2011/8/13 (Sat) at 8:47 pm

映画|ブラック・デス|Black Death

死の病が蔓延する中世イングランド。ペストは神が人間に与えた罰であるか。ショーン・ビーンエディ・レッドメインカリス・ファン・ハウテン。監督クリストファー・スミス。2010年。

ブラック・デス / Black Death DVDDVD画像

1348年。中世イングランド。

ペストが国中に蔓延して人口が激減する暗黒時代。人々がバタバタ死んでいます。

どっかの村の教会。

若い修道士のオズモンドさん(エディ・レッドメイン)はひどいありさまに心を痛めていたが、いよいよ危険を察したもので、恋人カワイコちゃんのアヴリルさん(キンバリー・ニクソン)に「きみだけでも逃げろ」と強く述べた。

「デントウィッチの森に逃げて、隠れているのだ」といったら、彼女は「あなたもいっしょにきてくれなくちゃいやですわ」とかわいくゴネるのであるが、彼は「ぼくは修道士なのだ」と答え、心を鬼にして彼女を送り出す。

が、そうはいっても、こんなネーチャンとイチャイチャしているという点からして、彼はすでに戒律を犯しているのであり、本人も深く悩んでいるようです。

別れ際、彼女は「1週間、毎朝、Martyr's Crossであなたを待ちます」と述べて去っていった。

恋人が去ったあと、オズモンドは恋と信仰の板挟みで悶絶し、イエス様に「わたしゃ、どうすりゃいいのであるか。お導きを与えてくだされ」なんつってたところ、その翌日、ウリックという名の兵士(ショーン・ビーン)が教会にやってきた。

ウリックは司祭の命を受けて行動していて、どこどこの村にいきたいから現地ガイドを探している、という用件を説明した。サンクチュアリ(聖域)を探しているんだそうな。

その村にはペストの災厄が及んでいないという噂があり、だから「そんな聖域がほんとに存在するのであるか」という点を確認したいということで、さらに、そこはオズモンドが恋人を逃がした場所の近くだったので、彼は兵士の来訪を「神の導きである」と直感し、自ら志願してガイドになった。

翌朝。

オズモンドがウリックといっしょにでかけていったら、コワモテの兵士たち(ジョン・リンチジェイミー・バラードアンディ・ナイマンジョニー・ハリスティゴ・ゲルナンドイーモン・エリオット)が合流する。

「親分、待ってましたぜ」つって出てきて、オズモンドをジロジロ眺め「こいつがガイドでやんすか。こんなガキで大丈夫?」なんていうから、オズモンドはこわくなった。兵士たちの面相がおっかないことに加え、彼らは大きな拷問道具を運んでいるのである。

なんだか物騒ではないか、聖域を探すんじゃないの、と思ったら、ウリックはこの旅の真の目的をオズモンドに教えた。こんなの↓

「ネクロマンサーていう背徳的悪魔的なヤツがいて、そいつらは死者を蘇らせる魔術を行っているのだ。そいつをとっつかまえて、お仕置きするのが我らの目的である」

なんて妖怪じみた話を大まじめで語るのである。サンクチュアリどうこうてのは、教会の修道士たちを驚かせないよう、ちょっとアレンジしちゃったということらしいです。

オズモンドは、ネクロマンサーねぇ、ほんとにいるのかなあ、とびっくりし、腰が引けてしまうのであるが、もしそれがほんとなら恋人が心配であると考え、いっしょに旅を続ける。

旅の途中で魔女狩りをやってる村人たちにでくわしたり、こわい目に遭ったりしつつ、オズモンドは兵士たちと交流する。

オズモンドは新米の宗教者で、こんな荒くれ男たちと接するのは初めてだったから、最初はおっかなびっくりだったが、彼らと話をするにつれ、みためほどおっかないもんではないとわかってくる。兵士たちは厚い信仰心を有する、気位の高い勇者たちであった。

