2013/1/12 (Sat) at 9:37 pm

映画|コンプライアンス 服従の心理|Compliance

悪質イタズラ電話のせいでファーストフード店で働くネーチャンがヒデー目に遭う、実話ベースのホラー映画。アン・ダウドドリーマ・ウォーカーパット・ヒーリー。監督クレイグ・ゾベル。2012年。

コンプライアンス 服従の心理 / Compliance DVDDVD画像

ここはオハイオ。

週末大忙しのファーストフード店で事件は起きた。警官を名乗る人物(パット・ヒーリー)から電話があり「おたくの従業員にカネを盗まれたと主張する被害者がここにいる」なんていわれたオバちゃん店長(アン・ダウド)はおったまげた。はァ!?

ダニエルと名乗る警官は「レジにいた若い金髪娘が犯人」という。そういわれたらベッキーさん(ドリーマ・ウォーカー)しかいない。すぐに彼女を呼んで事情を聞いたが「知らない」という。警官は店長さんが知る上司の名前を挙げ、もっともらしい口調で話を進めるが、じつはこれすべて巧妙なイタズラ電話なのであった。

自称警官男はあれこれと店長に指示する。「持ち物を検査しろ」「ケータイを取りあげろ」といい、そしてさらには「裸にしてカネを隠してないか確かめろ」「下着も調べて」なんていうから常軌を逸した話である。

イタズラ野郎はおそろしく口が達者なmanipulatorである。「あなたはすばらしい協力者だ」とおだてたり、多忙なオバちゃん店長に同情したり、ポリスの権威を振りかざしたり、なんだかんだとうまいことをいって服従させる。押す引くを心得たソーシャルエンジニアリング野郎なんですな。

「いくらなんでもそれはむりでしょ。だいたい、あなた、いつまで電話でしゃべってるの。はやくきてヨ」という段になると、こんな風にまるめ込む↓

「あなたにだけ秘密を教えます。彼女の兄は麻薬取引の容疑で内偵されている。いまわたしらは家宅捜索の真っ最中。これが終わり次第、そっちに行くからもう少し待ってほしい。彼女自身も犯罪に関わっている可能性が強い。今回の窃盗事件が捜査の突破口になればと我々は強く思うのであり、そのためにあなたの助けが要る。だから指示に従ってください。わたしはこういうのに馴れている。あなたはなにも心配しなくていい。責任はぜんぶわたしにある。心配しないで」

店長さんは仕事の忙しさにてんてこまいで、自称警官男にわーわーいわれて、いつしか疑うきもちが失せてしまい、いいなりになってしまうのである。かわいそうなベッキーさんは泥棒扱いされ、糾弾され、罵られ、服を脱がされ、裸にエプロン一枚で監禁され、ヒデー目に遭う。

後半になると店長さんの婚約者男(ビル・キャンプ)が呼ばれてやってくる。こいつもイタズラ男の口車に乗せられ、電話で「お尻ペンペンしろ。嘘をつくのは悪いことだと教えてやれ」といわれてその通りにやっちまうばかりでなく、オーラルセックスを強要する。

こんな風にいいなりになってしまうなんて、なんという馬鹿者ぞろいであるか。と空いた口が塞がらないホラー映画。

実話ベースの映画

2004年4月。ケンタッキー州Mount Washingtonのマクドナルドにて同様の事件が起きた。警察は犯人を特定。David Stewartが逮捕された。37歳。既婚。5人の子供たちの父。彼は、Corrections Corporation of America(民間の刑務所運営会社)の看守であり、ポリスマニアだった。彼が逮捕されるに至るまで、全米30州で70件以上、同様のケースが報告されている。いずれのケースも警官を名乗る男から電話を受け、女性従業員に対し、常軌を逸した身体検査をやらせた。2006年に結審。David Stewartは証拠不十分で無罪放免となったが、その疑いは拭い切れない。女店長は有罪執行猶予。レイプに直接加担した店長の婚約者は有罪5年。詳しくはこちら↓

ABC Newsの映像↓

トレイラー動画

Compliance (2012) trailer

感想

「Based On (or Inspired By) The True Event」という文言がホラー映画の冒頭に出てくるときには、嘘くさい宣伝文句であることが多いですが、この映画の場合はほぼ事実に即しているようです。上にリンクしたYoutubeのニュース映像の中に、インタビューやセキュリティカメラの映像が出てくるんだが、映画の内容とかなり一致している。

さて、感想ですが「こいつらバカじゃないの?」としかいえないから困るなあ。警官が電話越しに身体検査をさせるなんてありえないし、相手が嘘つきかどうかは調べてみればすぐにわかるじゃん?なんでこんなことになっちゃうわけ?

