2015/5/12 (Tue) at 6:25 pm

短編ホラー映画|Pity

失恋に悶え苦しむ男の7分間を見物する短編ホラー映画。Jake Martin。監督John Pata。2014年。

雨降る晩。

フラレ男(Jake Martin)が女の家の前で車を停め、ぶつぶつと文句をいっている。深刻顔で、冷や汗ダラダラ。彼の頭に浮かぶのは女への遺恨ばかり。酒を飲んでも気は晴れず、黒い絶望に支配されている。ギャーとわめいてみたり、タバコを吹かしてみたり。呪詛が車内に充満している。pityの雨が降り続ける。映画は男の独白ナレーション台詞のみで進行します。

Pity Teaser from Head Trauma Productions on Vimeo.

感想

映画の題名はPityという。pityとsympathyの違いというのは、英語学習者の集会で定期的に話題に上るが、pityの方が『相手を見下している』かんじが含まれると思う。sympathyは同情的なかんじ。「そのきもちわかるわー」みたいな。一方のpityは「かわいそうな野郎だ。ケッ」みたいな。

※いちおう書いておくが、このような表現ニュアンスの違いは明確にわかれているわけでなく、両者の意味合いはtransitionalに混ざっているという点を知っといてくださいよ。

本作『Pity』で描かれるのはpityだけ。それ以上でもそれ以下でもない。Jake Martinの演技はおそろしく真に迫っており、撮影も音楽もいい。ひたすらにpityを盛り上げている。そんな映画をわざわざ手間をかけてつくるなんて、けったいな話だ。

つくる人間がけったいなら、これを観る人間も少しおかしいのではないか。画面を注視し、雨の音に耳を澄まし、フラレ男の懊悩を見物するなんてぜんぜん楽しくない。『ゴジラ』を観ていた方が楽しいにきまっている。どこの誰が7分間のpity timeを体験したいと思うだろうか。普通は思わない。

なんの因果か、これを見るはめになったあなたは、最後のクレジットにたどり着くと、「なんだこれは!」「へんなものを見ちまった!」と思うだろう。落胆する人もいるだろう。あなたは中途半端なきもちで、そのままベッドにいって、寝る。

ここでひとつの可能性を提示しよう。

映画を見終わったとき、あなた自身が気づかないあいだに、信じられないほどに小さなpityの雫が、ガーゼに染みる血液のように、あなたの心に侵入するのかも。その一滴はあなたの忘れ去った記憶に変容を加える。そのせいで、あなたはひどい悪夢を見るのかも。夜中に目を覚ますかも。

もしそんな体験をしたら、John Pata監督の意図は、確実にあなたの胸に届いているといえるだろう。彼は観客の眠りに悪夢を製造したがっている。

John Pata監督について

DVD/Blu-Rayが出るらしいよ。以下は監督さんのtweet↓

本作『Pity (2014)』の監督のJohn Pataさんは、『Call Girl (2014)』でおなじみのジル・シックス・ガヴァーギジアン監督の次回作である短編ホラー映画『The Stylist』において、編集にクレジットされています。『The Stylist』てのは、ナジャラ・タウンゼント演じるカワイコちゃん美容師が狂っちまう話らしいです。

本作『Pity (2014)』はまだ公開されていませんが、ジルさんのお導きでスクリーナーを見せてもらいました。いつもありがとう。

ついでながらCALL GIRLの漫画もよろしくお願いします↓

English Review

My mother language is not English. I've been learning it over 40 years and it is still hard. I remember someone once taught me the difference between “pity” and “sympathy”. After seeing PITY, I truely figured out what pity is. You'll feel 100% pity by seeing PITY. That's all I got from PITY. Neither more nor less. To be honest, I am not sure if I “enjoyed” PITY or not. Who wants to experience seven minutes full pity time? It's no doubt GODZILLA is much more entertaining than PITY. So is it boring? Well, I say, PITY is not for everyone. But imagine like this. After seeing PITY you feel uneasy. Some people may feel even angry. You mumble like, “oh I made a wrong choice. Much more entertaining movies are out there. Why did I watch it?!” Then you go to bed. You believe you already forgot what you saw. But imagine. Very tiny hairy thing already infiltrated into your mind like soaking blood. It somehow affects your forgotten memories. You never noticed it. Turns out, you see bad dream. You wake up 3 o'clock in the morning alone. I guess that's what John Pata the director intended to make you.

Thank you Jill and John for letting me review it!

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原題: Pity
別題: Prowler in the Yard
制作年: 2014年
制作国: アメリカ
公開日: 2014年3月8日 (アメリカ) (Wildwood Film Festival)
imdb.com: imdb.com :: Pity
監督
脚本/原案
出演
プロデュース
シネマトグラフィ
編集
プロダクション・デザイン
視覚効果(Visual Effects)
特殊効果(Special Effects)
Makeup

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