年11月8日 (アメリカ) (AFI Fest)
2014年11月12日 (ベルギー)
2014年11月14日 (アメリカ) (Cucalorus Film Festival)
2014年11月16日 (イギリス) (Leeds International Film Festival)
2014年11月18日 (アメリカ) (Denver International Film Festival)
2014年11月21日 (フランス) (Paris International Fantastic Film Festival)
2014年11月26日 (フランス)
2015年1月5日 (アメリカ) (Palm Springs International Film Festival)
2015年4月17日 (アメリカ) (Florida Film Festival)
2015年4月22日 (アメリカ) (Minneapolis-St. Paul International Film Festival)
2015年4月23日 (アメリカ) (Nashville Film Festival)
2015年5月16日 (アメリカ) (Seattle International Film Festival)
2015年7月17日 (アメリカ) (New York City, New York)
imdb.com: imdb.com :: Alléluia
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
アートディレクション
衣装デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup
謝辞

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