私、常日頃、困ったときにはIMDbのBBSを覗くんだが、そこにも「アメリカ人ってバカなの?」的な発言が多数あり、やっぱりそうだよなあ、と思いました。

私にとってアメリカはたいへんなじみ深い国でありますが、たまーに、極めて唐突に、「この国はぜんぜんわからん」と思うときがある。『Talhotblond: (2009)』を観たときと似たようなきもちになった。

ま、しかし、私が、いくら「バカだバカだ」と叫んでも、実際に70件以上の被害があるわけですからね。中にはバカじゃないひともいただろうし。よほど口がうまかったんだろうなあ。

事件として報告されているのが70件であり、実際にはソレ以上の回数をやっているんだろうけど、もしかして、私らの予想をはるかに超える、ものすごい回数をやったのかもしれない(数千件とか)。何度も何度も失敗を繰り返して、テクを磨いたのかもしれない。電話一本で赤の他人をだまくらかしてヒデーことをやらせてイッヒッヒ、こりゃオモロイ、という犯罪者心理はわかるような気がするよね。

と、まァ、犯人男の身になってきもちを想像してみたんだが、映画の中では、犯罪者の心の闇にスポットを当てるというような演出はなかった。淡々と事実だけを描写するというかんじで、ウィークエンダーの再現フィルムみたいだった。イタズラ男の屈折心理やら、ワイセツ行為を強要した男の心理などを深く描写していればもっとよかったと思う。

町山智浩氏の解説がYoutubeにあったので、興味深く拝聴しました(無断転載なのかなって思うのでリンクしないです)。町山氏は、Milgram experimentやナチスドイツなどを引き合いに出し「人間ってのは自分に責任がないとわかれば、こんなことをやっちまうわけです。こわいですねー」なんつって、評論家くさいことをしゃべっていた。

おー。イタズラ電話のダニエルさん並に口がうまいではないか。そういわれると、一瞬、わかったような気がするから大したもんだ。さすがにプロはきれいにまとめるよね。と思ったら、DVDのオマケに入っているクレイグ・ゾベル監督のインタビューでもMilgram experimentの話が出てきた。

監督はインタビューの中で「わたしならこうはならない。と観客の大半は思うでしょうが、果たしてそういえるでしょうか。人間てのはことのほか権威に屈するものなんですよ」というようなことをいっていた。そういうもんですかね。にわかには信じられませんね。

Milgram experimentについてはこちら↓

Stanford prison experimentてのもあるそうです。Milgram experimentの別バージョンなんだそうで↓

DVDのオマケ

クレイグ・ゾベル / Craig Zobel 画像

私が持ってるのはUS版DVDです。オマケはこれだけ↓

  • Interview With Director Craig Zobel
  • Behind The Scenes Of Compliance
  • ASX TV: A Look At Compliance
  • Theatrical Trailer

この映画のDVDは英語字幕つき↓

画像

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原題: Compliance
別題: Compliance
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Sila perswazji
Obediência
Saglasnost
Эксперимент 'Повиновение'
Itaat
邦題(カタカナ): 『コンプライアンス 服従の心理』
制作年: 2012年
制作国: アメリカ
公開日: 2012年1月21日 (アメリカ) (Sundance Film Festival)
2012年4月21日 (アメリカ) (Wisconsin Film Festival)
2012年4月25日 (アメリカ) (San Francisco International Film Festival)
2012年6月29日 (アメリカ) (BAMcinemaFest)
2012年8月10日 (カナダ) (limited)
2012年8月17日 (アメリカ) (New York City, New York)
2012年9月7日 (フランス) (Deauville Film Festival)
2012年9月26日 (フランス)
2012年10月18日 (イギリス) (London Film Festival)
2012年10月18日 (アメリカ) (Tallgrass Film Festival)
2012年11月24日 (イタリア) (Turin Film Festival)
2012年12月13日 (ロシア)
2013年2月17日 (イギリス) (Glasgow Film Festival)
2013年3月22日 (イギリス)
2013年5月8日 (オーストラリア) (DVD)
2013年6月6日 (香港)
2013年6月29日 (日本)
imdb.com: imdb.com :: Compliance
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