短編ホラー映画|Heir
人間の心に疼く昏い変態渇望をbody horror的手法で描いた14分間の短編ホラー映画。ビル・オバースト・Jr、ロバート・ノーラン。監督Richard Powell。2015年。カナダ。
男(ロバート・ノーラン)が夜中にこっそり誰かとチャット中。彼は息子の写真をチャット相手に見せ、会う段取りをする。
彼は平凡な見てくれの中年男だが、へんな病に罹っているらしく、手のひらから精液みたいなグジュグジュ液がダラーリと垂れる。きもちわりー。
翌日。
男は息子をドライブ旅行に連れ出す。「パパの友達に会いにいこう」てなことをいうが、彼は秘密を隠している。興奮と罪悪感が入り混じったような顔つき。
男の表情を見ていると「できればこんなことはやりたくない」「でも仕方がない」「こうするしかない」という風だが、しかしながら、誰かに脅されて呼び出された、ということもない。映画を観る私たちには、なにが起きているのか、ぜんぜんわからない。
ドライブの先で、父息子はとある男(ビル・オバースト・Jr)に会う。相手の人物はうれしげである。「久しぶりに会えてうれしいよ」「きみがポールか」「お父さんから聞いているよ」「おなか空いてない?」てなことをいうが、息子の前だからそのように演じているだけである。父親はてきとうに話を合わせつつ、内心は冷や汗ダラダラ。
いったいどんな秘密があるんですかね。
息子はどう思っているのだろう。パパの挙動がおかしいことに彼は気づいているはずだが、とりあえずついてきた、というかんじのようだ。
やがて、息子は睡眠薬で眠らされてしまう。父親は血相を変え、「なにをしたんだ?」「彼を傷つけてないだろうな」と念を押すようにいう。謎の男はニタニタ笑い。「君はすべてわかっていたはずだ。それとも息子さんが起きているままの方がいいのかね」
この後、びっくりすることが起きる。ギョギョギョ。ゴアゴアあるよ。
ビル・オバースト・Jrさんのお言葉
以下は、邪悪な快楽男を演じたビル・オバースト・Jrさんのお言葉です↓
Fatal Pictures presents "HEIR" Bill Oberst Jr.
だいたいこんなことをいっています↓
私はRichard Powell監督を前作『Familiar』から注目していました。『Heir』はこんなお話です。「家庭的なパパであるゴードンは、ある日、インターネットで自分と同じ趣向を持つ人物に出会う。彼は誘惑にあらがい切れず、息子を連れてドライブ旅行に出る。その先で何が起きるのか。おそろしい秘密が明かされ、彼は残酷な人生の教訓を得る」。私はこの映画の脚本を読んだら、その夜、ひどい悪夢を見た。おそろしさに目をさまし、「出演をしよう」と決めた。『Heir』は、とてもユニークなホラー映画です。モンスターが出てきますけれど、普通のモンスター映画ではありません。人間の倫理感に強く訴えかけるホラー映画です。夜中の3時に汗びっしょりで目を覚ましたことがありますか。Richard Powell監督は、これまでになかったものをつくろうとしています。私は彼の映画を好きです。待ちきれませんね!
感想
プロデューサーのZach Greenさんにスクリーナーを見せてもらいました。この映画はできたてホヤホヤで、これから映画祭巡りをやるところだそうです。一般リリースの時期は未定。
本作『Heir (2015)』を見たらば、100人中100人が理解に苦しむだろう。人間の心の闇をナイフで切り裂き、その中のグジュグジュした膿を見せられたようなイヤーな気分になる。この嫌らしさはいったいなんだ。私はなにを見たのだ。と自問し、何度も見た。わかったようなわからないような気がするが、荒唐無稽であるとは思わない。
なにしろ『説明』をしない映画なので、著しく観客を選ぶに違いない。気に食わない人は「意味不明だ」のひとことでバッサリ捨てる。が、私を含め、これを好むファンは一定数存在するはずだ。わからないなりに、意味を汲み取る努力をしたくなる映像なのだ。監督は観客が二分することをまったく恐れていないのだろう。トガリ感を出すことだけに注力したのだろう。と推察する。観客に媚びない姿勢が清々しい。
私はネタバレをせずに感想を書こうとしているから、こんなモヤモヤした言い方になってしまうんだが、これだけじゃわからないよね、と思うんで、ここはひとつ、みなさんを観たくなる気にさせるよう、いくつかの着眼点を挙げる↓
- 変異する肉体
- 手から射精する男
- 病的変態的気質に汚染された人間の情念を、空想的な怪物として描いている
- すべてを捨てて快楽主義者になりたいか
- そこはかなとなく小児性愛虐待(あるいは近親相姦?)