さてさて、旅が進んでいくと、いろいろあるんだが、詳しくは映画を見てくださいヨと思うが、やがてとある村にたどり着く。

そこは小さな村なんだが、不思議なことに、ペストの災厄はまったく及んでおらず、健康そうな人々が楽しげに暮らすコミュニティであった。質素ではあるが、清潔で明るい雰囲気。

村にたどり着くまですったもんだして泥まみれ血塗れの兵士たちにとっては、天国のような、まるで荒野にとつぜん現れた竜宮城みたいである。

村人たちは彼らを笑顔で受け入れ、傷を手当してくれたり、めしを食わせてくれたりするんだが、徐々に妙なことが明らかになる。

村には教会があったが、そこは荒れ果てていて、まったく手入れがされていない。ここのひとたちは信仰心がないみたい。また、オズモンドが傷の手当をしてもらったら、すぐに治ってしまう。魔法の薬を持ってるみたい。

なにやら秘密めいています。美女のネーチャン(カリス・ファン・ハウテン)が出てきてオズモンドを誘惑したり、兵士たちに酒を飲ませたりする。

もしかしてここがサンクチュアリ?ここにネクロマンサーがいるのかなあ。

オズモンドは村で恋人と再会する。しかし、それはハッピーな再会なんてものではなく、彼は残酷な運命に巻き込まれていってしまうのです。

トレイラー動画

Black Death (2010) trailer

感想

中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジーホラーみたいなもんかなと思ってたら、だいぶちがっていました。

魔法の国のおとぎ話風でなく、悩める新米宗教者のオズモンドさんの視点で、彼が兵士たちと交流し、新しい世界に身を投じていく流れがおもしろく、人間ドラマとしてよくできている。エンディングは残酷。おそろしく後味が悪い。うげぇ。

だから、つまらないということはないんだが、なにしろ、この映画の前提である「ペストは神が人間に与えた罰であるか」という話についていけないじゃん。そこがもどかしい。

この映画に限らず、大昔を舞台にした映画では、もう少し『ソノ気にさせる工夫』をしてもらいたいもんだという不満を持つことが多いです。

髪型やらネーチャンのメイクやら衣装やらが現代風なんですね。みための問題だけでなく、映画の冒頭ツカミのところ、若い宗教者のオズモンドさんが恋と信仰の狭間で悩む、というトコからして、現代人視点の演出であるように感じられました。だから、スッとその世界に入っていけないの。

ポーやラブクラフトの小説を読んでいると、現代とは価値観の異なる登場人物たちに共感することはむずかしいにせよ、彼らのきもちを想像することはできます。昔はこうだったのかなあ。というかんじで。

『死』というものですね。いまの私たちは、医者に「ご臨終」といわれて『死』を規定しますが、大昔では「動かなくなったら死んだ」と考えられていたんじゃないのかなあ。

『死』の定義が異なるということは、人生観や世界観が根本的に異なるとおもうんですね。そのちがいを想像して遊ぶのがおもしろいんですね。

Black Death (2010)』では『死』の描写が薄いのではないか。エンディング近くでオズモンドさんはヒデーことをやらかして、ドびっくりするんだが、あのシーンは、人間の生死の境界はどこにあるのかを見せてほしかったなあ。死んだか。死んでないか。その境い目をねちねちと映像化してもらいたかったところです。

ポーやラブクラフトの小説は、そのような点が精緻に描き込まれているから好きです。古い時代に飛んでいったような、『ネバーエンディングストーリー』の主人公の少年になったみたいな気になるよね。

DVDのオマケ

US版のオマケは以下なんだが↓

  • Deleted Scenes
  • Bringing Black Death to Life
  • Interviews with Cast and Crew
  • Behind the Scenes Footage
  • HDNet: A Look at Black Death
  • Theatrical Trailer

私が持ってるのはUK版なんですよ。UK版はリリースが早かった代わりにオマケが少なかった。こんだけ↓

  • Bringing Black Death to Life
  • Theatrical Trailer

張り切ってpreorderしたくせに、ずいぶん経ってから観たという愚を犯してしまいました。これから買おうという方はUS版のほうがいいですよ。

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2011年10月18日 (スペイン) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Black Death
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