映画|The Darkest Corner of Paradise

カレッジを卒業したばかりのピートさん（Patrick O'Driscoll）は、数字にうるさい男である。

会計の仕事に就くのが夢。それが天職であると信じる彼は、金融関係の企業を回って就職活動に精を出すが、悲しいかな、どこも雇ってくれない。大苦戦の末、やっと就職できたのは、アイススケート場だった。掃除をしたり、スケート靴を磨いたり、会計とは無縁の仕事をやるのは不本意だが、これも生活のためである。

仕事を得たので、安モーテルから安アパートに引っ越すことができた。どういう事情か知らないが、この男はこの町に越してきたばかりで、友達や家族などは誰もいないのである。ひとりぼっち。

ピートの日常生活はさっぱりしたものである。アパートと職場を往復する単調な日々。食事はTVディナー。その繰り返し。数字にうるさいだけのことはあり、きれい好きな性格らしく、きちんと掃除をし、毎日シャツにアイロンをかける。じつにきまじめ男。楽しみといえば、憧れのカワイコちゃんウェイトレスを見ることくらい。彼は内気なので、声をかけられない。

ある晩、仕事から帰ったら、部屋の前に傷ついた女がいた。部屋に招き入れ、いったいどうしたものかと驚きつつ、女を介抱していたところ、謎のギャングに襲撃され、がつんと殴られて意識を失った。目が覚めたときには女は消えていた。

彼はその女とは縁もゆかりもないのだが、義侠心に駆られ、警察に通報したが、きちんと話を聞いてくれないので悔しく思う。気になってたまらないので、独自調査を開始する。手がかりは女のタトゥーだけ。

そうこうやるうち、とあるギャング一味が関係あるらしいとわかったが、逆にとっつかまって、ボコボコにされてしまう。悪人どもは相手がカタギの内気男と知り「痛めつけておけばじゅうぶんだろう」と踏んだようだが、意外にも、ピートさんは執着する。相手の正体を突き止めてやるぞと闘志を燃やし始める。これは意外な展開。

銃を手に入れ、仕事はほったらかしで、素人探偵さながらに行動し始めると、まるで人が変わったようになる。部屋は散らかし放題。カワイコちゃんウェイトレスに「ハーイ！」といわれても仏頂面。就職活動をやっていたときに出会った面接相手に町で出くわし「君に仕事があるよ」といわれても、興味を示さず、無言で去った。

いったい彼はどうしてしまったのだろうか。最初のうちは、女への同情心が行動理由だったようだが、やってるうちに、そんなことは二の次になり、なんだかアングラ世界にとり憑かれているようなありさまである。

銃やギャングなどとはまるで縁のなかった善良な内気男が、闇の世界に足を踏み入れるミステリー仕立てのスリラー映画です。極小低予算のインディーズ映画。

トレイラー動画

The Darkest Corner of Paradise (2010) trailer

感想

これはなけっこうな小品でした。予算カツカツでショボいですが、そのわりにはがんばったのではないか。前半がよかった。ナレーションと映像で、ピートさんの日常を描くあたりはサラッとうまかった。後半はちょっとダレ気味。エンディングは投げやり調だけど、インディーズならこんなもんかなと。

ピートさんは非常に好ましい人物で、応援したくなるタイプ。そんな風に感じるくらいだから演技がよかったのだろう。音楽もよかった。なんていうんだろ、こういう音楽に詳しくないのでどういえばいいのかわかんないが、ブルースみたいな、ジャズみたいな、叙情的な曲です。DVDのオマケにサウンドトラックが入っていたからうれしかった。

ジャジャーンと盛り上がるスコアとモノクロームの映像がマッチしていいかんじ。ノワールですなあ。と褒めたいところだが、狙ってるセンはわかるんだが、悲しいかな、機材のショボさがところどころで露呈してしまうんだが、そこらへんは暖かく見守っていきたいところであります。

DVDのオマケ

最近DVDが出たから新作だと思って買ったんですが、2010年に出たヤツの別レーベル再版でした。でもおもしろかったからいいです。オマケはこれだけ入ってました↓

• Trailer
• Slideshow
• Featurette (Behind the Scenes)
• Voice From Hell (soundtrack PV)

この映画のDVDは字幕ナシです↓

• amazon.com Darkest Corner Of Paradise [DVD]

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