- 連鎖する変態性
- 家庭的なパパだからといって安心はできない!
変態的かつ陰鬱かつタブー視される概念を、body horror的手法で描いているのです。どうですか。観たくなりましたか。
ビル・オバースト・Jrとロバート・ノーランの演技はたいへんよい。一方は快楽主義者。彼は快楽を肯定し、快楽に淫する。しかし、一方の男にとっては、快楽なんて呪われた病気である。彼は衝動を隠しているが、もはやその渇望を抑えきれず、臨界点に達している。メルトダウン寸前。そんな人間の情念を、少ない台詞で巧みに演じている。この映画にはいくつかのゴアシーンがあるが、これをつくったのは、気合いの入ったゴアゴアで有名なButcher Shopさんです。
一般的な話、短編ホラー映画というのは、予算がなくて安っぽいものが多いが、本作『Heir』は安くない。いわゆるクローネンバーグ風だが、そこらへんのヤツとは凝縮感がちがう。さらにいうならば、「これを元に長編をつくりたい」という可能性さえ、捨てているように見える。つまり、短編映画が短編映画として完成しているという意味です。こんな短編ホラー映画を大まじめに予算をかけてつくるプロダクションは稀です。
English Review
HEIR is a disturbing/shocking body horror which depicts human's dark desire by implementing unusal method. You'll see monster in this film. Literally. The story unfolds to the unimaginable events. The audience witnesses how the three characters are gonna be invloved with.
Gordon - he is a family man who is trying to be a good dad. He cannot accept his desire. But sadly, he has his limit. He is about to explode in terms of mentally and physically. He is forced to be faced with his choice. But there's no choice. Denis - he never hesitates to touch what he wants to touch. He always seeks his desire. He's evil. But he never feels guilty. To him, everything is fine and his life is beautiful. He believes so. Paul - he is a son of Gordon. He looks like a victim. But...
I don't want to spoil you. All I can say is, expand your imagination and go for it if you are looking for unusual/extreme stuff. I am certain Richard Powell the director is trying to do something unique and original. And it is successfully done. The acting is superb. Gore effect by Butcher Shop is awesome. HEIR is not for everyone. Some people might hate it. But I don't care. It made me chill. Absolutely brilliant.
Zach, thank you for letting me review HEIR. And thank you for reading.
制作はカナダのFatal Pictures
本作『Heir (2015)』をつくったのは、カナダのFatal Picturesというインディーズプロダクション。監督のRichard PowellとプロデューサーZach Greenが中心。過去に『Consumption (2008)』『Worm (2010)』『Familiar (2012)』ていうのをつくっている。すべて短編ホラーなんだが、私は見てないんだが、けっこうな評判だったそうな。詳しくはFacebookのページを見てください。グッときた方はLIKEしましょう↓
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Heir | |
2015年 | |
カナダ | |
2015年7月2日 (カナダ) | |
imdb.com :: Heir |
- Bill Oberst Jr. :: ビル・オバースト・Jr [imdb] (Denis)
- Robert Nolan :: ロバート・ノーラン [imdb] (Gordon)
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- Ron Basch [imdb] (producer)
- Adam Clark [imdb] (associate producer)
- Zach Green [imdb] (executive producer / producer)
- Mallory Lewis [imdb] (executive producer)
- Seth Metoyer [imdb] (associate producer)
- John Nicholls [imdb] (associate producer)
- Richard Powell [imdb] (executive producer / producer)
- Marc Roussel [imdb] (producer)
- Jeremy Thornhill [imdb] (visual effects)
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