2010/12/3 (Fri) at 2:50 pm

映画|アラーム|Alarm

ダブリン郊外の新居に引っ越してきた若いおねーちゃんがこわい目に遭うサスペンススリラー映画。ルース・ブラッドリーエイダン・ターナー。監督ジェラルド・ステンブリッジ。2008年。アイルランド。

アラーム / Alarm DVDDVD画像

モリーさん(ルース・ブラッドリー)は、たったひとりの肉親であるパパをブッ殺され、天涯孤独の身の上になってしまった気の毒娘である。彼女はセラピーに通いつつ、とある縁で知り合った親切老夫婦のお世話になっていたんだが、このたび、そろそろひとり立ちをすべきであると考え、ダブリンの郊外に一軒家を購入する。

親切老夫婦ってのは、親戚などではなく、モリーの父の旧友だったそうである。彼らはひとりぼっちのモリーを心配し、実の娘に接するような調子でベッドとゴハンを無料で提供したという、ありがたいを通り越してきもちわるいくらいの善良なひとたちである。

彼らは「まだちょっと早いんじゃないの?わたしらに遠慮はいらないのよ」と心配ゲなんだが、彼女はがんばって一人暮らしを始める。いつまでも他人の世話になってるわけにはいかないので。

さて、新居はきれいだし、親切カレシ(エイダン・ターナー)もできてラブラブだし、なかなか順調だなと思ったら、意味不明の侵入騒ぎが何度も起きて、またまた不安になる。留守中にだれかが家のドアを壊して侵入したんだが、なにも盗まれていないという点が奇妙である。2度目のときにはなぜか自転車だけが盗まれた。あー、きもちわるい。

彼女は警報セキュリティを設置してもらうんだが、その先も奇異な出来事が起き、モリーはヘロヘロになってくる。映画を観ているわたしらには、彼女の回りにいる人物すべてが怪しいように思える。『ローズマリーの赤ちゃん』のミア・ファロー風。

老夫婦はきもちわるいくらいにベタベタしてくるし、親切カレシは優しいんだが、彼が過去にナニをしていたのか彼女はぜんぜん知らないことに気づく。なんか秘密があるのかも。

また、町の金物屋のオヤジ(オーウェン・ロー)には双子の兄弟がいて、そいつが警報セキュリティをつけてくれたのだが、双子というわりには兄弟がいっしょにいるところを見る機会はなく、もしかしてオヤジが一人二役をやってるんじゃないかと思える。そんなことをする理由は思いつかないんだが。また、何度も破壊侵入事件が起きているというのに、やってくる警官はいつもひとりだけというのも妙である。警官は話を聞いて適当にお茶を濁すだけという、ヤルキのなさなのだ。

さらに、ご近所さんてのが、これまた奇妙である。引っ越しの挨拶にいってもつっけんどんだし、パーティの誘いは無視しやがるし、家に電気が点いているからだれかがいるはずなんだが、不自然にひっそりしててきもちわるい。

そうこうやってるうちに、彼女にこの家を仲介した不動産屋の営業男がボコボコに殴られるという事件が起きる。彼女は家を買ったときのことを思い出す。彼女が購入を決めたとき「あー、さっき売れちゃいました!」といわれて、それがあまりに悲しくてピーピー泣いたら、ヤリ手の営業男が「あと5千上乗せしてくれたら、あなたのものになります」と釣り上げ交渉をしてきたんだが、いいようにヤラレちゃってる風なんだが、彼女はいわれるままに高いお金を払って自分のものにしたのである。という状況からして、家を買えなかった人が逆恨みをしているんだろうか、という推測も成り立つ。すべて彼女の想像なんだが。

という調子で、どいつもこいつも怪しさ満点である。モリーは「もうやってられませんよ」と泣き顔になるんだが、もしかして、彼女の方が狂っているのかなと思えるフシもある。どっちなのかわからない。あー、きもちわるい。

トレイラー動画

Alarm (2008) trailer

感想

アイルランドの田舎の家といえば「灰色の海に面した崖っぷち草原にポツンと建つ一軒家。寒そう」というホラーの定番風景を思い出しますが、この映画の舞台はそういうのじゃないです。そこまで田舎ではなく、都会への通勤圏内に位置する中級家庭メインの閑静な住宅街。といった趣です。そこに引っ越してきた若いおねーちゃんがこわい目に遭うんだが、もしかして彼女自身が狂っているのだろうかと思わせるサスペンス映画です。

台詞の端々に伏線が張られており、良質な推理小説を読んでいるようなきもちになる。後半15分。彼女がカレシの嘘を知り、あわわーとパニクって「もうだれも信じられないわ!」と逃げ回るところはすごい緊迫感がある。グログロショッカーなシーンはなく、会話主体で進行するので映像は地味地味なんだが、台詞を聞いてちゃんと見ていると「ふむふむ。それでどうした?」と釣り込まれる。そこらへん上手につくってある。

いったいどんなオチなんだろう!?あの老夫婦はナニモノ?カレシはナニモノ?双子オヤジは?彼女の友達のサラちゃんはどうした?不動産屋のアンちゃんを殴ったのはだれ?

数々の疑問点が提出されると、ラストへの期待が高まる。これらをすべてスカッと解決して「おー!そうだったのか!」ときもちよくなりたい!これは隠れた名作ではないか!レビューを書くぞ!と思ったら、最後はガッターンでしたよ。おそろしく投げやりなのです。まったく解決されないまま終わってしまう。あのなー。あー。がっくしですよー。

ヒデー映画をつくりやがるなあ。とひさしぶりにおもった。

私は普段、ゴミ映画といわれるような低予算ホラーをアホみたいに見ていますが、そういうのはソレ系だとわかって見ているからいいのです。この映画みたいに期待させといて落とすってのはとても困りますなあ。これほど上質な盛り上げ手法を考えつく監督さんが、どうしてあんなラストを思いつくのだろうか。映画界の謎。

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原題: Alarm
制作年: 2008年
制作国: アイルランド
公開日: 2008年7月11日 (アイルランド) (Galway Film Fleadh)
2008年11月7日 (アイルランド)
2009年2月8日 (ドイツ) (European Film Market)
2010年11月30日 (アメリカ) (DVD)
imdb.com: imdb.com :: Alarm

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